はげし)” の例文
「そうですね、あんまり物音がはげしいから、私はまた火事ででもあるのか知らんと思ったよ。」
わか紫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
かけたりける折節をりふし山風はげしくしてほのほは所々へ燃移もえうつれば三十一人の小賊共スハ大變たいへんなりと慌騷あわてさわぐもどく酒に五體のきかざればあはれむべし一人ひとりも殘らず燒燗やけたゞれ死亡しばうに及ぶを強惡がうあくの三人は是を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
エート東京へんは追々暖気に向いそうらえども御地おんちはいまだ寒さはげし御事おんこと存候処ぞんじそろところ御両親様始め御本家の伯父上伯母上お代どのまで御一同御無事に御暮おんくら被遊候由あそばされそろよし何よりの御事と奉賀候がしたてまつりそろ
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
平生の志の百分の一も仕遂しとげる事が出来ずに空しくだんうらのほとりに水葬せられて平家蟹へいけがに餌食えじきとなるのだと思うと如何にも残念でたまらぬ。この夜から咯血かっけつの度は一層はげしくなった。
(新字新仮名) / 正岡子規(著)
我国の雪意ゆきもよひ暖国だんこくひとしからず。およそ九月のなかばより霜をおきて寒気次第しだいはげしく、九月の末にいたれ殺風さつふうはだへ侵入をかし冬枯ふゆがれ諸木しよぼくおとし、天色てんしよくせふ/\として日のひかりざる事連日れんじつ是雪のもよほし也。
隣に養へる薔薇ばらはげしくんじて、と座にる風の、この読尽よみつくされし長きふみの上に落つると見れば、紙は冉々せんせんと舞延びて貫一の身をめぐり、なほをどらんとするを、彼はしづかに敷据ゑて
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
それからどのくらいの時間が経ったであろうか、ひどい渇きとはげしい頭痛を感じながら、ふっと眼を開いた新田は、直ぐ眼前めのまえに心配そうな三つの顔を見出した。宗方博士と、令嬢と、助手の北村である。
廃灯台の怪鳥 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
まだそれよりか、毒虫のぶんぶん矢を射るようなはげしい中に、疲れて、すやすや、……わきに私の居るのを嬉しそうに、快よさそうに眠られる時は、なおたまらなくって泣きました。
女客 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
見る者なかりしとこゝ浪人體らうにんていさむらひの身には粗服そふくまとひ二月の餘寒よかんはげしきに羊羹色やうかんいろの羽織を着て麻のはかま穿はきつかはづれし大小をたいせし者常樂院じやうらくゐんの表門へ進みいらんとせしが寺内の嚴重げんぢうなる形勢ありさま
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
... 呼んでくれというのだがどうかしてなお工風くふうはあるまいか」と仔細しさいを聞いて中川も安心し「ナーンだ、そんな事か。僕はまた何事が起ったかと非常に心配した。吃逆のはげしいのは非常の苦痛を ...
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
しかし残月ざんげつであったんです。何為なぜかというにその日の正午ひる頃、ずっと上流のあやしげなわたしを、綱につかまって、宙へつるされるようにして渡った時は、顔がかっとする晃々きらきらはげし日当ひあたり
薬草取 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ぬすみ出し其上そのうへ臺所だいどころへ火を付何處いづくともなく迯失にげうせけり折節をりふしかぜはげしく忽ち燃上もえあがりしかば驚破すは火事くわじよと近邊大に騷ぎければ喜八はまご/\して居たりしが狼狽うろたへ漸々やう/\屋根よりはおりたれ共あしちゞみ歩行あゆまれず殊に金子と庖丁はうちやう
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
口惜くやしくきっとなる処を、酒井の剣幕がはげしいので、しおれて声がうるんだのである。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
小造こづくりな、十五六とも見える、女が一人、蝶鳥なんどのように、路を千鳥がけに、しばらくね廻っておりましたが、ただもう四辺あたりは陰にこもって、はげしい物音がきこえますほど、かえってしんとして
わか紫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)