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恍惚
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くわうこつ
ふりがな文庫
“
恍惚
(
くわうこつ
)” の例文
われを
目
(
もく
)
して「
骨董
(
こつとう
)
好き」と言ふ、誰か
掌
(
たなごころ
)
を
拊
(
う
)
つて
大笑
(
たいせう
)
せざらん。唯われは古玩を愛し、古玩のわれをして
恍惚
(
くわうこつ
)
たらしむるを知る。
わが家の古玩
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
半次郎
(
はんじらう
)
が雨の
夜
(
よ
)
の
怪談
(
くわいだん
)
に始めてお
糸
(
いと
)
の手を取つたのも
矢張
(
やはり
)
斯
(
かゝ
)
る家の
一間
(
ひとま
)
であつたらう。
長吉
(
ちやうきち
)
は
何
(
なん
)
とも
云
(
い
)
へぬ
恍惚
(
くわうこつ
)
と
悲哀
(
ひあい
)
とを感じた。
すみだ川
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
銀鞍
(
ぎんあん
)
の
少年
(
せうねん
)
、
玉駕
(
ぎよくが
)
の
佳姫
(
かき
)
、ともに
恍惚
(
くわうこつ
)
として
陽
(
ひ
)
の
闌
(
たけなは
)
なる
時
(
とき
)
、
陽炎
(
かげろふ
)
の
帳
(
とばり
)
靜
(
しづか
)
なる
裡
(
うち
)
に、
木蓮
(
もくれん
)
の
花
(
はな
)
一
(
ひと
)
つ
一
(
ひと
)
つ
皆
(
みな
)
乳房
(
ちゝ
)
の
如
(
ごと
)
き
戀
(
こひ
)
を
含
(
ふく
)
む。
月令十二態
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
封建の
揺籃
(
えうらん
)
恍惚
(
くわうこつ
)
たりし日本は
頓
(
にはか
)
に覚めたり。和漢の学問に牢せられたる人心は自由を呼吸せり。鉄の如くに固まれるものは泥の如くに解けたり。
明治文学史
(新字旧仮名)
/
山路愛山
(著)
若者
(
わかもの
)
も
思
(
おも
)
はず
手
(
て
)
を
合
(
あ
)
はしました。
見
(
み
)
るが
中
(
うち
)
に
日
(
ひ
)
は
波間
(
なみま
)
を
離
(
はな
)
れ、
大空
(
おほぞら
)
も
海原
(
うなばら
)
も
妙
(
たへ
)
なる
光
(
ひかり
)
に
滿
(
み
)
ち、
老人
(
らうじん
)
と
若者
(
わかもの
)
は
恍惚
(
くわうこつ
)
として
此景色
(
このけしき
)
に
打
(
うた
)
れて
居
(
ゐ
)
ました。
日の出
(旧字旧仮名)
/
国木田独歩
(著)
▼ もっと見る
おとなしいレオは、喜んでするに任せて居る——太陽に祝福された野面や、犬や、そこに身を
跼
(
かが
)
めて居る働く農夫などを、彼はしばらく
恍惚
(
くわうこつ
)
として眺めた。日は高い。
田園の憂欝:或は病める薔薇
(新字旧仮名)
/
佐藤春夫
(著)
「坂田はやつたぞ。坂田はやつたぞ。」と声に出して
呟
(
つぶや
)
き、初めて感動といふものを知つたのである。私は九四歩つきといふ一手のもつ青春に、むしろ
恍惚
(
くわうこつ
)
としてしまつたのだ。
聴雨
(新字旧仮名)
/
織田作之助
(著)
彼女
(
かれ
)
は
恍惚
(
くわうこつ
)
として夢の如く、心に浮ぶ篠田の
面影
(
おもかげ
)
に
縋
(
すが
)
りて接吻せり
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
恍惚
(
くわうこつ
)
とよろめきわたるわだつうみの
鱗
(
いろこ
)
の宮のほとりにぞ居る
雲母集
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
その
猛猛
(
たけ/″\
)
しい
恍惚
(
くわうこつ
)
の一撃だ。
晶子詩篇全集
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
僕等はそれ等の作品に接した時には
恍惚
(
くわうこつ
)
となるより外に仕かたはない。文芸は——或は芸術はそこに恐しい魅力を持つてゐる。
文芸的な、余りに文芸的な
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
此時
(
このとき
)
、われに
返
(
かへ
)
る
心
(
こゝろ
)
、しかも
湯氣
(
ゆげ
)
の
裡
(
うち
)
に
恍惚
(
くわうこつ
)
として、
彼處
(
かしこ
)
に
鼈甲
(
べつかふ
)
の
櫛
(
くし
)
笄
(
かうがい
)
の
行方
(
ゆくへ
)
も
覺
(
おぼ
)
えず、
此處
(
こゝ
)
に
亂箱
(
みだればこ
)
の
緋縮緬
(
ひぢりめん
)
、
我
(
わ
)
が
手
(
て
)
にさへ
袖
(
そで
)
をこぼれて
亂
(
みだ
)
れたり。
面
(
おもて
)
、
色
(
いろ
)
染
(
そま
)
んぬ。
婦人十一題
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
彼は
恍惚
(
くわうこつ
)
としてその楽の音に聞き惚れて居た。或る夜にはまた、活動写真館でよく聞く楽隊の或る節が……これもやはり何かの行進曲であるが……何処からともなく洩れ聞えて来た。
田園の憂欝:或は病める薔薇
(新字旧仮名)
/
佐藤春夫
(著)
美くしき譬へがたなき
恍惚
(
くわうこつ
)
の奥の
香
(
かを
)
りを。
畑の祭
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
小生は勿論「けふの自習課題」の作者に芸術的
嫉妬
(
しつと
)
を感じ
候
(
さふらふ
)
。然れども
恍惚
(
くわうこつ
)
たる少女の顔には言ふ
可
(
べ
)
からざる幸福を感じ候。
伊東から
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
玉
(
たま
)
の
如
(
ごと
)
き
肩
(
かた
)
に、
柳
(
やなぎ
)
の
如
(
ごと
)
き
黒髪
(
くろかみ
)
よ、
白百合
(
しろゆり
)
の
如
(
ごと
)
き
胸
(
むね
)
よ、と
恍惚
(
くわうこつ
)
と
我
(
われ
)
を
忘
(
わす
)
れて、
偉大
(
ゐだい
)
なる
力
(
ちから
)
は、
我
(
わ
)
が
手
(
て
)
に
作
(
つく
)
らるべき
此
(
こ
)
の
佳作
(
かさく
)
を
得
(
え
)
むが
為
(
た
)
め、
良匠
(
りようしやう
)
の
精力
(
せいりよく
)
をして
短
(
みじか
)
き
時間
(
じかん
)
に
尽
(
つく
)
さしむべく
神鑿
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
その天地の栄光は、自然それ自身の
恍惚
(
くわうこつ
)
は、一瞬時の夢のやうに、夕日が雲にかくれた時に消えた。夕日は、雲から、次には一層黒い雲と遠い地平の果の連山の方へ落ち込んで行つた。
田園の憂欝:或は病める薔薇
(新字旧仮名)
/
佐藤春夫
(著)
彼はこの
恍惚
(
くわうこつ
)
たる悲しい喜びの中に、
菩提樹
(
ぼだいじゆ
)
の念珠をつまぐりながら、周囲にすすりなく門弟たちも、眼底を払つて去つた如く、
唇頭
(
しんとう
)
にかすかな
笑
(
ゑみ
)
を浮べて、
恭々
(
うやうや
)
しく、臨終の芭蕉に礼拝した。——
枯野抄
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
恍惚
(
くわうこつ
)
と
見
(
み
)
たる
旅
(
たび
)
の
男
(
をとこ
)
。
婦人十一題
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
金花はまるで
喪心
(
さうしん
)
したやうに、翡翠の耳環の下がつた頭をぐつたりと後へ
仰向
(
あふむ
)
けた儘、しかし
蒼白
(
あをじろ
)
い頬の底には、
鮮
(
あざやか
)
な血の色を
仄
(
ほの
)
めかせて、鼻の先に迫つた彼の顔へ、
恍惚
(
くわうこつ
)
としたうす眼を注いでゐた。
南京の基督
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
“恍惚”の意味
《名詞》
恍惚(こうこつ)
何かに心を奪われうっとりすること。また、そのようなさま。
意識がぼんやりしていてはっきりしないこと。また、そのようなさま。
認知症で脳の機能が低下しているさま。
(出典:Wiktionary)
恍
漢検1級
部首:⼼
9画
惚
漢検準1級
部首:⼼
11画
“恍惚”で始まる語句
恍惚境
恍惚感
恍惚郷