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すみわた
天の
川の
澄渡った空に
繁った木立を
聳かしている
今戸八幡の前まで来ると、蘿月は
間もなく並んだ軒燈の間に
常磐津文字豊と
勘亭流で書いた妹の家の
灯を認めた。
折柄の
上潮に、
漫々たる
秋の
水をたたえた
隅田川は、
眼のゆく
限り、
遠く
筑波山の
麓まで
続くかと
思われるまでに
澄渡って、
綾瀬から千
住を
指して
遡る
真帆方帆が
夜は
太く
更けにければ、さらでだに音を
絶てる
寂静はここに
澄徹りて、深くも物を思入る苦しさに直道が
蹂躙る靴の下に、瓦の
脆く
割るるが鋭く響きぬ。