ほこ)” の例文
皆、聞け、よろしいか。始めて聞いたのでは、信じられないかもしれないが、米州連邦と欧弗同盟国とは、互いにほこを交えて、戦闘を
地球要塞 (新字新仮名) / 海野十三(著)
。——今もしほこを伏せて、この曹操に従うならば、予は予の命を賭しても、天子に奏して君の封土ほうどと名誉とを必ず確保しておみせしよう
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
馬に乗った者もあれば徒歩でいる者もあって、それがほこを持ちいしゆみを持っていた。馬のいななく声と人声が家の周囲に湧きたって聞えた。
胡氏 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
またたとい剣をていし、ほこを揮うてこれに抗敵するも、また必ず現今の洪水は一層の猛勢を激してここに赴かしむべしと信ずるなり。
将来の日本:04 将来の日本 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
それとどちらが早かったか、前なる敵を突こうとほこを引いた李陵は、突然背後から重量のある打撃を後頭部にくらって失神した。
李陵 (新字新仮名) / 中島敦(著)
無智無力の小民ら、ほこさかしまにすることもなかるべけれども、われわれは客分のことなるゆえ一命を棄つるは過分なりとて逃げ走る者多かるべし。
学問のすすめ (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
いよいよほこふるいもしくは弁を揮わんとし、現在の偶像——それもすでに揺ぎ始めてる——にたいして、騒々しく出征の途にのぼらんとする時には
青年の父の杉野ただしと云う子爵も、少女の父の唐沢男爵も、共に聞えた貧乏華族である。黄金のほこの前に、黄金の剣の前には、何の力もない人達だった。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
其の永楽帝の賽児をもとむる甚だ急なりしに考うれば、賽児の徒窘窮きんきゅうしてほこって立つに及び、あるいは建文を称して永楽に抗するありしも亦知るべからず。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
いまだ浹辰せふしんを移さずして、氣沴きれいおのづから清まりぬ。すなはち牛を放ち馬をいこへ、愷悌がいていして華夏に歸り、はたを卷きほこをさめ、儛詠ぶえいして都邑に停まりたまひき。
その後戦場に臨み敵中村が羽織と盔とを見ず、故に競い掛かりて切り崩す、中村ほこを振るって敵を殺す事あまたなれども中村を知らざれば敵恐れず、中村ついに戦歿す。
く水は再びかえらず、魯陽ろようほこは落日を招きかえしぬと聞きたれど、何人も死者を泉下より呼起よびおこすべきすべを知らぬかぎりは、われも徒爾いたずらに帰らぬ人を慕うの女々めめしく愚痴なるを知る
父の墓 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
天皇は仲麿を見るたびにましくなるので、改名して、恵美押勝えみのおしかつと名のらせた。押勝とは、暴を禁じ、強に勝ち、ほことどめ、乱を静めたといふいさおしの、雄々しい風格の表現だつた。
道鏡 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
三 なんぢ地のはてまでも戦闘たたかひをやめしめ、弓を折りほこを断ち戦車いくさぐるまを火にてやきたまへり
だいこん (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
おおゆみだのつるぎだのほこだの、やりだの、まさかりだの斧だの瓢石ひょうせきだのの、無数の武器が渦まいていた。
沙漠の美姫 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
そこに方丈ほうじょうの壇をむすび、何かの符を書いてそれをくと、たちまちに符の使い五、六人、いずれも身のけ一丈余にして、黄巾こうきんをいただき、金甲きんこうを着け、ほりのあるほこをたずさえ
世界怪談名作集:18 牡丹灯記 (新字新仮名) / 瞿佑(著)
かつてほこを交えた日露両国の商業的関係が、日本海を斜めに小樽対ウラジオの一線上に集注し来らむとする時、予がはからずもこの小樽の人となって日本一の悪道路を駆け廻る身となったのは
初めて見たる小樽 (新字新仮名) / 石川啄木(著)
便たよる未来がほこさかしまにして、過去をほじり出そうとするのはなさけない。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
武の古代文字は戈止の合字でほこを止める意味から起って居り
空手道の起原と其の沿革 (新字旧仮名) / 島袋源一郎(著)
子の忌日きじつ妻の忌日もほこの秋
五百五十句 (新字旧仮名) / 高浜虚子(著)
血汐にうるほこさきを
騎士と姫 (新字旧仮名) / 末吉安持(著)
よろいを、ほこ
と、黄忠も階をおり、魏延も堂をおりて、すんでに、若虎老龍じゃっころうりゅうほこをとって闘おうとする様子に、玄徳は驚いて堂上から一かつに制した。
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
季冬にろうに先だつ一日大いにおにやらいす、これを逐疫という、云々、方相氏は黄金の四目あり、熊皮をかぶり、玄裳朱衣してほこを執りたてを揚ぐ、十二獣は毛角をるあり、中黄門これを行う
そこに方丈ほうじょうの壇をむすび、何かのお符を書いてそれをくと、たちまちに符の使い五、六人、いずれも身のたけ一丈余にして、黄巾こうきんをいただき、金甲きんこうを着け、彫り物のあるほこをたずさえ
余、ために孟子を授け、公孫丑こうそんちゅう下篇を読みおわんぬ。村塾の第一義は、閭里りょりの礼俗を一洗し、ほこに枕しほこを横たうるの風を為すに在り。ここを以て講習は除夕を徹し、いまかつて放学せざるなり。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
喜見きけんとか云ふ、土地で一番の料理屋にれて行かれて、「毎日」が例令たとへ甚麽どんな事で此方にほこを向けるにしても、自體てんで對手にせぬと云つた樣な態度で、唯君自身の思ふ通りに新聞を拵へて呉れれば可い。
菊池君 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
曾は家を没収せられ雲南軍にやられるということを聞かされて驚きおそれていると、やがて数十人の剣を帯びほこを操った武士が来て、そのまま内寝いまへ入って曾の衣冠をいで、妻といっしょに縛った。
続黄梁 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
女の言葉を、ほこを収める機会にした。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
張飛の声を聞くと、城兵は争ってよろいほこを投げ捨て、その大半以上、降人になった。こうして張飛は、ついに巴城はじょうに入って、郡中を治めた。
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
弓と槍とほこと、あらゆる武器はみな彼の身一つに向って、遠巻きに取囲んでいたが、そのすさまじい姿には敢て誰ひとり近づく者もなかった。
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ほこを引っさげ、身を鎧い、悍馬に泡を噛ませてきた一老将がある。宮門に変ありと、火の手を見るとともに馳せつけてきた中郎将盧植であった。
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
張飛が船上へとび上がると、出合い頭に、周善がほこをもって斬りかけてきた。龍車に向う蟷螂とうろうの斧にひとしい。張飛が
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
孫権は群臣と共に、階を隔てて傲然ごうぜんと待ちかまえる。千余人の武士は、階下から宮門にいたるまで、げきほこ、鎗、おのなどを晃々こうこうと連ねて並列していた。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ほこをうごかすなかれ、をみるなかれの神文しんもんもとうていいまの人心にはまもられる気づかいがない。見ろ——
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
金吾中納言秀秋きんごちゅうなごんひであきが敵に内応して、東軍とともに、味方の石田三成をはじめ、浮田うきた、島津、小西などの陣へ、さかさにほこを向けて来た一転機からの総くずれであった。
宮本武蔵:02 地の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
梯子はしごをかけ、梯子の上から、門外の人馬へ何かどなった。おびただしい松明たいまつのいぶりである。十文字鎗、五ツまたほこ袖搦そでがらみなどの捕物道具、見るからにものものしい。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
……それに、御父子のおん仲で、ほこって、血みどろに戦うなど、人倫の道がゆるさぬ。必ずや、天道のお罰があろう。いずれが勝つも負くるも、流されるのは骨肉、同族の血。
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
やがては、芦花ろか散る江頭こうとうの船べりに霜のほこをならべ、よしの葉かげに戦艇せんていをしのばすなどの水滸すいこさいに、かの天罡地煞てんこうちさつの諸星を会するにいたる先駆の第一星こそ、まさにこの人だったのである。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すでに禁門を犯してなだれこんだ魏兵は、よろいを着、ほこを持って、南殿北廂ほくしょうにわに満ちみちていた。帝は、いそぎ朝臣をあつめて、御眦おんまなじりに血涙をにじませ、悲壮な玉音をふるわせて一同へのたもうた。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
趙雲の小舟がそれへ近づこうとすると、船上の周善は、長いほこを持って
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かならず恭順きょうじゅんを誓わせ、無用なほこは、これをおさめさせまする
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)