穿はき)” の例文
どうしたんだって聞くと、裏のうちへ背戸口から入った炭屋の穿はきかえたのが、雪が解けて、引掛ひっかかったんじゃあない……乗ってるんだって——
卵塔場の天女 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
いかんとなれば冬の雪はいかほどつもりても凝凍こほりかたまることなく、脆弱やはらかなる事淤泥どろのごとし。かるがゆゑに冬の雪中はかんじきすかり穿はきみちゆく里言りげんには雪をこぐといふ。
下着はつむぎかと思われる鼠縞、羽織は黒の奉書にお里の知れた酸漿かたばみ三所紋みところもん、どういうはずか白足袋に穿はきかえ、机の上へ出しそろえて置いた財嚢かみいれ手巾はんけち巻烟草入まきたばこいれ
油地獄 (新字新仮名) / 斎藤緑雨(著)
名差なざしにて對面せんと思案し頓て芝八山なる天一坊が旅館りよくわんの門前に來りける箱番所はこばんしよには絹羽織きぬはおり菖蒲皮しやうぶかははかま穿はきひかへし番人大音に御使者と呼上よびあげれば次右衞門は中の口に案内を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ことわりのみにて今日けふ御入来おいでるまいとぞんじましたが、はからざるところ御尊来ごそんらい朋友ほういうもの外聞ぐわいぶんかた/″\誠に有難ありがたい事で恐入おそれいります……うもお身装みなり工合ぐあひ、おはかま穿はきやうからさらにおかざりなさらん所と
にゆう (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
「まあ、穿はきものもなにもねえじゃあありませんか——」
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
何尺と云う高さの足駄をお穿はきなさっても
お千が穿はきものをさがすうちに、風俗係は、内から、戸の錠をあけたが、軒を出ると、ひたりと腰縄を打った。
売色鴨南蛮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
おりくつ穿はきて立出ける其衣服は葵の紋を織出したる白綾しろあやの小袖を着用し其下に柿色かきいろ綾の小袖五ツを重ね紫きの丸帶まるぐけしめ古金襴の法眼袴を穿ち上には顯文紗けんもんしや十徳を着用し手に金の中啓ちうけい
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
をつと蓑笠みのかさ稿脚衣わらはゞきすんべを穿はき晴天せいてんにもみのきるは雪中農夫のうふの常也)土産物みやげもの軽荷かるきにになひ、両親ふたおや暇乞いとまごひをなし夫婦ふうふたもとをつらね喜躍よろこびいさみ立出たちいでけり。正是これぞ親子おやこ一世いつせわかれ、のち悲歎なげきとはなりけり。
小児の足駄を思い出した頃は、実はもう穿はきものなんぞ、とうの以前になかったのです。
雪霊記事 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
考へ居たりしが大概おほよそ丑刻やつ時分じぶんとも思ふ頃そつと起上り寢床ねどこにて甲懸かふがけ脚絆きやはん迄も穿はきいざと云へば逃出にげだすばかりの支度をなし夫より後藤がたるそばさしより宵の酒宴さかもりの時見て置きたる胴卷の金を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
たはふれ穿はきてみしが一歩もすゝむことあたはず、家僕かぼくがあゆむは馬をぎよするがごとし。
小兒こども足駄あしだおもしたころは、じつ穿はきものなんぞ、とう以前いぜんになかつたのです。
雪霊記事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
たはふれ穿はきてみしが一歩もすゝむことあたはず、家僕かぼくがあゆむは馬をぎよするがごとし。
其處そこ各自めい/\が、かの親不知おやしらず子不知こしらずなみを、巖穴いはあなげるさまで、はひつてはさつつゝ、勝手許かつてもと居室ゐまなどのして、用心ようじんして、それに第一だいいちたしなんだのは、足袋たび穿はきもので、驚破すは
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「傘も何も、あの、雪で一杯でございますから。皆様のお穿はきものが、」
第二菎蒻本 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)