“うつ”のいろいろな漢字の書き方と例文
カタカナ:ウツ
語句割合
映28.2%
移12.5%
遷9.6%
空4.9%
鬱4.4%
写3.3%
現3.1%
美2.9%
洞2.9%
撮2.7%
俯2.6%
虚2.4%
伝染2.3%
徙1.5%
寫1.4%
打1.2%
欝1.1%
憑0.7%
宇津0.6%
感染0.6%
模0.6%
傳染0.5%
薄0.4%
覆0.3%
暎0.3%
転0.3%
拍0.3%
反映0.3%
影0.3%
描0.3%
浮0.3%
痴0.3%
移転0.3%
討0.2%
宇都0.2%
摸0.2%
俛0.2%
呆0.2%
売0.2%
徒0.2%
染0.2%
相応0.2%
移動0.2%
移轉0.2%
訴0.2%
還0.2%
飜0.2%
麗0.2%
點0.2%
賣0.1%
顕0.1%
白痴0.1%
適0.1%
伝0.1%
内海0.1%
分0.1%
印0.1%
愚0.1%
愬0.1%
推移0.1%
搬0.1%
撮影0.1%
映像0.1%
映射0.1%
棄0.1%
模彩0.1%
歌0.1%
瀉0.1%
灯0.1%
点0.1%
照0.1%
癡0.1%
移植0.1%
移牒0.1%
組0.1%
翻0.1%
肖0.1%
臨摹0.1%
蔚0.1%
蘸0.1%
虚茫0.1%
調和0.1%
謄写0.1%
貌0.1%
轉0.1%
迂0.1%
遷座0.1%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
はっと、視覚から脳へそれが直感する一秒間の何分の一かわからない一瞬に、すでに眼に映(うつ)る二人の位置と姿勢はまるで変っている。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と眞紅(しんく)へ、ほんのりと霞(かすみ)をかけて、新(あたら)しい火(ひ)の𤏋(ぱつ)と移(うつ)る、棟瓦(むねがはら)が夕舂日(ゆふづくひ)を噛(か)んだ状(さま)なる瓦斯暖爐(がすだんろ)の前(まへ)へ、長椅子(ながいす)を斜(なゝめ)に、ト裳(もすそ)を床(ゆか)。
印度更紗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
乃(すなわ)ち曹国公(そうこくこう)李景隆(りけいりゅう)に命じ、兵を調して猝(にわか)に河南に至り、周王橚(しゅく)及び其(そ)の世子(せいし)妃嬪(ひひん)を執(とら)え、爵を削りて庶人(しょじん)となし、之(これ)を雲南(うんなん)に遷(うつ)しぬ。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「なーんだ」わたしは出し抜かれたやうな空(うつ)ろな気になつた。わたしは腕組をして、四畳半をたゞうろついた。帽子をかぶつて外に出た。
愚かな父 (新字旧仮名) / 犬養健(著)
「いや、許田の御猟は、近来のご盛事じゃったな。臣下のわれわれも、久しぶり山野に鬱(うつ)を散じて、まことに、愉快な日であった」
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それだから、彼等にとって生徒はまことに有難いものに写(うつ)るので「生徒さん」と云う名をつけて必(ママ)して呼びずてにする事はしなかった。
農村 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
九人は、完全に現(うつ)し世(よ)の庶民の心に、なり還(かえ)って居た。山の上は、昔語りするには、あまり寂しいことを忘れて居たのである。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
彼(かれ)の眼(め)に映じた女の姿勢は、自然の経過を、尤も美(うつ)くしい刹那に、捕虜(とりこ)にして動けなくした様である。変(かは)らない所に、永(なが)い慰藉がある。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
……ハートをダイヤだと言い、勘定を間違え、札を取り落し、はては物に怯(おび)えたような洞(うつ)ろな笑い声を立てて、皆の顔を見廻す。
グーセフ (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
源氏の藤の裏葉を七枚程書いた処(ところ)へ、画報社から写真を撮(うつ)しに来た。七瀬と八峰が厭がつたから私と麟(りん)とだけで撮つて貰つた。
六日間:(日記) (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
彼は口腔内にも光があるのを確かめてから、死体を俯(うつ)向けて、背に現われている鮮紅色の屍斑を目がけ、グサリと小刀(ナイフ)の刃を入れた。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
……なんの色もない、虚(うつ)ろな眼であった。彼はまじまじと月心尼の顔を見戍(みまも)っていたが、やがて寂しそうに首を振りながら云った。
春いくたび (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「ああそうか、なるほどなるほど、いかにもそうでしたね、……そりゃ叔父さんのクセが伝染(うつ)って六ヶ敷しく考えすぎたかナ……」
白金神経の少女 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
虚栄の念また盛んで馬具で美麗を誇る、故にスペインで不従順な馬を懲らすに荘厳なる頭飾と鈴を取り上げ他の馬に徙(うつ)し付けると。
彼女は優(やさ)しい聲音(こわね)で僕に語る——あなたが實に巧(うま)く寫(うつ)しとつたあの眼で凝と僕を見下して——その珊瑚(さんご)のやうな唇で、僕に微笑(ほゝゑ)みかける。
家主(あるじ)壮夫(わかもの)三五人を伴(ともな)ひ来りて光る物を打(うつ)に石なり、皆もつて怪(くわい)とし石を竹林に捨つ、その石夜毎(よごと)に光りあり、村人おそれて夜行ものなし。
ただの町獣医(まちじゅうい)の妻(つま)では親類(しんるい)に会(あ)わせる顔もないと思うから、どう考えてもあきらめられない。それであけても暮(く)れても欝(うつ)うつたのしまない。
老獣医 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
宮は慄然(りつぜん)として振仰ぎしが、荒尾の鋭き眥(まなじり)は貫一が怨(うらみ)も憑(うつ)りたりやと、その見る前に身の措所無(おきどころな)く打竦(うちすく)みたり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
やがて、小夜の中山、宇津(うつ)の山を越えたとき、遠くに雪を頂いた山が見えた。名を尋ねると甲斐(かい)の白根(しらね)というのであった。
「波岡家では、町方の手先や御用聞は、門の中へ入れると、不浄が感染(うつ)ると言ったじゃないか」
丹泉はしきりに称讃して其鼎をためつすがめつ熟視し、手をもつて大さを度(はか)つたり、ふところ紙に鼎の紋様を模(うつ)したりして、斯様いふ奇品に面した眼福を喜び謝したりして帰つた。
骨董 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
「レコが入つてたんやろ。……あの人も雪隱で拍手を叩くなんて、少し傳染(うつ)つて來たかなア、おきちが。」と千代松は微笑(ほゝゑ)んだ。
天満宮 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
唇から付いたんなら、もう少し薄(うつ)すり付きますが、筒の口は紅が笹色(さゝいろ)になつてゐるほど付いてるでせう。それは、紅皿から指で筒の口へ捺(なす)つたものに相違ありません
映すことの構造はうつすが示すように移(うつ)す、映(うつ)す、覆(うつ)すなどの等値的射影を意味している。
うつす (新字新仮名) / 中井正一(著)
見るに足らぬとそちで思わば汝(おのれ)が手筋も知れてある、大方高の知れた塔建たぬ前から眼に暎(うつ)って気の毒ながら批難(なん)もある、もう堪忍の緒も断(き)れたり
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
朕(わ)が一二二けんぞくのなすところ、人の福(さいはひ)を見ては転(うつ)して禍(わざはひ)とし、世の治(をさま)るを見ては乱(みだれ)を発(おこ)さしむ。
拍(うつ)て仰の通り少しも違はず何でも物ごとは話して見なば譯(わか)らぬものなり貴君樣に此お話しをせずば大切の品を何時(いつ)までも預(あづか)り居るか知れざりしに今日元の主へ返へすべき便(たよ)りを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
時折その信心が迷信に陥(おちい)っている場合もあるでしょうが、信心は人間を真面目にさせます。このことが作る品物にも反映(うつ)ってくるのだと思われます。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
そういう英雄豪傑の写真に交って、ぽん太の写真が三、四種類あり、洗い髪で指を頬(ほお)のところに当てたのもあれば、桃割に結ったのもあり、口紅の濃く影(うつ)っているのもあった。
三筋町界隈 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
内容には色々な世相を描(うつ)してゐるが、秀れたものは、矢張り恋愛と戦争を書いたものに多かつた。
浮(うつ)かりして居ればおとなまでが、汚ないつらしてやがるといふ言葉を叩きつけて行く、めたん子の遊ぶ時間はどれだけたつぷりあつても、何處も行き停まりであつて
めたん子伝 (旧字旧仮名) / 室生犀星(著)
わざわざ御自身でおいでくだされて、あの痴(うつ)け者を婿養子(むこようし)にとのお言葉さえあるに、恐れ入ったただいまの御仕儀(ごしぎ)。これが尋常(よのつね)の兄じゃ弟じゃならば、当方は蔵前取りで貴殿は地方(じがた)だ。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
善は急げと、其日すぐお由の家に移転(うつ)つた。重兵衛の後に跟(つ)いて怖々(おづおづ)入つて来る松太郎を見ると、生柴(なましば)を大炉(おほろ)に折(をり)燻(く)べてフウフウ吹いてゐたお由は、突然(いきなり)
赤痢 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
登時(そのとき)大岡忠相ぬし再度(ふたゝび)元益に向ひて云やう其方親子(おやこ)は庄兵衞の殺されたるより其の敵(かたき)を討(うつ)て呉(くれ)よと願ひ出たるをり武左衞門親子(おやこ)の者は正(まさ)しく庄兵衞を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
籠(こめ)し櫻山巡(めぐ)る麓(ふもと)に風薫(かほ)る時は卯月(うづき)の末の空花の藤枝(ふぢえだ)はや過て岡部に續く宇都(うつ)の山蔦(つた)の細道十團子(とほだんご)夢か現(うつゝ)にも人にも遇(あは)ぬ宇都の谷と彼の能因(のういん)が昔を今に振(ふり)も變らぬ梅若葉鞠子(まりこ)の宿を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
さてそのついでに調べると、小栗の譚は日本の史実を本としたものの、西暦二世紀に、チミジア国(今のアルゼリア)の人アプレイウスが書いた、『金驢篇(デ・アシノアウレオ)』の処々を摸(うつ)し入れた跡が少なくない。
葉子は顔を紅(あか)くして、俛(うつ)むいていた。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
呆(うつ)けしさまにたてる時。
泣菫詩抄 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
詮方(せうこと)なしに煙草の会社へ通つて居た十一になる娘を芳原(よしはら)へ十両で売(うつ)て、其(それ)も手数の何のツて途中へ消えて、手に入つたのは僅(たつ)たお前、六両ぢやねいか、焼石に水どころの話ぢやねエ
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
私はもと甘家の弟さんと許婚(いいなずけ)になっていたものですが、家が貧しくって、遠くへ徒(うつ)ったものですから、とうとう音信がなくなりました、それが今度帰って聞きますと、甘の方では
阿英 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
なぜ同行の大使館員二人には染(うつ)らないのでしょう! これでは殿下は死んでも死に切れません! いいや殿下は我慢なさっても我々印度人にはもう我慢がならないのです
ナリン殿下への回想 (新字新仮名) / 橘外男(著)
柘榴(ざくろ)の花は、薔薇よりも派手にかつ重苦しく見えた。緑の間にちらりちらりと光って見える位、強い色を出していた。従ってこれも代助の今の気分には相応(うつ)らなかった。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
紙帳の天井に、楓の葉のような影が二個映ってい、それが、ひそかな音を立てて、あちこちへ移動(うつ)っていた。小鳥の脚の影らしい。また二個数が増した。もう一羽、紙帳へ停まったらしい。
血曼陀羅紙帳武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
善は急げと、其日すぐお由の家に移轉(うつ)つた。重兵衞の後に跟(つ)いて怖々(おづ/\)と入つて來る松太郎を見ると、生柴を大爐に折燻べてフウ/\吹いてゐたお由は、突然
赤痢 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
呼(よび)出されしに女房が亂心(らんしん)なし奉行所へ召連訴(うつ)たへと成(なし)しを少(すこ)しも知らねば如何なる筋(すぢ)のお尋かと心に不審く引出されしが其時大岡殿庄兵衞を見られ其方は何時(なんどき)改名(かいめい)せしぞ其方の名を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
皇居を京都から東京に還(うつ)し、そこに新しい都を打ち建てよとの声が、それだ。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
従つて、傍丘を或はもとほりの丘辺など言ふ語で飜(うつ)すことはいけないので、地名にあるものは、但(ただし)此とは別である。かういふ言葉が文献時代になつても、散列層のやうに介(はさま)つて残つて居るのである。
愚かしく、麗(うつ)くしく
海豹と雲 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
お京は家に入るより洋燈(らんぷ)に火を點(うつ)して、火鉢を掻きおこし、吉ちやんやお焙(あた)りよと聲をかけるに己れは厭やだと言つて柱際に立つて居るを
わかれ道 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
立通(たてとほ)し指替(さしかへ)の大小并びに具足迄省愼置(たしなみおか)るゝ程の氣質(きしつ)にては勿々(なか/\)此金子を受取ざるも道理(もつとも)なり併(しか)しながら某しも一人の娘(むすめ)を賣(うつ)て昔しの恩を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
原田は白眼付(にらめつけ)那(あ)の爰(こゝ)な横着(わうちやく)ものめ定めし汝は脇差ばかりでは有(ある)まじ外々の品も盜(ぬす)み取て賣(うつ)たで有(あら)うと問詰ければ外(ほか)に二本の脇差は騷(さわ)ぎの中(うち)故(ゆゑ)火中へ入て御座りしを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
なお、「春の日のうらがなしきにおくれゐて君に恋ひつつ顕(うつ)しけめやも」(巻十五・三七五二)という、狭野茅上娘子(さぬのちがみのおとめ)の歌は全くこの歌の模倣である。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
「春の日のうらがなしきにおくれゐて君に恋ひつつ顕(うつ)しけめやも」(巻十五・三七五二)は狭野茅上娘子(さぬのちがみのおとめ)の歌だから、やはり同じ傾向の範囲と看ることが出来
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
それを再び使者をもって我らに強制なされようとはいよいよもって白痴(うつ)けな振る舞い。ただただ呆れるばかりでござる。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
返答を聞きたいと云われるなら甚五衛門しかと申し上げるによって、忘れずに殿に申し伝えられい——我らが主人義明公は、本来馬鹿者ではござらぬが魔性の女に魅入られて近来白痴(うつ)けになり申した。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
それが自分に適(うつ)ろうがうつるまいが、そんなことは一切合財考えなしで随分可笑(おか)しな不調和な扮装(つくり)をしている人が沢山あるようです。
好きな髷のことなど (新字新仮名) / 上村松園(著)
何とかして自分にあうもの、適(うつ)る形などについて、婦人がそれぞれに自分で考えるようなことになってほしい気がします。
好きな髷のことなど (新字新仮名) / 上村松園(著)
妙子さんのが伝(うつ)ったとは決して仰有らない。唯清之介さんが流感に罹った、と全く別口に扱っている。母親は殊に身贔屓(みびいき)が強く
女婿 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
お勢は返答をせず、只何か口疾(くちばや)に囁(ささや)いた様子で、忍音(しのびね)に笑う声が漏れて聞えると、お鍋の調子外(はずれ)の声で「ほんとに内海(うつ)……」「しッ!……まだ其所(そこ)に」と小声ながら聞取れるほどに「居るんだよ」。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
分(うつ)し願は輕羅(うすもの)と成て君が細腰(こし)にまつはりたしなどと凝塊(こりかたま)り養父五兵衞が病氣にて見世へ出(いで)ぬを幸ひに若い者等を欺(だま)しては日毎(ひごと)夜毎に通ひ詰(つめ)邂逅(たまさか)宅(うち)に寢(ねる)夜(よ)には外を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
葡萄の蔓は高く這ひのぼりて、林の木々にさへ纏ひたり。彼方の山腹の尖りたるところにネミの市あり。其影は湖の底に印(うつ)りたり。我等は花を採り、梢を折りて、且行き且編みたり。
あな愚(うつ)け此櫛こそは
晶子詩篇全集拾遺 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
芝居は眼に愬(うつ)たへる方が主で、耳に愬たへる方が従であるといふやうに解釈するものがあるとすれば、それはあまり芝居の歴史に疎(うと)すぎます。
演劇漫話 (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
ただ闇雲(やみくも)に、外面如菩薩(げめんにょぼさつ)の、噉肉外道(たんにくげどう)の、自力絶対のと、社会(よのなか)が変っても、人心や生活(くらし)の様式(ありさま)が推移(うつ)っても、後生大事に旧学に齧(かじ)りついているのは、俗にいう、馬鹿の一つ覚えと申すもので……。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
逐清搬楸枰 清を逐うて楸枰を搬(うつ)す。
閉戸閑詠 (新字旧仮名) / 河上肇(著)
または写真機を出して撮影(うつ)して行くものなぞいろいろありまして、中には何やらお話をしかけるものもあります。
オシャベリ姫 (新字新仮名) / 夢野久作、かぐつちみどり(著)
珍(めづ)らなる月の世界の鳥獣(とりけもの)映像(うつ)すと聞けり。
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
その水の光は、足許(あしもと)の地(つち)に影を映射(うつ)して、羽織の栗梅(くりうめ)が明(あかる)く澄み、袖の飛模様も千鳥に見える。
古狢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「年長く病みし渡れば、月累(かさ)ね憂ひ吟(さまよ)ひ、ことごとは死ななと思へど、五月蠅(さばへ)なす騒ぐ児等を、棄(うつ)てては死(しに)は知らず、見つつあれば心は燃えぬ」
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
さてこれに、血竭二羅度(らど)、焼酎十六度よりなる越幾斯(エキス)にて、雲様の斑点(とらふ)を模彩(うつ)す。かつ、あらかじめ原色料(くすり)をよく乾かすよう注意(きをつけ)、清澄たる洋漆を全面(そうたい)へ浴(あ)びせるべし。
元禄十三年 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「褌橋が落ちた。と歌(うつ)ったものです」で、みんなが笑い出した。今のは鉄橋。
木曾川 (新字新仮名) / 北原白秋(著)
御存じだと思うが、仏教の方で瀉瓶(しゃへい)と云う言葉がある。瓶(かめ)の水を瀉(うつ)し更(か)えるように、すっかり伝えてしまうことである。貴殿に対する拙者の人相教授も瀉瓶だった。
奉行と人相学 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
野に火が上り、海に浮び、河に灯(うつ)る。おびただしい火の大群である。
お京は家に入るより洋燈(らんぷ)に火を点(うつ)して、火鉢を掻(か)きおこし、吉ちやんやお焙(あた)りよと声をかけるに己れは厭やだと言つて柱際(きは)に立つてゐるを
わかれ道 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
山門の前五六間の所には、大きな赤松があって、その幹が斜(なな)めに山門の甍(いらか)を隠して、遠い青空まで伸(の)びている。松の緑と朱塗(しゅぬり)の門が互いに照(うつ)り合ってみごとに見える。その上松の位地が好い。
夢十夜 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
癡(うつ)け果(は)てじと投げぬれば
騎士と姫 (新字旧仮名) / 末吉安持(著)
気難(きむづ)かしきこの家(や)の主人(あるじ)むづかしき顔しつつさくら移植(うつ)させて居(を)り
桜 (新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
「ほウ、水上署から、水産局の監視船へ、事件が移牒(うつ)されたってわけだね?」
動かぬ鯨群 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
漣(さゞなみ)組(うつ)たる連着懸(れんぢやくがけ)
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
日本の国語に翻(うつ)し後(あと)づけて行った詩のことばことばが、らんぼおやぼおどれいるや、そう言った人の育って来、又人々の特殊化して行ったそれぞれの国語の陰影を吸収して行かないのである。
詩語としての日本語 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
どど一(いつ)か端唄(はうた)なら、文句だけは存じておりますが、といって笑顔になって、それはお花見の船でなくッては肖(うつ)りません。
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
京都に今歳(ことし)八十幾つかになる老人(としより)で、指頭画(しとうぐわ)の達者な爺さんがある。古い支那画(しなゑ)などを指頭(ゆびさき)で臨摹(うつ)すが、なか/\上手だ。夏目漱石氏が先年京都に遊びに来てからは
蔚(うつ)州の城内に寺があって、その寺内に鉄塔神(てつとうじん)というのが祭られているが、その神霊赫灼(かくしゃく)たるものとして土地の人びとにも甚だ尊崇されていた。
山吹はその清流に影を蘸(うつ)して咲いているのである。
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
「めっきり記憶がなくなってしまった。俺の頭はどうかしている。いやいや頭ばかりではない、身体全体がどうかしている。精力がない! 虚茫(うつ)けてしまった。……はっきり覚えていることといえば、その時の痙攣(しびれ)一つだけだ」
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
それでも体格は立派であり、よく洋装が調和(うつ)って見えました。
用いてそのまゝに謄写(うつ)しとりて草紙(そうし)となしたるを見侍(みはべ)るに通篇(つうへん)俚言(りげん)俗語(ぞくご)の語(ことば)のみを
怪談牡丹灯籠:01 序 (新字新仮名) / 坪内逍遥(著)
毗廬遮那如来、北方不空成就如来、西方無量寿仏、十万世界一切の諸仏、各々本尊を貌(うつ)して、光焔を発し、一切罪を焚焼して、幼君の息災を垂れ給え
南国太平記 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
徳川さんは、紺のレインハットに、ゲートルに地下足袋のいでたちで、私の乘つてゐた座席へ轉(うつ)り、雨の中を私達の乘つて來た機關車は小板谷へ登つて行つた。
屋久島紀行 (旧字旧仮名) / 林芙美子(著)
此奴(こいつ)は迂(うつ)かり京都(きやうと)まで往(い)つて、萬一(ひよつと)宿(やど)がないと困ると思ひまして、京都(きやうと)の三条(でう)白河橋(しらかはばし)に懇意(こんい)な者(もの)がございますから、其人(そのひと)の処(ところ)へ郵便を出して、私(わたし)が参(まゐ)るから何(ど)うか泊(と)めて下(くだ)さいと申(まう)して遣(や)りますると
牛車 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
躄車(くるま)などに乗せてやりましては、世間への見場悪く、……いっそ、道了様を屋敷内へお遷座(うつ)ししたらと……庭師に云い付け、同じ形を作らせましたところ、虚妄(うつろごころ)の父、それを同じ道了様と思い
血曼陀羅紙帳武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)