生首なまくび)” の例文
取上見るに女の生首なまくびなりよつ月影つきかげすかして猶熟々つく/″\改し處まがふ方なき妻白妙が首に候間何者の所業なるやと一時はむねも一ぱいに相成我を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
本所竪川たてかわ通り、二つ目の橋のそばに屋敷を構えている六百五十石取りの旗本、小栗昌之助の表門前に、若い女の生首なまくびさらしてありました。
半七捕物帳:67 薄雲の碁盤 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
順々に打ち取り、十七個の生首なまくびをずらり並べて——壁辰どの、その上で、改めて貴殿の手にかかり、神妙にお繩を頂戴いたすッ!
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「おう……天目山てんもくざんであいはてた、父の勝頼、また兄の太郎信勝のぶかつに、さても生写いきうつしである……。あのいくさのあとで検分けんぶんした生首なまくびうり二つじゃ」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
やむなく、生首なまくびの下にひそんで暫く思案をしていると、あちらの一方からチラチラと火の光が見えて、たしかに幾人かの人がやって来る。
大菩薩峠:38 農奴の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
帆村荘六も、このマスクを怪塔王の寝所しんじょかたわらに発見したときは生首なまくびが落ちている! と思って、どきっと心臓がとまりそうになったほどである。
怪塔王 (新字新仮名) / 海野十三(著)
寺町通の町人や往来の人は、打ち合ふ一群を恐る/\取り巻いて見てゐたが、四郎左衛門が血刀ちがたな生首なまくびとを持つて来るのを見て、さつと道を開いた。
津下四郎左衛門 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
おろさなければあの小僧をたたき殺すがえかチウてな。胸の処の生首なまくび刺青いれずみをまくって見せよった。ムフムフ」
難船小僧 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
これこそ、二日以前、彼の寝室から消去った福田得二郎氏の生首なまくびの外のものではなかったのです。
魔術師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
きらりとひか金属きんぞくのもとに、黒髪くろかみうつくしい襟足えりあしががっくりとまへにうちのめつた。血汐ちしほのしたヽる生首なまくびをひっさげた山賊さんぞくは、くろくちをゆがめてから/\からと打笑うちわらつた。
桜さく島:見知らぬ世界 (新字旧仮名) / 竹久夢二(著)
その黒山を押崩す様にして分け入った一行の感覚へ、真ッ先にピンと来た奴は、ナマナマしい血肉の匂いです。続いて彼等は足元に転っている凄惨な女の生首なまくびを見ました。
とむらい機関車 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
柳原やなぎわらの土手下、ちょうど御郡代おぐんだい屋敷前の滅法めっぽう淋しいところに生首なまくびが一つ転がっておりました。
太政大臣公相きみすけは外法のために生首なまくびを取られたが、この人は天文から文禄へかけての恐ろしい世に何の不幸にも遭わないで、無事に九十歳の長寿を得て、めでたく終ったのである。
魔法修行者 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
祖先の霊につき右のごとく信じておるはよけれども、これを祭るには必ず他人種の生首なまくびを切ってそなえなければならぬとて、祭りの前には必ず首狩りに出かけることになっておる。
迷信と宗教 (新字新仮名) / 井上円了(著)
と、ポッと眼の前へ、一つの生首なまくびが浮かんできた。袴広太郎の首級くびである。と、ポッと消えてしまった。急に古沼が見えて来た。一つの死骸が浮かんでいる。袴広太郎の死骸である。
剣侠受難 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
何者とも知れぬ生首なまくびが所々の電柱にひっかけられると、鼻から先に腐っていった。
上海 (新字新仮名) / 横光利一(著)
何しろ彼の目撃したものは唯でさえ異常な場面である。そうして、その場面には鼻をくような異臭がち、そこにいた女共は皆生首なまくびと同じように黙々として一語も発しなかったのである。
大阪へ戻つて、二三日道頓堀の宿屋に泊つてゐる中に、芝居見物をしたが、狂言は不破ふは伴左衞門、名古屋山三さんざ鞘當さやあてであつた。花盛りの太い櫻の幹を山三が刀で切り開くと、女の生首なまくびが現はれた。
天満宮 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
「首がございます、生首なまくびが」
竈の中の顔 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
斬りさいなんでも飽きたらないあだとはいえ、侏儒の刃物で無造作に切りはなされた孫兵衛の生首なまくびには、お綱も思わずおもてをそむけたくなった。
鳴門秘帖:06 鳴門の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
更に油紙を取りのけると、その中から一つの生首なまくびが出たので、番頭もぎょっとした。ほかの者共はもう息も出なかった。
半七捕物帳:40 異人の首 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
兵馬が歩みを留めたところに、人間の生首なまくびが二つ、竹の台に載せられてあったから驚かないわけにはゆきません。
大菩薩峠:10 市中騒動の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
だからがたになってようやく通行人が、電気看板の上端じょうたんからのぞいている蒼白あおじろはぎや、女の着衣ちゃくいの一部や、看板の下から生首なまくびころがしでもしたかのように
電気看板の神経 (新字新仮名) / 海野十三(著)
そいつが出刃包丁でばぼうちょうくわえた女の生首なまくび刺青ほりものの上に、俺達の太股ももぐらいある真黒な腕を組んで、俺の寝台ねだいにドッカリと腰をおろしてをグッとき出したもんだ。
難船小僧 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
首だ、人間の生首なまくびだ。今まで生きて饒舌しゃべっていて、勢いよく部屋を出て行った戸部近江之介の首級くびだ。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
柳原の土手下、丁度御郡代おぐんだい屋敷前の滅法淋しい處に生首なまくびが一つ轉がつて居りました。
三人昨日五人とどれどうだか分る者か何でもいゝは金さへ取ば仔細なしだ生首なまくび一ツ渡してやらうと云はわきから一人の非人が夫でもおやくびだと云から向うにも見知みしりあらほかの首では承知しまいと云ば一人の非人さればさ何だと云て相手あひては座頭のばうだから見分みわけが有物か首さへやれいゝ然樣さうして直に下屋敷へ葬むるで有らうからいゝ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
いちど深くしずんでから、ボカッと、あわだった水面にきあがってきたのを見ると、わか武士ぶし生首なまくびだ。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あの事件の当時の新聞記事によると「赤耀館は、鯨の背にとびついた赤鬼の生首なまくびそのものだ」とか
赤耀館事件の真相 (新字新仮名) / 海野十三(著)
勿論、それがほん者か偽者かよくわからないが、いつでも二人づれで異人の生首なまくびを抱えてくる。
半七捕物帳:40 異人の首 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
暗殺が流行はやる、おたがいにめぼしい奴を切り倒して勢力をぐ、京都の町には生首なまくびがごろごろ転がっている。新たに守護職を承った会津中将の苦心というものは一通りでない。
その青白い光を半面に受けて、窓格子にくゝし付けられてゐるのは、血だらけの中年男の生首なまくび、クワツと眼を見開いて、白い齒に下唇したくちびるを噛んだ、うらみの物凄ものすごい形相は、二た眼と見られません。
ああして戸部近江之介をらなければならないことに立ち到った経過、いま全心身を挙げて一復讐魔ふくしゅうまと化し、残余ざんよの十七の生首なまくびねらっている自分の決心——それらを、細大さいだいらさず物語って
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「おおい。兼公かねこう居るかア。出歯でっぱの兼公……生首なまくびの兼公は居ねえかア……」
難船小僧 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
わはははは、片腹かたはらいたいいいぐさをいちゃいられねえ。オオ! めんどうだが、桑名へのいきがけの駄賃だちんにうぬらの生首なまくびやりのとッさきにさしていくのも一きょうだろう。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
中間は素直に風呂敷をあけると、その中から女の生首なまくびが出た。番人は声を荒くしてなじった。
西瓜 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「その鞄の中が怪しいなあ。へんなものが入っているんじゃよ。女の生首なまくびかなんかがよ」
鞄らしくない鞄 (新字新仮名) / 海野十三(著)
多分小便にでも出かけるのだろうと思っていると、やがて、平気なかおをして立戻った川上を見ると、片手に生首なまくびを提げていた。それはただいま評判に上った悪代官の首であった——
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「腹を切つた麻井幸之進は、自分の前へ生首なまくびを一つ据ゑてあつたんです」
「このごろ流行物はやりものの押借りかと思って、初めは多寡たかをくくっていたのでございますが、なにしろ異人の生首なまくびをだしぬけに出されましたので、わたくしはびっくりしてしまいました」
半七捕物帳:40 異人の首 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
人間の生首なまくび——といっても、幸いに肉身の生首ではなく、どこから何者が取りきたったのか、相当の木像の首が、三尺ばかり高い台の上に、厳然と置き据えられて、その傍らに捨札がある。
大菩薩峠:31 勿来の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
と、そこに現われたのは髑髏ではありません、まさしく女の生首なまくびでありました。
大菩薩峠:22 白骨の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
路のまん中にも大きい蝦蟇がまが這い出していたり、人間の生首なまくびがころげていたりして、いやでもそれを跨いで通らなければならない。拵え物と知っていても、あんまり心持のいい物ではありません。