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遽
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あわ
ふりがな文庫
“
遽
(
あわ
)” の例文
言いわすれたのは、電車の中で自分が不用意にも下に落した脱脂綿を
遽
(
あわ
)
てて拾いあげるところを園部にみられた位のことだと言った。
麻雀殺人事件
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
早々蚊帳に逃げ込むと、夜半に雨が降り出して、頭の上に漏つて來るので、
遽
(
あわ
)
てゝ床を移すなど、わびしい旅の第一夜であつた。
熊の足跡
(旧字旧仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
早々
(
そうそう
)
蚊帳
(
かや
)
に
逃
(
に
)
げ
込
(
こ
)
むと、
夜半
(
よなか
)
に雨が降り出して、
頭
(
あたま
)
の上に
漏
(
も
)
って来るので、
遽
(
あわ
)
てゝ
床
(
とこ
)
を
移
(
うつ
)
すなど、わびしい旅の第一夜であった。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
そこへお
友
(
とも
)
だちが
來
(
き
)
てお
話
(
はな
)
しをしてゐると、どこから
這入
(
はい
)
つて
來
(
き
)
たものか、また
椽側
(
えんがは
)
へ
來
(
き
)
た、
私
(
わたし
)
は
遽
(
あわ
)
てゝ
障子
(
せうじ
)
を
締切
(
しめき
)
つた。
ねこ
(旧字旧仮名)
/
北村兼子
(著)
「先生、私どもはみんな腰掛から
起
(
た
)
ち上ります。そして一先づ廊下に出て、
遽
(
あわ
)
てないで順々に外へ逃げ出します。」
茶話:04 大正七(一九一八)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
▼ もっと見る
蕗屋は早速着物を着換えると、
遽
(
あわ
)
てて警察署へ出掛けた。それは彼が昨日財布を届けたのと同じ役所だ。何故財布を届けるのを管轄の違う警察にしなかったか。
心理試験
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
「
第三版
(
トワジイム
)
・
硬党新報
(
アントラン
)
、
夕刊巴里
(
パリソワ
)
」と触れ歩く夕刊売りの声も寒く
遽
(
あわ
)
ただしく、かてて加えて真北に変った強風は、今や大束な
霙
(
みぞれ
)
さえ交えてにわかに吹きつのる様子。
ノンシャラン道中記:02 合乗り乳母車 ――仏蘭西縦断の巻――
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
方棟は蘭が好きで、園へいろいろの蘭を植えて
日常
(
ひごろ
)
水を
漑
(
か
)
けていたが、目が見えなくなってからはそのままにしてあったので、その言葉を聞くと
遽
(
あわ
)
てて細君に言った。
瞳人語
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
小平太は天の与えとばかりに胸を
躍
(
おど
)
らせた。が、
遽
(
あわ
)
てるところではないと、前後を見廻して、人目のないのを見定めながら、つと
扉
(
と
)
に身を寄せて、その隙間から
覗
(
のぞ
)
きこんだ。
四十八人目
(新字新仮名)
/
森田草平
(著)
遽
(
あわ
)
てゝ逃出すから、煙草盆を
蹴散
(
けちら
)
かす、土瓶を
踏毀
(
ふみこわ
)
すものがあり、料理代を払って
往
(
ゆ
)
く者は一人もありません、中に素早い者は料理番へ駈込んで鰆を三本
担
(
かつ
)
ぎ出す奴があります。
菊模様皿山奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
此の時其の手が丁度怪美人の左の手に障った、読者が御存知の通り左の手は異様な飾りの附いた手袋で隠して居る、怪美人は少し
遽
(
あわ
)
てた様で急いで左の手を引きこめ右の手で
扶
(
たす
)
けた
幽霊塔
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
既に
然
(
しか
)
る以上、日本もまた、米国に備えるために、
遽
(
あわ
)
てて海軍を拡張するほどの必要もないであろう。ただその勢力の充実を図りて、戦闘に堪うる艦隊を造ればそれで
宜
(
よろ
)
しいであろう。
世界平和の趨勢
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
そのたびに
遽
(
あわ
)
てて「いいえ違う、あの方ではない」と心にうち消すことが続いた。
菊屋敷
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
後
(
のち
)
になぞと
言
(
い
)
はヾ
其
(
その
)
うちに
僕
(
ぼく
)
は
負
(
ま
)
けて、
小刀
(
ないふ
)
を
取
(
と
)
られるから
嫌
(
いや
)
、どうぞ
是非
(
ぜひ
)
今
(
いま
)
直
(
すぐ
)
に
描
(
かき
)
て
呉
(
く
)
れよ、
紙
(
かみ
)
や
筆
(
ふで
)
は
姉樣
(
ねえさま
)
のを
借
(
か
)
りて
來
(
く
)
べし、と
箒木
(
はヽき
)
を
捨
(
す
)
てヽ
欠
(
か
)
け
出
(
だ
)
すに、
先
(
ま
)
づお
待
(
まち
)
なされと
遽
(
あわ
)
たヾしく
止
(
と
)
め
暁月夜
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
遽
(
あわ
)
たゞしく
叩
(
たゝ
)
き起し急用あれば
爰
(
こゝ
)
開
(
あけ
)
給へといふに吉五郎は
戸
(
と
)
を
明
(
あ
)
けながら急用とは
如何
(
いか
)
なることにやと申しければ佐兵衞は
息
(
いき
)
をきりながら
今
(
いま
)
名主樣
(
なぬしさま
)
の
玄關
(
げんくわん
)
にて御奉行樣の
御調
(
おしら
)
べがあるゆゑ貴樣を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
新刊書の頁を
遽
(
あわ
)
てて切る可らず、と云うような甚だ穏やかな忠告から始まって、頁の上に煙草の灰を墜落せしむる可らず、寧ろ喫煙せざるに
如
(
し
)
かず、煙を透して書を読むは第一、眼に毒なればなり。
愛書癖
(新字新仮名)
/
辰野隆
(著)
火事では大変だと思い
遽
(
あわ
)
てて道路に駈け降りますと、外は烈風に加うるに肉の
斫
(
き
)
りとられる様な寒さで、寝巻の上にどてらを羽織った男女が大勢道路の両側に立って居て、火事だ、火事だ、何処だ
陳情書
(新字新仮名)
/
西尾正
(著)
と言いかくるを、
主人
(
あるじ
)
左京は
遽
(
あわ
)
ただしく眼と手とに一時に制止して
雪たたき
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
正行房が
遽
(
あわ
)
てて
法然行伝
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
店の前まで来たときに、
花川戸
(
はなかわど
)
の
鼻緒問屋
(
はなおどんや
)
の主人
下田長造
(
しもだちょうぞう
)
は
遽
(
あわ
)
てて駈けだす三男の素六を認めたので、イキナリ声をかけたのだった。
空襲葬送曲
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
十時、汽車は
隧道
(
とんねる
)
を出て、川を見下ろす高い崖上の停車場にとまつた。
神居古潭
(
かむゐこたん
)
である。急に思立つて、手荷物諸共
遽
(
あわ
)
てゝ汽車を下りた。
熊の足跡
(旧字旧仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
十時、汽車は
隧道
(
とんねる
)
を出て、川を見下ろす高い
崖上
(
がいじょう
)
の停車場にとまった。
神居古潭
(
かむいこたん
)
である。急に思立って、手荷物
諸共
(
もろとも
)
遽
(
あわ
)
てゝ汽車を下りた。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
若し怪美人が真に古山お酉と云う下女で旨く令嬢姿に化けて居る者とすれば迚も此の言葉に敵する事は出来ぬ、顔を赤めるとか
遽
(
あわ
)
ててマゴつくとかする筈だ、処が怪美人は少しもマゴつかぬ
幽霊塔
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
拔
(
ぬく
)
より早く
既
(
すで
)
に
自害
(
じがい
)
すべき有樣なるにぞ忠八は
遽
(
あわ
)
て
押止
(
おしとゞ
)
め御花樣には
如何
(
いか
)
なれば
御生害
(
ごしやうがい
)
を成れんとは
仕給
(
したま
)
ふや兄君の御
成行
(
なりゆき
)
を御聞成れ御心にても亂れ給ひしかと
言
(
いへ
)
ばお花は涙を
止
(
とゞ
)
め是程の大變を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
百姓が金を取りに
家
(
うち
)
へ帰らうとするのを、玄知は
遽
(
あわ
)
てて引きとめた。
茶話:04 大正七(一九一八)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
そう云っていたとき、廊下の向うに
遽
(
あわ
)
ただしい
跫音
(
あしおと
)
が起り
彩虹
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
「ああ池谷さんのところへ——なるほど」といったが、彼は
遽
(
あわ
)
ただしく聞き足した。「あのウ、池谷さんには細君があるんでしょうネ」
蠅男
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
彼は
遽
(
あわ
)
てず騒がず悠々と芝生を歩んで、甕の傍に立つ。
先
(
まず
)
眼鏡
(
めがね
)
をとって、ドウダンの枝にのせる。次ぎに
褌
(
したおび
)
をとって、春モミジの枝にかける。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
折角の赤筋入りたるズボンをあたらだいなしにして
呆然
(
ばうぜん
)
としたまひし此方には、
件
(
くだん
)
の
清人
(
しんじん
)
惜
(
を
)
しき事しつと云ひ顔に
遽
(
あわ
)
てゝ床の
上
(
うへ
)
なるものを
匙
(
さじ
)
もてすくひて皿に
復
(
かへ
)
されたるなど
燕尾服着初めの記
(新字旧仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
おみねと銀太が一緒に寝ているところに、思いがけなくあのピストルの音がしたので、二人は
吃驚
(
びっくり
)
して
遽
(
あわ
)
てだしたのですよ。
ネオン横丁殺人事件
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
人間弱味がなければ
滅多
(
めった
)
に恐がるものでない。幸徳ら
瞑
(
めい
)
すべし。政府が君らを締め殺したその前後の
遽
(
あわ
)
てざまに、政府の、
否
(
いな
)
、君らがいわゆる権力階級の
鼎
(
かなえ
)
の軽重は分明に暴露されてしもうた。
謀叛論(草稿)
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
しかも犯人は十分もかかりながら
遽
(
あわ
)
てくさってライターを落とし、おみねさんは
胡麻化
(
ごまか
)
すにことかいて、ゆかりの寝床を直すことさえ気がつかなかった。
ネオン横丁殺人事件
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
或る日、僕たちが倶楽部で朝食を
摂
(
と
)
りつつあったとき、
遽
(
あわ
)
ただしくイレネが入ってきた。
宇宙尖兵
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
そこへ
遽
(
あわ
)
ただしく、伝令兵が大股で近よると、司令官の前に
挙手
(
きょしゅ
)
の礼をした。
空襲葬送曲
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
「ちょいと、待っとくれよ、お前さん」おつるは
遽
(
あわ
)
てて、亭主を呼びとめた。
空襲葬送曲
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
そこへ、突如として、女の自殺を聞いた。それには旦那どのも
遽
(
あわ
)
てた位だ。若い男は、女の飛込んだ熔融炉目懸けて、駈け出して行った。彼も女の跡を追って、この炉の中で死のうと決心した。
夜泣き鉄骨
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
誰か
遽
(
あわ
)
てて室外に逃げ出した者のある証拠です。
赤耀館事件の真相
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
遽
漢検1級
部首:⾡
17画
“遽”を含む語句
急遽
遽然
遽々然
其遽
大遽
遽伯玉
遽色
遽雨
遽驚