若衆わかいしゅ)” の例文
お代り、お代り、あちらの方でもお代りとおっしゃる、こちらの方でも……おいきた、若衆わかいしゅ、こっちへ出しな。さあ、お待遠さま——
大菩薩峠:33 不破の関の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
後にて店の若衆わかいしゅにきけば腹ちがひの妹とやら言はれて何ともつかず此方こちらが気まりわるくなり、更に近処の烟草屋で内々にきいて見れば
桑中喜語 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
帳場と店とは小僧対手に上さんが取り仕切って、買出しや得意廻りは親父の方から一人若衆わかいしゅをよこして、それに一切任せてある。
深川女房 (新字新仮名) / 小栗風葉(著)
若衆わかいしゅ取寄とりよせさせた、調度を控へて、島の柳にもやつた頃は、うでもない、みぎわ人立ひとだちさえぎるためと、用意のむらさきの幕を垂れた。
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
婆「出来ませんおなかがすいたから御膳を御馳走になり、旦那のお帰りまで泊めて置いて下さい、若衆わかいしゅさん、盥へ水を汲んで来ておくんなさい」
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
菰被こもかぶりの上に名入りの提灯ちょうちんをいくつも張り出した馬肉屋けとばしやの店先では、若衆わかいしゅが熊手を預る台を組んでいた。
如何なる星の下に (新字新仮名) / 高見順(著)
印半纏しるしばんてんを着た威勢の若衆わかいしゅの二、三人が詰めていて、糸目を付けるやら、鳴弓うなりを張るやら、朝から晩まで休みなしに忙しい。その店には少年軍が隊をなして詰め掛けていた。
思い出草 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
小塚原こづかっぱら天王の祭礼で、千住大橋の上では、南北にわかれて、吉例の大綱おおづなひき。深川村と葛飾村かつしかむら若衆わかいしゅが、おのおの百人ばかりずつ、太竹ほどの大綱にとりつき、エッサエッサとひきあっている。
顎十郎捕物帳:10 野伏大名 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
そんなことを想いだすままに泡鳴に説明した。また鶴見のおさなかった時分には、おもて二階に意気な婆あさんがいて、折々三味線の音じめが聞える。町内の若衆わかいしゅを相手に常磐津ときわずでもさらっていたのだろう。
吉さんというのは地方町じかたまちの小学校時代の友達で、理髪師とこやをしている山谷通さんやどおりの親爺おやじの店で、これまで長吉の髪をかってくれた若衆わかいしゅである。
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「でも、人のしないことをするからには、何かしくらいがなけりゃならないでしょう、隠さずに話してみて下さいよ、若衆わかいしゅさん」
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
悪くすると若衆わかいしゅ打擲ちょうちゃく致すなどゝいう乱暴なことになりますが、振られて粋がってたんですけれども、これは余りい心持ではございません。
お聞きなされ、その若衆わかいしゅの話でござって——ト見ると、唇がキラキラと玉虫色、……それが、ぽっちり燃えるようにあかくなったが、莞爾にっこりしたげな。
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
先に立ったお角のキビキビしたのと、連れの若衆わかいしゅも、気負いと老巧なのを三人つけていたのが、一緒になって歩き出しました。
大菩薩峠:29 年魚市の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
新「なんだ、エヽなげえ夢を見るもんだ、迷子札は、お、有る/\、なんだなア、え、おい若衆わかいしゅ/\、咽喉はなんともねえか」
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
とんと生命いのち拾いでござります。それにまた、お情深い貴女様、種々いろいろ若衆わかいしゅたちまで、お優しいお心附こころづけを下さいまして、お礼の申上げようもござりません。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
いずれも市井しせいの特色を描出えがきいだして興趣津々しん/\たるが中に鍬形蕙斎くわがたけいさいが祭礼の図に、若衆わかいしゅ大勢たいぜい夕立にあいて花車だしを路頭に捨て見物の男女もろともに狼狽疾走するさまを描きたるもの
夕立 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
ずっと昔のこと、甲州の八幡村で、新作さんという若衆わかいしゅ許婚いいなずけの娘が、水車小屋から帰る時、かような苦叫をあげたことがある——最近には……
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
峯「若衆わかいしゅ大きに御苦労だのう、骨が折れても急いで遣ってくんねえな、十時までに中の立場たてばまでこうじゃアねえか」
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
にぎやかなような、陰気なような、化けるような、時々高笑たかわらいをする村の若衆わかいしゅの声もしていたのが、やがて、寂然ひっそりとして、月ばかり、田畑が薄く光って来ました。
河伯令嬢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
三尺帯さんじゃくおび手拭てぬぐいを肩にした近所の若衆わかいしゅ稽古本けいこぼん抱えた娘の姿に振向き、菅笠すげがさ脚絆掛きゃはんがけの田舎者は見返る商家のきん看板に驚嘆の眼をみはって行くと、その建続たちつづく屋根の海を越えては二
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
若衆わかいしゅさん、お前さん、また何かふさぎ込んでいますな、いけません、一人鬱いでいると、室内がみんな陰気になりますから、おやめなさい、人間
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
美「あれさ起きなくってもいわ、寝ておいでよ……只今明けますから…………おや車で、若衆わかいしゅさん大きに御苦労」
松と藤芸妓の替紋 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
ひょっこり肌脱の若衆わかいしゅが、草鞋穿わらじばきで出て来そうでもあるし、続いて、山伏がのさのさとあらわれそうにもある。
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そこで、また一方、お松は若衆わかいしゅたちに向って後援を依頼したものですから、若衆もいい気持になって、よしよし、一肌ひとはだぬごうという気になりました。
大菩薩峠:25 みちりやの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
勘「いからさアつかまって、いゝかえ、おい若衆わかいしゅお頼申すよ、病人だから静かに上げておくれ、いゝかえゆっくりと、此の引戸を立てるからね、いいかえ」
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
発奮はずんで、ずるずると来たやつが、若衆わかいしゅの足許で、ころりとかえると、クシャッと異変な声を出した。
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
現場へせ戻って来た長持の若衆わかいしゅたちは、いちいちその場でひっくくられて、ピシピシとなぐりつけられています。
大菩薩峠:35 胆吹の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
正「いけねえよ若衆わかいしゅさん、それは御免を蒙ろう、わっしたちはみんな足が達者で、あとから来る婆さんの新造しんぞなんざア足が達者で、馬と一緒に駆けて歩くくらいのものだ」
若衆わかいしゅの堂の出合は、ありそうな事だけれど、こんな話はどこかに類がないでもなかろう。
神鷺之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
宿の若衆わかいしゅを呼んで、出発の準備を命じ、自分は鏡に向って容儀を整えてみると、どうも気に入らぬのはこの頭です。
大菩薩峠:30 畜生谷の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
此のに太左衞門と五八は表のたなへ往って、来合せていた若衆わかいしゅにこれ/\の訳だと話をすると、平常ふだんにくまれている名主だから、名主も原も打殺うちころしてしまえと云うので
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
紋の着いた薄羽織をひっかけていたが、さて、「改めて御祝儀を申述べます。目の下二尺三貫目はかかりましょう。」とて、……及び腰にのぞいて魂消たまげている若衆わかいしゅに目配せでうなずかせて
伯爵の釵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
今のあの若衆わかいしゅのあとをたずねてみたら、たずぬる人の影がつかめないまでも、さきほどのあの権高い貴婦人という人にはまたお目にかかれるかも知れない。
大菩薩峠:33 不破の関の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
其処そこの番手桶に水が汲んであるから足を洗って、雑巾は手桶に掛って居るから、ナニ湯布ゆまきがない、サア出てもいゝや、なに湯布も売ってしまった、此方こっちあがんな、どうか若衆わかいしゅ
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
前後に同一おなじような、あわせ三尺帯の若衆わかいしゅは大勢居たが、大将軍のような顔色かおつきで叱ったのは、なまずの伝六といって、ぬらくらの親方株、月々の三十一日みそかには昼間から寄席よせを仕切って総温習そうざらいを催す
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
だが、芝居とすれば、越後伝吉でも、塩原太助でも、立派につとまりそうなこの家の中の若衆わかいしゅは、その声を聞くと、早速立ち上って、戸をあけてやりました。
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
由「大きに若衆わかいしゅ御苦労、今あとで飯を食わせるが、何しろ休みねえ……おい/\女中さん、おい女中彼処あすこの畳の上に何だ……黒豆が干してあるようだが、彼処を片付けておくれよ」
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
女房、娘、若衆わかいしゅたち、とある横町の土塀の小路こみちから、ぞろぞろと湧いて出た。
みさごの鮨 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「おーい、若衆わかいしゅさん、今お嬢様がお前の方へいらっしゃるから、よくお話をして上げてくんな」
大菩薩峠:36 新月の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
浴衣ゆかたの上だけれど、紋の着いた薄羽織うすばおりひっかけて居たが、て、「改めて御祝儀を申述べます。目の下二しゃく貫目がんめかかりませう。」とて、……およごしのぞいて魂消たまげて居る若衆わかいしゅ目配めくばせでうなずかせて
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
辻駕籠の悲しさには廉くっても仕事をする方が割だぜ、オーそうだと云う訳だ、え、おいお爺さん、頭巾を冠った侍が来て、おい若衆わかいしゅ深川の木場までやれ、へいかしこまりました、駕籠賃はいくら遣ろう
「その通り、その通り、ほんに綺麗きれいでいい加減で、それに今は混む時のようにさわがしくはないし、お湯に入る気持は格別だが、若衆わかいしゅさま、修行は湯ではいけませんぞ、水に限りますぞ」
大菩薩峠:27 鈴慕の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
大切な客と見えて、若衆わかいしゅが一人、女中が二人、前茶屋のだろう、附いて来た。人数にんずは六人だったがね。旦那が一杯にのしてるから、どうして入り切れるもんじゃない。随分ふとったのも、一人ならずさ。
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
女「ヒエ、九十せね若衆わかいしゅが十二せねで、金一円二せねになりやす」
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
その古風な舞いぶりを、今の若衆わかいしゅたちが老人の後見で、伝えられた通りを大事に保存しながら、威勢よく舞っているらしいのが、お松をして、いっそう珍重ちんちょうの念を起させたようであります。
大菩薩峠:25 みちりやの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
若衆わかいしゅ駿河台するがだいだよ、可いか、頼んだぞ、さあお召し。」
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と思ってたゝずんで居りますと、うしろから女郎屋じょろや若衆わかいしゅ
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
救われない事態となってしまった! よしこれらの長持をかついで来た若衆わかいしゅが、実は中仙道筋の柏原駅外の若衆であって、彼等は何故に、こんなに勢いこんで長持をかついで来たかといえば
大菩薩峠:35 胆吹の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
此の通り顔を傷だらけにして…早くお若衆わかいしゅ早く/\
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)