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ふりがな文庫
“
見栄
(
みえ
)” の例文
旧字:
見榮
うごめかす鼻の先に、得意の
見栄
(
みえ
)
をぴくつかせていたものを、——あれは、ほんの表向で、内実の
昨夕
(
ゆうべ
)
を見たら、招く
薄
(
すすき
)
は
向
(
むこう
)
へ
靡
(
なび
)
く。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
四十となれば世間的な
見栄
(
みえ
)
や、かけ引などもあったかも知れぬが、ミネはそれをそっと包んで平凡な女の誇りを持たせようとした。
妻の座
(新字新仮名)
/
壺井栄
(著)
今はすっかり気を
更
(
か
)
えて、いずれこの少年が子供を持つと、大概こんな大
見栄
(
みえ
)
を切るのだろうと、そう思うと何の不平も起らなくなった。
端午節
(新字新仮名)
/
魯迅
(著)
男の人って、死ぬる
際
(
きわ
)
まで、こんなにもったい振って意義だの何だのにこだわり、
見栄
(
みえ
)
を張って
嘘
(
うそ
)
をついていなければならないのかしら。
おさん
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
と、
掻
(
か
)
き
口説
(
くど
)
いて、秀吉は大声で泣いた。醜態といえば醜態ともいえるくらい、
見栄
(
みえ
)
も外聞もなく、おいおいと泣くのであった。
新書太閤記:06 第六分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
▼ もっと見る
それは彼女に残っていた唯一の
見栄
(
みえ
)
であって、それも
聖
(
きよ
)
い見栄だった。彼女は自分のものをすべて売り払って、それで二百フランを得た。
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
何でこんなに
見栄
(
みえ
)
をばかり張りたがるのだろうか。もうかなりの年をしていながら父は相も変らぬ怠け者のごろつき仲間でしかないのだ。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
それだけ、あたしも、本気になれたんだわ。釣るとか、
瞞
(
だま
)
すとか、そんな腹は、どつちにもない。恩も義理もない代り、秘密も
見栄
(
みえ
)
もない。
モノロオグ
(新字旧仮名)
/
岸田国士
(著)
我国で見るような、長くて細い塚は見当らず、また石屋の芸術品である所の
見栄
(
みえ
)
を張った、差出がましい
代物
(
しろもの
)
が無いので大いに気持がいい。
日本その日その日:03 日本その日その日
(新字新仮名)
/
エドワード・シルヴェスター・モース
(著)
都会の婦人に多い
見栄
(
みえ
)
からでなしに、お三輪はくれられるだけくれて、この池の茶屋に使われている人達をも悦ばせたかった。
食堂
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
刑部の家臣は人間のうちにこんなに命を惜しがる者がいるのが不思議で
堪
(
たま
)
らなかった。彼らは勇ましく死ぬということが一つの
見栄
(
みえ
)
であった。
三浦右衛門の最後
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
万次はことごとく
萎
(
しお
)
れ返っております。これが
筋彫
(
すじぼり
)
の
刺青
(
いれずみ
)
などを
見栄
(
みえ
)
にして、やくざ者らしく
肩肘
(
かたひじ
)
を張っていたのが
可笑
(
おか
)
しくなるくらいです。
銭形平次捕物控:211 遠眼鏡の殿様
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
という
文
(
ふみ
)
であった。檀紙の上の字も
見栄
(
みえ
)
をかまわずまじめな書きぶりがしてあるのであるが、それもまた美しく思われた。
源氏物語:51 宿り木
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
「そうはいきませんわ。わたしだってこんないんちきな稼業をしていますけれども、
木偶人形
(
でくにんぎょう
)
じゃあありませんからね。
見栄
(
みえ
)
も外聞もありますわ」
宝石の序曲
(新字新仮名)
/
松本泰
(著)
金を出してもらいに来ながら、下らない
見栄
(
みえ
)
をすると自分でも思ったけれ共、どんな人間でも持って居る「しゃれ
気
(
け
)
」がそうさせないでは置かなかった。
栄蔵の死
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
さて、こんな、
見栄
(
みえ
)
だか
曝
(
さら
)
しだかわからない身上で、わたしはいったいどこへ落着くのだろう。お銀様から、落着くべき絵図面は事細かに書いてもらってある。
大菩薩峠:38 農奴の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
銭は
家
(
うち
)
の銭だ、盗んだ銭じゃないぞと云うような
気位
(
きぐらい
)
で、
却
(
かえっ
)
て藩中者の頬冠をして
見栄
(
みえ
)
をするのを
可笑
(
おか
)
しく
思
(
おもっ
)
たのは少年の血気、自分
独
(
ひと
)
り
自惚
(
うぬぼれ
)
て居たのでしょう。
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
見栄
(
みえ
)
も
外聞
(
がいぶん
)
もなく加奈子に
委
(
まか
)
せ切った様子が不憫で、また深々と抱き寄せる加奈子の鼻に、少し青くさいような、そして羊毛のような、かすかな京子の体臭が匂う。
春:――二つの連作――
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
が、彼は
飽
(
あ
)
きあきしてくる。ことに、何ひとつ
仕止
(
しと
)
めず、
見栄
(
みえ
)
という支えがなくなると、もうだめだ。
にんじん
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
俺は何も
見栄
(
みえ
)
や酔狂で、こんな恰好をしているわけではないのだ。やかましく言うなら、自己保存の本能が、教える知恵……とでも呼ぶべきものの、なせる
業
(
わざ
)
だろう。
ある偃松の独白
(新字新仮名)
/
中村清太郎
(著)
見かけたところ、彼は有利な印象を与えようと腐心して、
見栄
(
みえ
)
ぼうの本性が分別を圧倒したらしい。
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
口々に
褒
(
ほ
)
めてもらへるものとばかり思ひ込み、この卑しい
見栄
(
みえ
)
の勉強のための勉強を、それに眠り不足で鼻血の出ることをも勉強家のせゐに帰して、内心で誇つてゐた。
途上
(新字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
この
煙管
(
きせる
)
を手に入れたのは、思えば、ちょっと、自分に
羞
(
はに
)
かむほど昔のことであった。わかい武士の血が、他方では、
見栄
(
みえ
)
に苦労する
伊達者
(
だてしゃ
)
としてあらわれていたのだ。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
「日本人の腹切りは
見栄
(
みえ
)
でやるのか責任を感じてやるのかと、この婦人が訊ねるんですよ」
厨房日記
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
婆
(
ばあ
)
やだけ残して抱え全部を懇意な待合の一室に外泊させ、お神も寝ずの番で看護を手伝うのだったが、
苛酷
(
かこく
)
な一面には、派手で
大業
(
おおぎょう
)
な
見栄
(
みえ
)
っぱりもあり、
箱丁
(
はこや
)
を八方へ走らせ
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
と
見栄
(
みえ
)
も外聞もなく大声を上げて、やっと
角
(
かど
)
の救世軍の
煉瓦
(
れんが
)
建ての前あたりを歩いているところへ追い着いた時には、どこへ曲ったのか? フッとその姿は消え
失
(
う
)
せてしまいました。
墓が呼んでいる
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
と菊太郎君は異性が側にいると、兎角
見栄
(
みえ
)
を張って、僕に突っかゝって来る。
勝ち運負け運
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
ところがブロックにも、少なくともKに対しては
見栄
(
みえ
)
というものがあった。
審判
(新字新仮名)
/
フランツ・カフカ
(著)
ゆき子は
見栄
(
みえ
)
もなく涙が溢れた。辛くて、そこに伊庭の顔を見るのも不愉快であつた。伊庭は手をのばして、ラジオの小箱を引き寄せてスイッチをひねつた。三味線の音色が、
爽
(
さはや
)
かに流れ出した。
浮雲
(新字旧仮名)
/
林芙美子
(著)
もはや利己心もなく、
見栄
(
みえ
)
もなく、下心もなかった。魂のあらゆる曇りは、その愛の
息吹
(
いぶ
)
きに吹き払われてしまった。「愛する、愛する、」——笑みを含み涙に濡れた彼らの眼がそう言っていた。
ジャン・クリストフ:04 第二巻 朝
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
こう
一言
(
ひとこと
)
言ったきり、相変らず夜は縄をない昼は山刈りと土肥作りとに
側目
(
わきめ
)
も振らない。弟を深田へ縁づけたということをたいへん
見栄
(
みえ
)
に思ってた
嫂
(
あによめ
)
は、省作の無分別をひたすら
口惜
(
くや
)
しがっている。
春の潮
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
人間は非常な不幸におちいっても、極度に
見栄
(
みえ
)
をはることがあるものです。この男は死を考えました。自殺を考えました。そして、自分自身のために泣いたように思います。——はげしく泣きました。
絵のない絵本:01 絵のない絵本
(新字新仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
見栄
(
みえ
)
を張ることないじゃないのと波子は言った。
いやな感じ
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
わたしは、
見栄
(
みえ
)
も、外聞も、恥も捨てています。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
今はさげすみも、ほこりも、
見栄
(
みえ
)
もない。
ウェストミンスター寺院
(新字新仮名)
/
ワシントン・アーヴィング
(著)
見栄
(
みえ
)
も無く
誇
(
ほこり
)
も無くて老の春
六百五十句
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
そこで、冷かしも、
交
(
ま
)
ぜっ返しも気に掛ける
暇
(
いとま
)
なく、
見栄
(
みえ
)
も
糸瓜
(
へちま
)
も棒に振って、いきなり、お
櫃
(
はち
)
からしゃくって茶碗へ一杯盛り上げた。
坑夫
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
父のひとりよがりや、
虚栄心
(
きょえいしん
)
や、さもしい
見栄
(
みえ
)
や、けちな
量見
(
りょうけん
)
は、事ごとに濃厚に表われて、いちいち私をくさくささせるばかりであった。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
そして
真先
(
まっさき
)
に源氏の所へ伺候した。長い旅をして来たせいで、色が黒くなりやつれた伊予の長官は
見栄
(
みえ
)
も何もなかった。
源氏物語:04 夕顔
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
見栄
(
みえ
)
もなく、むちゅうでさけびながら、
幕
(
まく
)
のすそをくぐッて
浜松城
(
はままつじょう
)
の
剣士
(
けんし
)
たちがいる
溜
(
たま
)
り
場
(
ば
)
へ四つンばいに
逃
(
に
)
げこんだ。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
妻と子のために、また多少は、俗世間への
見栄
(
みえ
)
のために、何もわからぬながら、ただ懸命に書いて、お金をもらって、いつとは無しに老けてしまった。
八十八夜
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
しかるに、司教がだれかと食事を共にする場合には、無邪気な
見栄
(
みえ
)
ではあるが、卓布の上に六組の銀の食器をすっかり置いておくのが家の習慣となっていた。
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
また別に
初松魚
(
はつがつお
)
などを珍重して、借金を質に入れてまで馬鹿な金を出して、それを買って食うという様な気風も単に江戸ッ子としての
見栄
(
みえ
)
から来て居るのではない
百姓弥之助の話:01 第一冊 植民地の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
最初は
気障
(
きざ
)
で、
見栄
(
みえ
)
を張つて居るやうに見えて嫌でしたが、今ではそんな気は少しもしません。何うも見栄ばかりではあんなに根よく本を持ち廻る事は出来ますまい。
芥川の印象
(新字旧仮名)
/
菊池寛
(著)
旦那の友だちは皆、当時流行の
猟虎
(
らっこ
)
の帽子をかぶり、
羽
(
は
)
ぶりのよい官員や実業家と肩をならべて、
権妻
(
ごんさい
)
でも
蓄
(
たくわ
)
えることを男の
見栄
(
みえ
)
のように競い合う人たちだからであった。
夜明け前:04 第二部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
梯子段
(
はしごだん
)
の下に腰を抜かして、
見栄
(
みえ
)
も色気もなく
納戸
(
なんど
)
の前の四畳半を指しているのでした。
銭形平次捕物控:125 青い帯
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
この男は
或
(
あ
)
る徳川家の藩医の子であるから、親の拝領した
葵
(
あおい
)
の
紋付
(
もんつき
)
を着て、頭は塾中流行の半髪で
太刀作
(
たちづくり
)
の刀を
挟
(
さし
)
てると云う風だから、
如何
(
いか
)
にも
見栄
(
みえ
)
があって立派な男であるが
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
主人が生前
見栄
(
みえ
)
を張っていた松の家も、貸金があると思っていた方に逆に借金のあることが解ったり、電話も担保に入っていたりして、皆で勧めた入院の手おくれた
謎
(
なぞ
)
も
釈
(
と
)
けて来た。
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
最早
(
もは
)
や娘達に弁解の言葉も尽きた。彼の病的に弱つた神経がだん/\娘達への
見栄
(
みえ
)
や虚構の力をも失つて行つた。離れ家の方から使ひに来る
下婢
(
かひ
)
達の姿にも顔をそむけるやうに彼はなつた。
老主の一時期
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
今は
見栄
(
みえ
)
も外聞もない。主従先をあらそって逃げだした。
苦心の学友
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
“見栄(
虚飾
)”の解説
虚飾(きょしょく、en: Vanity)とは、他者に自己を良いように見てほしいため、うわべや体裁を整えること。周囲から自己をよく見てもらおうと無理をすること。実質を伴わない上辺だけの飾り。虚栄、見栄(みえ)ともいう。14世紀以前では、ナルシシズムの要素は無く、単に無価値(futility)を意味していた。
(出典:Wikipedia)
見
常用漢字
小1
部首:⾒
7画
栄
常用漢字
小4
部首:⽊
9画
“見栄”で始まる語句
見栄坊
見栄張