トップ
>
蕋
>
しべ
ふりがな文庫
“
蕋
(
しべ
)” の例文
機
(
はた
)
を離れて、彼はひとり、裏の桃林を逍遥していた。はや晩春なので、桃の花はみな散り尽して黒い花の
蕋
(
しべ
)
を梢に見るだけであった。
三国志:02 桃園の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
それは徑一寸二三分の眞鍮板で、形は四つ
瓣
(
べん
)
の梅の花、
蕋
(
しべ
)
のところの模樣は、まん字になつて居るといふ、世にも變つた品でした。
銭形平次捕物控:250 母娘巡礼
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
路
(
みち
)
近い農家の背戸に牡丹の緋に咲いて
蕋
(
しべ
)
の香に黄色い雲の色を
湛
(
たた
)
えたのに、舞う蝶の
羽
(
はね
)
袖のびの影が、仏前に捧ぐる
妙
(
たえ
)
なる白い手に見える。
遺稿:02 遺稿
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
お由羅は、濃い青磁色に、紅梅模様を染めて、
蕋
(
しべ
)
に金銀糸の縫いのした被布を被ていた。堆朱の台に、古金襴をつけた脇息に、片肱をつかせて
南国太平記
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
と短く折った蓮の
蕋
(
しべ
)
を抱えて、売ってくれる子とも
馴染
(
なじみ
)
になって、蓮の実の味も知った。そんな事は日本橋油町
辺
(
あた
)
りの子供の誰一人知ってはいなかった。
旧聞日本橋:12 チンコッきり
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
▼ もっと見る
その花が育って来ますと、あの長くてもじょ/\した
蕋
(
しべ
)
が位を張ってまいります。
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
仄暗
(
ほのぐら
)
い
蕋
(
しべ
)
の処に、むらむらと雲のように、動くものがある。黄金の蕋をふりわける。其は黄金の髪である。髪の中から匂い出た荘厳な顔。閉じた目が、憂いを持って、見おろして居る。
死者の書
(新字新仮名)
/
折口信夫
(著)
お
前達
(
まへたち
)
はそこいらに
居
(
ゐ
)
る
蜂
(
はち
)
が
庭
(
には
)
なぞへ
飛
(
と
)
んで
來
(
き
)
て
花
(
はな
)
の
蕋
(
しべ
)
を
出
(
で
)
たり
入
(
はい
)
つたりするのを
見
(
み
)
かけるでせう。それからあの
黄色
(
きいろ
)
い
蓋
(
ふた
)
のしてある
蜂
(
はち
)
の
巣
(
す
)
の
見事
(
みごと
)
に
出來
(
でき
)
たのを
見
(
み
)
かけることも
有
(
あ
)
るでせう。
ふるさと
(旧字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
花に見ませ
王
(
わう
)
のごとくもただなかに
男
(
を
)
は
女
(
め
)
をつつむうるはしき
蕋
(
しべ
)
恋衣
(新字旧仮名)
/
山川登美子
、
増田雅子
、
与謝野晶子
(著)
落ちつばき
外方
(
そつぽ
)
向きつつ
蕋
(
しべ
)
わかし落つるただちを坐りたらしも
海阪
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
花の
蕋
(
しべ
)
より湧き出でて二人の身をば囲みたり。
偏奇館吟草
(新字旧仮名)
/
永井荷風
、
永井壮吉
(著)
蕋
(
しべ
)
の朱が花弁にしみて
孔雀草
(
くじゃくそう
)
五百五十句
(新字旧仮名)
/
高浜虚子
(著)
蕋
(
しべ
)
の細きを拔かんとて
花守
(旧字旧仮名)
/
横瀬夜雨
(著)
その
蕋
(
しべ
)
の
陸
(
をか
)
山果集
(旧字旧仮名)
/
三好達治
(著)
更
(
あらた
)
めて、心着くと、ああ、夫人の像の片手が、手首から裂けて、中指、薬指が細々と、白く、
蕋
(
しべ
)
のように落ちていた。
夫人利生記
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
大日輪の光りの中から聖帝がお生まれになったのならば、
天地馥郁
(
てんちふくいく
)
として、花の咲きみちこぼれたる匂いの
蕋
(
しべ
)
のうちに、麗しきこの
女君
(
めぎみ
)
は御誕生なされたのである。
明治美人伝
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
黄の
蕋
(
しべ
)
のいとど目にたつ白菊は花みな小さし咲き乱れつつ
風隠集
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
蕋
(
しべ
)
は黄に
一点鐘
(旧字旧仮名)
/
三好達治
(著)
と
見
(
み
)
る、
目
(
め
)
の
前
(
まへ
)
へ、
黄色
(
きいろ
)
い
提灯
(
ちやうちん
)
の
灯
(
ひ
)
が
流
(
なが
)
れて、がたりと
青
(
あを
)
く
塗
(
ぬ
)
つた
函車
(
はこぐるま
)
を
曳出
(
ひきだ
)
すものあり。
提灯
(
ちやうちん
)
には
赤
(
あか
)
い
蕋
(
しべ
)
で、
車
(
くるま
)
には
白
(
しろ
)
い
紋
(
もん
)
で、
菊屋
(
きくや
)
の
店
(
みせ
)
に
相違
(
さうゐ
)
ない。
魔法罎
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
蕋
(
しべ
)
つつむ幾重花びら
内紅
(
うちあか
)
き朝の牡丹は
食
(
は
)
ままく
柔
(
やは
)
ら
黒檜
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
唯
(
ト
)
、
席
(
せき
)
に
着
(
つ
)
くと、
袖
(
そで
)
から
散
(
ち
)
つたか、あの
枝
(
えだ
)
からこぼれたか、
鍋
(
なべ
)
の
蓋
(
ふた
)
に、
颯
(
さつ
)
と
卯
(
う
)
の
花
(
はな
)
が
掛
(
かゝ
)
つて
居
(
ゐ
)
て、
華奢
(
きやしや
)
な
細
(
ほそ
)
い
蕋
(
しべ
)
が、
下
(
した
)
のぬくもりに、
恁
(
か
)
う、
雪
(
ゆき
)
が
溶
(
と
)
けるやうな
薄
(
うす
)
い
息
(
いき
)
を
戦
(
そよ
)
がせる。
銀鼎
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
日おもての庭の
此面
(
このも
)
の白つつじ
蕋
(
しべ
)
長
(
なが
)
なれや春
酣
(
たけなは
)
に
黒檜
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
背後
(
うしろ
)
を
囲
(
かこ
)
つた、
若草
(
わかくさ
)
の
薄紫
(
うすむらさき
)
の
山懐
(
やまふところ
)
に、
黄金
(
こがね
)
の
網
(
あみ
)
を
颯
(
さつ
)
と
投
(
な
)
げた、
日
(
ひ
)
の
光
(
ひかり
)
は
赫耀
(
かくやく
)
として
輝
(
かゞや
)
くが、
人
(
ひと
)
の
目
(
め
)
を
射
(
ゐ
)
るほどではなく、
太陽
(
たいやう
)
は
時
(
とき
)
に、
幽
(
かすか
)
に
遠
(
とほ
)
き
連山
(
れんざん
)
の
雪
(
ゆき
)
を
被
(
かつ
)
いだ
白蓮
(
びやくれん
)
の
蕋
(
しべ
)
の
如
(
ごと
)
くに
見
(
み
)
えた。
神鑿
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
なにか知らねど、
蕋
(
しべ
)
赤きかの草花のかばいろは
思ひ出:抒情小曲集
(旧字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
立寄りて草を分けて見れば、形
菫
(
すみれ
)
よりは
大
(
おほい
)
ならず、六
瓣
(
べん
)
にして、其薄紫の
花片
(
はなびら
)
に濃き紫の筋あり、
蕋
(
しべ
)
の色黄に、茎は糸より細く、葉は水仙に似て浅緑柔かう、手にせば消えなむばかりなり。
草あやめ
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
いつか毛ばだつ
蕋
(
しべ
)
のつや。
第二海豹と雲
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
もう一度、以前、日比谷の興行で綺麗な
鸚鵡
(
おうむ
)
が引金を口で切って、
黄薔薇
(
きばら
)
の
蕋
(
しべ
)
を射て当てて、花弁を円く輪に散らしたのを見て覚えている。——扱い
人
(
て
)
は、たしか
葡萄牙
(
ポルトガル
)
人であったと思う。
ピストルの使い方:――(前題――楊弓)
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
蕋
(
しべ
)
のにほひも張りつめる。
海豹と雲
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
蓮の実の
蕋
(
しべ
)
。
海豹と雲
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
蕋
漢検準1級
部首:⾋
15画
“蕋”を含む語句
雄蕋
雌蕋
円蕋
雄蕋雌蕋
黄蕋