“うつろ”のいろいろな漢字の書き方と例文
カタカナ:ウツロ
語句割合
空虚34.3%
空洞33.9%
11.6%
9.0%
6.9%
0.9%
虚洞0.9%
0.4%
洞穴0.4%
中虚0.4%
0.4%
洞窟0.4%
0.4%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
主人八郎兵衛と番頭、度を失って挨拶も忘れたものか、蒼褪あおざめた顔色も空虚うつろに端近の唐金から手焙てあぶりを心もち押し出したばかり——。
そのまぼろしの影がだんだんに薄れてゆくと共に、かれの魂もだんだんに消えて、自分のからだが空洞うつろになってゆくかとも思われた。
小坂部姫 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
その瞬間、彼らの前面は、心に何のまとまりもないうつろになっていた。そして不気味な絶叫の聞えた土間の入口にばかり気をられていた。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
さもなかつたら、木魂姫がてゐる其の洞穴が裂くる程に、また、あの姫のうつろな声がわしの声よりも嗄るゝ程に、ロミオ/\と呼ばうものを。
文章その他 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
又その根の半分枯れたところにうつろがあって、深さ六、七寸、それが怪物の口であろう。ゆうべの灰と火がまだ消えもせずに残っていた。
下なるはいよいよ細りていつしか影も残らず消ゆれば、残れる一片ひとつはさらに灰色にうつろいて朦乎ぼいやりと空にさまよいしが
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
今日やうやく一月のなかばを過ぎぬるに、梅林ばいりんの花は二千本のこずゑに咲乱れて、日にうつろへる光は玲瓏れいろうとして人のおもてを照し、みちうづむる幾斗いくと清香せいこうりてむすぶにへたり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
そのおもての色は惨として夕顔の花に宵月のうつろへる如く、そのひややかなるべきもほとほと、相似たりと見えぬ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
山毛欅ぶな洞穴うつろからびだしたひとりの怪人かいじんが、電火でんかのごときすばやさで、かれの胸板むないた敢然かんぜんとついてきた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
このあいだうちから、千ねん山毛欅ぶな洞穴うつろの中にかくれて、毎朝、喬木きょうぼくの上によじあがり神刑しんけいにかけられている忍剣にんけんの口へ、食餌しょくじをはこんでいたさると見えたのは、まったく、竹童ちくどうなのであった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一の小川の響きによりてしらる、この小川はめぐり流れて急ならず、その噛み穿てる岩の中虚うつろを傳はりてこゝにくだれり —一三二
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
すなわち『万葉集』巻四の「念はじと曰ひてしものを唐棣花色はねずいろの、うつろひやすきわが心かも」、同巻八の「夏まけて咲きたる唐棣花はねず久方ひさかたの、雨うち降らばうつろひなむか」
植物一日一題 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
子を生みし後も宮が色香はつゆうつろはずして、おのづか可悩なやまし風情ふぜいそはりたるに、つまが愛護の念はますます深く、ちようは人目の見苦みぐるしきばかりいよいくははるのみ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)