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羨望
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せんぼう
ふりがな文庫
“
羨望
(
せんぼう
)” の例文
じっさい動物は
羨
(
うらや
)
ましい。私は、
敏捷
(
びんしょう
)
に枝から枝へ、金網から地上へ跳びまわっている猿が
羨望
(
せんぼう
)
に堪えなかった。実に元気な動物だ。
動物園の一夜
(新字新仮名)
/
平林初之輔
(著)
尊敬に似た
羨望
(
せんぼう
)
すら感じながら、
凝
(
じっ
)
と、過ぎゆく浪人たちのほがらかな
面
(
おもて
)
や服装を、不思議なもののように見送っていたのであった。
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ただ難点はあまりにここは理想的でありすぎた。もしこういう場所を占有したなら、周囲から集る
羨望
(
せんぼう
)
嫉視
(
しっし
)
の
鎮
(
しずま
)
る時機がないのである。
比叡
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
あのとき自分さえでしゃばらなければ、妻はいま彼を
良人
(
おっと
)
にし、家中の人たちの
羨望
(
せんぼう
)
と尊敬のなかで、安穏な生活ができたのだ。
橋の下
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
先ほどから
舳
(
へさき
)
へ出て、やや呑み過ごした
酔心地
(
えいごこち
)
を
得
(
え
)
もいわれぬ川風に吹払わせていた二人の門人
種員
(
たねかず
)
と
仙果
(
せんか
)
は覚えず
羨望
(
せんぼう
)
の
眼
(
まなこ
)
を見張って
散柳窓夕栄
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
▼ もっと見る
「
然
(
そ
)
うだ。あの人は頭の毛の
色素
(
しきそ
)
がなくなるまで勤続してこの頃漸く三級になった。それでも異数の昇進として
羨望
(
せんぼう
)
の的になっているぜ」
ぐうたら道中記
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
あの青年と、自由に談笑している母に対して、
羨望
(
せんぼう
)
に似た心持が、彼女の心に起って来るのを
何
(
ど
)
うともすることも出来なかった。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
しかしながら、世間のこと、他の
羨望
(
せんぼう
)
するほど気楽でないこともあれば、他の同情するほどに苦痛を感じていないこともある。
大菩薩峠:22 白骨の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
之
(
これ
)
に
加
(
くわ
)
うるに
羨望
(
せんぼう
)
嫉妬
(
しっと
)
の念を
以
(
もっ
)
てして、今度は政府の役人達が狙われるようになって来て、洋学者の方は
大
(
おおい
)
に楽になりました。
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
S、H
氏
(
し
)
だけは「
彼是
(
かれこれ
)
言
(
い
)
ふべきものぢやない。
羨望
(
せんぼう
)
すべきものぢやないか」と
言
(
い
)
つたといふことを、二三
度
(
ど
)
或青年
(
あるせいねん
)
から、
私
(
わたし
)
は
聞
(
き
)
かされてゐた。
微笑の渦
(新字旧仮名)
/
徳田秋声
(著)
あなたが本当に烏の身の上を
羨望
(
せんぼう
)
しているのかどうか、よく調べてみるように、あたしは呉王廟の神様から内々に言いつけられていたのです。
竹青
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
そして今や再び、その感じが持ち前の甘い悲痛で、彼の心をみたすのだった。それはそもそも何であろう。憧憬か。愛慕か。
羨望
(
せんぼう
)
か。自蔑か。
トニオ・クレエゲル
(新字新仮名)
/
パウル・トーマス・マン
(著)
しだいに高まってきた右門のその名声に
羨望
(
せんぼう
)
をいだき、羨望がやがてねたみと変わり、ねたみがさらに競争心と変わって
右門捕物帖:02 生首の進物
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
しかしどうも失恋した彼に、——たとい失恋したにもせよ、とにかく叔父さんの娘のある彼に
羨望
(
せんぼう
)
を感じてならなかった。
彼
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
下級の学生の
羨望
(
せんぼう
)
の中で、教授達の家庭へ一同招待された夜の楽しさなぞが繰返される。捨吉が同級の中には随分
年齢
(
とし
)
の違った生徒が混っていた。
桜の実の熟する時
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
当然自己のものになしうるはずの人を主君にゆずった自分は広量なものだと
嫉妬
(
しっと
)
に似た心で
自嘲
(
じちょう
)
もし、
羨望
(
せんぼう
)
もしていた。
源氏物語:04 夕顔
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
けれども私はすぐさまわが
羨望
(
せんぼう
)
の的だった絵双紙屋の店先の滝夜叉姫の一枚絵をお鶴と結びつけてしまった。お鶴の膝に抱かれながら私は聞いた。
山の手の子
(新字新仮名)
/
水上滝太郎
(著)
現代の生活はたしかに忙しくなっている。終日妨げられないで読書することのできた昔の人は
羨望
(
せんぼう
)
に値するであろう。
如何に読書すべきか
(新字新仮名)
/
三木清
(著)
彼はクリストフにたいして、同感と
羨望
(
せんぼう
)
との交じり合った気持をいだいていた。彼はクリストフを民衆の会合へ案内してゆき、革命派の首領らに会わした。
ジャン・クリストフ:11 第九巻 燃ゆる荊
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
しかし、そうでない限り、たといあのまま身体が腐って路傍に行き倒れても、岡田はじつに偉大なる勝利者なのである! 太田は岡田を畏敬し、
羨望
(
せんぼう
)
した。
癩
(新字新仮名)
/
島木健作
(著)
織物における沖縄の位置は
羨望
(
せんぼう
)
に堪えぬほど素晴らしいものです。どうしてその自覚と自信とを有って立たれないのか、不思議な感を抱かざるを得ません。
民芸四十年
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
しかも一方において、御自身に注がれる
羨望
(
せんぼう
)
と反感の眼をも、鋭敏な御心は必ずや感じておられたに相違ない。
大和古寺風物誌
(新字新仮名)
/
亀井勝一郎
(著)
まことに複雑な心持をすらすらと云って
除
(
の
)
けて、これだけのそつの無いものを作りあげたのは、そういう悲歎と
羨望
(
せんぼう
)
の心とが張りつめていたためであろう。
万葉秀歌
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
私には、彼らを軽蔑したり尊敬したり、嫉妬や
羨望
(
せんぼう
)
をしたりする気さえ起きなかった。興味がなかったのだ。
愛のごとく
(新字新仮名)
/
山川方夫
(著)
他人の冷淡と卑劣と
羨望
(
せんぼう
)
と臆病とから生れる彼自身の恐るべき不安を愛することに根ざしてはいなかったであろうか、と、こう考え至るなら、彼にとっては
あめんちあ
(新字新仮名)
/
富ノ沢麟太郎
(著)
穏やかな老人の言葉と
怡々
(
いい
)
たるその容に接している中に、子路は、これもまた一つの美しき生き方には違いないと、幾分の
羨望
(
せんぼう
)
をさえ感じないではなかった。
弟子
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
私がこの話をしかけると豆鉄砲をくらった
鳩
(
はと
)
のように
唖然
(
あぜん
)
として(これは
喋
(
しゃべ
)
っている私の方も唖然とした)つづいて
羨望
(
せんぼう
)
のあまり長大息を
洩
(
も
)
らした男があった。
天才になりそこなった男の話
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
その昆虫学の標本の
蒐集
(
しゅうしゅう
)
は、スワンメルダム
(6)
のような昆虫学者にも
羨望
(
せんぼう
)
されるくらいのものだった。
黄金虫
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
羨望
(
せんぼう
)
の言葉やら、誰かにあえばひやかされるのがなれっこになってしまって、それが又恥かしいほど
嬉
(
うれ
)
しくて、家中にみちみちた
花
(
はな
)
やかな空気が、十九の娘を
人でなしの恋
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
経て近々結婚せらるゝよし侯爵は英敏閑雅今業平の称
空
(
むな
)
しからざる好男子なるは人の
知所
(
しるところ
)
なれば令嬢の
艶福
(
えんぷく
)
多い
哉
(
かな
)
侯爵の艶福も
亦
(
また
)
多い
哉
(
かな
)
艶福万歳
羨望
(
せんぼう
)
の
到
(
いたり
)
に
勝
(
たえ
)
ず
風流仏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
堅実なる大欲望は彼らの有しうるところにあらず、彼らの有するところはただ浮薄なる小
羨望
(
せんぼう
)
なり。
面白き二個の広告
(新字新仮名)
/
堺利彦
(著)
諸人の
羨望
(
せんぼう
)
の的であって、一代に
身上
(
しんしょう
)
を作ったものの器量と才覚では、とうていこれと競争もできず、本人たちもまたたとい隆々たる家運を誇ることはできぬまでも
家の話
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
そして踊り子たちの前で、踊り子たちに見せびらかすような感じで、タップ・ダンスを踊って見せるのだったが、私はその男に、いかばかり激しい
羨望
(
せんぼう
)
を感じたことか。
如何なる星の下に
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
本県の中学は
昔時
(
せきじ
)
より善良温順の気風をもって全国の
羨望
(
せんぼう
)
するところなりしが、
軽薄
(
けいはく
)
なる二
豎子
(
じゅし
)
のために
吾校
(
わがこう
)
の特権を
毀損
(
きそん
)
せられて、この不面目を全市に受けたる以上は
坊っちゃん
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
かれは中学からすぐ東京に出て行く友だちの
噂
(
うわさ
)
を聞くたびにもやした
羨望
(
せんぼう
)
の情と、こうした貧しい生活をしている親の慈愛に対する子の
境遇
(
きょうぐう
)
とを考えずにはいられなかった。
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
大勢の男性たちに
羨望
(
せんぼう
)
される美しい何不自由ない妙齢の身をもって、貴女はいつもその艶麗な
華奢
(
きゃしゃ
)
な青春を惜し気なく弟一人のために捧げて下さった、私の瞳であり眼であり
ウニデス潮流の彼方
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
これほどまた男が
殿様扱
(
とのさまあつか
)
いにされる家庭生活も、西洋では考え及ばないことであるから、ヘルンの手紙をよんだ外国人たちが、いかにその日本の友人を
羨望
(
せんぼう
)
したかが想像される。
小泉八雲の家庭生活:室生犀星と佐藤春夫の二詩友を偲びつつ
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
僕としては、ただただ
羨望
(
せんぼう
)
に堪えんですよ。(トランクを、帽子のボール箱の上へ置いて、つぶしてしまう)ほらこれだ、つまり結局。どうせそうだろうと思ってたよ。(退場)
桜の園
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
羨望
(
せんぼう
)
の念に満ちた一種の
憐憫
(
れんびん
)
の情なしには、彼女らをながむることができないのである。
レ・ミゼラブル:05 第二部 コゼット
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
しかし、おだやかに澄み渡った深い目もと、静かな額のあたりにも、行ない澄ました者だけが知る平和な安らぎが満ちみちていて、維盛は、思わず
羨望
(
せんぼう
)
の
溜息
(
ためいき
)
をついたのであった。
現代語訳 平家物語:10 第十巻
(新字新仮名)
/
作者不詳
(著)
聞くだけでも
羨望
(
せんぼう
)
に堪えぬわけでありますから、何かにつけ、その噂を聞くことさえも心が
惹
(
ひ
)
かれるのでありましたが、或る人の話に、工部学校では、木彫りはやらないのだそうな。
幕末維新懐古談:36 脂土や石膏に心を惹かれたはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
うまいには相違ないと
羨望
(
せんぼう
)
しながらも、得心のゆくまで食うわけにはゆかなかった。
鮎の試食時代
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
精神上
(
せいしんじょう
)
からみると、まことに
無意味
(
むいみ
)
な
浅薄
(
せんぱく
)
な結婚であったけれど、
世間
(
せけん
)
の目から
羨望
(
せんぼう
)
の中心となり、一
時
(
じ
)
近郷の
話題
(
わだい
)
の花であった。そして
糟谷夫婦
(
かすやふうふ
)
もたわいもない
夢
(
ゆめ
)
に
酔
(
よ
)
うておった。
老獣医
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
そして、うみもしないくせに子運のよい安江をうらやみ、その
羨望
(
せんぼう
)
の自分勝手さに悔いとあきらめのほろ苦さを感じたりもした。しかしそれでぺしゃんこになることはもうなかった。
雑居家族
(新字新仮名)
/
壺井栄
(著)
愚かな
屈辱
(
くつじょく
)
……ところが今日は人見がおたけを意識しながら彼の演説の真似をしたりするのを見ると、ある
忌
(
いま
)
わしい
羨望
(
せんぼう
)
の代りに
唾棄
(
だき
)
すべき奴だと思わずにはいられなくなっていた。
星座
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
こちらからはあまりに毎日
見馴
(
みな
)
れて、復一にはことさら心を
刺戟
(
しげき
)
される図でもなかったが、
嫉妬
(
しっと
)
か
羨望
(
せんぼう
)
か未練か、とにかくこの図に何かの感情を寄せて、こころを
掻
(
か
)
き立たさなければ
金魚撩乱
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
随
(
したが
)
ってその主筆たる美妙の位置と人気とは当時の文学青年の
羨望
(
せんぼう
)
の中心であった。
美妙斎美妙
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
あまり
水裡
(
すいり
)
の時間が長いので、賞賛の声、
羨望
(
せんぼう
)
の声が、恐怖の叫びに変わった。
死屍を食う男
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
言え。南部家には立派な兵糧丸が伝わっているはずだ。数ある兵糧丸のうちでも、南部と水戸の兵糧丸は有名で、大小名方の
羨望
(
せんぼう
)
の的になっているのに、何を苦しんで古い兵糧丸の分析を
銭形平次捕物控:025 兵糧丸秘聞
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
併しその悪口は、四苦八苦の生活に
喘
(
あえ
)
いでいる百姓達の、
羨望
(
せんぼう
)
の言葉だった。
熊の出る開墾地
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
“羨望”の意味
《名詞》
羨望(せんぼう)
羨むこと。
(出典:Wiktionary)
“羨望”の解説
羨望(せんぼう、en: envy la: invidia)とは、自らの持たない優れた特質、業績財産などを他者が持つときに起こる、それらへの渇望、ないしは対象がそれらを失うことへの願望である。羨望は他者が自分が持たない望ましい物品を持つときに、自己肯定感の低下という感情的な苦痛として現れる場合がある。
(出典:Wikipedia)
羨
常用漢字
中学
部首:⽺
13画
望
常用漢字
小4
部首:⽉
11画
“羨望”で始まる語句
羨望者