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車上
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しやじやう
晴、
曇、
又月となり、
風となり——
雪には
途絶える——
此の
往來のなかを、がた/\
俥も、
車上にして、
悠暢と、
花を
見、
鳥を
聞きつゝ
通る。……
萬世橋へ
參りましたがお
宅は
何方と
軾を
控へて
佇む
車夫、
車上の
人は
聲ひくゝ
鍋町までと
只一言、
車夫は
聞きも
敢へず
力を
籠めて
今一勢と
挽き
出しぬ
松島から
帰途に、
停車場までの
間を、
旅館から
雇つた
車夫は、
昨日、
日暮方に
其の
旅館まで、
同じ
停車場から
送つた
男と
知れて、
園は
心易く
車上で
話した。
車上の
人は
目早く
認めて、オヽ
此處なり
此處へ
一寸と
俄の
指圖に
一聲勇ましく
引入れる
車門口に
下ろす
梶棒と
共にホツト
一息内には
女共が
口々に
入らつしやいまし。
車上の
人は
肩掛深く
引あげて
人目に
見ゆるは
頭巾の
色と
肩掛の
派手模樣のみ、
車は
如法の
破れ
車なり
母衣は
雪を
防ぐに
足らねば、
洋傘に
辛く
前面を
掩ひて
行くこと
幾町
私は、
先生が
夏の
嘉例として
下すつた、
水色の
絹べりを
取た、はい
原製の
涼しい
扇子を、
膝を
緊めて、
胸に
確と
取つて
車上に
居直つた。
而して
題を
採つて
極暑の
一文を
心に
案じた。
少時目が
眩んで、
氣が
遠く
成つて
居たが、チリ/\と
琴が
自然に
響くやうな、
珠と
黄金の
擦れ
合ふ
音に、
氣つけを
注射れた
心地がして、
幽に
隅の
方で
目を
開けて、……
車上の
美人がお
引摺りの
蹴出褄