“真向”のいろいろな読み方と例文
旧字:眞向
読み方割合
まっこう49.5%
まむき11.7%
まとも8.1%
まつかう8.1%
まむ4.5%
まむか2.7%
まむこう2.7%
まつこう1.8%
まむかい1.8%
まむこ1.8%
ひたむ0.9%
まっこ0.9%
まつか0.9%
まの0.9%
まむかう0.9%
まむかひ0.9%
まんむ0.9%
まんむこう0.9%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
一日の行楽に遊び疲れたらしい人の群れにまじってふきげんそうに顔をしかめた倉地は真向まっこうに坂の頂上を見つめながら近づいて来た。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
悄然しょうぜんとして項垂うなだれていた小野さんは、この時居ずまいをただした。顔を上げて宗近君を真向まむきに見る。ひとみは例になく確乎しっかと坐っていた。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
女はあっと云って、めた手綱を一度にゆるめた。馬は諸膝もろひざを折る。乗った人と共に真向まともへ前へのめった。岩の下は深いふちであった。
夢十夜 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
現にかれなどはそれを真向まつかう振翳ふりかざしてこれまでの人生を渡つて来た。智慧ちゑを戦はして勝たんことを欲した。自己の欲するまゝにあらゆるものを得んことを欲した。
ある僧の奇蹟 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
カピはまた主人のかくしをさぐって一本のつなを出し、軽くゼルビノに合図をすると、ゼルビノはすぐにかれの真向まむかいにをしめた。
日比野の家は、この町内で子供達が遊び場所にしてゐる井戸の外柵の真向まむかひで、井戸より五六軒へだたつたお涌の家からはざつと筋向うといへる位置にあつた。
蝙蝠 (新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
聴きおわりたる横顔をまた真向まむこうえして石段の下を鋭どき眼にてうかがう。こまやかにを流したる大理石の上は、ここかしこに白き薔薇ばらが暗きをれてやわらかきかおりを放つ。
薤露行 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そこへまた、なにかみなりのやうに怒鳴どなこえがしたかとおもふと、小牛こうしほどもあるかたこほりかたまりがピユーツとちてきて、真向まつこうからラランのからだをばした。
火を喰つた鴉 (新字旧仮名) / 逸見猶吉(著)
私の小屋と真向まむかいの……金持は焼けないね……しもた屋の後妻うわなりで、町中の意地悪が——今時はもう影もないが、——それその時飛んで来た、燕の羽の形にうしろねた
縷紅新草 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
だが、眼だけは、たえず真向まむこうの酒井家蔵用人くらようにん本田頼母ほんだたのもの屋敷に注意していた。啓之助はそれを天満の万吉だとは夢にも知らなかったが、万吉の方ではくから気がついていた。
鳴門秘帖:06 鳴門の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
綽空しゃっくうは、その朝——まだ暗いうちに岡崎の草庵を出て、白河のほとりを、いつもならば西へ下るのに、叡山えいざんのほうへ真向ひたむきに歩いていた。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
真向まっこうへ顔を持ってくるのでなくても、近く寄り添って来る薫に、大姫君は羞恥しゅうちを覚えるのであったが、これだけの宿縁はあったのであろうと思い
源氏物語:49 総角 (新字新仮名) / 紫式部(著)
老人は大変不機嫌で、僕を振り向くと真向まつかうから云ふのだ。
南京六月祭 (新字旧仮名) / 犬養健(著)
朝凪あさなぎの海、おだやかに、真砂まさごを拾うばかりなれば、もやいも結ばずただよわせたのに、呑気のんきにごろりと大の字なりかじを枕の邯鄲子かんたんし、太い眉の秀でたのと、鼻筋の通ったのが、真向まのけざまの寝顔である。
悪獣篇 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
其頃そのころわたし山田やまだうちを出て四番町よんばんちやう親戚しんせき寄寓きぐうしてましたから、石橋いしばしはかつて、同益社どうえきしや真向まむかう一軒いつけんいへりて、これ我楽多文庫がらくたぶんこ発行所はつかうしよ硯友社けんいうしやなる看板かんばんを上げたのでした
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
彼方あちらかどだから、遠く三四郎と真向まむかひになる。折襟をりえりに、はゞの広い黒繻子くろしゆすむすんださきがぱつとひらいて胸一杯いつぱいになつてゐる。与次郎が、仏蘭西の画工アーチストは、みんなあゝ云ふ襟飾えりかざりけるものだと教へて呉れた。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
またそれが、人形に着せたように、しっくりと姿に合って、真向まんむきに直った顔を見よ。
陽炎座 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
東家あずまやってね。ちょうどそら高田の旦那の真向まんむこうでしたろう、東家の御神灯ごじんとうのぶら下がっていたのは
硝子戸の中 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)