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手頼
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たよ
ふりがな文庫
“
手頼
(
たよ
)” の例文
貰い乳ばかりしていた赤児は、ゴムの吸管とは、全然かんじの違った柔らかい、いくらか
手頼
(
たよ
)
りのない乳母のちち首を口にふくんだ。
童子
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
つまり私は手箱の中の羊皮紙に書いてある文字を
手頼
(
たよ
)
りに雌雄二つの水晶の球を探し当てようそのために世界の旅へ上ったのである。
沙漠の古都
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
「ちがうか——益満休之助と、同じ長屋の隣同士に住んでいた仙波と申す者の娘が、大阪へ、わしを
手頼
(
たよ
)
って参ったが——瓜二つじゃで」
南国太平記
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
夫は新しい妻の世界に
手頼
(
たよ
)
っていればまず好かった。妻はしかし、未知な夫の盲目の世界にまで探り入らねばならなかった。
明暗
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
都会住いをした者に田舎を
手頼
(
たよ
)
りにせられちゃ、こっちで質素な生活をしとる者は迷惑するし、第一割に合わん話じゃから
入江のほとり
(新字新仮名)
/
正宗白鳥
(著)
▼ もっと見る
また機会や
因縁
(
いんねん
)
があれば、客を愛する豪家や
心置
(
こころおき
)
ない山寺なぞをも
手頼
(
たよ
)
って、遂に福島県宮城県も出抜けて
奥州
(
おうしゅう
)
の或
辺僻
(
へんぺき
)
の山中へ入ってしまった。
観画談
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
「もう己は何も判らない程酔って居るのだ。」と云う事が、自分の気を強くさせ、大胆にさせる
唯一
(
ゆいいつ
)
の
手頼
(
たよ
)
りであった。
恐怖
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
三日
(
みつか
)
は孫娘を断念し、
新宿
(
しんじゆく
)
の
甥
(
をひ
)
を
尋
(
たづ
)
ねんとす。
桜田
(
さくらだ
)
より
半蔵門
(
はんざうもん
)
に出づるに、新宿も
亦
(
また
)
焼けたりと聞き、
谷中
(
やなか
)
の
檀那寺
(
だんなでら
)
を
手頼
(
たよ
)
らばやと思ふ。
饑渇
(
きかつ
)
愈
(
いよいよ
)
甚だし。
鸚鵡:――大震覚え書の一つ――
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
私はそれを
真
(
ま
)
に受けて、
真
(
しん
)
から
手頼
(
たよ
)
って行く、身も心も投げ出してすがりついて行く、という訳でございました。
人でなしの恋
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
勉強のことだけは隨分巖格に監督したり、猛烈に英語の復習を
強
(
し
)
ひたりしてやつたのだが、この場合、それをでも反對に
手頼
(
たよ
)
つて行くしか道がなかつた。
泡鳴五部作:05 憑き物
(旧字旧仮名)
/
岩野泡鳴
(著)
酒
(
さけ
)
といつても
知
(
し
)
れた
分量
(
ぶんりやう
)
であるが、それでも
藁
(
わら
)
一筋
(
ひとすぢ
)
づつを
刻
(
きざ
)
んで
行
(
ゆ
)
く
仕事
(
しごと
)
の
儲
(
まうけ
)
にのみ
手頼
(
たよ
)
る
彼
(
かれ
)
の
懷
(
ふところ
)
を
悲
(
かな
)
しくした。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
学生は
終
(
しま
)
ひに、K——中学で教頭をしてゐて、自分に目を掛けてくれた
某
(
なにがし
)
といふ先生が、××中学の校長になつてゐたから、その人を
手頼
(
たよ
)
つて××に来た。
葉書
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
「こりゃあ、どうしたら好かろう。お婆さんも子供も内の者は皆あの人に
手頼
(
たよ
)
って暮しているのだ」
風波
(新字新仮名)
/
魯迅
(著)
いままでの
呑気
(
のんき
)
な気持がどこかへ消し飛んで、日暮れがたのような
滅入
(
めい
)
った気持になる。足元から絶えず風に吹きあげられているような、なんとも
手頼
(
たよ
)
りない感じである。
キャラコさん:06 ぬすびと
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
先刻
(
さっき
)
もお話ししたとおり、私は他に
手頼
(
たよ
)
る者もございません体でございますから、いずれ奉公なり何なりいたさねばなりませんが、女の
独身
(
ひとりみ
)
で、彼方此方しておりましては
花の咲く比
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
老婆
(
ばあ
)
さんは
手頼
(
たよ
)
りないことをいいながら、相変らず状袋をはる手をつづけていた。
うつり香
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
どんな苦しみを
嘗
(
な
)
めているか、まるで知らないでいるのだ! こんな便りない男を
手頼
(
たよ
)
りに生きてきて、その男さえこの世にいなくなったら、これから先どうして生きて行くだろう? 考えてみれば
四十八人目
(新字新仮名)
/
森田草平
(著)
かれらは何か幽遠なものにでも対いあうように、ひとりずつが、何を
手頼
(
たよ
)
ってよいか、そして何を信じてよいかさえ分らなかった。
後の日の童子
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
そのうち召使いの老人は弾傷が
原因
(
もと
)
でこの世を去り私達二人の
孤児
(
みなしご
)
は良人を失った老婆一人を
手頼
(
たよ
)
りにしなければならなかった。
沙漠の古都
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
それ以上は口に出さなかつたが、馬越は自分の女房が自分と同じまぼろしを何時までも見てゐないのを
手頼
(
たよ
)
りなく思つた。
仮面
(旧字旧仮名)
/
正宗白鳥
(著)
声を
手頼
(
たよ
)
りに斬りかかられても、空を斬らす、心得からであった。そして、脇差を抜いて、じっと、闇の中で、床の間の方の気配をうかがっていた。
南国太平記
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
彼
(
かれ
)
はそれから
隣
(
となり
)
の
主人
(
しゆじん
)
へ
挨拶
(
あいさつ
)
に
出
(
で
)
たが、
自分
(
じぶん
)
の
喉
(
のど
)
の
底
(
そこ
)
で
物
(
もの
)
をいうて
逃
(
に
)
げるやうに
歸
(
かへ
)
つた。
彼
(
かれ
)
は
其
(
そ
)
の
夜
(
よ
)
は三
人
(
にん
)
が
凍
(
こほ
)
つた
空
(
そら
)
を
戴
(
いたゞ
)
いて
燒趾
(
やけあと
)
の
火氣
(
くわき
)
を
手頼
(
たよ
)
りに
明
(
あ
)
かした。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
私立探偵など
手頼
(
たよ
)
らないで、警察にお任せして置いた方が、どれ程よかったかと思います。あの方が色々と活動なすったので、賊を刺戟して、却ってお嬢さんの御最期を
妖虫
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
見れば、方式通り、母指を中にして他の指でそれを固めてゐるが、こんな用意をしたにも似合はず、少しも力が這入つてゐなかつたので、「まだおれに
手頼
(
たよ
)
る氣でゐる、な」と感じた。
泡鳴五部作:02 毒薬を飲む女
(旧字旧仮名)
/
岩野泡鳴
(著)
も一つはその隣の
單四嫂子
(
たんしそうし
)
で、彼女は前の年から後家になり、誰にも
手頼
(
たよ
)
らず自分の手一つで綿糸を紡ぎ出し、自活しながら三つになる子を養っている。だから遅くまで起きてるわけだ。
明日
(新字新仮名)
/
魯迅
(著)
松原からの縁談は、その初め、当の対手の政治に対する嫌悪の情と、自分が其人の嫂であつたことに就ての、道徳的な
思慮
(
かんがへ
)
やら或る侮辱の感やらで、静子は兄に
手頼
(
たよ
)
つて破談にしようとした。
鳥影
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
「
意気地
(
いくじ
)
がないねえ、どうしたんだよ。やわいじゃあないかえ、お前さんの体は。ホッ、ホッ、ホッ、ホッ、
手頼
(
たよ
)
りないねえ」
銅銭会事変
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
都會
(
まち
)
住ひをした者に田舍を
手頼
(
たよ
)
りにせられちや、
此方
(
こちら
)
で質素な生活をしてる者は迷惑するし、第一割に合はん話ぢやから。
入江のほとり
(旧字旧仮名)
/
正宗白鳥
(著)
「
白紙
(
しらがみ
)
手頼
(
たよ
)
り
水
(
みづ
)
手頼
(
たよ
)
り、
紙捻
(
こより
)
手頼
(
たよ
)
りにい……」と
巫女
(
くちよせ
)
の
婆
(
ばあ
)
さんの
聲
(
こゑ
)
は
前齒
(
まへば
)
が
少
(
すこ
)
し
缺
(
か
)
けて
居
(
ゐ
)
る
爲
(
ため
)
に
句切
(
くきり
)
が
稍
(
やゝ
)
不明
(
ふめい
)
であるがそれでも
澁滯
(
じふたい
)
することなくずん/\と
句
(
く
)
を
逐
(
お
)
うて
行
(
い
)
つた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
とにかく変った道筋に出て、変った方面に
遁
(
のが
)
れ、縁もゆかりもない人に
手頼
(
たよ
)
ろうと思う。母親はわたしのために八円の旅費を作って、お前の好きにしなさいと言ったが、さすがに泣いた。
「吶喊」原序
(新字新仮名)
/
魯迅
(著)
私は身体が、ふわふわとなったように感じたが、それは、こんな美しい人が、自分のような者を
手頼
(
たよ
)
って来てくれた、という事に対しての感謝で、劣情などの如きは神様に食わしてしまえと
死までを語る
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
いつになく私の様な青二才を
手頼
(
たよ
)
りにして何かと相談をする始末です。
黒手組
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
それを背景にして玄関には、父を失い
手頼
(
たよ
)
りのない、美しい民弥が
頸垂
(
うなだ
)
れている。その前に右近丸が立っている。若くて凜々しい右近丸が。
南蛮秘話森右近丸
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
或いは貧乏しなければ天に
手頼
(
たよ
)
る気にならぬとコジ付ける人もあれど、金がないから止むを得ず、神様に縋って慰めようというのならば、其の反面には
論語とバイブル
(新字新仮名)
/
正宗白鳥
(著)
さうして解らぬことをいつた。小屋へ二つもくふのは珍しいことだ。一つがくふと安心だと思つて鶺鴒がまたくつたのだ。つまり人間を
手頼
(
たよ
)
るのである。然しあんまり
覗
(
のぞ
)
くと蛇が狙つていかぬ。
炭焼のむすめ
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
(男に、縋っているからだ。立派に、一人で——仮令、流しになったって、一人で食べて行けるのに、なまじ、男に
手頼
(
たよ
)
ろうとするから、こんな目に逢うのだ。世の中は、広いんだから、旅にでも出てしまって——)
南国太平記
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
お
腹
(
なか
)
の
減
(
へ
)
っている者は、決して食物を選ばない。水に溺れている者は一筋の藁さえ掴もうとする。民弥の心は
手頼
(
たよ
)
りなかった。
南蛮秘話森右近丸
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
先日
(
こなひだ
)
お國へ行つてゐた時に、良吉は默つてるけど、傍にゐると
手頼
(
たよ
)
りになると云つてゐましたよ。そして、
身體
(
からだ
)
とかけ替へで子供のために働くのだと、お母さんは云つてゐなすつた。
母と子
(旧字旧仮名)
/
正宗白鳥
(著)
父が其時居りさえしたら、どんなにか
手頼
(
たよ
)
りになったでしょう。その時父は公用のため英国へ渡って居りまして、
不在
(
るす
)
だったのでございます。
西班牙の恋
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
「
手頼
(
たよ
)
りない身でございますの、これをご縁にどうぞ再々、お遊びにおいでくださいましてお力におなりくださいますよう」
十二神貝十郎手柄話
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
彼女には十二神貝十郎という、この人物が大きい暖かい、そして非常に
手頼
(
たよ
)
りになる、力強い手の持ち主と、そんなように思われてならなかった。
血煙天明陣
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
松火の余燼の消えたのは、そこへ相手の敵の勢が集まって、足で踏み消したのであろう——と、直感した直感を
手頼
(
たよ
)
って、茅野雄は翻然と突き進んだ。
生死卍巴
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
可愛い可愛いわしの娘よ、どうぞ心を綺麗に持って、よい暮らしをしておくれ。そうして地図を
手頼
(
たよ
)
りにして、釜無川の中洲へ行き、宝壺を掘り出すがいい
大捕物仙人壺
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
「考えてみればあぶなっかしい旅さ」小一郎は心中
可笑
(
おか
)
しくもあった。「たった一度だけ耳にした娘の声を
手頼
(
たよ
)
りにして、声の主を探しに行くのだからなあ」
神秘昆虫館
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
「人を切れという小篠の言葉、それに
手頼
(
たよ
)
って徹底する! 人を切る! 貴様を切る! 女を取る! 悪事をする! 拙者悪剣に徹底する! これ、集五郎!」
神秘昆虫館
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
「それがな」と幹之介
手頼
(
たよ
)
りなさそうに、「事の起こりは行き違いからさ。……と俺には思われるのだよ」
任侠二刀流
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
そのイエスの奇蹟に
手頼
(
たよ
)
り「神の国」を建てようとする愛国狂が、ユダの眼には滑稽に見えた。
銀三十枚
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
そこで昔の縁故を
手頼
(
たよ
)
り、度々九郎右衛門へ無心をしたが、そのうち行方が知れなくなった。
名人地獄
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
窃
(
そ
)
っと応接間を抜け出して、密告者の手紙を
手頼
(
たよ
)
りにして、
窃
(
こっそ
)
り二階へ行って見ました。
人間製造
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
親切そうな風貌と
手頼
(
たよ
)
りあり気だった言葉つきとを唯一の頼みにして、訪ねて行きどうして
遙々
(
はるばる
)
江戸くんだりからこの長崎までやって来たかを隠すところなく語ったのであった。
大鵬のゆくえ
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
手
常用漢字
小1
部首:⼿
4画
頼
常用漢字
中学
部首:⾴
16画
“手頼”で始まる語句
手頼甲斐