トップ
>
惨
>
みじ
ふりがな文庫
“
惨
(
みじ
)” の例文
旧字:
慘
「もうこんな
惨
(
みじ
)
めな
下界
(
げかい
)
には一
刻
(
こく
)
もいたくない。」といって、
妹
(
いもうと
)
はふたたびはとの
姿
(
すがた
)
となって、
天上
(
てんじょう
)
の
楽園
(
らくえん
)
に
帰
(
かえ
)
ってしまったのです。
消えた美しい不思議なにじ
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
卑屈
(
ひくつ
)
になるなと云った男の言葉がどしんと胸にこたえてきて、いままでの
貞女
(
ていじょ
)
のような私の
虚勢
(
きょせい
)
が、ガラガラと
惨
(
みじ
)
めに壊れて行った。
清貧の書
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
陵の叔父(李広の次男)
李敢
(
りかん
)
の最後はどうか。彼は父将軍の
惨
(
みじ
)
めな死について衛青を
怨
(
うら
)
み、自ら大将軍の邸に
赴
(
おもむ
)
いてこれを
辱
(
はずか
)
しめた。
李陵
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
ましてや平原のところどころに散在する百姓家などは、山が人に与える生命の感じにくらべれば、
惨
(
みじ
)
めな幾個かの無機物に過ぎない。
生まれいずる悩み
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
私は児戯に類した言によっておのれを飾りはしない。もとより下層の者には、乞食や
研師
(
とぎし
)
や
惨
(
みじ
)
めな
奴
(
やつ
)
らには、何かがなくてはならない。
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
▼ もっと見る
このまま此の島で、此処にいる虫のような男達と一緒に、捨てられた猫のように死んで行く、それではあまりにも
惨
(
みじ
)
めではないか。
桜島
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
堅気の田舎の家庭から巣立ちして来たばかりのお今の
生
(
うぶ
)
な目には、お増の不思議な生活が、煩わしくも
惨
(
みじ
)
めらしくも見えるのであった。
爛
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
浅野内匠頭が短慮のために、いかに多くの家臣や、その家族の者たちが、
惨
(
みじ
)
めな姿を、
散々
(
さんざん
)
に、
巷
(
ちまた
)
にさらして泣いた事か——その実例を
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
父の後ろについて、千種は控室の方へ歩を運んだが、いちいち出くはす視線を、
眩
(
まぶ
)
しさうに避けなければならぬ自分を寧ろ
惨
(
みじ
)
めに思つた。
双面神
(新字旧仮名)
/
岸田国士
(著)
彼女は
燦爛
(
さんらん
)
として輝いているが、しかも退屈な応接間からそっと忍び出て、小さな
惨
(
みじ
)
めな自分の部屋へ泣きにゆくこともしばしばあった。
世界怪談名作集:03 スペードの女王
(新字新仮名)
/
アレクサンドル・セルゲーヴィチ・プーシキン
(著)
それは皆、捨てちまえ! 拾い集めてもらって、また食べるなんて、あまり
惨
(
みじ
)
めだ。惨めすぎる。少しは、こっちの気持も察してくれよ。
春の枯葉
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
またこれほど手入れしたその花の一つも見れずに追い立てられて行く自分の方が一層の
惨
(
みじ
)
めな
痴呆者
(
たわけもの
)
であるような気もされた。
子をつれて
(新字新仮名)
/
葛西善蔵
(著)
一つの美しいりっぱな歌で、どれだけの
惨
(
みじ
)
めな人々が苦しいおりに支持されたか、君は知っているか。人にはおのおのその職業があるのだ。
ジャン・クリストフ:11 第九巻 燃ゆる荊
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
そうすると寂しく
孔雀
(
くじゃく
)
の羽根をむしったように、自分の姿が
惨
(
みじ
)
めに見えるでしょう。けれど私たちの本体はそれだけにすぎないと思います。
青春の息の痕
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
たまに一声二声叫んでみると、その声は上野の森に
咽
(
むせ
)
び泣くように反響するのみで、自分の
惨
(
みじ
)
めさをその反響に映して見るような気がした。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
「それはそうだ。武士としては、主人を失って浪人しているくらい
惨
(
みじ
)
めなものはない。
主取
(
しゅうど
)
りさえできれば、何よりけっこうだ。時にお前は」
四十八人目
(新字新仮名)
/
森田草平
(著)
と同時に、漁夫達の
惨
(
みじ
)
めな生活(監督は酔うと、漁夫達を「
豚奴
(
ぶため
)
々々」と云っていた)も、ハッキリ対比されて知っている。
蟹工船
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
その
惨
(
みじ
)
めな姿がこの歓楽街から小暗い横丁の方へ消えていくと、あとを見送った弥次馬たちはワッと手を叩いて囃したてた。
蠅男
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
それがなんとなく、抗争する気力のまったく尽き果てた——犯罪者として最も
惨
(
みじ
)
めな姿のように思われるのであるが……⁉
聖アレキセイ寺院の惨劇
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
松三はこう言いながら、自分の美しかった若い妻が、菊枝の母親が、いかに
惨
(
みじ
)
めな半生を送ったかを、農村の女達がいかに
虐
(
しいた
)
げられるかを思った。
緑の芽
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
そして私は地べたに意気地なく
惨
(
みじ
)
めったらしく転がっている奴に、なんとも言えない憎悪と憤怒を感じていたのだった。
如何なる星の下に
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
買出しの方はカチェリーナ自身がどういうわけか、リッペヴェフゼル夫人のところに
居候
(
いそうろう
)
している
惨
(
みじ
)
めなポーランド人を助手にして取りしきった。
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
それより自分の
惨
(
みじ
)
めさと滑稽さが自分に分つたといふことが重大であつた。今、それが嵐のやうに草木を薙いでゐる。
四人
(新字旧仮名)
/
芥川多加志
(著)
こんな病院へはいらなければ生を完うすることのできぬ
惨
(
みじ
)
めさに、彼の気持は再び曇った。眼を上げると首を
吊
(
つる
)
すに適当な枝は幾本でも眼についた。
いのちの初夜
(新字新仮名)
/
北条民雄
(著)
またこうも書いた、「私はしばしば私という存在を造物主に
呪
(
のろ
)
った。私の生活は神の造り給うものの中で最も
惨
(
みじ
)
めだ」
楽聖物語
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
(著)
溢
(
あふ
)
れるのも同じく早いわけである、森林があってさえそれだから、坊主になったときの、
惨
(
みじ
)
めさがおもいやられる。
上高地風景保護論
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
何処にも飛んで行くことの出来ないあはれさ!
惨
(
みじ
)
めさ! しかし余りに興に乗つて勝手なことを長く書き過ぎた。
樹木と空飛ぶ鳥
(新字旧仮名)
/
田山花袋
、
田山録弥
(著)
生計的に
落魄
(
らくはく
)
し、世間的に不問に
附
(
ふ
)
されていることは悲劇ではない。自分が自分の魂を握り得ぬこと、これほどの
虚
(
むな
)
しさ馬鹿さ
惨
(
みじ
)
めさがある筈はない。
いずこへ
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
いまもそれが頭脳の大半を占領していて
却々
(
なかなか
)
撃退出来ない。昨夜の夢には昼間きた刑事の顔も加わっていて、ひどく
惨
(
みじ
)
めな敗北的な
己
(
おの
)
れの姿だった——
冬枯れ
(新字新仮名)
/
徳永直
(著)
私はもしも自分が雪子と結婚してゐたら、彼女の純潔を尊敬して、かういふ
惨
(
みじ
)
めな
破綻
(
はたん
)
は訪れないだらうと思つた。
途上
(新字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
心の友を求めることに気がつかず、こんな女づれを相手に僅かな慰安を
捜求
(
さがしもと
)
めてあるく男の
惨
(
みじ
)
めさは、此意味に於て哀れなものと云はなければならない。
瘢痕
(新字旧仮名)
/
平出修
(著)
私が初めて、自分の身体の
惨
(
みじ
)
めさをしたたかに感じたのは、何でも十四、五の時分ではなかったかと覚えている。
陰獣トリステサ
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
私にひっかけられた男のその
惨
(
みじ
)
めな有様は、あらゆるものにせっぱつまったような陰惨な様子を投げかけていた。
ウィリアム・ウィルスン
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
あくる日の合戦は、尊氏方の
惨
(
みじ
)
めな敗北に終った。大将の尊氏はすでに自害と覚悟を極めたほどであったが、幸いに直義との和議が整って、尊氏は生きた。
小坂部姫
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
むなしく死んだ鋸屋も、やがて二三刻の後には
呼吸
(
いき
)
絶えるかも知れない自分も、これではあまりに
惨
(
みじ
)
めすぎる。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
死を賭して戦わざるものは、いつも敗者の
惨
(
みじ
)
めさを味わうものです。「あらゆる日の問題は死ぬことなり」という言葉ほど、厳粛な真剣なことはありません。
般若心経講義
(新字新仮名)
/
高神覚昇
(著)
そればかりでなしに、それは前よりも一層私の田舎暮らしの
惨
(
みじ
)
めさを
掻
(
か
)
き立てるような結果にさえなった。
三つの挿話
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
全くの処、
細君
(
さいくん
)
の水泳を砂地の炎天できものを預かりながら眺めているという
惨
(
みじ
)
めさは
憐
(
あわ
)
れむべきカリカチュールでなくて何んであるか。私は最近
芦屋
(
あしや
)
へ移った。
楢重雑筆
(新字新仮名)
/
小出楢重
(著)
「へえ、大分遠方で、何でも長崎の
傍
(
そば
)
ださうで、えつへつへ。」さうだ、如何にも俺の故郷は筑後の柳河だ、それがどうした。笑ふにも笑はれない、何といふ
惨
(
みじ
)
めさだ。
桐の花
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
その母親の心が、もうすっかり私と絶縁しているということが、
惨
(
みじ
)
めに私の胸に打撃を与えた。
狂乱
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
すっかり
惨
(
みじ
)
めに打ちひしがれた思いで太田は自分の寝台に帰った。いつか脂汗が額にも背筋にもべとべととにじんでいた。わきの下に手をあててみると火のように熱かった。
癩
(新字新仮名)
/
島木健作
(著)
前を近在の百姓が車を曳いて通り、後ろを丹波鉄道が
煤煙
(
ばいえん
)
を浴びせて過ぐる、その間にやっと滅び行く運命を死守して半身不随の身を支えおるという
惨
(
みじ
)
めな有様であります。
大菩薩峠:03 壬生と島原の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
神は時に
惨
(
みじ
)
めな人間を慰めるように命令した。しかし時は人間を救うであろうか。時によって慰められるということは人間のはかなさ一般に属している。時とは消滅性である。
人生論ノート
(新字新仮名)
/
三木清
(著)
その動揺せる世潮の中を、一人の男が、
惨
(
みじ
)
めなるかつ偉大なる一人の男が、進んでゆく。
レ・ミゼラブル:01 序
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
絶望的な
惨
(
みじ
)
めさは、こういう場所で見ると、もっともおそろしく痛々しく見えるものだ。幽霊のようにさまよい、まわりはみな陽気だというのに、さびしく、うれいに満ちている。
傷心
(新字新仮名)
/
ワシントン・アーヴィング
(著)
「
呪
(
のろ
)
われた原始哲学よ、嗤うべき小芸術よ、
惨
(
みじ
)
めな昨日までの
感情
(
アフェクテ
)
の国土よ!」
吊籠と月光と
(新字新仮名)
/
牧野信一
(著)
而もなほありあまる愛着と未練と淫情と臆病とに
後髪
(
うしろがみ
)
を絶えず曳かれつつ蹌踉として進むに進めぬ
惨
(
みじ
)
めさ。苦しみ抜いた、私は全く苦しみ抜いた。さうして漸く今在る処まで行き着いた。
愛の詩集:03 愛の詩集
(新字旧仮名)
/
室生犀星
(著)
同居のかたちで暮せぬこともないであろうが、千枝の家へゆくことをさえ恥さらしだと考える閑子は、他人のいる家へ帰ってゆく
惨
(
みじ
)
めさを、実際の惨めさの幾倍にも考えて泣くのだった。
妻の座
(新字新仮名)
/
壺井栄
(著)
独身——制作——とみ子、その三つのものを結び合せて遠野のことを考へると、道助は自分が何かしら
惨
(
みじ
)
めなものに思はれた。彼は或る時の妻の瞳を思ひ出し、また彼女の髪の震へを感じた。
静物
(新字旧仮名)
/
十一谷義三郎
(著)
とおさよをのぞくと、どきりとしたおさよはすぐさま
惨
(
みじ
)
めに笑いほごした。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
“惨”の意味
《形容動詞》
みじめなさま。
(出典:Wiktionary)
惨
常用漢字
中学
部首:⼼
11画
“惨”を含む語句
惨酷
悲惨
凄惨
無惨
惨状
惨死
惨虐
惨々
惨憺
惨澹
悽惨
陰惨
惨劇
惨害
見惨
悲雨惨風
惨刑
惨禍
惨殺
惨敗
...