へい)” の例文
講座が三つになって、ミンコフスキがへいせられたのは後である。此処はベルリンとは様子がまるで変っているので驚いてしまった。
回顧と展望 (新字新仮名) / 高木貞治(著)
抽斎がもし生きながらえていて、幕府のへいを受けることをがえんじたら、これらの蘭法医と肩をくらべて仕えなくてはならなかったであろう。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
一八九五年にはトリニティ・ハウス(海事協会)の学術顧問にへいせられた。かつてはファラデー、ティンダルの務めた職である。
レーリー卿(Lord Rayleigh) (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
その後天明二年に至って尾州侯にへいせられその上屋舗かみやしき内なる市ヶ谷いちがや合羽坂かっぱざかに住宅を賜った。竹渓が遷館三所といった所以ゆえんである。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
されどもし倫理科の先生を置かざるべからずとせば校外に求めてもなるべく名望ある人をへいして講釈でも演説でもさすべし。
明治卅三年十月十五日記事 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
で、アンドレイ、エヒミチの補助手ほじよしゆとして、軍醫ぐんいのエウゲニイ、フエオドロヰチ、ハヾトフといふが、まちへいせられた。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
なお同氏は新たに長崎水谷造船所の技師長にへいせられ来たる四月一日新婚旅行を兼ね一時郷里熊本に帰省せらるる由なり。
駅夫日記 (新字新仮名) / 白柳秀湖(著)
まだ自分たちと同じく蠣殻町かきがらちょうの父の家に住居のころ、一六いちろく三八さんぱちか日取りは記憶せぬが月に数回、師をへいして正式に茶の湯の道を学んだのが始めで
茶の本:01 はしがき (新字新仮名) / 岡倉由三郎(著)
(八) 孔子がちんさいの間にあった時、楚は人をして孔子をへいせしめた。陳・蔡の大夫はこれを妨げんとした。楚の昭王は師をおこして孔子を迎えた。
孔子 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
えつの王はそれを聞いて、寄をへいして夫人とした。その父は将楽県の県令に挙げられ、母や姉たちにも褒美を賜わった。
美校の画学生をへいして仁清ふうの絵付けをさせてみたりされるあたりは聡明そのもののような、前山翁の所作としては合点のいかな過ぎる常識なのだ。
逸作は、もしこのことで不孝の罰が当るようだったら俺が引受けるなどと冗談のように言って、それから女中に命じて雛妓おしゃくかの子をへいすることを命じた。
雛妓 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
神田川にそそぐお茶の水の堀割は、両岸の土手が高く、樹木が鬱蒼うっそうとして、水戸みと家がへいした朱舜水しゅしゅんすいが、小赤壁しょうせきへきの名を附したほど、茗渓めいけい幽邃ゆうすいの地だった。
田沢稲船 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
長野あたりから新聞記者をへいして講演を聴くなぞはここらでは珍しくない。何か一芸に長じたものと見れば、そういう人から新智識を吸集しようとする。
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
一時日本に亡命のかくたりし朴泳孝ぼくえいこう氏らも大政たいせいに参与し、威権赫々かくかくたる時なりければ、日本よりも星亨ほしとおる岡本柳之助おかもとりゅうのすけ氏ら、そのへいに応じて朝廷の顧問となり
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
かつてはメトロポリタンにへいせられて、その華やかな舞台を踏んだクレーマンが、どうしてこの気品と柔かさを維持し得たか、我々には全く不思議である。
信玄にへいされて、甲斐かいの恵林寺に来る前の快川和尚は、京都の妙心寺に出世し、美濃の崇福寺すうふくじにいたのである。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
箪笥の上の抽出ひきだしからは保雄のにもはれにも一着しか無い脊広が引出された。去年の暮、保雄が郷里の講習会にへいせられて行つた時、十二年ぶりに初めて新調したものだ。
執達吏 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
孝孺の学徳ようやく高くして、太祖の第十一子蜀王しょくおう椿ちん、孝孺をへいして世子のとなし、尊ぶに殊礼しゅれいもってす。王の孝孺にたまうの書に、余一日見ざれば三秋の如き有りの語あり。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
かくてその夜、駅長のブランド氏は、探偵長として鉄道会社にへいせられているコリンス方面監察と共にケニヨンへ向って出発した。二人は翌日を丸一日捜索のために費した。
杜康を命じ蘇小をへいしと古い所を剽窃ぬいた覚えはあっても、今となって芸妓げいしゃを呼ぶ手続が分らない、ほかでもないことを友達に聞うにも聞れず、聞たとて差支えるではないが
油地獄 (新字新仮名) / 斎藤緑雨(著)
一家一門の悲歎やる方なく、此の上は高徳のひじりへいしてその法力にすがろうと云うことになったが、それには当時天下にその名が著聞していた浄蔵法師をいて他になかった。
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
夏姫が鄭に着くと、それを追いかけるようにして巫臣の密使が鄭に行き、夏姫をへいし度い旨を伝えた。鄭の襄公は之を許した。しかし、まだ夏姫は巫臣のものになった訳ではない。
妖氛録 (新字新仮名) / 中島敦(著)
今の女子学院の前身の桜井女学校にへいされて文学を講述したのもこの時代であった。
二葉亭四迷の一生 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
埋葬せしあとなれば、ぜひなくその様子を聞くに、背といい恰好といい衣服といい、本人に相違なければ、いよいよ変死を遂げたるものとし、寺僧をへいして引導を頼み、戒名をもらい
迷信解 (新字新仮名) / 井上円了(著)
(徳川をはじめとして諸藩にても新に寺院を開基し、または寺僧をへいして政事の顧問に用うるが如き習慣は、儒教のようやく盛なるとともに廃止して享保以下にこれを見ること少なし。)
政事と教育と分離すべし (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
端無はしなく彼は憶起おもひおこして、さばかりはありのすさびに徳とも為ざりけるが、世間に量り知られぬ人の数の中に、誰か故無くして一紙いつしを与ふる者ぞ、我は今へいせられし測量地より帰来かへりきたれるなり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
俗語を学ぶにはその国人と同居するに限ります。日に二時間三時間ずつ教師をへいして学んだところが到底本当の事は出来ない。同居して居ると知らず知らずの間に覚えることも沢山あります。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
それで最早もうこんな家にはおられないからと早速さっそくまた転居をしようと思ったが、彼の職務上もあるし、一つは後々のちのちの人のめにもと思ったので、近所の人達を集めて僧侶をへいし、この老婆のため
暗夜の白髪 (新字新仮名) / 沼田一雅(著)
それにはこういう公会堂のようなものを作って時々講演者などをへいして知識上の啓発けいはつをはかるのも便法でありますし、またそう知的の方面ばかりでは窮屈すぎるから、いわゆる社交機関を利用して
道楽と職業 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
一般の驚異はおのづからに崇敬の念を起さしめたり、文武の官省は洋人をへいして改革の道を講じたり、留学生の多数は重く用ひられて一国の要路に登ることゝなれり、而して政府は積年閉鎖の夢を破りて
そしてなるべく男の客とは交渉を避ける。そして宿の若い美しい女客やへいした芸妓とだけ話す。そしてそのような人でも文章を書くときには私の目には人類があると叫んで涙を浮かべることができる。
愛と認識との出発 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
へいを厚くし辞を卑くして招くこと再三、なお固辞して受けない。
法窓夜話:02 法窓夜話 (新字新仮名) / 穂積陳重(著)
で、アンドレイ、エヒミチの補助手ほじょしゅとして、軍医ぐんいのエウゲニイ、フェオドロイチ、ハバトフというが、このまちへいせられた。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
一たびこれに接して畏敬の念を生じたる春岳しゅんがくはこれをへいせんとして侍臣じしんをしてめいを伝えしめしも曙覧は辞して応ぜざりき。
曙覧の歌 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
利章の家來仙石、財津も南部家に召し出されて、各五十石を受けた。嫡男利周は黒田家のへいしりぞけて、處士を以て終つた。
栗山大膳 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
弟少年ノトキ斎藤拙堂先生ニ津藩ニ従ヒキ。藩カツテ猪飼敬所いかいけいしょ翁ヲへいス。イクバクモナクシテ亡シ。遺書具ニ存ス。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「世家」によると、孔子がさいうつって三年、呉が陳を伐ち、楚が陳を救った。その時楚は、孔子が陳・蔡の間にあるを聞いて、人をして孔子をへいせしめた。
孔子 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
「頑健といえば、兵庫どのが、肥後の加藤清正公に見こまれて、高禄にてへいせられた折——お孫のために故人の石舟斎様が、おもしろい条件をつけられたそうですな」
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかし私の知れる範囲内では、蓄音機レコードの製造工場へへいせられて専心その改良に没頭している理学士は一人もないようである。もっともこれは別に蓄音機のみに関した事ではない。
蓄音機 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
当時の印刷局長得能良介とくのうりょうすけは鵜飼老人と心易こころやすくしていたので、このうわさを聞くと真面目になって心配し、印刷局へ自由勤めとして老人をへいして役目で縛りつけたので、結局この計画は中止となり
君らがいわゆる盛会に例の如く妓をへいし酒を飲み得々とくとく談笑するときは勿論、時としては親戚・朋友・男女団欒たる内宴の席においても、一座少しく興に入るとき、盃盤はいばん狼藉ろうぜきならしむる者は
日本男子論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
次で保は七月一日に静岡高等英華えいか学校にへいせられ、九月十五日にまた静岡文武館の嘱託ぞくたくを受けて、英語を生徒に授けた。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
そしてその日の夕刻からはく親しい友人や門弟が寄集って主人あるじ柳亭翁が自慢の古書珍本の間に酒をへいして俳諧はいかいまたは柳風りゅうふうの運座を催すのが例であった。
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
孔明は辞して受けなかったが、大賢たいけんへいすには礼儀もある。自分の志ばかりの物だからといわれて
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかるにこの大勢力ある金港堂が一大小説雑誌を発行するにあたって如何いかなる大作家でも招き得られるのにやっ二十歳はたちを越えたばかりの美妙をへいして主筆の椅子いすを与えたのは美妙の人気が十分読者を
美妙斎美妙 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
そこで早速その団体の世話人に話して、君をへいすることにさせた。立見の勘定は私が払わなくても好いことになった。
二人の友 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
好奇の粋客すいきゃくもしわが『矢筈草』の後篇を知らんことを望み玉はば喜楽きらくなり香雪軒こうせつけん可なり緑屋みどりやまたあしからざるべし随処の旗亭きていに八重をへいして親しく問ひ玉へかし。
矢はずぐさ (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
年来、招かれている尾張の徳川義直公のへいに応じて、ともあれ一度、名古屋まで行くつもりである。
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
徳永商店の顧問として二葉亭をへいそうという相談が熱した。
二葉亭四迷の一生 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)