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答
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いら
ふりがな文庫
“
答
(
いら
)” の例文
麝香
(
じゃこう
)
を噛んだような女の息を、耳元に感じた新九郎は、今にも頬へ触れてきそうな黒髪の冷たさを想像して
答
(
いら
)
えをするのを忘れている。
剣難女難
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
金煙管
(
きんぎせる
)
の
莨
(
たばこ
)
の
独
(
ひと
)
り
杳眇
(
ほのぼの
)
と
燻
(
くゆ
)
るを手にせるまま、満枝は
儚
(
はかな
)
さの
遣方無
(
やるかたな
)
げに
萎
(
しを
)
れゐたり。さるをも見向かず、
答
(
いら
)
へず、
頑
(
がん
)
として石の如く
横
(
よこた
)
はれる貫一。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
「どうぞ」と一言
答
(
いら
)
えたる、夫人が蒼白なる両の
頬
(
ほお
)
に
刷
(
は
)
けるがごとき紅を潮しつ。じっと高峰を見詰めたるまま、胸に臨めるナイフにも
眼
(
まなこ
)
を
塞
(
ふさ
)
がんとはなさざりき。
外科室
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
二日ばかりありて
縁
(
えん
)
の
下
(
もと
)
にあやしき者の声にて、「猶其の仏供の
撤下物侍
(
おろしはべ
)
りなん」と云へば、「如何で
速
(
まだき
)
には」と
答
(
いら
)
ふるを、何の言ふにかあらんと立ち出でて見れば
濫僧考補遺
(新字新仮名)
/
喜田貞吉
(著)
答
(
いら
)
えのないものを、
強
(
し
)
いて叩き起すような振舞をせずして、白雲はそのまま取って返して、ランタンを振り照らしつつ、前のメーン・マストの下まで再び検分の気持で来て見ると
大菩薩峠:38 農奴の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
▼ もっと見る
「さなり、げにその時はうれしかるべし」と
答
(
いら
)
えし源叔父が言葉には喜び
充
(
み
)
ちたり。
源おじ
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
北の方初めの程は兎角のおん
答
(
いら
)
へもなく打沈みておはせしが、度々の御尋ねに
漸
(
やうや
)
く面を上げ
給而
(
たまいて
)
、さん
候
(
ざふらふ
)
、
妾
(
わらは
)
が父祖の家は逆臣がために亡ぼされ、唯一人の兄さへ行衛も
不知
(
しらず
)
なり侍りしに
武州公秘話:01 武州公秘話
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
うるはしき神の旅路と
答
(
いら
)
へまつりともづな解かむ波のまにまに
恋衣
(新字旧仮名)
/
山川登美子
、
増田雅子
、
与謝野晶子
(著)
「誰だエ」と伯母は始めて
答
(
いら
)
へぬ
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
『
何
(
な
)
ぞ。』と
答
(
いら
)
へぬ、
伏眼
(
ふしめ
)
して
第二邪宗門
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
怪しみがほの
答
(
いら
)
へに
信姫
(新字旧仮名)
/
末吉安持
(著)
玄関へ向って、胸を張って云ったが、家の中からは
答
(
いら
)
えがなく、その声に
吃驚
(
びっくり
)
したように奥の植込みの蔭で人影が木の葉をうごかした。
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
不足をおっしゃては女
冥利
(
みょうり
)
が尽きますによ。
貴女
(
あなた
)
お恥かしいのかえ、と
舐
(
な
)
めるがごとく撫廻せば、お藤は
身体
(
からだ
)
を固うして、
頭
(
かぶり
)
を
掉
(
ふ
)
るのみ
答
(
いら
)
えは無し。高田はわざと怒り出し
活人形
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
と、呼ばわると、上の鼓楼で「おおいっ」という
答
(
いら
)
えが響く。と同時に、門側の番卒隊が不時の開門なので、とくに総勢でそこに立ち現れ
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
俯して
答
(
いら
)
えなき内儀の
項
(
うなじ
)
を、出刃にてぺたぺたと
拍
(
たた
)
けり。内儀は
魂魄
(
たましい
)
も身に添わず
義血侠血
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
訪れの
答
(
いら
)
えを
門口
(
かどぐち
)
で待っている間も、なんとなく有難くて——うれしくて勿体なくて——思わずそこへひざまずいてしまった。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
一言の
答
(
いら
)
えも出来ない風情。
黒百合
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
姿は隠して、眼だけを白く
上
(
うわ
)
ずらせながら、も一度こう呼んでみると、今度はしばらく何の
答
(
いら
)
えもなかったが、やがてよほど
間
(
ま
)
をおいてから
鳴門秘帖:02 江戸の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
と、一
見
(
けん
)
ただの山家にすぎない垣の
枝折
(
しおり
)
を指さしたが、内には人の気配もなく、そこから呼んでも叩いてみても、おうという
答
(
いら
)
えはなかった。
私本太平記:12 湊川帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
簾の蔭で、「……はい」と、きれいな
答
(
いら
)
えがしたようであった。その黒髪の人が、廊の奥へ消えてゆくのを、高氏は見もせぬ振りで見送っていた。
私本太平記:01 あしかが帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
それさえあるに、やがておとずれていた一堂の玄関もまたひどく
荒
(
あ
)
れ
寂
(
さ
)
びていて、いくど呼んでみても
答
(
いら
)
えはなかった。
私本太平記:06 八荒帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
廉子のさまざまな
慰
(
なぐさ
)
め
言
(
ごと
)
にも、なんのお
答
(
いら
)
えもなく、やがてお胸をもたげても面はなお、あらぬ方へ向けたままだった。
私本太平記:09 建武らくがき帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
案内して来た青眉の女房は、小門の戸をほとほとたたいて、中の
答
(
いら
)
えを聞いて後、武蔵を振り向いて、静かにいう。
宮本武蔵:03 水の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
すぐ低い
答
(
いら
)
えが洩れてきた。しかもきわめて優しい女の
返辞
(
へんじ
)
! 万吉はドキンと胸を躍らすと一緒に思わず「ありがてえ」と心の奥で
呟
(
つぶや
)
いたことである。
鳴門秘帖:02 江戸の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
と、元気のいい声を人ごみの中で
答
(
いら
)
えた。そしてさも大事そうに両の手に
目笊
(
めざる
)
を抱えながら彼の側へ馳けて来た。
私本太平記:05 世の辻の帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
寮の用人とも見える侍が、
舷
(
ふなべり
)
にひざまずいてこう云うと、破れた御簾のうちから、妙なる
答
(
いら
)
えが低く洩れて、御方の姿が、半ば月の光に照らし出された。
剣難女難
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
答
(
いら
)
えもない。ただ
唇
(
くち
)
がうごいた。そして寝床のうえの右の手がすこし動いた。
挙手
(
きょしゅ
)
の意志を示すように。
日本名婦伝:谷干城夫人
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
帝の
寵妃
(
ちょうひ
)
、三位ノ
廉子
(
やすこ
)
なのである。すぐ内からは、
侍者
(
じしゃ
)
の千種
忠顕
(
ただあき
)
が、侍者ノ間から
答
(
いら
)
えて出て来た。
私本太平記:06 八荒帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
あっと、
答
(
いら
)
えがするとすぐ、民部左衛門の半身が陣幕の上に高く見えた。馬の背にとび乗ったのだ。
上杉謙信
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
おうっと、遠くから
答
(
いら
)
えて、関興は
妖
(
あや
)
しげな一軍隊をさし招いて、たちまち、車のまわりに配した。
三国志:11 五丈原の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
起
(
た
)
ったのは、妙光坊の
阿闍梨
(
あじゃり
)
玄尊だった。「はっ」と
答
(
いら
)
えて、前へすすみ出で、両親王の床几へ
私本太平記:04 帝獄帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
と、声を
嗄
(
か
)
らせど、
扉
(
と
)
を叩けど、再び中から
答
(
いら
)
える者はなかった。ああ、何という無情な仕打ち、武士の情けを知らぬ人々。世間はこれ、新九郎にとってみな鬼か蛇か。
剣難女難
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
すると内から「おうっ」と、
答
(
いら
)
えて顔を見せた男がある。これが、かの岩松吉致であったのだ。
私本太平記:08 新田帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「はっ」と
答
(
いら
)
えながら堂の中へ飛び込み、間道へ通じるそこの床板を釘付けにし、さらに、堂の
喜連格子
(
きつれごうし
)
も外から厳重に釘を打って、テコでも
開
(
あ
)
かないようにしてしまう。
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
噂に聞いていた旅川周馬か? イヤそれにしてはたしかにさっきの
答
(
いら
)
えが女の
音声
(
おんじょう
)
であった。
鳴門秘帖:02 江戸の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
家のなかで、
答
(
いら
)
えがあったと思うと、老先生は、突然、その
腮
(
あぎと
)
の白髯を
逆
(
さか
)
しまに上げて
牢獄の花嫁
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
はっと
答
(
いら
)
えると、夏侯覇はすぐ手勢を
糾合
(
きゅうごう
)
し、星降る野をまっしぐらに進軍して行った。
三国志:11 五丈原の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
警吏
(
やくにん
)
はその琵琶の音のあまりに楽しげなのが
嫉
(
ねた
)
ましくでもなったか、おおウい——と声をあげて再三呼ばわるのに、いっこう
答
(
いら
)
えがないので、石を拾って松林の丘を見上げながら
抛
(
ほう
)
り投げた。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「臆病者っ、
答
(
いら
)
えをせぬか。寿童
冠者
(
かじゃ
)
が勢いに
怯
(
お
)
じて、
音
(
ね
)
も出さぬとみえる。——皆の者、石を
抛
(
ほう
)
れっ、石を抛れっ」声がやむとすぐ、ばらばらっと、石つぶてが、
館
(
やかた
)
の
廂
(
ひさし
)
や、縁に落ちてくる。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「はて、まだ
答
(
いら
)
えがござりませぬが、どうしたものでござりましょう」
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
答
(
いら
)
えはなく、山荘の裏のほうで、何か、ひそひそ、人声がしていた。
新・平家物語:02 ちげぐさの巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
すました
櫛笥
(
くしげ
)
などを片寄せながら、さりげなく
簾
(
す
)
の蔭で
答
(
いら
)
えていた。
私本太平記:07 千早帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
答
(
いら
)
える間もあればこそだ。侍たちは走り
出
(
い
)
で、右往左往
源頼朝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
といっては、内の
答
(
いら
)
えか、ゆるしかを、待つ風だった。
私本太平記:04 帝獄帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
と、
兵
(
つわもの
)
ばらの
奮
(
ふる
)
いたつ
答
(
いら
)
えが聞えた。
源頼朝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
答
(
いら
)
えもせず、廊へ坐って。
私本太平記:04 帝獄帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
答
常用漢字
小2
部首:⽵
12画
“答”を含む語句
返答
応答
應答
問答
受答
自問自答
口答
御答
解答
御返答
贈答
加答児
押問答
肺尖加答児
蘇門答剌
咽喉加答児
即答
答礼
笑而不答
手答
...