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滅多
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めった
ふりがな文庫
“
滅多
(
めった
)” の例文
戸山が原にも春の草が萠え出して、その青々とした原の上に、市内ではこのごろ
滅多
(
めった
)
に見られない大きい
鳶
(
とび
)
が悠々と高く舞っていた。
郊外生活の一年:大久保にて
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
それから明治三、四年までは、夏氷などいうものは
滅多
(
めった
)
に飲まれない、町では「ひやっこい/\」といって、水を売ったものです。
江戸か東京か
(新字新仮名)
/
淡島寒月
(著)
お気の毒なことに奥方の浪乃殿は、お里方が絶家して帰るところもなく
良人
(
おっと
)
将監殿が江戸へ帰るまでは、
滅多
(
めった
)
に死ぬわけにも行かない。
銭形平次捕物控:138 第廿七吉
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
甘いパンといって非常に珍重するものをお料理に使うつもりですけれどもこれは
滅多
(
めった
)
にない肉で犢一頭に必ずある
訳
(
わけ
)
でありません。
食道楽:秋の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
「それはそうと吉田氏、京都へ入ったなら、
滅多
(
めった
)
に刀は抜かぬがよいぞ、血の気の多いのがウヨウヨいる、今の壮士のような奴が」
大菩薩峠:03 壬生と島原の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
▼ もっと見る
河の流れが
一雨
(
ひとあめ
)
ごとに変るようでは、
滅多
(
めった
)
なところへ風呂を建てる訳にも行くまい。現に窓の前の
崖
(
がけ
)
なども水にだいぶん喰われている。
満韓ところどころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
同級生の誰とも親しく口をきかなかったのは
勿論
(
もちろん
)
、その
素人
(
しろうと
)
下宿の家族の人たちとも、
滅多
(
めった
)
に打ち解けた話をする事は無かった。
惜別
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
佐平はこう言って
滅多
(
めった
)
に下げたことの無い頭を下げて頼んだ。自分の見透している藤沢の秘密な計畫を、みんな話してやる
積
(
つ
)
もりだった。
熊の出る開墾地
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
「お屋敷方でも
滅多
(
めった
)
にこんな
名木
(
めいぼく
)
は見られますまい。」と種員も今は
銜煙管
(
くわえぎせる
)
のまま庭の方へ眼を移したが突然思い出したように
散柳窓夕栄
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
「それはもう
御隠居様
(
ごいんきょさま
)
。
滅法
(
めっぽう
)
名代
(
なだい
)
の
土平
(
どへい
)
でござんす。これ
程
(
ほど
)
のいい
声
(
こえ
)
は、
鉦
(
かね
)
と
太鼓
(
たいこ
)
で
探
(
さが
)
しても、
滅多
(
めった
)
にあるものではござんせぬ」
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
此犬はあまり大きくもないが、
金壺眼
(
かなつぼまなこ
)
の意地悪い
悪相
(
あくそう
)
をした犬で、
滅多
(
めった
)
に恐怖と云うものを知らぬ鶴子すら初めて見た時は
魘
(
おび
)
えて泣いた。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
念には念を入れる
性質
(
たち
)
でしたから、
滅多
(
めった
)
に誤診はなく、たまたまあっても、患者の生命に少しの影響をも及ぼしませんでした。
手術
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
この
霞
(
かす
)
んだ空のひかりと淡い曇りをさして、この地方の土民は晴天だといっている。それほど、
碧
(
あお
)
い空と陽のひかりは
滅多
(
めった
)
に訪れてこない。
人外魔境:03 天母峰
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
千枝子はそれを出迎えるために、朝から
家
(
うち
)
を出て行ったが、君も知っている通り、あの
界隈
(
かいわい
)
は場所がらだけに、昼でも
滅多
(
めった
)
に人通りがない。
妙な話
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
人がそういう瞳の反射を見せるときは
滅多
(
めった
)
にその機会をとらえがたいものだ。基経は
身体
(
からだ
)
が引きしまるようにその瞳を感じた。
姫たちばな
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
家はチラホラあるけれども、しーんとしていて、人がいるのかいないのか分らない位、通る人にも
滅多
(
めった
)
に会わない。東京の町とは大変な違いだ。
贋紙幣事件
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
「まア聞けよ」と辻永は私を
遮
(
さえぎ
)
った。「その酒は
滅多
(
めった
)
に客に売らないのだ。だが特別のお客に売ることがあるし、また間違って売る場合もある。 ...
地獄街道
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
はて不思議、
滅多
(
めった
)
に外出したことなき御客様が今まで帰らぬとは、イヤイヤ若者の常なれば何処にか引っかかりたらんなど噂取りどりに致し候。
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
それは、あの
承
(
うけたまわ
)
りますと、昔から御領主の
御禁山
(
おとめやま
)
で、
滅多
(
めった
)
に人をお入れなさらなかった
所為
(
せい
)
なんでございますって。御領主ばかりでもござんせん。
薬草取
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
行政区域の名称などは、そういう中にも以前を記憶する者があり得るが、
滅多
(
めった
)
に用いぬ村の小名などは、いったん間違ったらもう発見が困難である。
地名の研究
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
「ご
冗戯
(
じょうだん
)
でしょう。
新渡
(
しんと
)
じゃあござんせんぜ。これくらいな
古渡
(
こわた
)
りは、
長崎
(
あっち
)
だって
滅多
(
めった
)
にもうある品じゃないんで」
春の雁
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
話は脱線するがこのアラスカ丸の船長はむろん
独身生活者
(
ひとりもの
)
で、女も酒も嫌いなんだ。上陸なんか
滅多
(
めった
)
にしないんだ。
難船小僧
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
だが、考えて見れば、これ程造作のない、その上少しの危険も伴わぬ計画というものは、
滅多
(
めった
)
にあるものではない。
パノラマ島綺譚
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
「それは、二つ一つの針がありやす。もう助かるか助からぬ時に打つ針で
滅多
(
めった
)
に打つことの出来ぬ針でげす。」
黄色い晩
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
というような方は
滅多
(
めった
)
にない。わさびのことは、色・
辛
(
から
)
さ・甘さ・ねばりなどをやかましくいう食通はあるが、大根おろしの苦情を聴くことは、ほとんどない。
鮪を食う話
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
その金はどこから借りるかといえば
地主
(
じぬし
)
から借りるほかはない。借りたところで
滅多
(
めった
)
に返せるものでない。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
ところが狐の方は大へんに上品な風で
滅多
(
めった
)
に人を怒らせたり気にさはるやうなことをしなかったのです。
土神と狐
(新字旧仮名)
/
宮沢賢治
(著)
私達は一日に三度の飯を食べたことは
滅多
(
めった
)
になかった。まるっきり食べない方がかえって多かった。私はいつも空腹であった。今でも私は空腹の時には思い出す。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
その人にまた
逢
(
あ
)
ふまでは、とても重苦しくて
気骨
(
きぼね
)
の折れる人、もう
滅多
(
めった
)
には逢ふまいと思ひます。
愛
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
暁方
(
あけがた
)
の三時からゆるい陣痛が起り出して不安が家中に
拡
(
ひろ
)
がったのは今から思うと七年前の事だ。それは
吹雪
(
ふぶき
)
も吹雪、北海道ですら、
滅多
(
めった
)
にはないひどい吹雪の日だった。
小さき者へ
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
「いいえ、
滅多
(
めった
)
にありはしませんよ。夏の夜だから、まだ宵の口位に思って歩いているんですよ」
蒲団
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
次に、私は
滅多
(
めった
)
に自分の旧稿を読まない。それで今度珍しく読み直す機会に恵まれ、自分の踏んできた経路を
鳥瞰図
(
ちょうかんず
)
的に見る事が出来て、自分ながらちょっと面白かった。
四十年の回想:『民藝四十年』を読んで
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
自害してまでも見たいというそちの
執心
(
しゅうしん
)
には我が折れた。
滅多
(
めった
)
に出されぬ器じゃが、今日は宝蔵から取り出そうぞ。これこれ左近吾宝蔵へ参って
彼
(
か
)
の髑髏盃を取り出して参れ
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
私は
滅多
(
めった
)
に歌など歌ったことがないが、その時はちょっとそういう文句を思い浮べた。
玄海灘密航
(新字新仮名)
/
金史良
(著)
……思えば当然だ! わたしの最初の訪問は、かれらの生涯には大事件だったし、それにいやしくも事件となると、それが
滅多
(
めった
)
に起こらない場所では、永く記憶されるからである。
嫁入り支度
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
滅多
(
めった
)
にもうそういう口はございませんからね……これはお光さんだけへの話ですけれど、私はどうか今度の話が
纏
(
まと
)
まるように、一生懸命お不動様へ願がけしているくらいなんですよ
深川女房
(新字新仮名)
/
小栗風葉
(著)
日曜か何か
暇
(
ひま
)
な時か又は月夜などに
操練
(
そうれん
)
をして、イザ戦争と云う時に出て行くと云うばかりで、太平の時は
先
(
ま
)
ず若い者の道楽仕事であるから、
折角
(
せっかく
)
拵
(
こしら
)
えた軍服も
滅多
(
めった
)
に着ることがない所に
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
その代りに夜は土地が
辺鄙
(
へんぴ
)
なので
滅多
(
めった
)
に訪問客もないから、四時間ぐらいは自分の時間として、新聞雑誌や
纏
(
まとま
)
った読書も多くこの間にする。時によると何かの必要で調べものをすることもある。
青年の元気で奮闘する我輩の一日
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
人間弱味がなければ
滅多
(
めった
)
に恐がるものでない。幸徳ら
瞑
(
めい
)
すべし。政府が君らを締め殺したその前後の
遽
(
あわ
)
てざまに、政府の、
否
(
いな
)
、君らがいわゆる権力階級の
鼎
(
かなえ
)
の軽重は分明に暴露されてしもうた。
謀叛論(草稿)
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
「今更心配しても
追
(
おっ
)
つかないから、まア少し休みましょう。こんなに景色のよいことは
滅多
(
めった
)
にありません。そんなに人に申訣のない様な悪いことはしないもの、民さん、心配することはないよ」
野菊の墓
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
滅多
(
めった
)
に人のことを好く言わないソバケーヴィッチですら、
市
(
まち
)
からかなりおそくなって帰宅すると、すっかり着物をぬいで、痩せ萎びた細君の横へ入って床につくなり、こう言って話しかけたものだ。
死せる魂:01 または チチコフの遍歴 第一部 第一分冊
(新字新仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
「おれはカッフェへなんか
滅多
(
めった
)
に行きやしない」
嫁取婿取
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
さりとて
滅多
(
めった
)
に出してもやられないので、代るがわるに警固しているあいだに、あるとき番人の
隙
(
すき
)
をみて、すっぽんは表へ這い出した。
中国怪奇小説集:03 捜神記(六朝)
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
同じ人でも白痴と狂人は何を食べても
滅多
(
めった
)
に
中
(
あた
)
りません。それは神経を使わないから胃腸が無神経同様になって下等動物に近いのです。
食道楽:秋の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
兄は
俥
(
くるま
)
で学校へ出た。学校から帰るとたいていは書斎へ
這入
(
はい
)
って何かしていた。家族のものでも
滅多
(
めった
)
に顔を合わす機会はなかった。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
日比谷公園の新音楽堂の裏手、
滅多
(
めった
)
に人の来そうも無い、忘れられたようなベンチを見守って、一時間余り我慢して居た二人だったのです。
踊る美人像
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
「お旗本のお使いと聞いたから、
滅多
(
めった
)
に
粗相
(
そそう
)
があっちゃならねえと思って断らせたんだが、なぜまともに、おきただといいなさらねえんだ」
歌麿懺悔:江戸名人伝
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
「わたし子供の時から三度満足に御飯をたべた事は
滅多
(
めった
)
にないわ。そのくせお酒も好きじゃなしお汁粉はいやだし……経済でいいじゃないの。」
ひかげの花
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
本堂はもとよりひっそりしている。身動きさえ
滅多
(
めった
)
にするものはない。校長はいよいよ沈痛に「君、
資性
(
しせい
)
穎悟
(
えいご
)
兄弟
(
けいてい
)
に
友
(
ゆう
)
に」
文章
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
「こんなことは
滅多
(
めった
)
にないことだ。おお、ここに何か落ちているぞ。時計だ。懐中時計でメタルがついている。剣道
優賞牌
(
ゆうしょうはい
)
、黒田選手に
呈
(
てい
)
す——」
崩れる鬼影
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
滅
常用漢字
中学
部首:⽔
13画
多
常用漢字
小2
部首:⼣
6画
“滅多”で始まる語句
滅多矢鱈
滅多無性
滅多打
滅多切
滅多捲
滅多撲
滅多斬
滅多汁