鸚鵡:――大震覚え書の一つ―― (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
泡鳴五部作:05 憑き物 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
キャラコさん:06 ぬすびと (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
見れば、方式通り、母指を中にして他の指でそれを固めてゐるが、こんな用意をしたにも似合はず、少しも力が這入つてゐなかつたので、「まだおれに手頼る氣でゐる、な」と感じた。
泡鳴五部作:02 毒薬を飲む女 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
私は身体が、ふわふわとなったように感じたが、それは、こんな美しい人が、自分のような者を手頼って来てくれた、という事に対しての感謝で、劣情などの如きは神様に食わしてしまえと
(男に、縋っているからだ。立派に、一人で——仮令、流しになったって、一人で食べて行けるのに、なまじ、男に手頼ろうとするから、こんな目に逢うのだ。世の中は、広いんだから、旅にでも出てしまって——)