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彼奴
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あいつ
ふりがな文庫
“
彼奴
(
あいつ
)” の例文
彼奴
(
あいつ
)
なら聴いても差支えないどころか、吾輩の話のタッタ一人の証人なんだ。吾輩が死んでも、
彼奴
(
あいつ
)
の報告を聞けば一目瞭然なんだ。
爆弾太平記
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
「こんな事でもしなかったら、
彼奴
(
あいつ
)
は
吃驚
(
びっく
)
りしますまい。……だが
最
(
も
)
う私達は伊右衛門のことなど、これからは勘定に入れますまい」
隠亡堀
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
岩本は知られないようにつけながら、……いよいよあの女らしいが、
彼奴
(
あいつ
)
どうしてものにしたろう、と、
羨
(
うらや
)
ましくてたまらなかった。
水魔
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
君、山木は
彼
(
あ
)
の同胞新聞とか云ふ
木葉
(
こつぱ
)
新聞の篠田ツて奴に、娘を呉れて遣る内約があるンださうぢやないか、失敬ナ、篠田——
彼奴
(
あいつ
)
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
見ると、私はむかむかしてくる。
彼奴
(
あいつ
)
をこれから一日でも家に置いとくくらいなら、ルイ十八世のお
妃
(
きさき
)
にでもなった方がまだましだ。
レ・ミゼラブル:05 第二部 コゼット
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
▼ もっと見る
と云いながら立上ってばら/\/\と駈出しましたから、
彼奴
(
あいつ
)
逃げるかと思って見て居りますと、亥太郎は浅草見附へ駈込みました。
業平文治漂流奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
「
姉
(
ねえ
)
さん此方へ向いてみねえ。」「ああ
彼奴
(
あいつ
)
はヘチマじゃな。」「ここの愛国婦人会の奴らは紋付なんか着込んで気張ってらあ。」
震災後記
(新字新仮名)
/
喜田貞吉
(著)
しかし、
彼奴
(
あいつ
)
が水野家の戸籍の人間になる前に万が一のことがあれば、久吉がオレの嫡男、代って当家をつぐ嫡流はこれだと言ったな。
明治開化 安吾捕物:11 その十 冷笑鬼
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
隨分
(
ずゐぶん
)
厭味
(
いやみ
)
に
出來
(
でき
)
あがつて、いゝ
氣
(
き
)
の
骨頂
(
こつちやう
)
の
奴
(
やつ
)
ではないか、
己
(
お
)
れは
親方
(
おやかた
)
の
息子
(
むすこ
)
だけれど
彼奴
(
あいつ
)
ばかりは
何
(
ど
)
うしても
主人
(
しゆじん
)
とは
思
(
おも
)
はれない
わかれ道
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
「でも、このあいだの晩の娘を乗っけたのは
彼奴
(
あいつ
)
らだから、ほかの者じゃあ見識り人にならねえ。まあ、いいや。なんとかなるだろう」
半七捕物帳:18 槍突き
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
彼奴
(
あいつ
)
の
真
(
まこと
)
の目標は、ひょっとすると、此の僕にあったのではないかと考える。僕は……僕は今や真実を書き残して、愛する君に伝える。
俘囚
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
人殺し、泥坊、火つけ、その他ありとあらゆる害毒を暗の世界にふりまいていた。驚くべきことは、それが
彼奴
(
あいつ
)
の唯一の道楽だったのだ
一寸法師
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
またもここで
彼奴
(
あいつ
)
のすがたを見かけたので、眼にとまっては大変と、あっちこっちに隠れ廻って、様子をながめていたというわけ。
宮本武蔵:05 風の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
悪いことはみんな
彼奴
(
あいつ
)
が教えるんだと思ったので、ああ云う風に云ったのですが、まさかそれ以上は、あなたに云えなかったんですよ。
痴人の愛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
……その時まで全く冗談だったが……冗談にせよ、はずみで……ぱっと払ったのが、腿にきた。
彼奴
(
あいつ
)
案外真剣だったらしい……。
傷痕の背景
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
其処
(
そこ
)
に折よく第三者が来て、「
彼奴
(
あいつ
)
は狐に化かされている」といって、背中をどやしてくれると即ち催眠状態が
醒
(
さ
)
めるのである。
ばけものばなし
(新字新仮名)
/
岸田劉生
(著)
「あのキリーリンに気をつけて頂きたいのです。
彼奴
(
あいつ
)
は到るところであなたを種に怪しからんことを言い触らしているんです。」
決闘
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
「宿屋兼料理屋さ。だからあいつを一番へこます為には、
彼奴
(
あいつ
)
が芸者をつれて、あすこへ這入り込む所を見届けて置いて面詰するんだね」
坊っちやん
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
彼奴
(
あいつ
)
は何をいったのかと思ってつくづくと読んで見ると、それは
正
(
まさ
)
しく、私は心からあなたを愛するという意味の言葉であった。
楢重雑筆
(新字新仮名)
/
小出楢重
(著)
あたったら?……
彼奴
(
あいつ
)
の指がちょっとしまると、それで
俺
(
おれ
)
の生命がなくなる……すると……そうだ、明日は、今から二日たつと
ジャン・クリストフ:09 第七巻 家の中
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
私が見たときは、
彼奴
(
あいつ
)
め、庭の下に立って、手ずから燈籠に灯をいれるところでしたが、夕闇のせまる庭に、誰やら立っている者がある。
丹下左膳:03 日光の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
死神
(
しにがみ
)
が
吾等
(
われら
)
の
婿
(
むこ
)
、
死神
(
しにがみ
)
が
吾等
(
われら
)
の
嗣子
(
あとつぎ
)
、
此上
(
このうへ
)
は
吾等
(
われら
)
も
死
(
し
)
んで
何
(
なに
)
もかも
彼奴
(
あいつ
)
に
與
(
く
)
れう、
命
(
いのち
)
も
財産
(
しんだい
)
も
何
(
なに
)
もかも
死神
(
しにがみ
)
めに
與
(
く
)
れませうわい。
ロミオとヂュリエット:03 ロミオとヂュリエット
(旧字旧仮名)
/
ウィリアム・シェークスピア
(著)
『あの男はも少しのことで私を
彼奴
(
あいつ
)
の情婦にするところだつた。私は
彼奴
(
あいつ
)
には氷のやうに、岩のやうにならなくてはならない。』
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
傍にいてこの無礼な態度を見ていた
拳骨
(
メリケン
)
壮太は、ぎりぎり歯噛みをして「坊っちゃん、あっしゃあ
彼奴
(
あいつ
)
をのしちゃうからね!」
謎の頸飾事件
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
「チョコ、
彼奴
(
あいつ
)
、あの時分でいゝ加減こしらえたと思うがどうだ? ——あれからだもの、彼奴のちい/\し出したのは……」
春泥
(新字新仮名)
/
久保田万太郎
(著)
私
(
わたくし
)
はもう
彼奴
(
あいつ
)
が参りますと、
惣毛竪
(
そうけだ
)
つて頭痛が致すのでございます。あんな強慾な事を致すものは全く人相が別でございます。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
「食えませんけれど、釣れないよりは宜いと見えて持って来ます。しかし
彼奴
(
あいつ
)
は鶏が食っても死にますから、
肥溜
(
こえだめ
)
へ
棄
(
す
)
てるより外ありません」
脱線息子
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
広瀬淡窓
(
ひろせたんそう
)
などの事は、
彼奴
(
あいつ
)
は
発句師
(
ほっくし
)
、俳諧師で、詩の題さえ出来ない、書くことになると漢文が書けぬ、何でもない
奴
(
やつ
)
だと
云
(
いっ
)
て居られました。
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
へい、あの
婆様
(
ばあさん
)
はどこへ行ったか居りません。「そうだろう。
彼奴
(
あいつ
)
もしたたか者だ。お藤を
誘拐
(
かどわか
)
して行ったに違いない。あの
嬢
(
こ
)
はまだ
小児
(
こども
)
だ。 ...
活人形
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「ああ厭だ厭だ」と顔を
皺
(
しか
)
めて、「こんな厭な思いをするも
皆
(
みんな
)
彼奴
(
あいつ
)
のお
蔭
(
かげ
)
だ。どれ」と起ち上ッて、「往ッて
土性骨
(
どしょうぼね
)
を
打挫
(
ぶっくじ
)
いてやりましょう」
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
「ともかく、
彼奴
(
あいつ
)
は、有り難い筈の吾々客人に対して、永遠の呪ひ! を持つてゐるといふんだから凄まぢいものだな。」
山彦の街
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
「人を殺したというのはけしからんが、紳士を侮辱したから、僕が
彼奴
(
あいつ
)
をやっつけたのだ。叔父の知ったことじゃない。」
田七郎
(新字新仮名)
/
蒲 松齢
(著)
あの蝸牛といふ虫は、どこへ行くにも、首だけちよつと出すばかり、家を背負つて歩行まするが、
彼奴
(
あいつ
)
なかなか、気の利いた奴ではござらぬか。
したゆく水
(新字旧仮名)
/
清水紫琴
(著)
「うん、その
死霊
(
おばけ
)
は恐らく事実だろうよ」と法水はプウと煙の輪を吐いて、「しかし、
彼奴
(
あいつ
)
がその後に死んでいるという事も、また事実だろう」
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
『
彼奴
(
あいつ
)
の
事
(
こつ
)
た、橋の方へでも行つてブラ/\してるだらう。それより俺は頭が痛くて
為様
(
しやう
)
がないから、寝かして呉れよ。』
鳥影
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
「かまうもんですかよ。
彼奴
(
あいつ
)
にさえ見つからなけアいいんだ。」と、お庄は用心深く暗い
四下
(
あたり
)
を見廻しながら出て行った。
足迹
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
あなたは黄表紙の作者でもあれば、ユリイカの著者でもある。『
殴
(
なぐ
)
られる
彼奴
(
あいつ
)
』とはあなたにとって薄笑いにすぎない。
虚構の春
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
「何と云ふ気違ひ奴、だが
彼奴
(
あいつ
)
がいくら決め込んだつて此方がさうでない事を明かにすれや何でもない事ぢやないか!」
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死
(新字旧仮名)
/
長与善郎
(著)
いえ、第一、
彼奴
(
あいつ
)
の心得方が間違ってるサ。廃人なら廃人らしく神妙にして、皆なの言うことに従わんけりゃ成らん。どうかすると、彼奴は
逆捩
(
さかねじ
)
を
家:02 (下)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
ただ、時々父が、「そんな馬鹿な」とか「
彼奴
(
あいつ
)
をここに」とかいったようなことを腹立たしげに叫びかけると叔父にとめられているのがわかった。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
「
彼奴
(
あいつ
)
かい、あはははは、うっかり、将軍助平などといおう物なら、来た来た、うまく化けてやがらあ、商売々々だ」
大岡越前の独立
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
確かに、あの男だと云はないが、
何
(
ど
)
うも
彼奴
(
あいつ
)
の事らしい。杉野はお前の話を始める前に、それとなく荘田の事を賞めてゐるのだ。何うも彼奴らしい。
真珠夫人
(新字旧仮名)
/
菊池寛
(著)
「嘘を
吐
(
つ
)
け」男は声高に怒鳴った。「おれは郵便屋に聞いたんだが、郵便屋は、今朝
彼奴
(
あいつ
)
が
此家
(
ここ
)
から出て行ったのをたしかに見かけたといっていたぜ」
生さぬ児
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
「うむ、
彼奴
(
あいつ
)
が一足先に抜き取ったに相違ない。俺の眼が狂って居った訳ではない。確かに紙入は持って居た筈だ」
乗合自動車
(新字新仮名)
/
川田功
(著)
昌允
彼奴
(
あいつ
)
は、悪ふざけをするんで……美伃さん、俺、喉が渇いてるんだ、済まないが、あれ……ほら(云えない)
華々しき一族
(新字新仮名)
/
森本薫
(著)
何時
(
いつ
)
眺めても年の此頃十七八にしか見えぬとか——
彼奴
(
あいつ
)
は大方禁制の
切支丹伴天連
(
きりしたんばてれん
)
の秘法により、不老の魔術を行って、此の世を騒がす邪宗と見える。
艶容万年若衆
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
また読者中
繊弱
(
せんじゃく
)
なる女子に助言するなりまたはその他の親切をいえば、
彼奴
(
あいつ
)
はチト怪しいと疑われたこともあろう。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
「あなたにお願いと云うのはね、妾の同業の厚化粧ぐみをね、
彼奴
(
あいつ
)
たちはどうせろくなことはやらないのさ。」
女百貨店
(新字新仮名)
/
吉行エイスケ
(著)
『あゝ、阿父さんの
所為
(
せゐ
)
でも無い、阿母さんの
所為
(
せゐ
)
でも無い、わしの
所為
(
せゐ
)
でも無い。みんな
彼奴
(
あいつ
)
のわざだ。
貢
(
みつぐ
)
、
意久地
(
いくぢ
)
があるなら
彼奴
(
あいつ
)
を
先
(
さき
)
に
切
(
き
)
るがいゝ。』
蓬生
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
(著)
躯
(
からだ
)
ぢゆうがとろけてしまふやうな気持ぢや!……ところが、あの……いや、
彼奴
(
あいつ
)
のことなんざあ、どうだつていい! 奴さん、自分の話が入らなくつちやあ
ディカーニカ近郷夜話 後篇:01 はしがき
(新字旧仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
彼
常用漢字
中学
部首:⼻
8画
奴
常用漢字
中学
部首:⼥
5画
“彼奴”で始まる語句
彼奴等
彼奴共
彼奴呼
彼奴迄