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疾
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とっ
ふりがな文庫
“
疾
(
とっ
)” の例文
「
紺屋
(
こうや
)
じゃあねえから
明後日
(
あさって
)
とは
謂
(
い
)
わせねえよ。
楼
(
うち
)
の
妓衆
(
おいらん
)
たちから三
挺
(
ちょう
)
ばかり来てる
筈
(
はず
)
だ、もう
疾
(
とっ
)
くに出来てるだろう、大急ぎだ。」
註文帳
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
小山も笑いを含み「だが大原君、その大食を見てはお登和さんも愛想が尽きるだろう」妻君「オホホ、モー
疾
(
とっ
)
くに尽きているのです」
食道楽:春の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
その青年は、もう
疾
(
とっ
)
くに死んでいた。それは勿論、瓦斯中毒ではないことは一と目で判った。下半身が滅茶滅茶にやられているのだった。
空襲葬送曲
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
窓が開くなら
疾
(
とっ
)
くに飛び下りるのだが、生憎凍りついていて動きもしない。乃公は本当に死ぬかと思ったから、益〻大声を立てた。すると
いたずら小僧日記
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
イヤ、骨身に徹するどころではない、
魂魄
(
たましい
)
なども
疾
(
とっ
)
くに飛出して
終
(
しま
)
って、力寿の
懐中
(
ふところ
)
の奥深くに
潜
(
もぐ
)
り込んで居たのである。
連環記
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
▼ もっと見る
前に御覧に入れた記録と、この文句を照し合わせて御覧になった諸君は、最早
疾
(
とっ
)
くにお気付きになっているであろう。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
その月の学資は
疾
(
とっ
)
くに母の名前によって送られて来ているので、その封書が書留であるということが何か重大な内容を含んでいるという気がしたのだ。
三等郵便局
(新字新仮名)
/
尾崎士郎
(著)
夏姫には
固
(
もと
)
より、巫臣の意は
疾
(
とっ
)
くに通じられている。出発に臨んで「夫の尸が得られなければ、二度と戻りませぬ」
妖氛録
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
太郎は途中からよして、自分よりは
疾
(
とっ
)
くに家に帰っていて、二郎の帰るのを待ちつつ母や妹と心配しながら、果物などを食べていたところであります。
迷い路
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
九十の老齢で今なお病を養いつつ女の頭領として仰がれる
矢島楫子刀自
(
やじまかじことじ
)
を初め今は
疾
(
とっ
)
くに鬼籍に入った木村
鐙子
(
とうこ
)
夫人や
中島湘烟
(
なかじましょうえん
)
夫人は皆当時に
崛起
(
くっき
)
した。
三十年前の島田沼南
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
内心嘲笑しながら話を聞いていたのも、
疾
(
とっ
)
くに知っていて故意と素知らぬ振りを装っているのかも知れない、と思うと少々気まりが悪るくもなるのだった。
むかでの跫音
(新字新仮名)
/
大倉燁子
(著)
しかしこの名は
疾
(
とっ
)
くに廃れて今はこれをジャノヒゲあるいはリュウノヒゲあるいはジョウガヒゲあるいはジイノヒゲあるいはタツノヒゲなどと呼んでいる。
植物記
(新字新仮名)
/
牧野富太郎
(著)
花房も
疾
(
とっ
)
くに気が付いて、初めは父がつまらない、内容の無い生活をしているように思って、それは老人だからだ、老人のつまらないのは当然だと思った。
カズイスチカ
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
不慣な彼も、「七」の数を「なな」と発音し、「四」の数を「よん」と
撥
(
はね
)
るぐらいのことは
疾
(
とっ
)
くに心得ていた。
桜の実の熟する時
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
「ひょっとすると気がふれたかも知れない。あの眼はただごとではないぞ。ひょっとするとだ。だが
既
(
も
)
う
疾
(
とっ
)
くに狂れてしまった後の瞬間かも知れないのだ。」
香爐を盗む
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
ただの一瞬の間に魂の飛揚と変えてしまうであろう、殺人の愉快さを味わい楽しんでいたことであったが、そうした姿勢のまま私は行員たちももう
疾
(
とっ
)
くに退けて
陰獣トリステサ
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
疾
(
とっ
)
くのむかしに石炭の荷役が開始されて、幾艘となく両側の船腹に横付けされた
盥
(
たらい
)
のような巨大な荷船から、あんぺらの石炭ぶくろを担いだ半裸体の土人のむれが
踊る地平線:12 海のモザイク
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
私
(
わし
)
はお前たちに親切すぎた。お前の不品行やお前の父の不品行によって、もう
疾
(
とっ
)
くに追い払う理由があったにもかかわらず、お前たち一家の者に恩恵を施してやった。
ジャン・クリストフ:06 第四巻 反抗
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
いえ、そのお庭の戸は
疾
(
とっ
)
くに閉めてあるのでございますから、気味が悪うございます。何しろ。
痴人と死と
(新字新仮名)
/
フーゴー・フォン・ホーフマンスタール
(著)
『——格太郎。成程。したが、あれは
疾
(
とっ
)
くに勘当いたした者、田崎恒太郎の子でござらぬ!』
田崎草雲とその子
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
あゝ好いたらしい若い
衆
(
しゅ
)
だと思うと見ぬ振をしてじろり/\顔を見るもので、男の方では元より名指して登楼るくらいでげすもの、
疾
(
とっ
)
くに首ッたけとなって
居
(
お
)
るんでございます。
根岸お行の松 因果塚の由来
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
玉目三郎がどうあろうと、あるいはトキ女の実父どもがどういう心を持っていようと、そんな
恩怨
(
おんえん
)
は、
疾
(
とっ
)
くの昔に消えている。共に行動を起したあとは、家中の心が即ち個人の心であった。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
僕は
寧
(
むし
)
ろ諸君の
迂
(
う
)
を笑いたいと思う、かくいわば君達は例に依って僕を攻撃なさるかと存ずるが、僕はまた僕だけに自信がある、君達も
疾
(
とっ
)
くに御承知であろう、かのアルキメヂスという男は
太陽系統の滅亡
(新字新仮名)
/
木村小舟
(著)
彼は
疾
(
とっ
)
くに既うこうして謝罪りたかったのであったが、
流石
(
さすが
)
に女の前では
出来難
(
できにく
)
かった間に、ずんずんと女に
引摺
(
ひきず
)
られて嘘許り云ったのであった。其処へ持って来て巡査は
飽迄
(
あくまで
)
彼を追窮した。
偽刑事
(新字新仮名)
/
川田功
(著)
「お前さん、そんならそれと、
疾
(
とっ
)
くに打明けて言いなさればいいにさ」
大菩薩峠:26 めいろの巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
うむ、ありゃもう
疾
(
とっ
)
くに帰った。
俺
(
おい
)
ら
可
(
い
)
いてことよと受合って来たけれども、不安心だと見えてあとからついて来たそうで、
老人
(
としより
)
は苦労性だ。
黒百合
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「まだそんなに悪いのかね。もう
疾
(
とっ
)
くに良くなってることかと思っていた」と言って、岸本は嫂の方を見て
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
少し気の毒なような感じがせぬではなかったが、これが少年でなくて大人であったなら
疾
(
とっ
)
くに自分は言出すはずのことだったから、仕方がないと自分に決めて
蘆声
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
そうでなければ
最早
(
もう
)
疾
(
とっ
)
くに浮き上って来る筈だ。こうと知ったらば、前から刃物の一ツも持たせてやるところだったものを。けれども今は歎いても仕方がない。
白髪小僧
(新字新仮名)
/
夢野久作
、
杉山萠円
(著)
もう
疾
(
とっ
)
くに片付けてしまっているだろうと思ったのに、意外であった。その時僕は少し
懶
(
なま
)
けて来たなと思った。あの時お蝶は三十分が間も何を思っていたのだろう。
ヰタ・セクスアリス
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
王侯将相よりも文豪の尊敬される
欧羅巴
(
ヨーロッパ
)
なら
疾
(
とっ
)
くに日本の名蹟とし東京の名誉とし
将
(
は
)
た飯田町の誇りとして手厚く保管し、金石に
勒
(
ろく
)
して永久に記念されべきはずであるが
硯友社の勃興と道程:――尾崎紅葉――
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
いつもなら、もう
疾
(
とっ
)
くの昔にベッドに入る頃だが、
今宵
(
こよい
)
は、なかなか睡られそうもない。
地球要塞
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
多分今日では
最早
(
もはや
)
疾
(
とっ
)
くに絶えていてそれが一場の昔語りになっているのであろう。
植物記
(新字新仮名)
/
牧野富太郎
(著)
体は、
疾
(
とっ
)
くに死んでいるのに、目だけが生きている、といった感じだが、その寂しい美しさが私の心を掻き乱すのだった。今までにこれほど恐しい魅力のある眼に出会った事がなかった。
妖影
(新字新仮名)
/
大倉燁子
(著)
どうしてお浪は國藏の
打
(
ぶ
)
たれるのを見て、
疾
(
とっ
)
くに
跣足
(
はだし
)
で
逃出
(
にげだ
)
して仕舞って居りませんから、國藏は文治に厚く礼を述べて
立帰
(
たちかえ
)
りましたが、此の國藏が文治の云う事を真に感じ、改心致して
業平文治漂流奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
さもあろうと云った顔付で、
疾
(
とっ
)
くに知っていた事を聞くように、満足げな微笑を湛えながら
鷹揚
(
おうよう
)
に
頷
(
うなず
)
く。其の顔は、誠に、
干潟
(
ひがた
)
の泥の中に満腹して眠る
海鰻
(
カシボクー
)
の如く、至上の幸福に輝いている。
南島譚:01 幸福
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
もう
疾
(
とっ
)
くに散り散りバラバラになっていましたが、この頃から
馬丁
(
べっとう
)
の福次郎も、水番の六蔵も山を降って、あの
淋
(
さび
)
しい山の中には、ただ娘たち二人っ切りが住んでいたのですが、しかもそのうちに
墓が呼んでいる
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
疾
(
とっ
)
くから刀屋へ手入れにやって、独りで、澄ましこんでいた。
べんがら炬燵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
質の出入れ——この質では、ご新姐の蹴出し……
縮緬
(
ちりめん
)
のなぞはもう
疾
(
とっ
)
くにない、青地のめりんす、と短刀
一口
(
ひとふり
)
。数珠一
聯
(
れん
)
。
木の子説法
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
と
罵
(
ののし
)
りながら、馬をキリキリ引きまわして、花園も芝生も一飛びに、表門に飛び出しましたが、その時はもう最前の騎兵は
疾
(
とっ
)
くに王宮に帰り着いている頃でした。
白髪小僧
(新字新仮名)
/
夢野久作
、
杉山萠円
(著)
旦那は
疾
(
とっ
)
くにこの世にいない人で、店も守る一方であったが、それでも商法はかなり手広くやり、先代が始めた
上海
(
シャンハイ
)
の商人との取引は新七の代までずっと続いていた。
食堂
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
さればこそ西洋人はツバキに大変な趣味を持ち、もうずっと昔に沢山な苗木を欧洲に移植しそれを図説した立派な書物が
疾
(
とっ
)
くに出版せられて居りその書価も百円以上で日本は
頓
(
とん
)
と顔負けがしている。
植物記
(新字新仮名)
/
牧野富太郎
(著)
え? 親父でございますか? もうこれも
疾
(
とっ
)
くに亡くなりました。
蒲団
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
「おやおや飛んだ処でね、だってもう三月も過ぎましたじゃありませんか。
疾
(
とっ
)
くにこなれてそうなものですね。」
誓之巻
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
いくら居なくなったと言っても、まだそれでも二三年前までは居ました……この節はもう魚も居ません……この松林などは、へえもう、
疾
(
とっ
)
くに人手に渡っています……
岩石の間
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
嬢を加えた演技は
疾
(
とっ
)
くに再開されていたが、私はただ、喝采の声を耳にするばかりで、レンズに限られた範囲しか見ていなかったから、何をやっているかよく解らなかった。
暗黒公使
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
へん、
鈍漢
(
のろま
)
。どの道、掏られたにゃ違えはねえが、汝がその間抜けな風で、内からここまで
蟇口
(
がまぐち
)
が有るもんかい、
疾
(
とっ
)
くの昔にちょろまかされていやあがったんだ。
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
塾で新学年の
稽古
(
けいこ
)
が始まる日には、高瀬は知らない人達に逢うという心を持って、庭伝いに桜井先生を誘いに行った。早起の先生は時間を待ち切れないで
疾
(
とっ
)
くに家を出た。
岩石の間
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
第一今の身の上と
最前
(
さっき
)
までの身の上とはどっちが
本当
(
ほんと
)
なのか嘘なのか、それすら全く気にかけなかった。その上に自分が白髪小僧であった事なぞは
疾
(
とっ
)
くの昔に忘れてしまっている。
白髪小僧
(新字新仮名)
/
夢野久作
、
杉山萠円
(著)
監督
(
おめつけ
)
の叔父さんから内々注意があるもんだから、もう
疾
(
とっ
)
くに兄さんへは
家
(
うち
)
でお
金子
(
かね
)
を送らない事にして、独立で遣れッて名義だけれども、その実、勘当同様なの。
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
疾
常用漢字
中学
部首:⽧
10画
“疾”を含む語句
疾風
疾病
疾走
病疾
口疾
疾患
疾駆
疾風迅雷
疾呼
痔疾
気疾
疾足
疾駈
瘧疾
疾苦
速疾
疫疾
癈疾
疾視
目疾
...