引越ひつこ)” の例文
御尤ごもつともです……あんなに丹精たんせいをなさいましたから……でも、お引越ひつこしなすつたあとでは、水道すゐだうめたから、遣水やりみづれました。
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「それなら私もちやうど引越ひつこさうと思つてゐるのやさかえ、田中村の奥の方に、一軒格安な家がありますがうです。」
(新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
大丈夫だいぢやうぶよ」とつた。このこたへとき宗助そうすけなほこと安心あんしん出來できなくなつた。ところ不思議ふしぎにも、御米およね氣分きぶんは、小六ころく引越ひつこしててから、ずつと引立ひきたつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
ほんとうにあなたはめつたにおましにならないので、私どものやうに引越ひつこしてばかりゐますと、ついあなたが御存ごぞんじないいへ出來できてまゐります、今日はほんとうにうれしうございました。
冬を迎へようとして (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
うちの中は区役所の出張員しゆつちやういん硫黄いわうの煙と石炭酸せきたんさんで消毒したあと、まるで煤掃すゝはきか引越ひつこしの時のやうな狼藉らうぜきに、丁度ちやうど人気ひとけのないさびしさを加へて、葬式さうしき棺桶くわんおけ送出おくりだしたあとと同じやうな心持こゝろもちである。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
其内そのうち山田やまだしばからひとばしまで通学つうがくするのはあまとほいとふので、駿河台するがだい鈴木町すずきちやう坊城ばうじやう邸内ていない引越ひつこした、石橋いしばし九段坂上くだんさかうへの今の暁星学校ぎやうせいがくかうところたのですが、わたし不相変あひかはらずしばからかよつて
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
もう一人ひとりつれは、南榎町みなみえのきちやう淺草あさくさから引越ひつこしたまんちやんで、二人ふたり番町ばんちやうから歩行あるいて、その榎町えのきちやうつて連立つれだつた。
春着 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「あら、だつて、明日あした引越ひつこすんぢやありませんか」
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
二月ふたつきばかりつと、ばあやが一人ひとり留守るすをしたのが引越ひつこしたツきりなんとも、れぎり樣子やうすかずにごす。
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「ぢや引越ひつこしてからゆつくりればいのに」
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
先年せんねん麹町かうぢまち土手三番町どてさんばんちやう堀端寄ほりばたよりんだ借家しやくやは、ひど濕氣しけで、遁出にげだすやうに引越ひつこしたことがある。
くさびら (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
とほくのはう引越ひつこして仕舞しまはうとかんがへた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
なにしろ梅雨つゆあけ早々さう/\其家そこ引越ひつこした。が、……わたしはあとでいてぶるひした。
くさびら (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
其所そこ小六ころく引越ひつこしてた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
かたはらに、おの/\のがしるしてあつた。……神樂坂かぐらざかうらへ、わたし引越ひつことき、そのまゝのこすのはをしかつたが、かべだからうにもらない。——いゝ鹽梅あんばいに、一人ひとりあひがあとへはひつた。
春着 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
唯吉たゞきちやとつておく、おさんのせつでは、うもひとめかけ、かくしづまであらうとつた……それ引越ひつこして當時たうじ女主人をんなあるじふにつけて、には片隅かたすみわつた一本ひともとやなぎ、これがると屋根やね
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)