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五月
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ごぐわつ
君死にしよりまる
一年になるといふ
五月はじめに君死にしかも
やはらかな
肌ざはりが
五月ごろの
外光のやうだつた
ああ
五月、
此月に
遇へることは
「はあ、……」と、
聞くのに
氣の
入つた
婦の
顏は、
途中が
不意に
川に
成つたかと
思ふ、
涼しけれども
五月半ばの
太陽の
下に、
偶と
寂しい
影が
映した。
やゝ
大粒に
見えるのを、もし
掌にうけたら、
冷く、そして、ぼつと
暖に
消えたであらう。
空は
暗く、
風も
冷たかつたが、
温泉の
町の
但馬の
五月は、
爽であつた。
まさか
自動車で、ドライブして、
搜して
囘るほどの
金はなし……
縁の
切れめか、よし
原すゞめ、
當分せかれたと
斷念めて
居ると、
當年五月——
房州へ
行つた
以前である。
時は
十二月なんだけれど、
五月のお
節句の、
此は
鯉、
其は
金銀の
絲の
翼、
輝く
虹を
手鞠にして
投げたやうに、
空を
舞つて
居た
孔雀も、
最う
庭へ
歸つて
居るの……
燻占めはせぬけれど
鯖を、
鯖や
三番叟、とすてきに
威勢よく
賣る、おや/\、
初鰹の
勢だよ。
鰯は
五月を
季とす。さし
網鰯とて、
砂のまゝ、
笊、
盤臺にころがる。
嘘にあらず、
鯖、
鰡ほどの
大さなり。
値安し。
馬鹿の
一覺え、といふのだらう。あやめは
五月と
心得た。