“薄”のいろいろな読み方と例文
読み方割合
うす39.2%
すすき29.7%
うっす9.1%
すゝき5.8%
うつす3.2%
うっ3.0%
2.6%
せま2.6%
うつ0.9%
うすっ0.6%
はく0.6%
うッす0.4%
0.4%
スヽキ0.4%
かろ0.2%
うすき0.2%
うすく0.2%
つま0.2%
ぼんや0.2%
セマ0.2%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
そらくもくした! うすかげうへを、うみうへう、たちままたあかるくなる、此時このときぼくけつして自分じぶん不幸ふしあはせをとことはおもはなかつた。
湯ヶ原より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
汽車に連るる、野も、畑も、はたすすきも、薄にまじわくれないの木の葉も、紫めた野末の霧も、霧をいた山々も、皆く人の背景であった。
革鞄の怪 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
外はクワッと目映まぶしいほどよい天気だが、日蔭になった町の向うのひさしには、霜がうっすりと白く置いて、身が引緊るような秋の朝だ。
世間師 (新字新仮名) / 小栗風葉(著)
その岸には水車が幾個となく懸つて居て、春は躑躅つゝじ、夏はの花、秋はすゝきとその風情ふぜいに富んで居ることは画にも見ぬところであるさうな。
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
浴室よくしつまどからもこれえて、うつすりと湯氣ゆげすかすと、ほかの土地とちにはあまりあるまい、海市かいしたいする、山谷さんこく蜃氣樓しんきろうつた風情ふぜいがある。
飯坂ゆき (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
彼女は身をかがめて、手でさわってみてそれと悟った。細かな灰がうっすらと、二、三メートルの間廊下じゅうにまいてあった。
お浜の住み家であるトタンぶきのあばら屋から、辺りをうかがうようにして、一人の男が戸外のやみのなかに出てきたのである。
南方郵信 (新字新仮名) / 中村地平(著)
保さんと游さんと墨汁師とである。そして游さんは湮滅いんめつの期にせまっていた墓誌銘の幾句を、図らずも救抜してくれたのである。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
さう言つて目賀田は蝙蝠傘かうもりがさを多吉に渡し、痛い物でも踏むやうな腰付をして、二三間離れた橋の袂の藪陰につくばつた。禿げた頭だけがうつすりと見えた。
(新字旧仮名) / 石川啄木(著)
婆芸者が土色したうすっぺらな唇をじ曲げてチュウッチュウッと音高く虫歯を吸う。請負師が大叭おおあくびの後でウーイと一ツおくびをする。
深川の唄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
なれたる人はこれをはきてけものを追ふ也。右の外、男女の雪帽子ばうし下駄げた其余そのよ種々雪中歩用ほようあれども、はく雪の国に用ふる物にたるはこゝにはぶく。
今日は風呂日だから、帰ってから湯へ入ったと見えて、目立たぬ程にうッすりと化粧けわっている。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
この薄暮というのは暮れにまる事、また肉薄というのは人々互に押し合いし合い丁度今日電車に乗り込む時の様に相まる事で、ススキの場合もそれと全く同意味である。
植物記 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
合点の行かなかつた子供の時に「スヽキを積んだあるさかいや」と事も無げに、祖母が解説してくれたのを不得心であつた為か、未だに記憶してゐる。
稲むらの蔭にて (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
六五ことわらせ給ふは、もはら金の徳をかろしめ、富貴の大業たいげふなる事をしらざるを罪とし給ふなるが、かの六六紙魚しぎよがいふ所もゆゑなきにあらず。
地寒ちかんのよわきとつよきとによりてこほりあつきうすきとのごとし。天に温冷熱をんれいねつの三さいあるは、人のはだへあたゝかにくひやゝ臓腑ざうふねつするとおな道理だうり也。気中きちゆう万物ばんぶつ生育せいいくこと/″\く天地の気格きかくしたがふゆゑ也。
婦人若し智なくして是を信じては必ずうらみ出来易し。元来もとより夫の家は皆他人なれば、うらみそむき恩愛を捨る事易し。かまえて下女のことばを信じて大切なるしゅうとしゅうとめ姨のしたしみうすくすべからず。
女大学評論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
焦茶地の縞羅紗しまらしや二重外套にじゆうまわしいつの冬が不用をや譲られけん、尋常なみなみよりは寸のつまりたるを、身材みのたけの人より豊なるにまとひたれば、例の袴は風にや吹断ふきちぎれんとあやふくもひらめきつつ
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
彼は音のした方へ馳寄ると、ぼんやりとした夜霧の中を走ってゆくエリスの後姿が影絵のように見えた。
P丘の殺人事件 (新字新仮名) / 松本泰(著)
歩みを止めると、急に恐しい静けさが身にセマつて来る。彼は耳もと迄来てゐる凄い沈黙から脱け出ようと唯むやみに音立てゝ笹の中をあるく。
身毒丸 (新字旧仮名) / 折口信夫(著)