“灯火”のいろいろな読み方と例文
旧字:燈火
読み方割合
ともしび46.1%
あかり42.8%
とうか3.9%
ともし2.0%
1.3%
あかし1.3%
ひかり1.3%
とうくわ0.7%
とぼしび0.7%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
見渡す限りはるばるとした平原の彼方に三つ四つ点々と瞬いてゐる村里の灯火ともしびの中に、やがて彼等の羽ばたきは消へ込んでしまつた。
バラルダ物語 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
だがもうそれは八時すぎ、丁度番組の第一の「秋のかなしみ」の切れたところで、場内の灯火あかりのいろがなぜか暗く疲れ切つた感じでした。
井上正夫におくる手紙 (新字旧仮名) / 久保田万太郎(著)
訓練された七名の警官は、まるで霧のように静かにすべりこみました。階下の廊下はあわ灯火とうかの光に夢のように照らし出されています。
崩れる鬼影 (新字新仮名) / 海野十三(著)
彼は、毎日のように、近所の海角うみかどに出て、鰤を釣った。彼は、その魚から油を取って、灯火ともしの油にしようと考えたのである。
俊寛 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
……暗夜に露地を歩く者は、家の雨戸の隙間から、一筋洩れる灯火の光、そういうわずかな光明ひかりにさえ、うんと喜悦よろこびを感ずるものだ。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
小机のまわりの歌書やら、硯などを片づけて、かれは、宵の灯火あかしとすべき、松の木を細かに小刀で割り始めた。
赤黒い灯火ひかりを宿させて、間柄助次郎の手にあまったら、ほんとうに、即座に斬り伏せようという気勢——もはや、もてあそあざけって悪謔あくぎゃくをほしいままにしようなぞという、いたずら気は毛頭なかった。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
灯火とうくわのつきはじめるころ、銀座尾張町の四辻で電車をおりると、夕方の澄みわたつた空は、真直な広い道路に遮られるものがないので、時々まんまるな月が見渡す建物の上に、少し黄ばんだ色をして
町中の月 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
日の暮を悲しむ心は後悔と絶望のおもいに似通っている。すっかり暮れ果ててしまった後、月の光、もしくは灯火とぼしびのもとに、どうやら落ちつく心持は「あきらめ」の静けさに似通っている。
冬日の窓 (新字新仮名) / 永井荷風(著)