“ひ”のいろいろな漢字の書き方と例文
カタカナ:
語句割合
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(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
しやうめいくるのにはすなは其家そのいへわすれ、ぐんのぞんで約束やくそくすればすなは其親そのしんわすれ、(一六)枹鼓ふこることきふなればすなは其身そのみわする。
こちらの姫君に心をおかれすることになって、今ではもう世間のうわさにも上っているだろうと思われるまでになっているのですから
源氏物語:49 総角 (新字新仮名) / 紫式部(著)
朦朧もうろうと見えなくなって、国中、町中にただ一条ひとすじ、その桃の古小路ばかりが、漫々として波のしずか蒼海そうかいに、船脚をいたように見える。
絵本の春 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そのわすがたあぢかされて、ことくが——たび思出おもひだしては、歸途かへりがけに、つい、かされる。——いつもかへとき日暮ひぐれになる。
殊に歳暮さいぼの夜景の如き橋上けうじやうを往来する車のは沿岸の燈火とうくわと相乱れて徹宵てつせう水の上にゆらめき動く有様ありさま銀座街頭の燈火とうくわよりはるかに美麗である。
水 附渡船 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
そしてその組の者は、みんなで相談して、その「週間」の間に四度だけ、学校が退けるとすぐ、みんなでイナゴとりに行くのでした。
栗ひろひ週間 (新字旧仮名) / 槙本楠郎(著)
いままでながもとしきりにいていたむしが、えがちにほそったのは、雨戸あまどからひかりに、おのずとおびえてしまったに相違そういない。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
したふか板倉のひえ炬燵こたつとは少しもがないといふ事なりと火と同音どうおんなればなり夫より後世こうせい奉行ぶぎやういつれも堅理けんりなりといへども日を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「そう言われるのは決して平凡なお手並みでない芸に違いない。一所懸命に法皇の所へ来ておきになるのを自分も聞きたいものだ」
源氏物語:35 若菜(下) (新字新仮名) / 紫式部(著)
ルンペンどもは前もって明智の逃げ道を察し、そこの出口にとかたまりになって、手に手に得物えものを持って待ち構えていたのである。
人間豹 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
清逸が学問をするためにき起される近親の不幸(父も母もそのためにたしかに老後の安楽から少なからぬものを奪われてはいるが)
星座 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
すると、突然、の緞帳の裾から、桃色のルイザが、吹きつけた花のように転がり出した。裳裾もすそが宙空で花開いた。緞帳は鎮まった。
ナポレオンと田虫 (新字新仮名) / 横光利一(著)
ある日、中庭へ数台の荷馬車をき込んで、それに家財道具や衣裳類を山のように積んであるのを見て、ガブリエルはびっくりした。
そしてガラスだまのような、ややかにひかでじっとそれをていましたが、やがて舌打したうちをして、いまいましそうにいいました。
消えた美しい不思議なにじ (新字新仮名) / 小川未明(著)
私は深い心に泣き乍ら幻想のかげに弱つた身体からだを労つてゆく、しめつた霧がそこにもここにも重い層をなして私の身辺を圧へつける。
桐の花 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
他の一人ひとりは帽子が飛ぶと同時に飛んだ帽子の事だけ考へて、夢中になつてそのあとを追ふ。自転車にぶつかる。自動車にかれかかる。
拊掌談 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
「峠の者こそ、抜かるなといってくれ」からびた笑い声をながして、下の者は、すたすたと胸突坂むなつきを登って行った。すると、不意に
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
家庭の平和と純潔とを乱せば一身の破滅ばかりでなく、いては一家の協同生活を危くし、社会の幸福をもそこなう結果が予想せられる。
私の貞操観 (新字新仮名) / 与謝野晶子(著)
どれ、紙がないからダラにでも、ひとこと書いてあげようか。それを持って、わしの知ってるフィンランドの女のとこへ行くがいい。
それをとするかとするか、自分のくちびるをでる、ただ一で、どんな兇刃きょうじんがもののはずみで御岳みたけ神前しんぜんの海としないかぎりもない。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この互いにからみ合っている二匹の白猫は私をしてほしいままな男女の痴態を幻想させる。それからはてしのない快楽を私はき出すことが出来る。……
交尾 (新字新仮名) / 梶井基次郎(著)
共に眺めんキトウスの月、翁は久しくキトウスの月を共に眺むる人を求めて居る。若い者さえ見ると、胸中きょうちゅうをほのめかす。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
じきにタキシイに飛びのって、行きつけのうちへ走らせたが、部屋へ納まっても、何か仮り着をしているようで、庸三は気がけた。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
樹々は暗くなる程繁り、生籬いけがきや森は、葉が繁り、色が濃くなつて、間にある刈り取つたあとの牧場の太陽えた色と、いゝ對照をしてゐた。
山と雲との影があやに織り出されたり消されたりして、その間を縫って銀光沢を帯びた青緑色のヤンマの一種がのように飛び交うている。
日本アルプスの五仙境 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
さびしきまゝにこと取出とりいだひとこのみのきよくかなでるに、れと調てうあはれにりて、いかにするともくにえず、なみだふりこぼしておしやりぬ。
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
それですから、北上川のきしからこの高原の方へ行く旅人たびびとは、高原に近づくにしたがって、だんだんあちこちに雷神らいじんを見るようになります。
種山ヶ原 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
一所ひとつところに土橋がかかっていた。その下に枯蘆かれあしが茂っていた。また一所にの口があった。枯れたこけいていた。
隠亡堀 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
その往っている方向に当って、月の陰になったように暗い所があって、そこからの光がきらきらと光っているのを見た。
太虚司法伝 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
これは世にふ捕物ではないかも知れませんが、危險をはらむことに於ては、冷たい詭計きけいに終始した捕物などのではないと言へるでせう。
聟どのの家から大事に消えぬように持って来た脂燭ししょくともしを、すぐ婚家のが、その家の脂燭に移しともして、奥へかけこんでゆく。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かくかんがえるとどうも馬琴の説が当り居るようだ。すなわち斉の宣王が堂上に坐すと牛をいて過ぐる者あり。
又八は、この男の話を、全部がほんととは信じなかったが、それでも、何か圧倒されたようなを感じ、自分も、法螺ほらをふき返してやろうと思った。
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
変りはてた先帝の影を獄中のほの暗い所に見いだしたとき、三人のは、しぜんにみなそれぞれちがった悲しみようをその姿にみだし合った。
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼は流れの中に既に我を喉まで引入れ、今己がうしろより我を曳きつゝ、のごとく輕く水の上を歩めるなりき 九四—九六
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
おこしけるはおそろしとも又たぐひなし寶澤は此事を心中に深くし其時は然氣さりげなく感應院へぞ歸りけるさてよく年は寶澤十二歳なり。
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
日はとっぷり暮れたが月はまだ登らない、時田は燈火けないで片足を敷居の上に延ばし、柱にりかかりながら、茫然ぼんやり外面そとをながめている。
郊外 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
好い松の樹の樹も兎角に何かの縁でしんが折られたり止められたりして、そして十二分の発達をせずに異様なものになって終うのが世の常である。
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
今しがたまで自分の語りふけっていた修羅黒縄しゅらこくじょうの世界と、この薄らのようにすき透った光の世界との間には、どういう関わりがあるのかと思ってみる。
雪の宿り (新字新仮名) / 神西清(著)
来客らいかくの目覚しさ、それにもこれにも、気臆きおくれがして、思わず花壇の前に立留まると、うなじからつまさきまで、の葉も遮らずかっとして日光した。
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
穀物をく臼は手で廻すのだが、余程の腕力を必要とする。一端を臼石の中心の真上のたるきに結びつけた棒が上から来ていて、その下端は臼の端に着いている。
而して會〻たま/\その街を過ぐる一行ありしがために、此一寰區くわんくは特に明かなる印象を我心裡に留むることを得たり。角きはめて長き二頭の白牛一車をけり。
父も兄も鍬を荷ひ駒を引いて歸つてきた例の兄の愛馬が鼻る聲も聞える。身内へ用にゆかれた母も歸つたらしい、生垣近くで人々の話聲である。
古代之少女 (旧字旧仮名) / 伊藤左千夫(著)
犁は非常に軽くて一頭の馬がき、木の株の間を耕す際には、それが低ければ、一般にはその上を持上げて越すのである。
是即ち評價のみなもとなり、是が善惡二の愛をあつめ且つるの如何によりて汝等の價値かち定まるにいたる 六四—六六
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
こんなわけで、狸は支那の代表的料理の主役を勤め、第一その肉は人の肺気を強くし、胃を補ひ、皮はかわごろもを製し、骨は邪気を除くと本草に見えてゐる。
たぬき汁 (新字旧仮名) / 佐藤垢石(著)
せばらく片折戸かたをりど香月かうづきそのと女名をんなヽまへの表札ひようさつかけて折々をり/\もるヽことのしのび軒端のきばうめうぐひすはづかしき美音びおんをばはる月夜つきよのおぼろげにくばかり
経つくゑ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
〔評〕南洲、顯職けんしよくに居り勳功くんこうふと雖、身極めて質素しつそなり。朝廷たまふ所の賞典しやうてん二千石は、こと/″\く私學校のつ。貧困ひんこんなる者あれば、のうかたぶけて之をすくふ。
シカモ兵乱ノなお飢饉ききんヲ以テス。県務ニ鞅掌おうしょうシイマダ及ブニいとまアラズ。幸ニシテ子重ガコノ挙アリ。故ニ辞スルニ多事ヲ以テセズ。筆ヲイテ巻首ニ叙ストイフ。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
須佐之男命すさのおのみことは、大空から追いおろされて、出雲いずもの国の、かわ河上かわかみの、鳥髪とりかみというところへおくだりになりました。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
『ラマヤナム』にミチラ王ジャナカ婿を定めんとて諸王子を招き競技せしめた時、ラマ強弓をいたので王の娘シタがこれを夫と撰定したとある
ひだと云ふひだを白くいたアルプス連山の姿はかねて想像して居た様な雄大なおもむきで無く、白い盛装をした欧洲婦人のむれを望む様に優美であつた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
母と子とまどろみ深き夜のくだち雨にて沁む蟋蟀のこゑ
風隠集 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
彼らの顔は、一様に、彼らの美しき不弥の女を守り得る力を、彼女に示さんとする努力のためにしまっていた。
日輪 (新字新仮名) / 横光利一(著)
朝靄あさもや山の腰をめぐりて高くあがらず淺間が嶽に殘る雪の光にきらめきたり滊車の走るに兩側を眺むる目いそがはし丘を
木曽道中記 (旧字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
近きも遠きもかしこにては加へじかじ、神の親しくしろしめし給ふ處にては自然ののりさらに行はれざればなり 一二一—一二三
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
天の探女姫を縄にて縛りたり、夫婦驚きてこれを援け天の探女を縛り、此女こやつすすきの葉にてかんとて薄の葉にて鋸きて切り殺しぬ
七歳のとき、ワイセンフェルス公爵の御前でオルガンをき、公の御感ぎょかんに入って、公爵自身ヘンデルの父に、息子の音楽修業を承諾させたという話もある。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
だれがあんな自我の無い手合いと一しょになるものか、自分にはあんな中途半端ちゅうとはんぱな交際振りは出来ない。征服せいふく征服かだ。
金魚撩乱 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
「お母あちゃまは、どうしたろうな。おまえも母をさがして泣くか。おお、よしよし。もじいか。いまに久助が、何か買って来よう。泣くな。泣くな」
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それは老人への好奇心ばかりではなく、あの木美子という美少女が助手である、ということにかされたのであることが、もっと大きな原因でもあった。
白金神経の少女 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
ももしきの美濃にかさば、山をおり国きかれば、かくばかり遠くは見えじ。しかあらばここの御憩みいこひ、つねよりも長くいまさな。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
その手前でさえ、先生の八犬伝には、なんともの打ちようがございません。いや全く恐れ入りました。
戯作三昧 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
彼は機智きちがあるというよりも滑稽にいで、にぎやかで快活というよりはのんびりと上機嫌であり、気むずかしく陰気というよりは物思わしげで憂鬱ゆううつである。
偶然は友をくものであった。一月も立たぬ中の事である。早く、此都に移って居た飛鳥寺あすかでら元興寺がんこうじ—から巻数かんずが届けられた。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
この三の段をわが導者は我をきてよろこびて登らしめ、汝うやうやしく彼にとざしをあけんことを請へといふ 一〇六—一〇八
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
と云う返事を待つ必要は無論ない。ないが、決行する間際になると気掛りになる。頭でこしらえ上げた計画を人情がくずしにかかる。想像力が実行させぬように引き戻す。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
モデルに石膏せっこうの彫像を据えて息子は研究所の夏休みの間、自宅で美術学校の受験準備の実技の練習を継続しているのであった。電灯をねって
雛妓 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
叔父は沼津の芸者を落籍いて、又三月程経った、乗合に乗ってぽかぽかと、この山の宿へやって来た。
忠僕 (新字新仮名) / 池谷信三郎(著)
茫々乎たる空際は歴史のじゆんの醇なるもの、ホーマーありし時、プレトーありし時、彼の北斗は今と同じき光芒を放てり。同じく彼をらせり、同じく彼れをらけり。
一夕観 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
盲目めくら有繋まさかふくろだから畸形かたわつちや他人ひととこなんぞよりやえゝとおもつたんでがせうね、さうしたらお内儀かみさん盲目めくらぜにはたいつちやつたらまた打棄うつちやつて、いてちやでえはなしなのせ本當ほんたう
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
「あら多々良さんの頭は御母おかあさまのようにかってよ」
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
まるで生きているようなものだ、風邪をいた女の子がちょっと快くなって、外の空気にふれただけでまた冒き返すことに似ている、この人は風邪を冒いたようなものである。
陶古の女人 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
ツバっかけてやりたい。
廃墟(一幕) (新字新仮名) / 三好十郎(著)
自分はかくあまりに顕著な例を挙げてみると、同じチビキの石でも引っ張るほうの千曳きと生き物の血をいたほうのチビキとの二つの区別があり、また起原があることがあいわかる。
東奥異聞 (新字新仮名) / 佐々木喜善(著)
吊るされた真鍮板に、読まれることはなかったし、れふす群衆が
河を隔てて隠れに白くく筋の、一縷いちるの糸となってけむりに入るは、立ちのぼる朝日影にひづめちりを揚げて、けさアーサーが円卓の騎士と共に北のかたへと飛ばせたる本道である。
薤露行 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「雲雀の卵をらえにんべや」
筑波ねのほとり (旧字旧仮名) / 横瀬夜雨(著)
わが持てる提灯のはとどかずて桜はただにやみに真白し
(新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
陽明園はこやのやまりては
花守 (旧字旧仮名) / 横瀬夜雨(著)
「はい。ありがたい事に達者で——針も持ちます、もうみます、御団子おだんごきます」
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
冬の田の深田ふけだの氷びわれて月の夜頃はよく光るなり
白南風 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
あらず、わしが欲する処はの、ゆうにあらず、にあらず、牛豚ぎゅうとん、軍鶏にあらず、鰻にあらず。」
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ッて、今はもう、一あしも進めなくなるのを、やッとのことで、町家の並んだ、夜更けの巷路こうじまで出ると
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
しかも、古びた家のっそりとした中で、そのような物音を聴いたとすれば、誰しも堪えがたい恐怖の念に駆られるのが当然であろう。かえって滝人には、それが残虐な快感をもたらした。
白蟻 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
そのあわいの、おんどりと暗い闇の中にしゃがんでいるのが、顎十郎とひょろ松。
顎十郎捕物帳:14 蕃拉布 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
「命令するのだ! 灯火をつけろ!」ツト一足進んだが、「……年頃闇には慣れておれど久々で見るこの部屋がこう暗くては面白くない。さあすぐに灯火をつけろ!」
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
しばらく顔を見詰め合っている二人を、紙帳は、昼の陽光を浴びて、琥珀こはく色に、明るく、蔽うていた。
血曼陀羅紙帳武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
さるを骨肉こつにくの愛をわすれ給ひ、八五あまさへ八六一院崩御かみがくれ給ひて、八七もがりの宮に肌膚みはだへもいまだえさせたまはぬに、御旗みはたなびかせ弓末ゆずゑふり立て宝祚みくらゐをあらそひ給ふは
思いがけない静かな内省が何処ともなくらけてくるような冷たさを覚えて自分でもあきれるほど妙にしんみりしてしまった。
小さな部屋 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
我が読まんとする書は彼にあり。漠々たる大空は思想のろき歴史の紙に似たり。
一夕観 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
いずれにしろ稚純な心には非情有情の界を越え、の区別をみする単直なものが残っているであろう。
富士 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
可憐かれん新管、せいにしてかつなることを
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「何にも心をかれるものはない、きたい風景さへもない。」などゝ云ひながら——「あゝ、つまらないところだ、俺には故郷などいふものに囚はれる気持は始めからないのだ。」
鶴がゐた家 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
倉庫の打ち開きあり寒雀かんすずめ
六百句 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
この負擔だに我方にあらば、その報酬も受けらるべし。羅馬の裁判所に公平なる沙汰なからんや。かく云ひつゝ、強ひて我をきて戸を出でたるに、こゝには襤褸ぼろ着たるわらべありて、一頭のうさぎうまけり。
胸膈きょうかくを前へ出して、右のひじうしろへ張って、左り手を真直にして、ううんと欠伸のびをするついでに、弓をく真似をして見せる。女はホホホと笑う。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「きつともて、こいづあ大きな蝸牛なめくづらからびだのだな。」
鹿踊りのはじまり (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
かゝなへて、には こゝのには とをかを
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
一一四簀垣すがき朽頽くちくづれたるひまより、をぎすすき高くおひ出でて、朝露うちこぼるるに、袖一一五湿ぢてしぼるばかりなり。壁にはつたくずひかかり、庭はむぐらうづもれて一一六秋ならねども野らなる宿なりけり。
武芸にも心をかれる方ではありませんが、母の形見の振袖を着て、乏しいお小遣で手に入れた、能装束の袴を着け、浅ましい薄化粧までして、妖怪変化の心持で通った私がお気に召して
物の表面だけをみて、その裏にかくれている、ほんとうのすがたを見ないことを、「相の見」と申しますが、それはいまだ、真に「まなこ」の「まなこ」たる所以ゆえんを知らざるものといわねばなりません。
般若心経講義 (新字新仮名) / 高神覚昇(著)
き車で
女王 (新字旧仮名) / 野口雨情(著)
顔の紅味がいつかいてあおくなっていた。
新世帯 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
竜さては狐と共謀して、吾輩われらを食うつもりと合点し、急ぎはしると、きずられた狐は途上の石で微塵みじんに砕けた。
風なくして浪高きこと数丈、常に水上紅光あらわれ日のごとし、舟人あえて近づかず、いわくこれ竜王宮なり、而して西北塞外人跡到らざるの処、不時数千人樹を□木をくの声を聞く
かれ教へしが如して、旦時あしたに見れば、針をつけたるは、戸の鉤穴かぎあなよりき通りて出で、ただのこれる一二は、三勾みわのみなりき。
「その御子を取らむ時に、その母王ははみこをもかそひ取れ。御髮にもあれ、御手にもあれ、取り獲むまにまに、つかみてき出でよ」
蕭々しょうしょう、吹く風はくらい。で、誰ともわからない、そこの十騎ほどの群は、旗を立てて四方を望んでいる。白地の旗には「」の一字が大きく見られた。
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
鬼小島弥太郎が、の旗と、日の旗の二りゅうを高々掲げていると、謙信はまた螺手らしゅの宇野左馬介に命じて
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
業のため、専門の運転手や車掌は居らず、電気局の事務員や、技手、応援の青年団などが、臨時で、代りを勤めていることを知った。
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
「明八月二十三日、午前三時を期して、総業を決行する」ことが、決定された。
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
よ、丕よ。ちょっと、妾のはなしを聞いておくれ。後生、一生のおねがいだから」
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
昔そのからの都の大道を、一時あるとき、その何でござりまして、怪しげな道人が、髪をさばいて、何と、骨だらけなあおい胸を岸破々々がばがばと開けました真中まんなかへ、
朱日記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
今の耳にもかわらずして、すぐ其傍そのそばなる荒屋あばらやすまいぬるが、さても下駄げたと人の気風は一度ゆがみて一代なおらぬもの、何一トつ満足なる者なき中にもさかずきのみ欠かけず
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
惜しい事に真向まむきすわった小野さんには分からない。詩人は感覚美を好む。これほどの肉の上げ具合、これほどの肉の退き具合、これほどの光線に、これほどの色の付き具合は滅多めったに見られない。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ところかぜいた人が常磐津ときはづを語るやうなこゑでオー/\といひますから、なんだかとおもつてそばの人に聞きましたら、れは泣車なきぐるまといつて御車みくるまきしおとだ、とおつしやいましたが、随分ずゐぶん陰気いんきものでございます。
牛車 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
火光閃めき炎々といりて天に映る時
イーリアス:03 イーリアス (旧字旧仮名) / ホーマー(著)
支那しなで昔から行なわれた肉刑にくけいおもなるものとして、けい(はなきる)、(あしきる)、きゅう、の四つがある。
李陵 (新字新仮名) / 中島敦(著)
黄巾こうきん、諸州に蜂起してより、年々の害、鬼畜の毒、惨として蒼生そうせい青田せいでんなし。
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
文壇ぶんだん論陣ろんぢん今やけい亂雜らんざつ小にながれて、あくまでも所信しよしん邁進まいしんするどう々たる論客きやくなきをおもふ時、泡鳴ほうめいさんのさうした追憶ついおくわたしにはふかい懷しさである。
文壇球突物語 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
平次の立つたのは俵屋の母屋おもやの奧、くぼんだやうな建物の袖の下ですが、この邊はよく南陽が當るので、曲者がお百度詣りをしたところで、足跡のつく心配はありません。
銭形平次捕物控:311 鬼女 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
多少人間らしい了簡りょうけんになって、宿の中へ顔を出したばかりであるから、魂がく息につれて、やっと胎内に舞い戻っただけで、まだふわふわしている。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
すこしうつむいた発田の青ぐろい横顔に、夕陽がななめに射していて、発田の頬は玩具の色の反射で緑色に染っていた。
黄色い日日 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
あかるい 外燈なぞは なほの ことだ。
年二十。こう既ニ亡シ。マサニ遺命ヲ奉ジテ遊学セントスルヤ、コレヲ戒メテ曰クワガ門なかゴロ𡉏やぶル。なんじまさニ勉学シテ再興スベシ。然ラザレバワレ汝ヲ子視セジト。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「またあんなこというてだますのや。……千代さんとこのお時さんは、天神さんのおさんになつて、齋世親王ときよしんわうと牛車の中でな、……ほゝゝゝゝ。」と、京子は若い娘のするやうに、しなを作つて
天満宮 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
ばやとおもことひさしけれど、
鬼桃太郎 (旧字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
「結構だ、しかし隊長はもうよそう」来太は吉村家で借りて着た背広の前をろげながらそう云った
花咲かぬリラ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
もしあの時、西八条へ一筋の矢でもいてから法皇が、その軍勢のうしろにおいでになると分ったら、清盛の手は、院中にまでのびて、勢い、法皇のおん身にまで、どんなわざわいを及ぼしたか分らない。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
現在百貨店が配達網を八方にき、また遠方には配給所を設けて、専らその合理化につとめていても、なおその費用の莫大なのに当惑しているときくが、まことにさようであろうと案ぜられる。
すると曹操は、自ら法を出して、自ら之を犯す、何を以て、兵をきいんやと、自分の髪を切って地に置いたという。……重治、これはいつか其方から聞いた話だったな
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ともすぽつんとたつ塔は遠く、風の力は一片の帆におさまる、海は平らかにといしのごとく、旅客の心はしばし鴎にも似る、いつのかかならずやあいたすけるべく、みだりに欧州のことは説うまい。
欧米各国 政教日記 (新字新仮名) / 井上円了(著)
花里さんのくのは瀬川さんたア一緒にならないわ、あんなに血道をあげてる伊之さんてえ情人ひとがあるんだから、海上さんは踏台にされるに違いないのよ
極力噛み付いたので虎大いに驚き吼え走ってその人のがるるを得た、またいわく胡人虎を射るにただ二壮士を以て弓をき両頭より射る、虎を射るに毛に逆らえば入り毛にしたがえば入らず
余所よその子供の世話を焼くひまに、自分のに風邪をかせないように、外国の奴隷に同情をする心で、御自分お使いになる女中をいたわってやって欲しいんですが、これじゃ大掴おおづかみのお話です
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
明神下の畦徑あぜみちを提籃さげた敏雄の手をいて歩いてゐると、お隣の金さん夫婦がよち/\歩む子供を中にして川邊かはべりの往還を通つてゐるのが見えました。
業苦 (旧字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
さりとて無情つれなくなげかへしもせねど、らきてみしやいなじんすけこたへぶりの果敢はかなさに、此度このたびこそとかきたるは、ながひろにあまりおもふでにあふれて、れながらくまでもまよものかと
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
彼は振り返えって言うには「水生シュイションや旦那さまに頭を下げないかい」そこでうしろに身をかくしていた幼子をき出した。
故郷 (新字新仮名) / 魯迅(著)
しかし「さあ、七銭からとお銭、飛んで十と五銭——」とはずんで、り声を立てゝいる酒問屋の息子の手に品物がねられる度びに、本能的に、きらりと光る注意の眼が品物に注がれました。
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
あるいは欧洲において、同志を糾合きゅうごうして、「少年欧羅巴ヨーロッパ」党を組織し、あるいは本国において、蜂起者ほうきしゃを募り、以て恢復の途をらき、その画策かくさくの神秘、大胆、危険、雄放なる
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
かんひがみ、意地、かぬ気、疑惑、あらゆる弱点が、穏かな眼鼻をさんざんにもてあそんだ結果、こうねくれた人相になったのではあるまいかと自分は考えた。
永日小品 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
大王にしては少々言葉がいやしいと思ったが何しろその声の底に犬をもしぐべき力がこもっているので吾輩は少なからず恐れをいだいた。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
河原乞児かはらこじきの尤も幼稚なりし時に、其好趣かうしゆは戦国的の勇壮なるローマンス風のものにて、例せば盗賊を取りて主人公となし、之れに慈憐の志を深うせしめ、きやうしぎ、弱を助くる義気に富ましめ
徳川氏時代の平民的理想 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
メーテルリンクの「沈黙」は何だか怖ろしくて厭やですね、——そんなことを云ひながら、机の上の鏡台をのけて、私は彼女の眉をいた、注意深く。
測量船 (新字旧仮名) / 三好達治(著)
鹿角かづの打ったるかぶとを冠り紺糸縅こんいとおどしよろいを着、十文字のやりっさげて、鹿毛なるこまに打ちまたがり悠々と歩ませるその人こそ甚五衛門殿でございました」
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
小翠は戸を閉めて、また元豊を扮装ふんそうさして項羽こううにしたて、呼韓耶単于こかんやぜんうをこしらえ、自分はきれいな着物を着て美人に扮装して帳下の舞を舞った。またある時は王昭君おうしょうくんに扮装して琵琶をいた。
小翠 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
五三仏菩薩のをしへの広大なるをもしらず、愚かなるまま、五四かだましきままに世を終るものは、其の五五愛慾邪念の五六業障ごふしやうかれて、或は五七もとかたちをあらはしていかりむく
それから一座の友達どもも決してけは取らないで、どっと閧の声を上げて笑い崩れた。
秋の蜻蛉とんぼが盛んに町の空を飛んだ。塩瀬の店では一日の玉高ぎょくだかの計算を終った。後場ごばうにけた。幹部を始め、その他の店員はいずれも帰りを急ぎつつあった。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
すると棕隠は即座に「たる君子と誰か見るべき」とつけたというのである。
故郷七十年 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
それが爲に佛教に反對しいて聖徳太子にも反對する所の儒者でさへも、聖徳太子の作者たるの點に於ては異議が無いので
聖徳太子 (旧字旧仮名) / 内藤湖南(著)
この離座敷へも、午後の春陽は射して来ていて、柱の影を、畳へ長く引いていた。
甲州鎮撫隊 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
其で、この山陰の一つ家に居ても、いき一つもらすのではなかった。の内此処へ送りこまれた時、一人のうばのついて来たことは、知って居た。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
門々かどかどの松は除かれて七八日ななやうかも過ぎぬれど、なほ正月機嫌きげんの失せぬ富山唯継は、今日も明日あすもと行処ゆきどころを求めては、夜をに継ぎて打廻うちめぐるなりけり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
月毛の馬は にむかひ
短歌集 日まはり (旧字旧仮名) / 三好達治(著)
『唐代叢書』五冊に収めた『開元天宝遺事』に、〈楊国忠ようこくちゅう出でて江浙に使し、その妻思念至って深し、荏苒じんぜん疾くなり、たちまち昼夢国忠と○、因って孕むあり、後に男を生みと名づく
次の下婢はしためあはて告げぬ
枯草 (新字旧仮名) / 野口雨情(著)
八重「半治はん誠にほめえはりいよう、ほれじゃアまねえよ、ふァたい此家ほゝているに、ほめえがほんなほとをひてや親分ほやぶんまねえよ、小兼ほはねはんにひまになってへえれってえ、ほれじゃア可愛ははひほうだアへえ」
さおの飛び交うひまに
レモンの花の咲く丘へ (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
竹垣やの尻かわくくりの花 可吟
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
ここを以ちて大殿こぼれて、悉に雨漏れども、かつて修理をさめたまはず、一〇をもちてその漏る雨を受けて、漏らざる處に遷りりましき。後に國中くぬちを見たまへば、國に烟滿ちたり。
すごい、美しいお方のことをおききなすって、これが時々人目にも触れるというので、自然、代官婆の目にもとまっていて、自分の容色きりょうの見劣りがするには、美しさで勝つことはできない
眉かくしの霊 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
まるで胸の中もあがってしまいました、あれの小さい着物を見ては泣き、シャツや靴を見ては泣くのでございます。
『書紀』の一書の素盞嗚尊すさのおのみことの悪業を列挙した条に「春はすなわち渠槽を廃し及び溝を埋めあぜこぼちまた種子を重播す、秋はすなわちくじを挿し馬を伏す、およそこの悪事かつてやすむ時なし」
地名の研究 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
浸してはさらし、晒しては水にでた幾日の後、むしろの上でつちの音高く、こもごも、交々こもごもと叩き柔らげた。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
藻の花のしろきを摘むと山みづに文がらぢぬうすものの袖
みだれ髪 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
「今までにない尺二寸の大玉へ、色も、今までに誰も出したことのない、赤と紫の火光を仕込んで、三河の者を、驚かしてやるんだといって、それはもう、お気の毒なくらい懸命になっております」
銀河まつり (新字新仮名) / 吉川英治(著)
各自めいめいに出されてある火桶に、炭火は充分にいけられていたが、広い部屋は、それだけでは暖まらないのであろう。
血曼陀羅紙帳武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「ああで風だ。今度はすっかりやらへる。一郎。ぬれる、入れ。」
風野又三郎 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
二、三秒、暗黒に慣れた瞳がくらんだ。やがてのこと、青白い耀ひかりに照らし出された井戸の底に、水はなくてもが燃え、人の形のかすかに動いているのが、八丁堀三人の視線を捉えた。
そこへうずくまって、カチカチとを切りはじめました。
大菩薩峠:15 慢心和尚の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
しかしあの時分はそうでなかった。不孝の子であるように言われてみるとどくそれが気にかかる。
酒中日記 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
平田は上をき眼をねむり、後眥めじりからは涙が頬へすじき、下唇したくちびるは噛まれ、上唇はふるえて、帯を引くだけの勇気もないのである。
今戸心中 (新字新仮名) / 広津柳浪(著)
林氣𤸇りう多く、木氣多く、岸下の氣しゆ多く、石氣力多く、嶮岨の氣えい多く、谷氣多く、丘氣狂多く、陵氣たん多く、衍氣仁多く、暑氣えう多く、寒氣壽多くなどと説いて居る。
努力論 (旧字旧仮名) / 幸田露伴(著)
馬の背のような尾根をた上りに登って行く、登るに随うて大樹が次第に稀疎となって、熊笹がだんだん勢をたくましゅうして来る、案内の人夫連は間断なく熊笹や灌木を切り明けて進む
平ヶ岳登攀記 (新字新仮名) / 高頭仁兵衛(著)
でも食卓の周囲なぞは楽しくした方で、よくその食堂のすみのところに珈琲をく道具を持出して、自分でったやつをガリガリと研いたものだ。
刺繍 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
もっとも、大門通りは名のごとく万治の昔、新吉原へくるわけない前の、遊女町への道筋の名であるゆえか、大伝馬町、油町、田所町、長谷川町、富沢町と横筋にも大問屋を持つ五
それハ三日路も外遠き所に居候より其まゝニおき候所、ふと蔵ハ外の用事ニて私しのやどへまいり、たがいに手うち候て、天なる哉/\、きみよふ奇妙/\と笑申候。
どこをどのように歩いたものか、ほのぼのと四辺が明るいのでハッと驚いて前方を見ると、何んということだ、眼の前に土人部落の例の広場がに照らされて拡がっている。
沙漠の古都 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
その顔は死相と紙一の白さだ。生き物の必死がしめす或る凄気せいきさえおびている。
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その列国を往来するや、駒をき鷹をし、従者おおかた一百人、まことに堂々たるものであり、その権式に至っては武将大名と等しかった。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
所謂流言言は、横浜の山口正憲と云う壮士が云い始めた由。されど、その流言を信じるあれだけの暗示、先入主が、市民、国民にあったことの悲しむべき恐るべきことは、誰も強調するものはない。
支那やインドで竜王を拝して雨を乞うたはおもにこれに因ったので、それよりいて諸般の天象を竜の所為しわざとしたのは、例せば『武江年表』に、元文二年四月二十五日外山とやまの辺より竜出て
行参軍将軍 杜義とぎ
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
するとたちまち、あたりは暗くなり、雲のごとき気流のうちから、数千の豼貅ひきゅう(大昔、中国で飼い馴らして戦場で使ったという猛獣のこと、おすきゅうめす
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
生れてなりしかば、にくむ者チムールレンク(Timurlenk)と呼ぶ。レンクはの義の波斯ペルシヤ語なり。タメルランの称これによって起る。人となり雄毅ゆうき、兵を用いまつりごとすをくす。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
車を宙にくごとし。
雪柳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
あいちやんは其處そこ彼等かれらまはるのをて、偶々たま/\自分じぶん以前まへしうに、數多あまた金魚鉢きんぎよばちくりかへしたときざまおもおこしました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
けいを衞に撃つ、を荷いて孔子の門を過ぐる者あり。曰く、心あるかな磬を撃つやと。既にして曰く、なるかな硜硜乎こうこうこ硜たり。己を知るなくんば、斯れ已まんのみ。
論語物語 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
不純酸化コバルトを王水アクア・リージアに浸し、その四倍の重量の水に薄めたものが、ときどき用いられる。すると緑色が出る。コバルトの(11)を粗製硝酸に溶かしたものだと、赤色が出る。
黄金虫 (新字新仮名) / エドガー・アラン・ポー(著)
「やよ、各〻、踊りじゃ。——藤次どの、唄たのむ」
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
内に眠っている事業に圧迫せられるような心持である。潜勢力の苦痛である。三国時代の英雄はに肉を生じたのを見てたんじた。
かのように (新字新仮名) / 森鴎外(著)
「噂ほどのものはありゃしない。𨫤のうちなんて、てんで見えやしねえ」と萩野は、濡れた草履を叢にバタバタさせながら言った。
恨なき殺人 (新字新仮名) / 宮島資夫(著)