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畦道
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あぜみち
ふりがな文庫
“
畦道
(
あぜみち
)” の例文
「さあ、はや参ろう。残っておる者は、われらばかりじゃ」といい捨てたまま、小さい
溝
(
どぶ
)
を飛び越えて
畦道
(
あぜみち
)
を跡をも見ずに、急いだ。
恩を返す話
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
さればそれより以前には、浅草から吉原へ行く道は馬道の
他
(
ほか
)
は、皆
田間
(
でんかん
)
の
畦道
(
あぜみち
)
であった事が、地図を見るに及ばずして推察せられる。
里の今昔
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
まだ娘のころ、若い男と
轡
(
くつわ
)
をならべて、田舎の
畦道
(
あぜみち
)
を馬で乗りまわして、百姓をおどろかした。嘘か本当か、そんな噂話も伝っている。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
橋桁
(
はしけた
)
の
陥
(
お
)
っこった土橋、水が
涸
(
か
)
れて河床の浮きあがった小川や、
畦道
(
あぜみち
)
は霜に崩れて、下駄の歯に
絡
(
か
)
らんでひどく歩きにくかった。
冬枯れ
(新字新仮名)
/
徳永直
(著)
こは
怪
(
あやし
)
やと不気味ながら、その血の痕を拾い
行
(
ゆ
)
くに、墓原を通りて
竹藪
(
たけやぶ
)
を
潜
(
くぐ
)
り、裏手の
田圃
(
たんぼ
)
の
畦道
(
あぜみち
)
より、南を指して印されたり。
活人形
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
▼ もっと見る
折悪
(
おりあし
)
く井戸換の最中だったので、水が使えないので、火消隊の面々は非常に狼狽して、
畦道
(
あぜみち
)
の小川までホースを伸ばそうとしているらしい。
ゼーロン
(新字新仮名)
/
牧野信一
(著)
そうして、森のほうにつづいた
畦道
(
あぜみち
)
を僕は独りで
辿
(
たど
)
って行った。考えごとをつづけながら。時おり、その
俯
(
うつ
)
むいた首を悲しげに振りながら。
二十歳のエチュード
(新字新仮名)
/
原口統三
(著)
霜どけでぬかる
畦道
(
あぜみち
)
をいくと、係りの園夫たちが幾人かで、土をひろげたりかぶせてある藁を替えたりしてい、津川を見るとみな挨拶をした。
赤ひげ診療譚:01 狂女の話
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
畠
(
はたけ
)
の中にある田舎の家。外には木枯しが吹き渡り、家の周囲には、
荒寥
(
こうりょう
)
とした
畦道
(
あぜみち
)
が続いている。寂しい、孤独の中に
震
(
ふる
)
える人生の姿である。
郷愁の詩人 与謝蕪村
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
竹藪
(
たけやぶ
)
の中の雑草の生茂った細道を通り抜け、川原畑の
畦道
(
あぜみち
)
を歩いて、一面の石ころに覆われた川原に出で、そこから舟に乗ったものに相違ない。
御萩と七種粥
(新字新仮名)
/
河上肇
(著)
靜子は妹共と一緒に田の中の
畦道
(
あぜみち
)
に立つて、
手巾
(
ハンカチ
)
を振つてゐる。妹共は何か叫んでるらしいが、無論それは聞えない。智惠子は無性に心が騷いだ。
鳥影
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
と
覚
(
さと
)
って、何騎かは、馬の背を降りた。或いはまた、ふたたび
畦道
(
あぜみち
)
まで戻って、遠く、葭のない先の方へ
迂回
(
うかい
)
を試みた。
新書太閤記:08 第八分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
刑部少輔の手の者が山蔭に形を没してしまった後、金吾中納言は、
畦道
(
あぜみち
)
に馬を休ませながら、家老にたずねた
大菩薩峠:33 不破の関の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
その田の中の
畦道
(
あぜみち
)
を、眼の前の道路から一町ばかり向うの鉄道線路まで、パラソルを片手に捧げて、危なっかしい足取りで渡って行く一人の盛装の女がいる。
空を飛ぶパラソル
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
それから田植まっさいちゅうの
田圃
(
たんぼ
)
へ出て、せまい
畦道
(
あぜみち
)
を一列にならんで進み、村のひとたちをひとりも見のがすことなく浮かれさせ橋を渡って森を通り抜けて
逆行
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
……ヒロ子さんは、
畦道
(
あぜみち
)
を大まわりしている。ぼくのほうが早いにきまっている、もし早い者順でヒロ子さんの分がなくなっちゃったら、半分わけてやってもいい。
夏の葬列
(新字新仮名)
/
山川方夫
(著)
とにかく気のついたときには、旗男は、まっくらな
畦道
(
あぜみち
)
をまるで犬かなんかのように四ンばいになり、ハアハア息を切りながら先を急いでいる自分自身を
見出
(
みいだ
)
した。
空襲警報
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
ふと眼を覚まして
四辺
(
そこいら
)
を見廻した時は、暮色が
最早
(
もう
)
迫つて来た。向ふの田の中の
畦道
(
あぜみち
)
を帰つて行く人々も見える。荒くれた男女の農夫は幾群か丑松の
側
(
わき
)
を通り抜けた。
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
基線道路と名づけられた場内の公道だったけれども
畦道
(
あぜみち
)
をやや広くしたくらいのもので、畑から
抛
(
ほう
)
り出された石ころの間なぞに、
酸漿
(
ほうずき
)
の実が赤くなってぶら下がったり
親子
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
田圃の
畦道
(
あぜみち
)
で、一丈あまりもあらうと思ふ、恐ろしい怪物に逢つたり、後ろから追ひ廻されたりして、腰を拔かしたのもあるさうですよ、——新田の嫁と、喜十のところの隱居と
銭形平次捕物控:308 秋祭りの夜
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
願ひは何ぞ行きも帰りも首うなだれて
畦道
(
あぜみち
)
づたひ帰り来る美登利が姿、それと見て遠くより声をかけ、正太はかけ寄りて
袂
(
たもと
)
を押へ、美登利さん
昨夕
(
ゆふべ
)
は御免よと
突然
(
だしぬけ
)
にあやまれば
たけくらべ
(新字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
芋畠のまはりの
環
(
わ
)
のやうな同じ
畦道
(
あぜみち
)
ばかり幾回もくる/\と歩き廻つてゐるのであつた。
途上
(新字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
お顔のうえの頬ひげと口ひげの間にどんなふうに
畦道
(
あぜみち
)
をつけるか、捲毛の巻き工合をどうするか、おぐしの櫛目をどう入れるか、そのやり方一つ、そのちょっとした呼吸ひとつで
かもじの美術家:――墓のうえの物語――
(新字新仮名)
/
ニコライ・セミョーノヴィチ・レスコーフ
(著)
それに彼等は普通の道路を
厭
(
いと
)
うて、そのなかへ足を踏み込むと露で股まで濡れる
畦道
(
あぜみち
)
の方へ横溢した活気でもつて、その鎖を強く引つ張りながら、よろめく彼を引き込んで行つた。
田園の憂欝:或は病める薔薇
(新字旧仮名)
/
佐藤春夫
(著)
畦道
(
あぜみち
)
は随分狭かった。肩と肩とを
食
(
く
)
っ付けなければ並んで歩くことが出来なかった。
大捕物仙人壺
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
そして、くるりと向きをかえると、校庭の溝をとび越えて、
畦道
(
あぜみち
)
の方に逃げ出した。
次郎物語:01 第一部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
何か発句にはなるまいかと思ひながら
畦道
(
あぜみち
)
などをぶらりぶらりと
歩行
(
ある
)
いて居るとその愉快さはまたとはない。脳病なんかは影も留めない。一時間ばかりも散歩するとまた二階へ帰る。
墨汁一滴
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
春
(
はる
)
の
先駆者
(
せんくしゃ
)
であるひばりが、
大空
(
おおぞら
)
に
高
(
たか
)
く
舞
(
ま
)
い
上
(
あ
)
がって、しきりにさえずるときに、
謙遜
(
けんそん
)
なほおじろは、
田圃
(
たんぼ
)
の
畦道
(
あぜみち
)
に
立
(
た
)
っているはんのきや、
平原
(
へいげん
)
の
高
(
たか
)
い
木
(
き
)
のいただきに
止
(
と
)
まって、
村
(
むら
)
や
平原の木と鳥
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
近い
干潟
(
ひがた
)
の仄白い砂の上に、黒豆を
零
(
こぼ
)
したようなのは、烏の群が下りているのであろうか。女の人の教える方を見れば、青松葉をしたたか背負った頬冠りの男が、とことこと
畦道
(
あぜみち
)
を通る。
千鳥
(新字新仮名)
/
鈴木三重吉
(著)
けれどもこの辺の田野の名物である
榛
(
はん
)
の木立が
畦道
(
あぜみち
)
の碁盤目や綾菱形の上に立ち並び、その梢には乾びた実が房になって懸かり、吹きすさぶ夜風に絶えず鳴るのでその音からしてだけでも
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
富士司の御鷹匠は
相本喜左衛門
(
あいもときざえもん
)
と云うものなりしが、其日は上様御自身に富士司を合さんとし給うに、
雨上
(
あまあが
)
りの
畦道
(
あぜみち
)
のことなれば、思わず
御足
(
おんあし
)
もとの狂いしとたん、
御鷹
(
おたか
)
はそれて空中に飛び揚り
三右衛門の罪
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
東金君は青田の中の
畦道
(
あぜみち
)
をズン/\急ぐ。僕は後から呼びかけた。
村一番早慶戦
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
その
薄明
(
うすあかり
)
の中で、出来る丈け手早く、菰田の墓を、さも死人が
蘇生
(
そせい
)
して、内部から棺を破って這い出した
体
(
てい
)
にしつらえ、足跡を残さぬ様に注意しながら、元の生垣の隙間から、外の
畦道
(
あぜみち
)
へと抜け出し
パノラマ島綺譚
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
ではない、見るうちに馬細りゆく時雨かな……
田圃
(
たんぼ
)
のなかの
畦道
(
あぜみち
)
を、主従四人の騎馬すがたが、見る間に小さくなってゆくところは、まことに風流のようですが、当人達はそれどころではありません。
丹下左膳:02 こけ猿の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
畦道
(
あぜみち
)
づたいに
美登利
(
みどり
)
の帰ってくる中田圃の稲荷とはこれである
浅草風土記
(新字新仮名)
/
久保田万太郎
(著)
私は、田圃の
畦道
(
あぜみち
)
を歩いた。寺の
庫裏
(
くり
)
の広い土間へ立って
みやこ鳥
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
田甫
(
たんぼ
)
の処
畦道
(
あぜみち
)
に立って伸上って見ている。
真景累ヶ淵
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
燕
(
つばさ
)
コツキリコ、
畦道
(
あぜみち
)
やギリコ
桐の花
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
ところどころに泥水のたまった養魚池らしいものが見え、その岸に沿うた
畦道
(
あぜみち
)
に、夫婦らしい男と女とが糸車を廻して綱をよっている。
元八まん
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
荷車はの、明神様石段の前を
行
(
ゆ
)
けば、御存じの三崎街道、横へ切れる
畦道
(
あぜみち
)
が在所の入口でござりますで、そこへ引込んだものでござります。
草迷宮
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
梅林の端に竹の四目垣がまわしてある、新八はそれを
跨
(
また
)
ぎ越して、刈田のあいだの
畦道
(
あぜみち
)
へはいり、それを南へ歩いていった。
樅ノ木は残った:02 第二部
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
田の
畔
(
くろ
)
の
畦道
(
あぜみち
)
毎には、何人もかつてその名を知らないやうな、得體のわからぬ奇妙な神神が、その存在さへも氣付かれないほど、小さな貧しい
祠
(
ほこら
)
で祀られてゐる。
宿命
(旧字旧仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
光春が、田畑の
畦道
(
あぜみち
)
から
葭蘆
(
かろ
)
の茂りまで、どこはどうと、知りぬいていることは、当然であった。
新書太閤記:08 第八分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
彼は、ふと
立
(
た
)
ち
停
(
どま
)
って、あたりを見まわした。目についたのは、
畦道
(
あぜみち
)
の
傍
(
そば
)
を流れる小川だった。
英本土上陸戦の前夜
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
足場が悪いから気を付けろといいながら
彼
(
か
)
の男は先きに立って国道から
畦道
(
あぜみち
)
に
這入
(
はい
)
って行った。
カインの末裔
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
さむい家ン中にも落ちつけず、
田圃
(
たんぼ
)
の方へ飛び出してゆくが、どの
畦道
(
あぜみち
)
も
土堤道
(
どてみち
)
もすぐゆきづまりになって、三十分もすると何か忘れ物でもしたように
慌
(
あわ
)
てて帰ってくる。
冬枯れ
(新字新仮名)
/
徳永直
(著)
霖雨
(
ながあめ
)
でぬかるむ青草まじりの
畦道
(
あぜみち
)
を、綱渡りをするように、ユラユラと踊りながら急いで行くと、オールバックの下から見える、白い首すじと手足とが、逆光線を反射しながら
空を飛ぶパラソル
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
それ故塚田村でもその村道を選べばこんな河原づたいをするよりは倍も近道であったが、余儀なくかなたの鎮守の森を左手に
畦道
(
あぜみち
)
を伝って
大迂回
(
だいうかい
)
をしながら凡そ一里に近い弧を描いた。
ゼーロン
(新字新仮名)
/
牧野信一
(著)
田圃
(
たんぼ
)
の
畦道
(
あぜみち
)
を
走馬燈
(
そうまとう
)
のやうに馳けて行くのですが、不思議なことに、田圃で働いてゐる人も、道行く人も、八五郎に助勢しようといふ者は一人もなく、自分が惡いことでもしたやうに
銭形平次捕物控:330 江戸の夜光石
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
彼は、片足を
畦道
(
あぜみち
)
の土にのせて立ちどまった。あまり人数の多くはない葬式の人の列が、ゆっくりとその彼のまえを過ぎる。彼はすこし頭を下げ、しかし目は熱心に柩の上の写真をみつめていた。
夏の葬列
(新字新仮名)
/
山川方夫
(著)
“畦道(
畦
)”の解説
畦(あぜ)は、稲作農業において、水田と水田の境に水田の中の泥土を盛って、水が外に漏れないようにしたものである。畦は、水田の区画を成すと同時に、泥土のきめ細かさによって水漏れを防ぐ方法でもある。畦畔(けいはん)や泥畦とも言われ、稲作の工程には、水を張る前に毎年修理を行う「畦作り」または「畦塗り」があり、「畦塗り機」も使われる。水田を回る際の道としての役割も持っているもののことを、畦道(あぜみち)、畷(なわて、縄手とも)という。
(出典:Wikipedia)
畦
漢検準1級
部首:⽥
11画
道
常用漢字
小2
部首:⾡
12画
“畦”で始まる語句
畦
畦路
畦畔
畦間
畦中
畦畝
畦塗
畦豆
畦竝木
畦離