“見栄:みえ” の例文
“見栄:みえ”を含む作品の著者(上位)作品数
紫式部6
夏目漱石6
吉川英治5
太宰治5
ヴィクトル・ユゴー3
“見栄:みえ”を含む作品のジャンル比率
文学 > フランス文学 > 小説 物語11.5%
文学 > 日本文学 > 戯曲1.0%
文学 > 日本文学 > 小説 物語0.9%
(注)比率=対象の語句にふりがなが振られている作品数÷各ジャンルの合計の作品数
弟を深田へ縁づけたということをたいへん見栄みえに思ってたあによめは、省作の無分別をひたすら口惜くやしがっている。
春の潮 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
都会の婦人に多い見栄みえからでなしに、お三輪はくれられるだけくれて、この池の茶屋に使われている人達をも悦ばせたかった。
食堂 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
と叫んで、その場にひれふした。顔と頭をやられたのである。今は見栄みえも外聞もない。主従先をあらそって逃げだした。
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
が、彼はきあきしてくる。ことに、何ひとつ仕止しとめず、見栄みえという支えがなくなると、もうだめだ。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
と、口説くどいて、秀吉は大声で泣いた。醜態といえば醜態ともいえるくらい、見栄みえも外聞もなく、おいおいと泣くのであった。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
妻と子のために、また多少は、俗世間への見栄みえのために、何もわからぬながら、ただ懸命に書いて、お金をもらって、いつとは無しに老けてしまった。
八十八夜 (新字新仮名) / 太宰治(著)
男の人って、死ぬるきわまで、こんなにもったい振って意義だの何だのにこだわり、見栄みえを張ってうそをついていなければならないのかしら。
おさん (新字新仮名) / 太宰治(著)
さて、こんな、見栄みえだかさらしだかわからない身上で、わたしはいったいどこへ落着くのだろう。
大菩薩峠:38 農奴の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
いつぞや薫からもらった衣服の芳香を持ちあぐんだ宿直とのいの侍も鬘髭かずらひげといわれる見栄みえのよくない顔をして客の取り持ちに出ていた。
源氏物語:48 椎が本 (新字新仮名) / 紫式部(著)
檀紙の上の字も見栄みえをかまわずまじめな書きぶりがしてあるのであるが、それもまた美しく思われた。
源氏物語:51 宿り木 (新字新仮名) / 紫式部(著)
我国で見るような、長くて細い塚は見当らず、また石屋の芸術品である所の見栄みえを張った、差出がましい代物しろものが無いので大いに気持がいい。
「ないときは遣らないでもいじゃありませんか。何もそう見栄みえを張る必要はないんだから」
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
見栄みえも思わず目のためにしかめている顔は、平生の誇りに輝いた時の面影を失って見苦しかった。
源氏物語:36 柏木 (新字新仮名) / 紫式部(著)
なんらの見栄みえも気どりも知らぬ少年少女の時に知った恋の今日まで続いて来た年月を数えてみては
源氏物語:37 横笛 (新字新仮名) / 紫式部(著)
金を出してもらいに来ながら、下らない見栄みえをすると自分でも思ったけれ共、どんな人間でも持って居る「しゃれ」がそうさせないでは置かなかった。
栄蔵の死 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
しかるに、司教がだれかと食事を共にする場合には、無邪気な見栄みえではあるが、卓布の上に六組の銀の食器をすっかり置いておくのが家の習慣となっていた。
見栄みえの強い津田は手紙の中に書いてある事を、結婚してまだ間もない細君に話したくなかった。けれどもそれはまた細君に話さなければならない事でもあった。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
わかい武士の血が、他方では、見栄みえに苦労する伊達者だてしゃとしてあらわれていたのだ。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
いまごろはなべを洗って待っているだろうに、おちぶれても、つまらぬ意地と見栄みえから、けちでないところを見せたつもりかも知れないが、あわれなものだ
新釈諸国噺 (新字新仮名) / 太宰治(著)
武蔵はいよいよ狼狽ろうばいして、見栄みえもなく、られた笠を捨てたまま逃げ出した。
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あらゆる場合に右の二つの名前を持ち出すことは、彼女の楽しみでもあり見栄みえでもあった。
「ははは。跛行びっこもだいぶ引き馴れて参った。気をつこうて歩くと却って転ぶ。ちか頃は、勘で跳ぶのじゃ、こつで歩くのじゃよ。見栄みえはいらんからのう」
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そこで、冷かしも、ぜっ返しも気に掛けるいとまなく、見栄みえ糸瓜へちまも棒に振って、いきなり、おはちからしゃくって茶碗へ一杯盛り上げた。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そうなっても、まだ見栄みえ張っていて、なあに、おれには、内緒でかくしている山がある。
十五年間 (新字新仮名) / 太宰治(著)
「そうはいきませんわ。わたしだってこんないんちきな稼業をしていますけれども、木偶人形でくにんぎょうじゃあありませんからね。見栄みえも外聞もありますわ」
宝石の序曲 (新字新仮名) / 松本泰(著)
長い旅をして来たせいで、色が黒くなりやつれた伊予の長官は見栄みえも何もなかった。
源氏物語:04 夕顔 (新字新仮名) / 紫式部(著)
見栄みえもなく、むちゅうでさけびながら、まくのすそをくぐッて浜松城はままつじょう剣士けんしたちがいるたまへ四つンばいにげこんだ。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
面白く興じていた手柄顔を、母も天晴あっぱれと、うごめかす鼻の先に、得意の見栄みえをぴくつかせていたものを、——あれは、ほんの表向で、内実の昨夕ゆうべを見たら
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
彼の病的に弱つた神経がだん/\娘達への見栄みえや虚構の力をも失つて行つた。
老主の一時期 (新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
それは彼女に残っていた唯一の見栄みえであって、それもきよい見栄だった。
人間は非常な不幸におちいっても、極度に見栄みえをはることがあるものです。
見栄みえ外聞がいぶんもなく加奈子にまかせ切った様子が不憫で、また深々と抱き寄せる加奈子の鼻に、少し青くさいような、そして羊毛のような、かすかな京子の体臭が匂う。
春:――二つの連作―― (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
平岡は世間的な色々の動機から、代助に見栄みえを張つてゐる。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「なんの、見栄みえがいろう、おぬしいうが嫌ならわしがいう」
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼らは勇ましく死ぬということが一つの見栄みえであった。
三浦右衛門の最後 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
見栄みえの入らない所でも一種の考から沈黙を守つてゐる。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
もはや利己心もなく、見栄みえもなく、下心もなかった。
舞台へかかる足どりにも八里の難道という足どりは無く、峠の上へ来て四方を見渡す態度にも境界そのものがなくて、どうも見栄みえを切って大向うの掛声を待ち受けるものの如くにしか見えなかったので
生前身後の事 (新字新仮名) / 中里介山(著)
見栄みえも外聞もなく大声を上げて、やっとかどの救世軍の煉瓦れんが建ての前あたりを歩いているところへ追い着いた時には、どこへ曲ったのか? フッとその姿は消えせてしまいました。
墓が呼んでいる (新字新仮名) / 橘外男(著)
「島崎ッ」と前の女も、見栄みえを忘れて叫んでいた。
かんかん虫は唄う (新字新仮名) / 吉川英治(著)
旦那の友だちは皆、当時流行の猟虎らっこの帽子をかぶり、ぶりのよい官員や実業家と肩をならべて、権妻ごんさいでもたくわえることを男の見栄みえのように競い合う人たちだからであった。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
ところがブロックにも、少なくともKに対しては見栄みえというものがあった。というのは、拳を振りまわしながらKに迫ってきて、弁護士の威をかりてその身近でだけやれるような大声で叫んだからである。
審判 (新字新仮名) / フランツ・カフカ(著)
ゆき子は見栄みえもなく涙が溢れた。辛くて、そこに伊庭の顔を見るのも不愉快であつた。伊庭は手をのばして、ラジオの小箱を引き寄せてスイッチをひねつた。三味線の音色が、さはやかに流れ出した。
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
お延が一概に津田の依頼をしりぞけたのは、夫に同情がないというよりも、むしろ岡本に対する見栄みえに制せられたのだという事がようやく津田のに落ちた。彼の眼のうちに宿った冷やかな光が消えた。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
恩も義理もない代り、秘密も見栄みえもない。
モノロオグ (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
そのころになると、主人が生前見栄みえを張っていた松の家も、貸金があると思っていた方に逆に借金のあることが解ったり、電話も担保に入っていたりして、皆で勧めた入院の手おくれたなぞけて来た。
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
これが彼らの見栄みえだったのだろう。
硝子戸の中 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
いまは見栄みえもなく敗走していた池田方の士卒は、志段味しだみ篠木しのき柏井かしわい——と支離滅裂しりめつれつになって、遁走とんそうしたが、矢田川やだがわを越え得たものは、みな助かった。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
銭はうちの銭だ、盗んだ銭じゃないぞと云うような気位きぐらいで、かえって藩中者の頬冠をして見栄みえをするのを可笑おかしくおもったのは少年の血気、自分ひと自惚うぬぼれて居たのでしょう。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
また別に初松魚はつがつおなどを珍重して、借金を質に入れてまで馬鹿な金を出して、それを買って食うという様な気風も単に江戸ッ子としての見栄みえから来て居るのではない、死んだ材料にばっかり慣らされて居た当時の都会中心人が
最後の見栄みえだ。
死刑囚最後の日 (新字新仮名) / ヴィクトル・ユゴー(著)
こうした水商売に付きものの見栄みえやお義理の代償として、それをあらかじめ勘定に入れるとしても、芸者に寝込まれたり、前借を踏み倒されたりすることは、何といっても大きな損害であり、頭脳あたまの利くある一人が率先して足をぬき
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
たとえば目上の者が目下の者を抑えつけているのを見ると、以前は癪に障ってたまらなかったが、今はすっかり気をえて、いずれこの少年が子供を持つと、大概こんな大見栄みえを切るのだろうと、そう思うと何の不平も起らなくなった。
端午節 (新字新仮名) / 魯迅(著)
それも直ぐ評判になつて、変テケレンな奴だといふ風評も知らずに、口々にめてもらへるものとばかり思ひ込み、この卑しい見栄みえの勉強のための勉強を、それに眠り不足で鼻血の出ることをも勉強家のせゐに帰して、内心で誇つてゐた。
途上 (新字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
「わたしは、見栄みえも、外聞も、恥も捨てています。わたしは、いのちさえ賭けているのに——そなたは、何というひどいことを——大川ばたで、しみじみと二人でお話したときでも、わたしのこころは、よう判っていて下さるはずなのに——太夫、ほんとうに、この気持が、おわかりになりませぬのかえ?」
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
その時、江戸から来て居る手塚と云う書生があって、この男はる徳川家の藩医の子であるから、親の拝領したあおい紋付もんつきを着て、頭は塾中流行の半髪で太刀作たちづくりの刀をさしてると云う風だから、如何いかにも見栄みえがあって立派な男であるが、如何どう身持みもちくない。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
地方官階級の家と縁組みをすることなどは人がよく言うことでないのだが、現代では貴族の婿をあがめて、後援をよくしてくれることに見栄みえの悪さを我慢する人もあるようになったのだからね。どうせ同じようなものだとしても、世間には、わざわざまま娘の婿にまでなってあの家の余沢をこうむりたがったように見えるからね。
源氏物語:52 東屋 (新字新仮名) / 紫式部(著)
学校は、もともと落第させないように出来ているものです。それを落第するのは、必ず学生のほうから、無理に好んで志願する結果なのです。感傷だね。教師に対する反抗だね。見栄みえだね。くだらない正義感だね。かえって落第を名誉のように思って両親を泣かせている学生もあるが、あれは、としとって出世しかけた時に後悔します。
新ハムレット (新字新仮名) / 太宰治(著)