らふ)” の例文
あるいは新らしい木の芽からいらなくなったらふを集めて六角形の巣を築いたりもういそがしくにぎやかな春の入口になってゐました。
洞熊学校を卒業した三人 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
ものやさしくかたうごくと、らふが、くだん繪襖ゑぶすまあなのぞく……が、洋燈ランプしんなかへ、𤏋ぱつはひつて、ひとつにつたやうだつた。
霰ふる (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
おびたゞしい出血に顏の色はらふの如く白くなつて居りますが、眼鼻立ちの端正さは名人のきざんだ人形のやうで、うつろに開いた眼には、恐怖の影さへもなく
その中には、いくつかのらふ細工の小さな白鳥が、水に影をうつしておよいでゐます。それはまつたくきれいでした。
一本足の兵隊 (新字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)
先生は、茶碗を下へ置いて、その代りに青いらふを引いた団扇をとりあげながら、憮然ぶぜんとして、かう云つた。
手巾 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
自らつちを振つて延板を作り、以て銅板の素地を作り候由、らふを使用する代りに、うるしを一面に塗り、それに鼠の歯を以て彫刻を施し候由、而して出来上り候原版を腐蝕せしむる薬品としては
大菩薩峠:32 弁信の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
宿と云つても、幾竈いくかまどもあるおほいへの入口の戸を、邪魔になる大鍵で開けて、三階か四階へ、らふマッチをり登つて行つて、やうやう chambreシヤンブル garnieガルニイ の前に来るのである。
妄想 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
原因は電線の発火にさふらひき。それよりのち二夜ふたよは満船らふの火の光に夜をてらし続けられさふらふ。くらがりの海をそとに漏りがたき弱き火をけて船の進みくさま、昔の遠洋とほやう航海のさまも思はれ申しさふらひき。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
をさなたはむれならず、らふの火は輕きほのほ
いろあをらふの火のほのくらみおびゆるごとく
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
火ともすらふくゆり、あわただしく
春鳥集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
古いらふの火のくすぼるるかなしさ
太陽の子 (旧字旧仮名) / 福士幸次郎(著)
したゝらふのしづく涙と共に散りて
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
らふ纖手せんしゆのたましひは
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
らふよりやらかをとがひしてゝ
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
その太陽は、少し西の方に寄ってかかり、幾片かのらふのやうな霧が、逃げおくれて仕方なしに光りました。
種山ヶ原 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
が、何か苦労でもあるのか、この女の子の下ぶくれの頬は、まるでらふのやうな色をしてゐました。
アグニの神 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
一と晩の夜露にさらされて、らふ人形のやうに蒼白く引締つて見えるのは、言ひやうもない痛々しさで、さすがに無駄口の多い八五郎も、つゝしみつゝしんで何や彼と世話をしてをります。
かつ河陽かやう金谷きんこく別莊べつさういとなむや、花果くわくわ草樹さうじゆ異類いるゐ禽獸きんじうひとつとしてあらざるものなし。とき武帝ぶていしうと王鎧わうがいへるものあり。驕奢けうしや石崇せきそう相競あひきそふ。がいあめもつかまれば、そうらふもつたきゞとす。
唐模様 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
らふのあかりのを待たず尽きなむ時よ。
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
ひとりからふの焔かかぐる。
春鳥集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
このときはもう冬のはじまりであの眼のあをはちの群はもうみんなめいめいのらふでこさへた六角形の巣にはひって次の春の夢を見ながらしづかにねむって居りました。
洞熊学校を卒業した三人 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
小生と同じ宿に十二三歳の少女有之これあり腎臓病じんざうびやうとか申すことにて、らふのやうな顔色かほいろを致し居り候。付きひ居り候は母親にや、但し余り似ても居らぬ五十恰好がつかうの婦人に御座候。
伊東から (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
豐かな感じはあるにしても、濡れたらふのやうな青白い顏、唇を噛んだ白い齒が少し見えて、苦痛といふよりは、全體の表情が妻まじい恐怖にゆがんで見えるのは何んとしたことでせう。
そのなかにらふのあかりのすすりなき。
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
らふしろえた。
霰ふる (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
うす痘痕いもの浮んでゐる、どこからふのやうな小さい顔、遥な空間を見据ゑてゐる、光のせた瞳の色、さうしておとがひにのびてゐる、銀のやうな白いひげ——それが皆人情の冷さにてついて
枯野抄 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
左顎ひだりあごの下へパクリと開いたのは、凄まじい斬傷、らふのやうな顏に、昨日の艶色はありませんが、黒髮もそのまゝ、經帷子きやうかたびらも不氣味でなく、さすがに美女の死顏の美しさは人を打ちます。
らふの火もともるらし、けよ。
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
らふが引いてあつた、あとで念入りに拭いたことだらうが、まだ跡に蝋が殘つて居る、その蝋を引いた段の土に、もう一つ段一パイになる薄板を置き、その裏板にも蝋を引いて置いたのだ
ふと窻にらふあかり
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
髮はひどく亂れて血を失つた娘の顏はらふのやうに青白くなつて居るのに、駒込小町と言はれた優れたきりやうは『死』もまた奪ふ由はなく人形づくつた非凡の端麗さは、半眼に開いた眼に
塞ぐより外には無い、あれはらふで、耳の穴なりに拵へて詰めてあつたんだ
肉付の豊かな通つた鼻筋も、反り加減の唇の弧線こせんも、夢見るやうなかすんだ眉も、美しいには相違ありませんが、らふのやうな青白い顏は、恐怖と苦痛にゆがんで、二た眼とは見られない痛々しい表情です。
入口にらふが垂れて居るので、驚いて扉を開けると、この通り