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親爺
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おやじ
ふりがな文庫
“
親爺
(
おやじ
)” の例文
そんな
親爺
(
おやじ
)
がこの楽屋へ丼飯なんぞ持って来たことがあったのかと、思返して見ようとする者すら、一人もないような有様であった。
勲章
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
抱え主の
親爺
(
おやじ
)
の話もちょいちょい均平の耳へ入った。ある点は誇張であり、ある点はナイブな彼女の
頭脳
(
あたま
)
で仕組まれた虚構であった。
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
私
(
わたくし
)
が
三浦
(
みうら
)
へ
嫁
(
とつ
)
いだ
頃
(
ころ
)
は五十
歳
(
さい
)
位
(
くらい
)
でもあったでしょうが、
夙
(
とう
)
に
女房
(
にょうぼう
)
に
先立
(
さきだ
)
たれ、
独身
(
どくしん
)
で
立
(
た
)
ち
働
(
はたら
)
いている、
至
(
いた
)
って
忠実
(
ちゅうじつ
)
な
親爺
(
おやじ
)
さんでした。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
それを知らなければ
畢竟
(
ひっきょう
)
無理解
没分暁
(
ぼつぶんぎょう
)
の
親爺
(
おやじ
)
たる事を免れ難いかもしれない。ましてや内部生活の疎隔した他人はなおさらの事である。
相対性原理側面観
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
「一つ、そこに下っている綱を引っ張ってみて下さい。それで鳴る
鳴子
(
なるこ
)
が
親爺
(
おやじ
)
の方にも娘の方にも、両方の室にあるのですから。」
聖アレキセイ寺院の惨劇
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
▼ もっと見る
可愛そうだと思って百もやると材木の間に
親爺
(
おやじ
)
が隠れていて、
此方
(
こっち
)
へ来い/\と云って、又人が来ればワーッと泣き出す奴があります
業平文治漂流奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
御本家に飼殺しの
親爺
(
おやじ
)
仁右衛門、
渾名
(
あだな
)
も
苦虫
(
にがむし
)
、むずかしい顔をして、御隠居殿へ出向いて、まじりまじり、
煙草
(
たばこ
)
を
捻
(
ひね
)
って言うことには
草迷宮
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
鍬
(
くわ
)
をかついでいる
百姓
(
ひゃくしょう
)
の
親爺
(
おやじ
)
さんといったほうが適当であり、講義の調子も、その風貌にふさわしく、
訥々
(
とつとつ
)
として
渋
(
しぶ
)
りがちだった。
次郎物語:05 第五部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
悪魔ではなくて、いい幽霊が手伝っているのかも知れないぞ。あの子のお父さんは立派な狩人だった。だから
親爺
(
おやじ
)
の幽霊が、自分の子供を
負けない少年
(新字新仮名)
/
吉田甲子太郎
(著)
「土手の煮売屋の
親爺
(
おやじ
)
、綱屋の綱七——この
家
(
や
)
の主人によく似ていると言われ、
平常
(
ふだん
)
から孫右衛門殿が
贔屓
(
ひいき
)
にしてやっていたが」
銭形平次捕物控:074 二度死んだ男
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
あの女がたった一人いるおかげで、この村の若者や
親爺
(
おやじ
)
どもは、だいぶ不自由をしのぎいいし金もかからないと喜んでいますよ。
禅僧
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
「永田の紙屋なんか
可哀相
(
かわいそう
)
なものさ。あの家は外から見ても、それは立派な普請だが、
親爺
(
おやじ
)
さん床柱を
撫
(
な
)
でてわいわい泣いたよ」
壊滅の序曲
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
「ヤイ、石金のもうろく
親爺
(
おやじ
)
め、オタンチンのげじげじ野郎め、わらじの裏みてえなつらアしやがって、きいたふうのことをぬかすねえ」
丹下左膳:03 日光の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
威光のある
親爺
(
おやじ
)
から追払われた、その垣根から屋敷の周囲をめぐって見ると、とにかく、村中きってこれだけの構えの家はない。
大菩薩峠:41 椰子林の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
「せっかく
親爺
(
おやじ
)
の
記念
(
かたみ
)
だと思って、取って来たようなものの、しようがないねこれじゃ、
場塞
(
ばふさ
)
げで」と
零
(
こぼ
)
した事も一二度あった。
門
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
この夏期学校に来ますついでに私は東京に立ち寄り、そのとき私の
親爺
(
おやじ
)
と詩の話をいたしました。親爺が
山陽
(
さんよう
)
の古い詩を出してくれました。
後世への最大遺物
(新字新仮名)
/
内村鑑三
(著)
騒ぎの最中で誰も老僕の挙動など注意していなかったけれど、私はふとそれを見て、
親爺
(
おやじ
)
気でも違ったのではないかと驚いた。
何者
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
(その買い物は、実に趣味の悪い品ばかりで、自分はたいてい、すぐにそれを、焼きとり屋の
親爺
(
おやじ
)
などにやってしまいました)
人間失格
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
すると事務長の八木稔と言うのと、この水夫長の矢島五郎君の二人だ。ところが、事務長の八木稔の方はもう五十近い
親爺
(
おやじ
)
だ。
カンカン虫殺人事件
(新字新仮名)
/
大阪圭吉
(著)
一度ならず二度までもあまりといえば不思議なので
翌朝
(
よくあさ
)
彼は
直
(
すぐ
)
に
家主
(
いえぬし
)
の家へ行った、
家主
(
やぬし
)
の
親爺
(
おやじ
)
に会って今日まであった事を一部始終
談
(
はな
)
して
暗夜の白髪
(新字新仮名)
/
沼田一雅
(著)
「女も見つかったが、
親爺
(
おやじ
)
がやんやん云って来るものだから、たった一週間しかいられなかった、おちついて好い処だね」
草藪の中
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
「
私
(
わて
)
が
親爺
(
おやじ
)
に無心して払いまっさ」と柳吉も
黙
(
だま
)
っているわけに行かなかったが、種吉は「そんなことしてもろたら困りまんがな」と手を
振
(
ふ
)
った。
夫婦善哉
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
しかし娘のお加代というのは死んだ
親爺
(
おやじ
)
似かして、母親とは正反対の優しい物ごしで、色が幽霊のように白くて、縫物が上手という評判であった。
いなか、の、じけん
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
三郎は驚いて声の
主
(
ぬし
)
を見た。父の山椒大夫に見まごうような
親爺
(
おやじ
)
で、この寺の
鐘楼守
(
しゅろうもり
)
である。親爺は詞を
続
(
つ
)
いで言った。
山椒大夫
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
長者の
親爺
(
おやじ
)
は、腕のできる郷士を大勢召し抱えて、今度賊が来たら、村の者とも合図しておいて、一あわ吹かせてやると待ちかまえているんです。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
武家の辻番所には「生きた
親爺
(
おやじ
)
の捨て所」と川柳に嘲られるような、半
耄碌
(
もうろく
)
の老人の詰めているのが多いのであるが
西瓜
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
なにしろ怠け癖がついちまって、さっぱり仕事もせずに、もうろく
親爺
(
おやじ
)
みたいに、ぼそぼそ言ってるだけだからなあ。
ワーニャ伯父さん:――田園生活の情景 四幕――
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
しばらくして、お近婆さんは男と一緒に夜逃げしたのだと
判
(
わか
)
った。それは兵さんの
家
(
うち
)
の隣の小屋にいた飴売りの
親爺
(
おやじ
)
と、かけ落したと言うのだった。
あまり者
(新字新仮名)
/
徳永直
(著)
ぼくは
親爺
(
おやじ
)
の金まで持ちだした。……三年かかれば研究はできあがると思ったが、だめだった。それから屋敷を売って次の五年間の研究費を作った。
ふしぎ国探検
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
この
親爺
(
おやじ
)
がもう六十近くなってから、特赦を受けて世の中へ出てきたのである。そうしてそれからどうなったか、すぐにまた分らなくなってしまった。
山の人生
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
伸太郎 ちょいと高い
閾
(
しきい
)
だったが、娘のお蔭で越えさせられてしまった。俺もこれでやっぱり
親爺
(
おやじ
)
の端っくれかな。
女の一生
(新字新仮名)
/
森本薫
(著)
にんじんは
焦
(
じ
)
れて、日の照りつける真下に、突っ立ったまま、じっとしている。彼は、
親爺
(
おやじ
)
のすることをみている。
にんじん
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
「阿Q、これでも子供が
親爺
(
おやじ
)
を打つのか。さあどうだ。人が畜生を打つんだぞ。自分で言え、人が畜生を打つと」
阿Q正伝
(新字新仮名)
/
魯迅
(著)
学士と女とで、死人のように青い顔の病人を車へ連れ込むのを見て、
家番
(
やばん
)
の
親爺
(
おやじ
)
も手を貸そうとして進み出た。
みれん
(新字新仮名)
/
アルツール・シュニッツレル
(著)
千蔵つい嬉しくなって、世間の
親爺
(
おやじ
)
という親爺をみんな隠居させたらさぞ安楽だろうと思ったくらいである。
評釈勘忍記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
格のついた
親爺
(
おやじ
)
らしい落ちつきを示して、赤ん坊の身体に石鹸をつけ、タオルで、ごしごしこすっている。
親馬鹿入堂記
(新字新仮名)
/
尾崎士郎
(著)
でもこの人は
剽軽
(
ひょうきん
)
ではあったが親切者で、若い売子たちに対しては
親爺
(
おやじ
)
気取りの注意をもってよく面倒を見ていた。そんな関係からみんなに可愛がられていた。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
「智慧のある馬鹿に
親爺
(
おやじ
)
は困りはて」という川柳がありますが、あの智慧のある馬鹿
息子
(
むすこ
)
がもっているような、そんな智慧は決して、般若の智慧ではありません。
般若心経講義
(新字新仮名)
/
高神覚昇
(著)
或
(
あ
)
るとき
難波橋
(
なにわばし
)
の
吾々
(
われわれ
)
得意の
牛鍋屋
(
うしなべや
)
の
親爺
(
おやじ
)
が豚を買出して来て、
牛屋
(
うしや
)
商売であるが気の弱い
奴
(
やつ
)
で、自分に殺すことが出来ぬからと云て、緒方の書生が目指された。
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
魚の町と云う小説を書きたくなる。階下の
親爺
(
おやじ
)
さんと義父は連れだって出たまま今朝も戻っては来ない。
新版 放浪記
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
何とか都合して
貰
(
もら
)
えないだろうかと懇願する———哀願さえもする———客が絶えないが、この店の
親爺
(
おやじ
)
もよくある
鮨屋
(
すしや
)
の親爺の型で、無愛想を売り物にしており
細雪:02 中巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
するとその間が僅か五間ほどになって、よくその黒いものを見定めますと、それは思いがけない「
親爺
(
おやじ
)
」ではありませんか。北海道では熊のことを、俗に親爺というのです。
熊
(新字新仮名)
/
久米正雄
(著)
この娘は、絵の勉強と称して、パリとマドリッドとに、二年間行っていたが、この夏アメリカへ帰って来て、グリーンランド帰りの
親爺
(
おやじ
)
の世話を、目下しているわけである。
サラダの謎
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
「なんでもない、なんでもない、火事ごっこだよ。畜生!」彼は
親爺
(
おやじ
)
と妹の身の上を案じた。
パルチザン・ウォルコフ
(新字新仮名)
/
黒島伝治
(著)
おれも、もう長いことはあるまい……よくそれでも本陣、問屋、庄屋を勤めあげた。そうあの半六
親爺
(
おやじ
)
が草葉の陰で言って、このおれを待っていてくれるような気がする……
夜明け前:03 第二部上
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
「うちの
親爺
(
おやじ
)
(夫君のこと)はタマネギや肉の一杯はいっているオムレツが大好きなのよ」
鮟鱇一夕話
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
これか。これは藤沢の制服なんだ。彼
曰
(
いわく
)
、是非僕の制服を借りてくれ給え、そうすると僕はそれを口実に、
親爺
(
おやじ
)
のタキシイドを借りるから。——そこでやむを得ず、僕がこれを
路上
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
「おれの仕事はうまくすすんで行っている。明日シモンは
親爺
(
おやじ
)
のところへ帰るだろう。」
イワンの馬鹿
(新字新仮名)
/
レオ・トルストイ
(著)
そこに近づくと、肉切台のむこうに立っている肥った
親爺
(
おやじ
)
に、彼は卵を指さして見せた。
黄色い日日
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
すっぱりと手を切るから、
手切金
(
てぎれきん
)
の五十両、なんとか
工面
(
くめん
)
をしてくれと千賀春にいわれ、のぼせ上って前後の
見境
(
みさかい
)
もなく
親爺
(
おやじ
)
の
懸硯
(
かけすずり
)
から盗みだして渡したが、手を切るとは真赤な嘘。
顎十郎捕物帳:06 三人目
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
親
常用漢字
小2
部首:⾒
16画
爺
漢検準1級
部首:⽗
13画
“親爺”で始まる語句
親爺奴
親爺株
親爺様