)” の例文
元来ぴしゃんこな鼻だったら缺けていてもそう可笑おかしくはないが、中高なかだかな、いでた容貌、———当然中央に彫刻的な隆起物がそびえているべき顔が
彼は機智きちがあるというよりも滑稽にいで、にぎやかで快活というよりはのんびりと上機嫌であり、気むずかしく陰気というよりは物思わしげで憂鬱ゆううつである。
一芸一能あるものは手につばして立つべきとき、おこがましくはござりますが、このそれがしも弓馬の道、刀槍の術には一通りいで、他人に劣るとも存じませぬが、この上さらに忍術を学び
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
客は二十歳はたちをようよう一つか二つぐらい越えたらしい若侍であった。色の浅黒い、一文字の眉のいでているのがお染の眼についた。彼は多くしゃべらないで、黙って酒を飲んでいた。
鳥辺山心中 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
今日『日本人』三十一号を読みて君が書牘体しょとくたいの一文を拝見致し甚だ感心いたし候。立論も面白く行文はでて美しく見受申候。この道に従って御進みあらば君は明治の文章家なるべし。
漱石氏と私 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)