其麽そんな)” の例文
おごりませんよ。』と言ふ富江の聲はなまつてゐる。『ホヽヽ、いくら髭を生やしたつて其麽そんな年老としとつた口は利くもんぢやありませんよ。』
鳥影 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
このうちつぶせ!』とうさぎこゑあいちやんはせい一ぱいおほきなこゑで、『其麽そんなことをすればたまちやんを使嗾けしかけるからいわ!』とさけびました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
「まあ其麽そんなことゆはねえで折角せつかくのことに、勘次かんじさんもわる料簡れうけんでしたんでもなかんべえから」となだめても到頭たうとう卯平うへいかなかつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
会場は円山の牡丹畑で、其麽そんな時はいつも百年先生の塾と合併で、塾の先輩達がズラツと並んで席上をやつた。時には矢張り鈴木派の人達ばかりで演説会があつた。
写生帖の思ひ出 (新字旧仮名) / 上村松園(著)
離れて居ては貴方のお心迄が分らなくなつてしまふ。若し貴方が其麽そんなお心持から又この暗い世界へ私と同じ様に身を沈めてお了ひになつたらそしたら貴方が死ぬ許りか私も死ぬのですもの。
獄中の女より男に (新字旧仮名) / 原田皐月(著)
「どこか坊さんみたいね。だんだん其麽そんな気がするの。」
幼年時代 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
同僚の噂でも出ると、フフンと云つた調子で取合はぬ。渠は今日またしきりに其麽そんな話をして居たが、不図小宮洋服店の事を思出した。
病院の窓 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
いねたばかつぐんだつて、わしくちしちやはねえが、ちやんとつてんでがすから、さうつちやなんだが其麽そんなことするもなあ
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
こゝろみに蝋燭らふそくされたあとほのふさま想像さうざうしてました、まへ其麽そんなものたことを記憶きおくしてませんでしたから。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
其麽そんな時は怎も米町よねまち(遊廓)へ行くらしいので、現に或時いつかの晩の如きは職工二人許りと連立つて行つた形跡があると云ふ事であつた。
菊池君 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
しか其麽そんなことは勘次かんじくるしめてのさもしいこゝろあるもの挽囘ばんくわいさせるちからいうしてないのみでなく、ほとんどなんひゞきをもかれこゝろつたふるものではない。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
はなしてかしておれな』とあいちやんはおそる/\つて、『何故なぜ其麽そんな薔薇ばらはな彩色さいしきするの?』
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
其麽そんな時は怎も米町よねまち(遊廓)へ行くらしいので、現に或時いつかの晩の如きは職工二人許りと連立つて行つた形跡があると云ふ事であつた。
菊池君 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
其麽そんな風ぢや不可いけない、兄弟一緒に寄越すさ。遲く入學さして置いて、卒業もしないうちから、子守をさせるの何のつて下げて了ふ。
足跡 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
其麽そんなふうぢや不可いけない、兄弟一緒に寄越すさ。遅く入学さして置いて、卒業もしないうちから、子守をさせるの何のつて下げて了ふ。
足跡 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
『マ清子さん!……貴女其麽そんなに……私になら何だつて言つて下すつたつていわ。貴女許りよ、私姉さんの樣に思つてるのは!』
鳥影 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
『マ清子さん!……貴女其麽そんなに……私になら何だつて言つて下すつたつていわ。貴女ばつかりよ、私姉さんの様に思つてるのは!』
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
うか!』と言つた信吾の態度は、宛然さながら其麽そんな事は聞いても聞かなくても可いと言つた樣であつたが、靜子は征矢そやの如く兄の心を感じた。
鳥影 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
其麽そんな誰方どなたから習つて? ホホヽヽ、マア何といふ呆然ぼんやりした顔! お顔を洗つて被来いらつしやいな。』と言ひ乍ら、遠慮なく座つた。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
『君はまだ那麽あんな声を聞かうとするだけ若い。僕なんかは其麽そんな暇はない。聞えても成るべく聞かぬ様にしてる。ひとの事よりア此方こつちの事だもの。』
札幌 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
其麽そんな声で言ふと聞えるよ。何有なあに、道庁の学務課へ出てゐる小役人だがね。昔から壁に耳ありで、其麽どんな処から計画が破れるか知れないからなあ。』
札幌 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
其麽そんな事から、この町に唯一軒の小川家の親籍といふ、立花といふうちに半自炊の様にして泊つてゐるのだ。服装みなりを飾るでもなくほんを読むでもない。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
此村こゝから東京へ百四十五里、其麽そんな事は知らぬ。東京は仙臺といふ所より遠いか近いかそれも知らぬ。唯明日は東京にゆくのだと許り考へてゐる。
天鵞絨 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
林務課の事業手といふ安腰辨の立見君は、細君と女兒と三人で其麽そんな室にゐ乍ら、時々藤村調の新體詩などを作つてゐた。
札幌 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
林務課の事業手といふ安腰弁の立見君は、細君と女児こどもと三人で其麽そんなへやにゐ乍ら、時々藤村調の新体詩などを作つてゐた。
札幌 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
此村ここから東京へ百四十五里、其麽そんな事は知らぬ。東京は仙台といふ所より遠いか近いか、それも知らぬ。唯明日は東京にゆくのだと許り考へてゐる。
天鵞絨 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
其麽そんな時は、恰度ちやうど、空を行く雲が、明るい頭腦あたまの中へサッと暗い影を落した樣で、目の前の人の顏も、原稿紙も、何となしにくすんで、曇つて見える。
菊池君 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
其麽そんな時は、無精者の母親がよく健の前へ来て、抱いてゐる梅ちやんといふ児に胸をはだけて大きい乳房を含ませながら
足跡 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
時として、叔父は三日も四日も、或は七日も八日も続いて、ちつとも姿を見せぬ事があつた。其麽そんな事が、収穫とりいれ後から冬へかけて殊に多かつた様である。
刑余の叔父 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
渠は今日また頻りに其麽そんな話をして居たが、不圖小宮洋服店の事を思出した。が、渠はどうしたものか、それを胸の中で壓潰して了つて考へぬ樣にした。
病院の窓 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
『まあうですか。ちよつとお手紙にも其麽そんな事があつたつて、新太郎が言つてましたがね。お前さん達、まあ遠い所をよくお出になつたことねえ。ほんとに。』
天鵞絨 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
『まあ然うですか。ちよつとお手紙にも其麽そんな事があつたつて、新太郎が言つてましたがね。お前さん達、まあ遠い所をよくお出になつたことねえ。ほんとに。』
天鵞絨 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
それは多分蚊帳が無いので、然うして蚊を逐出してから寝たのだらうといふ事であつた。其麽そんなに苦しい生活をしてゐて、渠にはちつとも心を痛めてゐるふうがない。
足跡 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
渠自身も常に其麽そんな話をする事を避けて居たが、それでもチョイチョイ口に出るもので、四年前の渠が知つてなかった筈の土地の事が、何かの機會に話頭に上る。
病院の窓 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
其麽そんな事があつた爲ですか、昨晩ゆうべ頻りに、貴方あなたがお出にならないツて、金村の奴心配してましたよ。』
菊池君 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
其麽そんな事があつた為ですか、昨晩頻りに、貴方がお出にならないツて、金村の奴心配してましたよ。』
菊池君 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
『先刻社長が見えて其麽そんな事を云つて居た。二號標題みだしで成るべく景氣をつけて書いて呉れ給へ。尤も、今日は單に報道に止めて、此方の意見は二三日待つて見て下さい。』
病院の窓 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
先刻さつき社長が見えて其麽そんな事を云つて居た。二号標題みだしで成るべく景気をつけて書いて呉れ給へ。尤も、今日は単に報道にとどめて、此方こつちの意見は二三日待つて見て下さい。』
病院の窓 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
叔父の事にしては、家がうならうと、妻子が甚麽どんな服装なりをしようと、其麽そんな事は従頭てんで念頭にない。
刑余の叔父 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
浅草の観音様に鳩がゐると聞いた時、お定は其麽そんな所にも鳥なぞがゐるか知らと、異様に感じた。
天鵞絨 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
『嘘だあでヤ。俺ア、酒でも飮んだ時アほかの女子さもぐども、其麽そんなに浮氣ばしてねえでヤ。』
天鵞絨 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
ト共に、初め材料たねを聞出す積りでチヨイ/\飲みに行つたのが、此頃では其麽そんな考へも無しに、唯モウ行かねば気が落付かぬ様で、毎晩の様に華やかな絃歌の巷に足を運んだ。
菊池君 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
『フム、君は其麽そんなに死といふことを慕ふのかね。……だが、まあ兎も角今夜は飮まうや。』
漂泊 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
『フム、君は其麽そんなに死といふことを慕ふのかね。……だが、まあ兎に角今夜は飲まうや。』
漂泊 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
『然う然う、其麽そんな癖がありましたね。一体一寸々々ちよいちよい奇抜な事をやり出す人なんで、書く物も然うでしたよ。恁麽こんな下らん事をと思つてると、時々素的な奴を書出すんですから。』
病院の窓 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
今日は誰々が顏色が惡かつたと、何れ其麽そんな事のみが住民の心に徂徠ゆききしてるのであらう。
赤痢 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
今日は誰々が顔色が悪かつたと、いづ其麽そんな事のみが住民ひとびとの心に徂徠ゆききしてるのであらう。
赤痢 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
『何をツて。其麽そんなに白ばくれなくてもごあんすべ。出したすか? 出さねえすか?』
足跡 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
其麽そんなふうだから、此邊の者は徴兵に採られても、大抵上等兵にも成らずに歸つて來る。
足跡 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
『何もその銭金のかかこつで無えのだ。わし其麽そんなもので無え。自分で宿料を払つてゐて、一週間なり十日なり、無料ただで近所の人達に聞かして上げるのだツさ、今のその、有難いお話な。』
赤痢 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)