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相俟
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あいま
ふりがな文庫
“
相俟
(
あいま
)” の例文
彼
(
か
)
の
八
(
や
)
ツ
山
(
やま
)
の
沖
(
おき
)
に並んで泛ぶこれも無用なる
御台場
(
おだいば
)
と
相俟
(
あいま
)
って、いかにも過去った時代の遺物らしく放棄された悲しい趣を示している。
日和下駄:一名 東京散策記
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
雪渓が幾条となく山肌に象眼されているので、頂上附近の高山性地貌と
相俟
(
あいま
)
って、一層崇高偉大なる感じを起さしめるのである。
白馬岳
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
黒泡を立てて噛み合い
咆
(
ほ
)
え合い、轟々として奔騰しそれが耳も
聾
(
ろう
)
せんばかりの音と
相俟
(
あいま
)
って、
喧囂
(
けんごう
)
といっていいか、悲絶といっていいのか
ウニデス潮流の彼方
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
元来、女に
飢
(
う
)
えていた
奔放
(
ほんぽう
)
な野獣武士の本能と
相俟
(
あいま
)
って、そこには想像外な性社会の
醗酵
(
はっこう
)
が都の夜の底をびらんさせていたのではあるまいか。
私本太平記:13 黒白帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
鵙の声は
直
(
ただち
)
に秋晴の天を連想させる。しきりに啼き立てる鵙の鋭声と、竿にかけて干す洗濯物と
相俟
(
あいま
)
って、明るい秋の
日和
(
ひより
)
を十分に現している。
古句を観る
(新字新仮名)
/
柴田宵曲
(著)
▼ もっと見る
単純な比喩ではなくて、菊の香と奈良の仏たちと
相俟
(
あいま
)
って、蒼古な敬虔な感じを起すところに句の生命はあるのである。
俳句はかく解しかく味う
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
「皇位に即かせ給うべき
御相
(
おんそう
)
、天下のことお諦め給うな」今、宮の胸によみがえったこの言葉は、源三位頼政の進言と
相俟
(
あいま
)
って、強い啓示となった。
現代語訳 平家物語:04 第四巻
(新字新仮名)
/
作者不詳
(著)
こんにちの世界はこの両者
相俟
(
あいま
)
って始めて円満なるを得るものであるが、
外
(
そと
)
に対して常にわれわれの眼を喜ばせるものは、
男々
(
おお
)
しき男性的道徳である。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
その上に乱れかかっている長髪と
相俟
(
あいま
)
って卓抜な俊秀な感じを見る人に与えたが、頭髪がうすくまばらになり、眉毛もそれとは見えがたくなった今は
癩
(新字新仮名)
/
島木健作
(著)
……ところが間もなく、
斯様
(
かよう
)
な斎藤先生の御不満が、正木先生の天才的頭脳と
相俟
(
あいま
)
って、当時の大学部内に、異常な波瀾を捲き起す機会が参りました。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
それが
今日
(
こんにち
)
では、一泊はおろか、日帰りでも悠々と箱根や
熱海
(
あたみ
)
に遊んで来ることが出来るようになったのであるから、鉄道省その他の宣伝と
相俟
(
あいま
)
って
綺堂むかし語り
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
もしこの方がチベットで政治を
執
(
と
)
るようになって居りますれば、今の鋭敏なる法王とこの老練なる大臣とが
相俟
(
あいま
)
って随分面白い仕事が出来たろうと思う。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
過敏になった自意識と役の不足、俳優的使命の不足とが
相俟
(
あいま
)
って、この完全な芸術家であり貧しい人間である男に、そんな思いをさせるに至ったわけですね。
トニオ・クレエゲル
(新字新仮名)
/
パウル・トーマス・マン
(著)
(ということは、自分が未だ本当に
成人
(
おとな
)
でなく)それが、「父が自分をまだ子供と視ていること」と
相俟
(
あいま
)
って、こうした結果を
齎
(
もたら
)
すのだろうか? それとも
光と風と夢
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
管見によればチェーホフの笑いは、彼の非情に少くも劣らぬだけの重要性をもつ。それは非情と
相俟
(
あいま
)
って、彼の存在を支える車の両輪だったとさえ言っていい。
チェーホフ序説:――一つの反措定として――
(新字新仮名)
/
神西清
(著)
後の銃後と
相俟
(
あいま
)
って、旅順攻囲の終始が記録的に、しかも、自分一個の経験だけでなく、軍事的知識と見聞をかき集めて、戦線を全貌的に描き出そうと努めてある。
明治の戦争文学
(新字新仮名)
/
黒島伝治
(著)
また上代文化の面影がそこに認められることと
相俟
(
あいま
)
って、それを詩と美との雰囲気に包む。
日本精神について
(新字新仮名)
/
津田左右吉
(著)
穴の明いていたバルーンは、低気圧の通過と
相俟
(
あいま
)
って、ようやくその浮力を減じ、ロープの緊張は
弛
(
ゆる
)
んで被害者の屍体は振り墜されます。デパートの屋上へではないのですよ。
デパートの絞刑吏
(新字新仮名)
/
大阪圭吉
(著)
{13}「いき」の語源の研究は、生、息、行、意気の関係を存在学的に闡明することと
相俟
(
あいま
)
ってなされなければならない。「生」が基礎的地平であることはいうまでもない。
「いき」の構造
(新字新仮名)
/
九鬼周造
(著)
天下再び麻の如く乱るるや否や——
然
(
しか
)
る上は、君は東北にあって本土の頭を抑え、不肖は九州にあってその脚を抑え、かくして、南北
相俟
(
あいま
)
って国家のために尽しなば、そのしあわせ
大菩薩峠:34 白雲の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
互いに
相俟
(
あいま
)
ってその美しさを輝かし
完
(
まっと
)
うする人がらだったので、友情からというよりもむしろ
嬌艶
(
きょうえん
)
の本能から決して離れないで、互いに寄り合ってイギリスふうの態度を取っていた。
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
その綜合的美観はその位置と丘陵の高さとが、明らかにして
洋々
(
ようよう
)
たる河川の
大景
(
たいけい
)
と
相俟
(
あいま
)
って、よく調和して
映照
(
えいしょう
)
しているにある。加えて、
蒼古
(
そうこ
)
な森林相がその麓からうちのぼっている。
木曾川
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
銀安
(
ぎんやす
)
の噂と
相俟
(
あいま
)
って語られ、ひどく好奇心をそそるところから、彼女は思い切って上海まで出て行き、変わった世界を見ると共に、生活の方法を立てようと、いろいろ伝手を求めたところ
さまよう町のさまよう家のさまよう人々
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
千賀道有などと
云
(
い
)
う人々と親しく往来して、いろいろな見聞を広めたので、その学識もあらゆる方面にわたり、これが明敏な彼の性質と
相俟
(
あいま
)
って、一世にその多技多能を
謳
(
うた
)
われるようになりました。
平賀源内
(新字新仮名)
/
石原純
(著)
前後の描写の印象と
相俟
(
あいま
)
って非常に効果の多いものになる。
日本精神史研究
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
白い肩掛を
引掛
(
ひっか
)
けた
丈
(
せい
)
のすらりとした
痩立
(
やせだち
)
の姿は、
頸
(
うなじ
)
の長い目鼻立の
鮮
(
あざやか
)
な色白の
細面
(
ほそおもて
)
と
相俟
(
あいま
)
って、いかにも
淋
(
さび
)
し気に
沈着
(
おちつ
)
いた様子である。
つゆのあとさき
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
連脈の長大と深奥とは、自然の結果として此三者となりて現れ、此三者は
相俟
(
あいま
)
って色彩の美を
煥発
(
かんぱつ
)
する要素であることは、別に多言するまでもない。
奥秩父の山旅日記
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
玲瓏
(
れいろう
)
玉を磨き上げたような容貌と
相俟
(
あいま
)
って寸分の身揺ぎもしなかったが、世間に秘められた裏面の生活においては
陰獣トリステサ
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
郭公は耳に聞いた声、大竹原を漏る月夜は眼に見た景色、両者
相俟
(
あいま
)
って大景を描き出しているのである。
俳句はかく解しかく味う
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
この伊賀上野は、筒井の持ち城として以来、ここの地勢と
相俟
(
あいま
)
って、世上有名な堅城のひとつである。
新書太閤記:10 第十分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
明方の爽涼の気と、朝顔の花と、高い鈴の音と
相俟
(
あいま
)
って三重奏の観を呈している。
古句を観る
(新字新仮名)
/
柴田宵曲
(著)
法医学的研究趣味とが
相俟
(
あいま
)
って、伝え聞く数千年前の「
木乃伊
(
ミイラ
)
の化粧」式な怪奇趣味にまで、ズット
以前
(
まえ
)
から高潮しておりましたのが、斯様な機会に曝露したもので御座いましょうか。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
それは原作そのものが優れていたのと
相俟
(
あいま
)
って現われた結果である、当時紅葉山人もまだ達者でいて、あれを一見して聞きしに勝る名優だと折紙をつけたということが何かの新聞に出ていたが
生前身後の事
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
坊ちゃんとして
生長
(
おいた
)
って来た頼母は、顔も姿も
初々
(
ういうい
)
しくて、女の子のようであり、それが、雲一片ない空から、溢れるように降り注いでいる月光に照らされ、寝ている様子は、無類の美貌と
相俟
(
あいま
)
って
血曼陀羅紙帳武士
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
天明六年北尾政演が描ける『狂歌五十人一首』は天明狂歌の
萃
(
すい
)
を抜きたるものその板画と
相俟
(
あいま
)
つて狂歌絵本中の冠たるものなり。
江戸芸術論
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
且
(
か
)
つ秀麗な富士山の姿は自ら女神を想わしむるものであるから、彼此
相俟
(
あいま
)
って木之花開耶姫が火の山の女神として祭られるに至った一の原因であったと思われる。
二、三の山名について
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
犬になりたい仲間も
殖
(
ふ
)
え、両々
相俟
(
あいま
)
って、
糜爛
(
びらん
)
した
時粧
(
じしょう
)
風俗とともに、天下不良化の観をつくった。
大岡越前
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
前書と
相俟
(
あいま
)
ってこの句を見れば、一概に単純といい去るわけには行かない。
古句を観る
(新字新仮名)
/
柴田宵曲
(著)
寒村の趣で、冬木立と
相俟
(
あいま
)
っていかにもありそうな景色と受取れる。
俳句はかく解しかく味う
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
双方
相俟
(
あいま
)
って、ここに真剣な芸術の研成機運が生まれる。
能とは何か
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
それらの感情は新しい画工のいわば
稚気
(
ちき
)
を帯びた新画風と古めかしい木板摺の技術と
相俟
(
あいま
)
って遺憾なく紙面に躍如としている。
日和下駄:一名 東京散策記
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
就中
(
なかんずく
)
駒ヶ岳から中ノ岳に至る連嶂は、
崔嵬
(
さいかい
)
たる山容と
雄渾
(
ゆうこん
)
なる峰勢と
相俟
(
あいま
)
って、槍穂高の山塊を想起せしむるものがあるのみでなく、北又川の上流に面して多数の雪渓を懸け連ねているので
利根川水源地の山々
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
心の深さと表現の自由ということは
相俟
(
あいま
)
って
全
(
まった
)
きを得る。
俳句への道
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
「古池の句の弁」と
相俟
(
あいま
)
って考える必要がある。
「俳諧大要」解説
(新字新仮名)
/
柴田宵曲
(著)
山の手の坂道はしばしばその
麓
(
ふもと
)
に聳え立つ寺院の屋根樹木と
相俟
(
あいま
)
って一幅の
好画図
(
こうがと
)
をつくることがある。私は寺の屋根を眺めるほど愉快なことはない。
日和下駄:一名 東京散策記
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
この
丈
(
たけ
)
高く細長き女の
真白
(
まっしろ
)
き裸体は身にまとへる赤き
布片
(
ふへん
)
と黒く濃き毛髪とまた
蒼然
(
そうぜん
)
たる緑色の背景と
相俟
(
あいま
)
つて
真
(
しん
)
に
驚愕
(
きょうがく
)
すべき魔力を有する整然たる完成品たり。
江戸芸術論
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
元禄宝永の演芸は鳥居派初期の
丹絵
(
たんえ
)
の如く豪放の
中
(
うち
)
稚気を帯びたる精神はその簡易にしてしかも
突飛
(
とっぴ
)
なる形式と
相俟
(
あいま
)
つてここに不可思議なる雅趣を示せしものなるべし。
江戸芸術論
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
請
(
こ
)
う試みに、旧習に従った極めて平凡なる日本人の
住家
(
じゅうか
)
について、先ずその便所なるものが
縁側
(
えんがわ
)
と座敷の障子、庭などと
相俟
(
あいま
)
って、如何なる審美的価値を有しているかを観察せよ。
妾宅
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
その
傍
(
そば
)
の
煤
(
すす
)
けた柱に
貼
(
は
)
った
荒神様
(
こうじんさま
)
のお
札
(
ふだ
)
なぞ、一体に汚らしく乱雑に見える周囲の
道具立
(
どうぐだて
)
と
相俟
(
あいま
)
って、
草双紙
(
くさぞうし
)
に見るような何という
果敢
(
はかな
)
い
佗住居
(
わびずまい
)
の情調、また
哥沢
(
うたざわ
)
の節廻しに唄い古されたような
妾宅
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
相俟
(
あいま
)
つて
互
(
たがい
)
の性慾を狂奔せしむる性慾の酒。
珊瑚集:仏蘭西近代抒情詩選
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
相
常用漢字
小3
部首:⽬
9画
俟
漢検1級
部首:⼈
9画
“相”で始まる語句
相
相手
相違
相応
相好
相撲
相談
相槌
相貌
相模