慘憺さんたん)” の例文
新字:惨憺
間斷かんだんなく消耗せうまうして肉體にくたい缺損けつそん補給ほきふするために攝取せつしゆする食料しよくれうは一わんいへどこと/″\自己じこ慘憺さんたんたる勞力らうりよくの一いてるのである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
平次はむしろを取りました。その下にある死骸は、みにくい恰好に崩折れた若黨の三次で、小意氣な男前も斯うなつては慘憺さんたんたるものです。
わたくし此時このときまでほとんど喪心そうしん有樣ありさまで、甲板かんぱん一端いつたん屹立つゝたつたまゝこの慘憺さんたんたる光景ありさままなこそゝいでつたが、ハツと心付こゝろついたよ。
いはゆる文化的都市ぶんくわてきとし發達はつたつすればするほど、災害さいがい慘憺さんたんとなる。したがつて震災しんさいたいしても防備ばうびかんがへがこる。が、これも比較的ひかくてきあたらしい時代じだいぞくする。
日本建築の発達と地震 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
ブリキの鐵瓶にれて、ゴトリ/\とて、いや、うでて、そつと醤油したぢでなしくづしにめるとふ。——つては、湯豆府ゆどうふ慘憺さんたんたるものである。……
湯どうふ (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
其の時、周三の頭に、まぼろしごとく映ツたのは、都會生活の慘憺さんたんたる状態じやうたいだ。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
一足入ると、此處は更に慘憺さんたんたる有樣です。かなり取亂した中に床を敷いて、町内の外科が、新助の傷の手當をして居るところへ
さうかといつて肥料ひれうなしには到底たうていぱんさだめられてある小作料こさくれう支拂しはらだけ收穫しうくわくられないので慘憺さんたんたる工夫くふう彼等かれらこゝろ往來わうらいする。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
左舷さげん當番たうばん水夫すゐふいまたしか星火せいくわほとばしり、火箭くわせん慘憺さんたんたる難破船なんぱせん信號しんがうみとめてるには相違さうゐないのだが、何故なぜ平然へいぜんとしてどうずるいろもなく、籠手こてかざして其方そなたながめてるのみ。
中はまことに慘憺さんたんたる有樣で、檢屍前の死骸は、僅かに隣りの部屋に取込んでありますが、盃盤はいばんと血潮と、手のつけやうのない混亂です。
塲内じやうない光景くわうけいじつ慘憺さんたんたるもので、濁浪だくらう怒濤どたう一方いつぽう岩壁いわかべ突破つきやぶつて、奔流ほんりうごと其處そこから浸入しんにふしたものとへ、そのそばの、かね發動藥液はつどうやくえき貯藏ちよぞうせられてつた小倉庫せうさうこてつとびら微塵みぢんくだかれて
大刀を引きつけて、クワツと眼をいたのは、凡そきたなづくりの、四十七八の浪人者、何をして暮してゐるのか、まこと慘憺さんたんたる有樣です。
今も開いて居る窓から、此慘憺さんたんたる樣子を覗いたとしたら、これは若い娘に取つては、恐怖以上のシヨツクだつたでせう。
逃げて行く二三人を追ひ掛けた幸七は、五六間も追つ驅けて、やうやく提灯を一つ借りて來ると、慘憺さんたんたる現場がマザマザと照らし出されるのでした。
死骸の側に進んだ平次は、その慘憺さんたんたる有樣に先づ息を呑みました。若樣有馬之助は、左の顳顬こめかみを割られ、顏が曲つたやうになつて死んで居るのです。
大抵の人は一と通り拭いて居りますが、まだ洗ふすきはなかつたと見えて、若旦那の草之助や掛り人のお富の華奢きやしやな手などは、まことに慘憺さんたんたる泥まみれです。
その慘憺さんたんたる有樣を眺めて、多之助の女房だつた、妖艶無比のお若は、部屋一パイに飛散る血を、滿山の花とでも思つたか、雛毛氈ひなまうせんを敷いて、冷酒をあふり乍ら
そんな事を言つてゐるうちに、先に立つた八五郎は、中から勇次郎の部屋を開けて、縁側に立つた平次に、慘憺さんたんたる有樣を一と目に見えるやうにしてやりました。
念佛氣のない八五郎も、思はず片手拜みに、あわてて蓋をさせたほど、それは慘憺さんたんたるものでした。
その上布團を掛けて押へたらしく床の亂れやうや、掛布團の慘憺さんたんたる有樣など、平次は念入りに調べた上、平次の眼は床の側に置いた血染の脇差とそのさやに注がれました。
二階までは木口が古く、三階への階子段はしごだんから上が、眞新しいのはその爲で、その眞新しい階子段から、もう血潮の洪水に浸つて、足の踏みども無いほどの慘憺さんたんたる有樣です。
寶掘りといふものは、どんなに慘憺さんたんたるものか、今の人は大方忘れてしまつたことでせう。
慘憺さんたんたる中を一通り見て廻つた後で、平次は笹野新三郎と萬七を縁側にさそひ出しました。
いづれも天竺てんぢくの名木で作つたものでせう、色彩しきさい剥落はくらくしてまことに慘憺さんたんたる有樣ですが、男女二體の彫像てうざうの内、男體の額にちりばめた夜光の珠は燦然さんぜんとして方丈はうぢやうの堂内を睨むのでした。
木枯の吹いた後の雜木林のやうな淋しい世帶は、八五郎の巣よりも慘憺さんたんたるものです。
月にさらされた慘憺さんたんたる有樣を遠く眺めて、路地の外の彌次馬も聲を呑みました。
明る過ぎるほどの晝過ぎの陽を受けて、それは實に慘憺さんたんたる姿でした。
ろくな親類もある筈はなく、町内附き合ひもいゝ加減で、合長屋の月番の老爺が、お義理だけの顏を出して、へゞれけの辰五郎のおもりを、迷惑さうにやつてゐるといふ、いかにも慘憺さんたんたる有樣です。
まことに二た目とは見られない、慘憺さんたんたる死にやうです。
お縫の部屋の中は、豫想以上に慘憺さんたんたるものでした。
徳三郎の指した光景は、全く慘憺さんたんたるものです。