)” の例文
その頃は自転車の流行はやり出した始めで、半七老人のいう通り、下手な素人がそこでも此処でも人をいたり、塀を突き破ったりした。
他の一人ひとりは帽子が飛ぶと同時に飛んだ帽子の事だけ考へて、夢中になつてそのあとを追ふ。自転車にぶつかる。自動車にかれかかる。
拊掌談 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
二、三人自動車でき殺してから、又煉瓦れんがを掘りかえして工事をはじめるよりも、めい/\の命が無事なうちに願い度いものである。
丸の内 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
(著者追記。犬のデカは大正二年の二月自動車にかれて死に、猫のトラは正月行衛不明になり、ピンは五月肥溜に落ちて死んだ。)
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
奔馬のまえに屈みこむ美人をき殺してゆくほど勇気のある馭者はかつてなかった。もなく、お光さんの甘い策にかかるのだった。
かんかん虫は唄う (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その博士の娘は、誠に心掛けのやさしいもので、常に慈善事業などのために尽力していたが、或る日自動車にかれて死んでしまった。
活動写真 (新字新仮名) / 淡島寒月(著)
通りがかりの自動車にかれて松葉は即死し、さしもの日本太郎は、今はいと味気ない日々夜々おくっているわけなのである、と。
随筆 寄席囃子 (新字新仮名) / 正岡容(著)
道路の曲り角に、床屋の白服をきた若者が、黒いものを棒のさきで衝ッつきながら、折柄おりから正面から来た駄馬のわだちかそうとした。
童子 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
天使てんしでありますから、たとえやぶられても、かれても、またかれても、るわけではなし、またいたいということもなかったのです。
飴チョコの天使 (新字新仮名) / 小川未明(著)
先ずかれるなら私は貨物列車とかトラックとかもうろうとか、少々でも車上の人格のはっきりしないものの方がましだと思う。
把輪ホイイルを握りながら、散策中の鶏や犬や、時には村人をあわやきそうになるのもかまわず、はんぶんうしろを向いて盛んに饒舌しゃべり散らす。
踊る地平線:04 虹を渡る日 (新字新仮名) / 谷譲次(著)
彼はなお通りを横切ろうとして、為に突き飛ばされ、ねばねばしたアスファルトの上にすべりころげ、危うくきつぶされるところだった。
それでも、とうとうポピイは、人をかずに、ある貸車庫の前で止りました。赤いオートバイが、その中にはいったからです。
やんちゃオートバイ (新字新仮名) / 木内高音(著)
神職様かんぬしさま、おおせでっしゅ。——自動車にかれたほど、身体からだ怪我けがはあるでしゅが、梅雨空を泳ぐなら、鳶烏とびからすに負けんでしゅ。
貝の穴に河童の居る事 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
電車通りを踏み切って自動車をけてかれもせずに歩いていながら、眼前のことは瞬時に頭から抜け去って、今自分がどこをどう歩いたか
陰獣トリステサ (新字新仮名) / 橘外男(著)
丁度太腿のつけ根と首とをかれ、両脚はその腿のつけ根のところでペラペラな皮一枚でつながっていて、うねうねと伸びているのを見た時は
(新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
「オヤオヤ、腰弁らしい奴が汽車にかれている。厭世自殺かな。まあ死にたい奴は死ぬがいいさ。米が安くなっていい」
線路 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「生きているときはさんざん人に骨を折らしたんですから、汽車にかれて自分の骨をおっぺしょるのは当たり前ですよ」
暴風雨に終わった一日 (新字新仮名) / 松本泰(著)
の意味もある〕——をいて彼を目ざませば、かれらは急に汽車を停めて、例外的椿事でもあるかのように大騒ぎをする。
マウント・クレメスという駅で駅長の子供が汽車にかれようとしたのを救い出したのを想い出し、駅長のマッケンジーという人を尋ねて行くと
トーマス・エディソン (新字新仮名) / 石原純(著)
小田刑事は、侯爵夫人に向かって、書生の村田は須田町の停留場で電車にかれて死んだ顛末と、模造首飾りの発見された次第とを物語り、最後に
紫外線 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
もしや自動車にでもかれたのではなかろうか。或いは金策が出来ない為に、無分別な考えを出したのではなかろうか。彼の不安は次第に募って来た。
罠に掛った人 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
あらかじめ殺して置いた『怪我人』の頭を、いかにも脳味噌をつめ替えるために『トントン』が自身でしたように見せかけて、汽車にかしたわけでしょう。
三狂人 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
自転車にのった人ぐるみすっかりいてしまってこもをかけてあるのを見て通ったら、段々妙な気分になって、手のひらが白くなって、フラフラしました。
イギリスのテナーで、社会的地位のあった歌手だが、人を救おうとして、プラットホームで汽車にかれて死んだ。
二人の間には、荷車のわだちき倒された真つ黒な小猫が、雑巾のやうに平べつたくなつて横たはつてゐました。
黒猫 (新字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
奴さんは腹部を引かれて大腸が露出したが、それでも二日ばかり生きていたのだ、君は昨年の九月の新聞に、満伊商会の支店長があやまって自動車にかれて
雨夜草紙 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
ここで、もう一度、小説家のわづらはしい回想を許してやりたいと思ふ。かつて、このあたりではよく人々がき殺された、彼らの生命が安かつたせゐかも知れぬ。
釜ヶ崎 (新字旧仮名) / 武田麟太郎(著)
「臆病なひとって、切羽詰ると思いきったことをするもんだわね……あたしがハンドルを切ったのは、あなたが中村に突っかけて、き殺そうとしたからよ」
あなたも私も (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
飛行機から落ちると云ふ事は最早もはやまん一の不幸に属して居る。ばん一の不幸を気にして居たら土の上も踏めないわけだ。自動車にかれて死ぬる事もあるのである。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
村の人達ひとたちは、もう和尚様は、京都の町で電車か自動車かにかれて、死んでしまつたものだと思ひました。
愚助大和尚 (新字旧仮名) / 沖野岩三郎(著)
彼は、京浜国道けいひんこくどうを六十マイルのスピードで走っていて、時々通行人をいたり、荷車に衝突して自分も相当の怪我をしたことが何回もあったことをかえりみて慄然りつぜんとした。
西湖の屍人 (新字新仮名) / 海野十三(著)
其外、向ふ島の花はもう駄目になつた、横浜にある外国船の船底ふなぞこ大蛇だいぢやつてあつた、だれが鉄道でかれた、ぢやないかと云ふ。みんな新聞に出た事ばかりである。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
電車の出来たてに犬がかれたり、つるみかけている猫が轢かれたりした光景をよく見たものであるが、鉄道馬車の場合にはそんなきわどい事故は起らぬのであった。
三筋町界隈 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
小さな事件とはいえ、そうして寺内氏が彼女のもとを辞して久し振りに往来へ出た時、危く氏をき殺そうとした自動車のあったことを記しておかなければならぬ。
地図にない街 (新字新仮名) / 橋本五郎(著)
一年間に汽車にかれて死ぬ人よりも汽車中で伝染病を受けて病死する方がどれほど多いか知れません
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
そのうえ手と足をかれて全治一ヶ月の重傷とある。ところが話はこれからさきがまことに愉快である。
一歩の後に馬車か自動車にき殺されることの危険を思って、身も心もすくむのを感じるでしょう。
激動の中を行く (新字新仮名) / 与謝野晶子(著)
ホテルまえ電車でんしや突切つきころわたしはM、H夫人ふじんはなしながらあるいてゐたが、彼女かのじよわたし自動車じどうしやにでもかれはしないかと気遣きつかつて、どうかするとそでつたりして
微笑の渦 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
さうすれば、その辺ののら猫が見つけて、べてしまふだらう。たとひ猫の歯をのがれたにしても、道を通る馬の足か、車の輪でぺしやんこにかれてしまふだらう。
良寛物語 手毬と鉢の子 (新字旧仮名) / 新美南吉(著)
車夫は全速力で走って来て、間一髪で通行人をき倒しそうになるが、通行人はそれをよけることの必要を、知らぬらしく思われる。乗合馬車も出来たばかりである。
時には、道の反対側で草をっていた仔牛こうしまで、親の逃げる方へ飛び出してかれそうになる。運転手はあわててブレーキをかけながら、「馬鹿!」と大声でどなりつける。
由布院行 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
ベッキイが『アクシデント』だと思っているのは、人が車にかれたり、梯子はしごから落ちたり、あのいやな病院へ伴れて行かれたりする、そうした災難のことだったのでした。
機関車にかれたのです。英国じゅうでもこの男ほど自分の仕事をよく知っている者はなかったのですが、あるいは外線のことについていくらか暗いところがあったと見えます。
彼の背後から、トラックがやって来て、彼を追い越す。道を横切ろうとする犬をいきなりく。犬の胴体を轢き、トラックはちょっと速度を落し、また元の速度に戻って走り去る。
幻化 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
「貴公、よっぽどでれ助だな。」「東京でよく電車や自動車にかれなかったな。」
その人 (新字新仮名) / 小山清(著)
汽車というものは恐ろしく速いもので電信柱と電信柱の間をばたきをする間に通ってしまうとよ、一丁位先きへ来てもソレ! という間に逃げてしまわなければき殺されるから
彼女はいたるところで子供をくした。あるものは車にかれ、あるものは水に溺れ、その他のものは悪性の熱病であっという間にさらわれて行った。なお一人の息子は戦争で殺された。
あの男は乱暴な奴で、その婆さんと子供とをき殺そうとしたのです。処罰しなければいけません。それからまたモントル・ド・シャンピニー街のシャルセレー君の家に行って下さい。
自動車は並んだ死骸をき飛ばすと、ぐったり垂れた顔を揺りながら疾走した。
上海 (新字新仮名) / 横光利一(著)