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蝸牛
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かたつむり
ふりがな文庫
“
蝸牛
(
かたつむり
)” の例文
まるで、大自然の威力の前に、
脆弱
(
ぜいじゃく
)
な人間の文明がおどおどして、
蝸牛
(
かたつむり
)
のように頭をかたく殻の中へかくして萎縮しているようである。
犠牲者
(新字新仮名)
/
平林初之輔
(著)
蝸牛
(
かたつむり
)
にしてもやっぱりこの神仏の気を受けているように感じた。私はだんだん地蔵さんの附近に存在する昆虫を殺すことをしなくなった。
幼年時代
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
その間を、陰気な石の段々が、
蝸牛
(
かたつむり
)
の
殻
(
から
)
みたいに、上へ上へと際限もなく続いて居ります。本当に変てこれんな気持ちでしたよ。
押絵と旅する男
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
こんな旅をするには人間の手で出来た一番早い機関車も、世界一週をしようと云ふ非常な野心を持つたのろ/\した
蝸牛
(
かたつむり
)
のやうなものだ。
科学の不思議
(新字旧仮名)
/
ジャン・アンリ・ファーブル
(著)
それには
蜻蛉
(
とんぼ
)
や、
螇蚸
(
ばった
)
や、蝉や、
蝸牛
(
かたつむり
)
や、蛙や、
蟾蜍
(
ひきがえる
)
や、鳥や、その他の絵が何百となく、本物そっくりに、而も簡明にかかれてあった。
日本その日その日:03 日本その日その日
(新字新仮名)
/
エドワード・シルヴェスター・モース
(著)
▼ もっと見る
「え」と云いながら顔を上げた独仙君の
山羊髯
(
やぎひげ
)
を伝わって
垂涎
(
よだれ
)
が一筋長々と流れて、
蝸牛
(
かたつむり
)
の這った
迹
(
あと
)
のように歴然と光っている。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
その点から云えば蛙より
蝸牛
(
かたつむり
)
の方が
遥
(
はる
)
かに
優
(
まさ
)
っている。蛙料理は上等のバタでフライにしてトマトケチャップをかけて食べる。
異国食餌抄
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
これは英国で、
蝸牛
(
かたつむり
)
や牛肉や
林檎
(
りんご
)
に
疣
(
いぼ
)
を移し、わが
邦
(
くに
)
でも、鳥居や
蚊子木葉
(
いすのきのは
)
に疣を伝え去るごとく、頸の腫れを蛇に移すのだ。
十二支考:04 蛇に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
蝸牛
(
かたつむり
)
も、
田螺
(
たにし
)
も食うかと思えば、果実の類はまた最も好むところで、木に
攀
(
よ
)
じ上ることの技能を兼ねているのはその故である。
大菩薩峠:33 不破の関の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
そして日々の出来事をどんなつまらぬ事でも書いた。隣家の竹垣に
蝸牛
(
かたつむり
)
が幾つ居たということでも彼の手紙の材料となった。
恭三の父
(新字新仮名)
/
加能作次郎
(著)
蛍の幼虫は
蝸牛
(
かたつむり
)
を食ふ時に全然蝸牛を殺してはしまはぬ。いつも新らしい肉を食ふ為に蝸牛を麻痺させてしまふだけである。
侏儒の言葉
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
東風
(
こち
)
菫
(
すみれ
)
蝶
(
ちょう
)
虻
(
あぶ
)
蜂
孑孑
(
ぼうふら
)
蝸牛
(
かたつむり
)
水馬
(
みずすまし
)
豉虫
(
まいまいむし
)
蜘子
(
くものこ
)
蚤
(
のみ
)
蚊
(
か
)
撫子
(
なでしこ
)
扇
燈籠
(
とうろう
)
草花 火鉢
炬燵
(
こたつ
)
足袋
(
たび
)
冬の
蠅
(
はえ
)
埋火
(
うずみび
)
俳諧大要
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
藪医者といふと、
蝸牛
(
かたつむり
)
や、
蟷螂
(
かまきり
)
と同じやうに草ぶかい片田舎にばかり住んでゐるやうに思ふ人があるかも知れないが、実際は都にも多いやうだ。
茶話:06 大正十一(一九二二)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
なんとも奇妙千万なのは、扇面で顔をかくして、いやらしい
蝸牛
(
かたつむり
)
の顔つきを見せるのがある。あれは北斎漫画でも見ているようにものあやしい。
随筆 寄席風俗
(新字新仮名)
/
正岡容
(著)
しかし、進むというが、
蝸牛
(
かたつむり
)
の旅である。一日、計ってみると、三マイル弱。まだパラギル山のしたあたりの位置らしい。
人外魔境:10 地軸二万哩
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
フランスの鴨の肝だろうが、
蝸牛
(
かたつむり
)
だろうが、比較にならない。もとより、てんぷら、うなぎ、寿司などの問題ではない。
河豚のこと
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
棒切れに突かれた
蝸牛
(
かたつむり
)
みたいに恐ろしく引込み思案を初めたその君の心は、……お伽噺とはほんとに好い思いつきだよ。
六月
(新字新仮名)
/
相馬泰三
(著)
それは曇った日の夕方のことで、
鼠
(
ねずみ
)
色に暮れかけた湖の上は
蝸牛
(
かたつむり
)
の
這
(
は
)
った跡のようにところどころ
鬼魅
(
きみ
)
悪く光っていた。
水郷異聞
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
そう、紙帳は、左門にとっては、ちょうど、
蝸牛
(
かたつむり
)
における殻のようなものであった。肉体の半分のようなものであった。
血曼陀羅紙帳武士
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
馬の背たけよりも高い
蕗
(
ふき
)
の林もありました。アンデルセンのお話にある白いお家の
蝸牛
(
かたつむり
)
や黒いお家の蝸牛もいました。
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
蝸牛
(
かたつむり
)
のように門を閉め、門札も出ている家もあり、ない家もあるという有様なので、知れ
難
(
にく
)
いし、訊くにも訊き難い。
宮本武蔵:04 火の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
僕は胸がむずむずしてくるのを、しいて
蝸牛
(
かたつむり
)
のように自分の殼の中だけに引込んでいたかった。そしてふと思いついて、炬燵を拵えようと云い出した。
不肖の兄
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
つるつる
滑
(
すべ
)
る乳臭い唇だ。姪は叔父を見ながら
蝸牛
(
かたつむり
)
のような
拳
(
こぶし
)
を
銜
(
くわ
)
えようとして、ぎこちなく鼻の横へ
擦
(
す
)
りつけた。
御身
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
窓の外にはネオ・アクメイズの姿がプロレタリアの肉体を
蝸牛
(
かたつむり
)
のように這っている。アンナ・ニコロ接吻したまま
恋の一杯売
(新字新仮名)
/
吉行エイスケ
(著)
巧みに古色が付けてあるからどうしても数百年前のものとしか見えぬ。中に
蝸牛
(
かたつむり
)
を這わして「
角
(
つの
)
ふりわけよ」の句が刻してあるのなどはずいぶん面白い。
根岸庵を訪う記
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
蝸牛
(
かたつむり
)
が背中に自分の
殻
(
から
)
を背負つてゐるやうに、自分の心一つに、自分の寂しさを背負つて、その寂しさを
怺
(
こら
)
へていくことが、きつと立派な修行なんだらう。
良寛物語 手毬と鉢の子
(新字旧仮名)
/
新美南吉
(著)
その期待のたのしみは續く……
蝸牛
(
かたつむり
)
は木の葉のゆらぎにでもその觸角を殼の中に閉ぢ込めなければならない。
嘘をつく日
(旧字旧仮名)
/
水野仙子
(著)
その後には、
蝸牛
(
かたつむり
)
が這いまわった後のように、彼の内臓から吐き出された、糊のような汚物が振り撒かれた。
労働者の居ない船
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
講習生の人々は、何事が起きたのかと、ちょうど、
軍鶏
(
しゃも
)
が自分の卵ほどの
蝸牛
(
かたつむり
)
を投げ与えられた時のように、首をのばし
傾
(
かし
)
げて、息を凝らして見つめました。
手術
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
家を負う
蝸牛
(
かたつむり
)
の可愛気はなくて、ぐちゃりと唯意気地なさを代表した様で、それで青菜
甘藍
(
キャベツ
)
を何時の間にか意地汚なく喰い尽す蛞蝓と、枯枝の真似して居て
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
悪魔! 悪魔! 赤いももひきに赤いまんと、
蝸牛
(
かたつむり
)
の頭巾に
小意気
(
こいき
)
な鬚のメフィストフェレスは、いま銀のつばさを一ぱいに張ってこの大ぞらを飛行している。
踊る地平線:04 虹を渡る日
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
ただもう
蝸牛
(
かたつむり
)
の触角のように本能的な智慧を動かして、君枝を育てて来たのだが、それで、それなりに、君枝は一筋の道を歩かされて来たとでもいうべきだろうか。
わが町
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
蝸牛
(
かたつむり
)
の旅のよう全財産を携えながら、わずかとはいえそれでもトランクやスーツ・ケースに相応の荷物を納め、なにがしの
停車場
(
ステーション
)
より汽車に乗り込んだものである。
貧乏物語
(新字新仮名)
/
河上肇
(著)
………他の獣の
窩
(
あな
)
へ這い込む、蟻塚をやたらに荒らす、
蝸牛
(
かたつむり
)
を殻ごと噛みくだく。……鼠に出逢えば組打ちをはじめる。蛇や仔鼠を見れば絞め殺さずにはいられない。
決闘
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
蝸牛
(
かたつむり
)
のような私のずんぐりむっくりした影。風呂へはいって、さっぱりと髪を洗う夢想。首筋から、胸へかけて、ぶつぶつとあせものかさぶたではどうにもなりません。
新版 放浪記
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
それははじめ普通の双眼鏡に見えましたが、その先を起すと、
蝸牛
(
かたつむり
)
が角をはやしたようになります。
覗
(
のぞ
)
いて見ると、小形に似ずなかなか大きく、かつはっきりと見えます。
怪塔王
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
非常な大きさの
蝸牛
(
かたつむり
)
の柔かいようなもの——が、岩石の平たくなった上を一緒に這ったり、ざぶんと高い水音を立てて海の中へ落ち込んだりしているのが、見えたのである。
宝島:02 宝島
(新字新仮名)
/
ロバート・ルイス・スティーブンソン
(著)
二人はデッキの手すりに寄りかかって、
蝸牛
(
かたつむり
)
が背のびをしたように延びて、海を
抱
(
かか
)
え込んでいる
函館
(
はこだて
)
の街を見ていた。——漁夫は指元まで吸いつくした
煙草
(
たばこ
)
を
唾
(
つば
)
と一緒に捨てた。
蟹工船
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
むかしむかしから留まっていた
蝸牛
(
かたつむり
)
が、ころりと落ちて死んだように見えたんですとさ。
ピストルの使い方:――(前題――楊弓)
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
前川は、角に触れられた
蝸牛
(
かたつむり
)
のように、有頂天の気持から、たちまち身を縮めて、スワンのマッチなぞ、どこへも入れて来なかったかと、改めてズボンのポケットに、手をしのばせた。
貞操問答
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
平次の一喝を喰らって、ガラッ八は頭を叩かれた
蝸牛
(
かたつむり
)
のように引っ込みました。
銭形平次捕物控:064 九百九十両
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
さして変った物というほどではないが、
蝸牛
(
かたつむり
)
や蛙も御免をこうむりたい。
庶民の食物
(新字新仮名)
/
小泉信三
(著)
「見えるか? あの枝先の
蝸牛
(
かたつむり
)
が? 」と岸の
欅
(
けやき
)
の木の枝先を指さした。
空中征服
(新字新仮名)
/
賀川豊彦
(著)
再版の『
獺祭
(
だっさい
)
書屋俳話』の表紙には、芭蕉の葉と小さい
蝸牛
(
かたつむり
)
の画がかいてあった。芭蕉の葉の蝸牛は直に画になるが、尺蠖ではそうは行かない。が、句としては一の興味ある光景になっている。
古句を観る
(新字新仮名)
/
柴田宵曲
(著)
是は『喜界島年中行事』に出ている話だが、ドンガは鼠の遊ぶ日として以前は耕作を休み、外に出ることを
忌
(
い
)
んだ。したがって誰も見た人は無かったはずなのに、この日は鼠が
蝸牛
(
かたつむり
)
を口にくわえて
海上の道
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
粟粒
(
あはつぶ
)
よりも小さい一部分なんだ。そのわれ/\の太陽系は広い宇宙を旅してるんだ。無論宇宙の広さに比べては、それは
蝸牛
(
かたつむり
)
の歩みに等しいけれども、それでも少しづゝ、旅してゐる事は確かなんだ。
朧夜
(新字旧仮名)
/
犬養健
(著)
蝸牛
(
かたつむり
)
めが
答
(
こた
)
へて
云
(
い
)
つた、『
早
(
はや
)
い、
早
(
はや
)
い!』と
横目
(
よこめ
)
で
睨
(
ね
)
めて——
愛ちやんの夢物語
(旧字旧仮名)
/
ルイス・キャロル
(著)
だって、私はまだ
蝸牛
(
かたつむり
)
的テムポですもの、これから見れば。
獄中への手紙:06 一九三九年(昭和十四年)
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
蝸牛
(
かたつむり
)
L'Escargot
博物誌
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
蝸牛
(
かたつむり
)
匍
(
は
)
ひまはる
泥土
(
ぬかるみ
)
に
珊瑚集:仏蘭西近代抒情詩選
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
“蝸牛”の解説
蝸牛(かぎゅう、cochlea)とは、内耳にあり聴覚を司る感覚器官である蝸牛管(cochlear duct)が納まっている、側頭骨の空洞である。蝸牛管を指して「蝸牛」と言うこともある。この名は、哺乳類においては蝸牛がカタツムリ(蝸牛)に似た巻貝状の形態をしていることによる。なお、蝸牛はかたつむり管、あるいは渦巻管(うずまきかん)とも呼ばれる。
(出典:Wikipedia)
蝸
漢検1級
部首:⾍
15画
牛
常用漢字
小2
部首:⽜
4画
“蝸牛”で始まる語句
蝸牛角上
蝸牛廬
蝸牛氏
蝸牛虫
蝸牛庵主
蝸牛水車