澄渡すみわた)” の例文
改札口かいさつぐちつめたると、四邊あたりやまかげに、澄渡すみわたつたみづうみつゝんで、つき照返てりかへさるゝためか、うるしごとつややかに、くろく、玲瓏れいろうとして透通すきとほる。
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
艦長松島海軍大佐かんちやうまつしまかいぐんたいさ號令がうれいはいよ/\澄渡すみわたつて司令塔しれいたふたかく、舵樓だらうには神變しんぺん不可思議ふかしぎ手腕しゆわんあり。二千八百とん巡洋艦じゆんやうかん操縱さうじゆう自在じざい
あまがわ澄渡すみわたった空にしげった木立をそびやかしている今戸八幡いまどはちまんの前まで来ると、蘿月はもなく並んだ軒燈の間に常磐津文字豊ときわずもじとよ勘亭流かんていりゅうで書いた妹の家のを認めた。
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
折柄おりから上潮あげしおに、漫々まんまんたるあきみずをたたえた隅田川すみだがわは、のゆくかぎり、とお筑波山つくばやまふもとまでつづくかとおもわれるまでに澄渡すみわたって、綾瀬あやせから千じゅしてさかのぼ真帆方帆まほかたほ
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
まぶしさうに仰向あをむいた。つきとき川浪かはなみうへ打傾うちかたむき、左右さいう薄雲うすぐもべては、おもふまゝにひかりげ、みづくだいて、十日とをかかげ澄渡すみわたる。
月夜車 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
夫人ふじん少年せうねんとをその船室キヤビンおくつて、明朝めうてうちぎつて自分じぶん船室へやかへつたとき八點鐘はつてんしよう號鐘がうしようはいと澄渡すみわたつて甲板かんぱんきこえた。
あまがは澄渡すみわたつた空に繁つた木立こだちそびやかしてゐる今戸八幡いまどはちまんの前まで来ると、蘿月らげつもなく並んだ軒燈けんとうの間に常磐津ときはづ文字豊もじとよ勘亭流かんていりうで書いた妹の家のを認めた。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
ぼっとなって、辻に立って、前夜の雨をうらめしく、空をあおぐ、と皎々こうこうとして澄渡すみわたって、銀河一帯、近い山のからたまの橋を町家まちやの屋根へ投げ懸ける。
国貞えがく (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
夏の日はすでに沈んで、空一面の夕焼は堀割の両岸りょうがんに立並んだ土蔵の白壁をも一様に薄赤く染めなしていると、そのさかさまなる家の影は更に美しく満潮の澄渡すみわたった川水の中に漂い動いている。
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
白菊しらぎくころ大屋根おほやねて、棟瓦むねがはらをひらりとまたいで、たかく、たかく、くもしろきが、かすかうごいて、瑠璃色るりいろ澄渡すみわたつたそらあふときは、あの、夕立ゆふだち思出おもひだす……そして
霰ふる (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
うらゝかに澄渡すみわたりて狭霧さぎりなき空気に
きのふは仲秋ちうしう十五夜じふごやで、無事ぶじ平安へいあん例年れいねんにもめづらしい、一天いつてん澄渡すみわたつた明月めいげつであつた。
十六夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
棟瓦むねがわらをひらりとまたいで、高く、高く、雲の白きが、かすかに動いて、瑠璃色るりいろ澄渡すみわたった空を仰ぐ時は、あの、夕立の夜を思出おもいだす……そして、美しく清らかな母の懐にある幼児おさなごの身にあこがれた。
霰ふる (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
時に蒼空あおぞら澄渡すみわたった
白金之絵図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)