前脚まへあし)” の例文
そして、ちよつといきれたやうな樣子やうすをすると、今度こんどはまたあたま前脚まへあしさかんうごかしながらかへしたつちあなした。
画家とセリセリス (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
かたそばだて、前脚まへあしをスクとてて、みゝ圓天井まるてんじやうとゞくかとして、くわつ大口おほぐちけて、まがみはとほ黒板こくばん呼吸いきいた——
雪霊続記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
身体からだの楽になつた馬は、すぐ人間を蹴る事を思ひ出すらしいが、自分を楽にしてくれた婦人の手前、さういふ乱暴な真似も出来ないので、おとなしく前脚まへあし地面ぢべたを掻いて済ましてゐる。
前脚まへあしを上げた
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
青龍せいりゆう前脚まへあし
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
其處そこへあの、めす黒猫くろねこが、横合よこあひから、フイとりかゝつて、おきみのかいたうた懷紙ふところがみを、後脚あとあしつてて前脚まへあしふたつで、咽喉のどかゝむやうにした。
二た面 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
そして、しばらくあたりをあるきまはつてゐたが、ちよつとしたつちくぼみにぶつかると、くちばし前脚まへあしあなした。
画家とセリセリス (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
天守てんしゆいしずゑつち後脚あとあしんで、前脚まへあしうへげて、たかむねいだくやうにけたとおもふと、一階目いつかいめ廻廊くわいらうめいた板敷いたじきへ、ぬい、とのぼつて外周囲そとまはりをぐるりと歩行あるいた。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
あなの二三ずん手前てまへりたはちは、やがてあたま前脚まへあし蜘蛛くも死骸しがいあなふかみへしてつた。
画家とセリセリス (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
前後ぜんごあしぼんでのそりとまつて、筑波つくばやま朝霞あさがすみに、むつくりとかまへながら、一ぽん前脚まへあしで、あの額際ひたひぎはからはなさきをちよい/\と、ごとくちのやうにけて、ニタ/\わらひで
二た面 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
いまはたいたまゝで、元二げんじが、財布さいふ出入だしいれをするうち縁側えんがははしいた煙管きせるつて、兩提りやうさげつゝ突込つゝこまうとするとき縁臺えんだいしたから、のそ/\と前脚まへあしくろした一ぴき黒猫くろねこがある。
二た面 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
木尻座きじりざむしろに、ゆたかに、かどのある小判形こばんがたにこしらへてんであつたもちを、一枚いちまい、もろ前脚まへあし抱込かゝへこむと、ひよいとかへして、あたませて、ひとかるうねつて、びざまにもとの障子しやうじあなえる。
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)