鼻柱はなばしら)” の例文
そこで衆人みんな心持こゝろもちは、せめてでなりと志村しむらだい一として、岡本をかもと鼻柱はなばしらくだいてやれといふつもりであつた。自分じぶんはよくこの消息せうそくかいしてた。
画の悲み (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
ならんだ二だいに、あたまからざつとあびせて、のきあめしのつくのが、たてがみたゝいて、轡頭くつわづらたかげた、二とううま鼻柱はなばしらそゝ風情ふぜいだつたのも、たにふかい。
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
代助は斯んな話を聞くたびに、いさましいと云ふ気持よりも、まづ怖い方が先につ。度胸を買つてやる前に、なまぐさいにほひ鼻柱はなばしらを抜ける様にこたへる。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
はっきりした日差しにこけの上に木の影がおどって私の手でもチラッと見える鼻柱はなばしらでも我ながらじいっと見つめるほどうす赤い、奇麗きれいな色に輝いて居る。
秋風 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
火事場の稼ぎにもゴムのよろいに身を固むることを忘れざれば天狗てんぐ鼻柱はなばしら遂に落るの憂なく、老眼今なほ燈下に毛蝨けじらみひねつて当世の事を談ずるの気概あり。
桑中喜語 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
ギュッと喉笛のどぶえをしめつけられ、さらにうらみかさなるこぶしの雨が、ところきらわずに乱打らんだしてきそうなので、いまは強がりンぼの鼻柱はなばしらがくじけたらしく
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「泣いてるわよ。大粒の涙が、そら、鼻柱はなばしらをつたって、鼻の先から落ちたじゃアないの。そら、また。」
その時清盛がまたけったので父は鼻柱はなばしらくだけて黒血がたれた。その時清盛は二人の武士に命じて左右から父の手を捕えて地べたにねじ伏せさせ、「彼にわめかせろ」と言ったそうです。
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
足下きみ昨夜ゆうべはマブひめ(夢妖精)とおやったな! 彼奴あいつ妄想もうざうまする産婆さんばぢゃ、町年寄まちどしより指輪ゆびわひか瑪瑙玉めなうだまよりもちひさい姿すがたで、芥子粒けしつぶの一ぐんくるまひかせて、ねぶってゐる人間にんげん鼻柱はなばしら横切よこぎりをる。
とらしたしてたにみづんでゐる鼻柱はなばしらすこけがされたのを、ちゝひどにして、宗助そうすけたびに、御前おまへ此所こゝすみつたことおぼえてゐるか、これ御前おまへちひさい時分じぶん惡戲いたづらだぞとつて
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
小利口こりこうにきび/\と立𢌞たちまはる、あさまへからきて、氣輕きがる身輕みがる足輕あしがる相應さうおう、くる/\とよくはたらうへはや江戸えどみづみて早速さつそく情婦いろひとつと了簡れうけんから、たか鼻柱はなばしらから手足てあしつめまで
片しぐれ (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ちつたか鼻柱はなばしらから手足てあしさきまでみがくことあらふこと、一日いちにち十度とたびおよぶ。
二た面 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)