騒擾そうじょう)” の例文
旧字:騷擾
SO! あらゆる無恥と邪悪ヴァイス騒擾そうじょうガルフ——毎晩徹夜して、「黄色い貨物」のように忠実に僕はその渦紋の軸に立ちつくしたものだ。
一喝いっかつして首筋をつかみたる様子にて、じょうの内外一方ひとかたならず騒擾そうじょうし、表門警護の看守巡査は、いずれも抜剣ばっけんにて非常をいましめしほどなりき。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
その発端は、一種の恐るべき快活さが交じった驚駭きょうがいのみである。初めはただ騒擾そうじょうであり、商店は閉ざされ、商品の陳列棚は姿を消す。
然るにそれを考えずして草木のものをいうとあるのは民衆の騒擾そうじょうすることだというように解釈するのは、上代人の心理を知らないため
神代史の研究法 (新字新仮名) / 津田左右吉(著)
内より門を開いて迎え、同時に城中を攪乱こうらんして、騒擾そうじょうのうちに駙馬をうかがわば、手捕りになること物をつかむ如しとすすめるのです。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
交響曲シンフォニーが済むと、聴衆の皮肉な冷淡さに対抗するため、彼は熱狂的な喝采かっさいをした。それから騒擾そうじょうのおりになると、彼は我を忘れた。
桟敷の手摺りをたたく者がある、しまいにはときをつくってはやし立てるという未曾有みぞう騒擾そうじょうを演出したので、他の観客もおどろかされた。
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
交代で夜をいましめている武士以外は、皆死んだように熟睡するので、晝間の騒擾そうじょうと活動が激しければ激しい程、夜は無気味に静かになる。
するといつの間にか、この騒擾そうじょうが知れ渡ったと見え、どろろんどろろんと、陰にこもった太鼓の響きが、遠く近く、聞えて来る。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
こう穏やかでない時勢であるから輦下れんか騒擾そうじょうをしずめ叡慮えいりょを安んじ奉らんがためであることはいずれも承知するところであろう。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
私はむしろいつもうろうろと休息を知らない私のたましいのふつつかな騒擾そうじょうがあなたの生活をみだすことをおそれています。
青春の息の痕 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
今の猫と鼠の話のあった前後の頃おい(確か十五の年)は徳川氏の世の末で、時勢の変動激しく、何かと騒擾そうじょうが引き続く。
また軍艦中騒擾そうじょうの様子をば、急に乗附き梯子を架して飛乗り、腰刀にて手詰めに夷輩を鏖殺し軍艦を奪うべし〔何ぞ蒙古襲来の役に類する〕。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
嘉永癸丑米艦浦賀ニ入ル。海内騒擾そうじょう。聖天子旰食かんしょくやすカラズ。幕吏国家ノ大計ヲ以テ模棱もりょうコレニ処セント欲ス。天下ノ志士切歯憤惋ふんわんセザル者ナシ。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
やっと「騒擾そうじょう」という言葉が使用されたが、それもはっきり「叛乱はんらん」を意味するものとは思えないことであった。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
彼が戸外おもてへ出ると、外はもう宵よりも混乱の度を加えていた。そのうえ時々、タウベが落す爆弾の炸裂する声が、激しい騒擾そうじょうに更に恐怖と不安とを加えた。
勲章を貰う話 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
……しかしながら、その根本の原因はどこでも同じことなので、すなわち貧乏の存在とその痛苦にほかならぬ。これが社会的騒擾そうじょうの中心であり中核である*
貧乏物語 (新字新仮名) / 河上肇(著)
……こんなことは君に言うまでもないことだが、これは僕が昔騒擾そうじょうで一年くった時に痛感したことだもんだから
(新字新仮名) / 島木健作(著)
「御上意のように討手を差向けましては騒擾そうじょうがひろがり、お家の大変になりかねません」と代二郎は云った
初夜 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
町内の者をはじめ各山車山車の騒擾そうじょうはいうまでもないこと、物見高いやじうまが黒山のごとくそれをおっ取り巻いて、さながら現場は戦争騒ぎでありましたが
恐怖、叫喚、騒擾そうじょう、地震における惨状は馬車のうちあらわれたり。冷々然たるはひとりかの怪しき美人のみ。
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
静まり返っていた見物席に、恐ろしい騒擾そうじょうが起こった。劇場当事者をののしる怒号が、合唱のようにき立った。男性のわめき声、女の金切り声、子供の悲鳴。
人間豹 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「この人はわが国の民を惑わし、貢をカイザルに納むるを禁じた」とか、「ユダヤ全国に教えをなして民を煽動し、騒擾そうじょうを惹起す」とか(ルカ二三の二、五)。
騒擾そうじょうなどくわだてる様子もなく、それに見境もなく火を放って、江戸の町人を苦しめるということは切支丹にしてもありそうもないことのように考えられるのでした。
凶年に病人多く世間騒擾そうじょうするはもちろんだが、この文に拠ればその頃飛騨で猴神を田畑の神としたのだ。
日比谷ひびやには騒擾そうじょうが起り、電車焼打ちがあって、市内目抜きの場所の交番、警察署、御用新聞社の打こわしなどがはじまり、忠良なために義憤しやすき民衆は狂暴にされ
一世お鯉 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
遠く人馬の騒擾そうじょうが闇の中から聞えて来た。訶和郎かわろ香取かとりは戸外に立ってとうげを見ると、松明たいまつの輝きが、河に流れた月のように長くちらちらとゆらめいて宮の方へ流れて来た。
日輪 (新字新仮名) / 横光利一(著)
彼は、もうかれこれ十日あまりも、町の騒擾そうじょうを見てくらしているのだった。彼は、ショーウインドーらしき大きな硝子ガラスをとおして、一部始終を眺めて暮らしているのだった。
見えざる敵 (新字新仮名) / 海野十三(著)
兵馬騒擾そうじょうの前後に、旧幕府の洋学校は無論、他の私塾家塾もすでに廃して跡を留めず、新政府の学事も容易におこるべきにあらず、いやしくも洋学とえば日本国中ただ一処の慶應義塾
米艦が浦賀うらがったのは、二年ぜんの嘉永六年六月三日である。翌安政元年には正月にふねが再び浦賀に来て、六月に下田しもだを去るまで、江戸の騒擾そうじょうは名状すべからざるものがあった。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
しかし、競輪には八百長が多いというところに便乗して、八百長くさいと独断するや、モッブ化して騒擾そうじょうを起し、売上金を強奪するに至っては、これは逆に素人衆の賭場荒しである。
されば、人心恟々きょうきょうとして、安き心も無く、後日、釣船の宿にて聴く所によれば、騒擾そうじょうの三日間ばかりは、釣に出づる者とては絶えて無く、全く休業同様なりしといふ。もあるべし。
東京市騒擾中の釣 (新字旧仮名) / 石井研堂(著)
そのひとは、用たしの帰りにでもこの騒擾そうじょうにまきこまれたらしく、かえりを急ぐとみえて、いらいらしていた。仲間は、手の、定紋入りの提燈ちょうちんをこわすまいとかばって、骨を折っていた。
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)
しかるにこの小法師は、かくも平和な湖面に向って騒擾そうじょうの罪を着せると共に、今度は、その罪を沿岸に向ってなすりつけてしまったが、波風の及ぶところはそこで止まるのではありません。
大菩薩峠:38 農奴の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
騒擾そうじょうがもちあがったら、お祈りをするがよい。それにな、せがれ(長老は好んで彼をこう呼んだ)このさきここは、おまえのいるべき場所ではないぞ。よいか、それをよく覚えておるがよい。
彼がペテロでもサルフィユでもなかったので——彼は騒擾そうじょうのなかにせきをした。
あめんちあ (新字新仮名) / 富ノ沢麟太郎(著)
たゞ一婦人の身を以て兵を起し城をほふり、安遠侯あんえんこう柳升りゅうしょうをして征戦に労し、都指揮としき衛青えいせいをして撃攘げきじょうつとめしめ、都指揮劉忠りゅうちゅうをして戦歿せんぼつせしめ、山東の地をして一時騒擾そうじょうせしむるに至りたるもの
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
そうすると先日の洪水にも何か関係があり、市内に起る最近の騒擾そうじょうはすべて彼に関係があるということが判るのですなア。恐ろしい男ですな。ロシアのラスプチンのような男ですぜ、あの男は
空中征服 (新字新仮名) / 賀川豊彦(著)
それから税関の騒擾そうじょう吃驚きっきょうしたり、馬車の御者が膝の上にも達する長い靴をはき、鞭をとり、革嚢かくのうを持っているのを不思議がったり、初めてミミズを見たり、ノルマンヂイの痩せた豚で驚いたりした。
時あたかも欧州の天地はナポレオン戦争のために震天動地の大騒擾そうじょうを極めている時であって、この間の消息が初めて知れ、日本人は鎖国の夢からめて、容易ならざる時局に際していることを自覚し
だが、山は、たちまち一時の騒擾そうじょうから、元の緘黙しじまに戻ってしまった。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
激動、不安、そして遂にあの馬鹿気きった流言るげん騒擾そうじょうだ。
間もなく騒擾そうじょう部隊という名に変えられた。
いやな感じ (新字新仮名) / 高見順(著)
己の内生活の騒擾そうじょうを鎮めて、435
ののしる者もあったが、それでも、万一の騒擾そうじょうを怖れてか、門扉もんぴは、固く閉じたまま、開きもしなければ、答えもしないのである。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
襲撃を受けてる居酒屋の恐ろしい騒擾そうじょうの響きも、今や漠然ばくぜんたるつぶやきの声のように、かすかに頭の上方に聞こえるきりだった。
大問屋すじでは、びくびくして、今夜、夜が深まるのを迎えていたが、案の定、第二夜の騒擾そうじょうは昨夜に輪をかけたものだった。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
そのうちに武田勢が今庄いまじょうに到着したので、諸藩の探偵たんていは日夜織るがごとくであり、実にまれなる騒擾そうじょうであったという。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
そして魂の底には、恐ろしい苦悩の騒擾そうじょうが起こった——「広漠たる人なき空間にただ一人いる悩みの叫び」が……。
その夜、リザベッタは、市街の混乱と騒擾そうじょうとを恐れて出演してはいなかった。彼女は極度に興奮していた。
勲章を貰う話 (新字新仮名) / 菊池寛(著)