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五位鷺
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ごいさぎ
ふりがな文庫
“
五位鷺
(
ごいさぎ
)” の例文
そよそよと流れて来る
夜深
(
よふけ
)
の風には青くさい
椎
(
しい
)
の花と野草の
匂
(
におい
)
が含まれ、松の
聳
(
そび
)
えた
堀向
(
ほりむこう
)
の空から突然
五位鷺
(
ごいさぎ
)
のような鳥の声が聞えた。
つゆのあとさき
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
臀
(
しり
)
と
股
(
もも
)
と
膝頭
(
ひざがしら
)
が一時に飛び上がった。自分は
五位鷺
(
ごいさぎ
)
のように布団の上に立った。そうして、
四囲
(
あたり
)
を見廻した。そうして泣き出した。
坑夫
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
奥野が帰ったあとで、秋山は又もや机にむかって、あしたの吟味の調べ物をしていると、屋根の上を
五位鷺
(
ごいさぎ
)
が鳴いて通った。
真鬼偽鬼
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
「仙波さん、相変らずはぐらかすねえ。そりゃア、
五位鷺
(
ごいさぎ
)
の抜け羽でしょう。あなたには、それが天狗の羽根に見えますか」
顎十郎捕物帳:11 御代参の乗物
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
折々ひときわ鋭く
五位鷺
(
ごいさぎ
)
のような喉を振り絞って余韻もながく叫びあげる声が朧夜の霞を破って凄惨この上もなかった。
鬼涙村
(新字新仮名)
/
牧野信一
(著)
▼ もっと見る
その夜空を、しきりと、
五位鷺
(
ごいさぎ
)
が
啼
(
な
)
いて行った。幾ぶんか雨気をふくんだ風である。山のほうは降っているらしい。
新書太閤記:05 第五分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ぎい、ちよん、ぎい、ちよんと、
堤
(
どて
)
の草に
蟋蟀
(
きりぎりす
)
の紛れて鳴くのが、やがて分れて、大川に
唯
(
ただ
)
艪
(
ろ
)
の音のみ、ぎい、と響く。ぎよ、ぎよツと鳴くのは
五位鷺
(
ごいさぎ
)
だらう。
光籃
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
鴨
(
かも
)
、
小鴨
(
こがも
)
、
山鳩
(
やまばと
)
、
兎
(
うさぎ
)
、
鷺
(
さぎ
)
、
五位鷺
(
ごいさぎ
)
、
鴛鴦
(
おしどり
)
なぞは五日目ないし六日目を食べ頃としますがその
中
(
うち
)
で鳩は腐敗の遅い鳥ですから七、八日目位になっても構いません。
食道楽:冬の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
そういう夜、
五位鷺
(
ごいさぎ
)
がよく静かに鳴きながら空を渡った。月のいい晩には窓からその影が見えさえした。
癩
(新字新仮名)
/
島木健作
(著)
梟
(
ふくろう
)
に
脅
(
おど
)
かされた
五位鷺
(
ごいさぎ
)
だと牧瀬はいつた。歳子の襲はれさうになる恋愛的な気持ちを防ぐ本能が、かの女にぶる/\と
身慄
(
みぶる
)
ひをさして、その気持ちを振り落さした。
夏の夜の夢
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
平次は
曲者
(
くせもの
)
を引起すと、その身体の泥などを払ってやっております。
五位鷺
(
ごいさぎ
)
の
秀吉
(
ひできち
)
というやくざ者、
賭博打
(
ばくちうち
)
の兇状持ですが、大した悪い事をする人間とは思われません。
銭形平次捕物控:009 人肌地蔵
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
彼は家の外に出て
俥
(
くるま
)
の姿を待った。冷えて降りだしそうな暗い空に
五位鷺
(
ごいさぎ
)
が叫んでとおりすぎる。そうして待ち
佗
(
わ
)
びていると、ふと彼は遠い
頼
(
たよ
)
りない子供の心に陥落されていた。
美しき死の岸に
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
かれはそう叫ぶと、
対手
(
あいて
)
にきこえたかどうかと思った。和泉の人はそれと同時に何か
五位鷺
(
ごいさぎ
)
のような奇声を立てたが、意味は分らなくとも、明らかに相射ちを
肯
(
うなず
)
き合ったものだった。
姫たちばな
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
片側町
(
かたかはまち
)
なる
坂町
(
さかまち
)
は
軒並
(
のきなみ
)
に
鎖
(
とざ
)
して、
何処
(
いづこ
)
に
隙洩
(
すきも
)
る
火影
(
ひかげ
)
も見えず、旧砲兵営の
外柵
(
がいさく
)
に
生茂
(
おひしげ
)
る
群松
(
むらまつ
)
は
颯々
(
さつさつ
)
の響を
作
(
な
)
して、その
下道
(
したみち
)
の
小暗
(
をぐら
)
き空に
五位鷺
(
ごいさぎ
)
の
魂切
(
たまき
)
る声消えて、夜色愁ふるが如く
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
それが百万回以上も
積重
(
つみかさ
)
ねられて、ここに色々の村の文学が出来た。
蛍
(
ほたる
)
や
蝙蝠
(
こうもり
)
は言うに及ばず、
雁
(
がん
)
でも
鴉
(
からす
)
でも
五位鷺
(
ごいさぎ
)
でも、彼等に
喚
(
よ
)
びかけられる多くの鳥は、大抵は皆夕の空の旅人であった。
野草雑記・野鳥雑記:02 野鳥雑記
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
水気の少い野の住居は、
一甕
(
ひとかめ
)
の水も
琵琶
(
びわ
)
洞庭
(
どうてい
)
である。太平洋大西洋である。
書斎
(
しょさい
)
から見ると、甕の水に青空が落ちて、其処に水中の天がある。時々は
白雲
(
しらくも
)
が浮く。空を飛ぶ
五位鷺
(
ごいさぎ
)
の影も
過
(
よ
)
ぎる。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
本所
(
ほんじょ
)
茅場町
(
かやばちょう
)
の先生の家は、もう町はずれの寂しいところであった。庭さきの
墻
(
かき
)
の外にはひろい
蓮沼
(
はすぬま
)
があって、夏ごろは
蛙
(
かわず
)
が
喧
(
やか
)
ましいように鳴いていた。
五位鷺
(
ごいさぎ
)
や
葭切
(
よしき
)
りのなく声などもよく聞いた。
左千夫先生への追憶
(新字新仮名)
/
石原純
(著)
近くに古沼でもあるとみえて、ギャーッと
五位鷺
(
ごいさぎ
)
の啼く声がした。
名人地獄
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
「あれでございますか? あれは
五位鷺
(
ごいさぎ
)
でございますよ。」
奇怪な再会
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
五位鷺
(
ごいさぎ
)
や
雁
(
がん
)
などが飛びながらおりおり鳴くのも
疑問と空想
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
五位鷺
(
ごいさぎ
)
がギャアと夕空を鳴いて過ぎた。
蘆声
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
「さあね、
五位鷺
(
ごいさぎ
)
ぢやないかな。」
夜の鳥
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
五位鷺
(
ごいさぎ
)
が鳴いて夜は暁に近づいた。
駅夫日記
(新字新仮名)
/
白柳秀湖
(著)
五位鷺
(
ごいさぎ
)
が、頭上で啼いた。
円朝花火
(新字新仮名)
/
正岡容
(著)
翼しをれし
五位鷺
(
ごいさぎ
)
の
花守
(旧字旧仮名)
/
横瀬夜雨
(著)
鐘の音が消えた空に、
五位鷺
(
ごいさぎ
)
が、つばさを
搏
(
う
)
った。——深夜の感じは、刻々、明け方ぢかい空気に変ってくる。
牢獄の花嫁
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
我国では、先ず
鵺
(
ぬえ
)
や
五位鷺
(
ごいさぎ
)
を怪鳥の部に編入し、支那では
鵂※
(
きゅうし
)
を怪鳥としている。鵂※は鷹に似てよく人語をなし、好んで小児の脳を
啖
(
くら
)
うなどと伝えられている。
妖怪漫談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
けれども一面の水だから、せっかく水を抜いた足を、また
無惨
(
むざん
)
にも水の中へ落さなくっちゃならない。片足を揚げると、
五位鷺
(
ごいさぎ
)
のようにそのままで立っていたくなる。
坑夫
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
鉄砲疵
(
てっぽうきず
)
のございます猿だの、
貴僧
(
あなた
)
、足を折った
五位鷺
(
ごいさぎ
)
、
種々
(
いろいろ
)
なものが
浴
(
ゆあ
)
みに参りますからその
足跡
(
あしあと
)
で
崕
(
がけ
)
の路が出来ますくらい、きっとそれが利いたのでございましょう。
高野聖
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
一、夜ややふけて、よその笑ひ声も
絶
(
たえ
)
る頃、月はまだ出でぬに歩む路明らかならず、白髭あたり森影黒く交番所の燈のちらつくも静なるおもむきを添ふる折ふし
五位鷺
(
ごいさぎ
)
などの鳴きたる。
向嶋
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
雉
(
きじ
)
、山鳥、兎、
鷺
(
さぎ
)
、
五位鷺
(
ごいさぎ
)
、
鴛鴦
(
おし
)
、熊、猿、白鳥、七面鳥、
鶏
(
にわとり
)
食道楽:冬の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
雨気を含んだ暗い夜で、低い空の闇を破って啼いていく
五位鷺
(
ごいさぎ
)
の声がどこやらで聞こえた。
玉藻の前
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
いや夜あるきには
馴
(
な
)
れている、雨も
小留
(
こや
)
みに、月も少し
明
(
あか
)
ければ
途
(
みち
)
すがら
五位鷺
(
ごいさぎ
)
の声も一興、と
孔雀
(
くじゃく
)
の尾の机にありなしは知らぬ事、
時鳥
(
ほととぎす
)
といわぬが見つけものの才子が、
提灯
(
ちょうちん
)
は借らず
雪柳
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
人の数より、はるかに、
五位鷺
(
ごいさぎ
)
のほうが多かった。灰色の害鳥の群れが、わが物顔に、田を
占
(
し
)
め、
木
(
こ
)
の
実
(
み
)
を盗んで、人間は鷺以下の者としか見えないほど、文化の光がなかったのである。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
蚊の声、虫の声、古寺の闇はいよいよ深くなって屋根の上を
五位鷺
(
ごいさぎ
)
が鳴いて通った。
半七捕物帳:46 十五夜御用心
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
五位鷺
(
ごいさぎ
)
飛んで星移り、当時は
何某
(
なにがし
)
の家の土蔵になったが、切っても払っても
妄執
(
もうしゅう
)
は
消失
(
きえう
)
せず、金網戸からまざまざと青竹が見透かさるる。近所で(お
竹蔵
(
たけぐら
)
。)と呼んで
恐
(
おそれ
)
をなす白壁が、町の表。
日本橋
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
その笠の列も、空を飛ぶ
五位鷺
(
ごいさぎ
)
の影も、田水に映っていた。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「どっちです、
白鷺
(
しらさぎ
)
かね、
五位鷺
(
ごいさぎ
)
かね。」
眉かくしの霊
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
遠くに犬
吠
(
ほ
)
え、近く
五位鷺
(
ごいさぎ
)
啼
(
な
)
く。
夜叉ヶ池
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
あれは
五位鷺
(
ごいさぎ
)
でしょうな。
星女郎
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
五位鷺
(
ごいさぎ
)
竜潭譚
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
五
常用漢字
小1
部首:⼆
4画
位
常用漢字
小4
部首:⼈
7画
鷺
漢検準1級
部首:⿃
24画
“五位”で始まる語句
五位
五位堂
五位尉
五位山