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なぶ
ふりがな文庫
“
弄
(
なぶ
)” の例文
義男は斯う云つて、いつも生きものを半分
弄
(
なぶ
)
り殺しにしてその儘抛つておく樣なこのみのるの、ぬら/\した感情を厭はしく思つた。
木乃伊の口紅
(旧字旧仮名)
/
田村俊子
(著)
彼は僕の折れた腕を治療してくれながら、以後は化け物や怪物を
弄
(
なぶ
)
り廻さないように忠告してくれた。船長はすっかり黙ってしまった。
世界怪談名作集:13 上床
(新字新仮名)
/
フランシス・マリオン・クラウフォード
(著)
誇らしげに胸の下に圧している高氏の面をながめる様といい、四肢でするその行為といい、美獣が餌を
弄
(
なぶ
)
るときの
姿態
(
しな
)
とおなじだった。
私本太平記:01 あしかが帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
玉藻は薄い
被衣
(
かつぎ
)
を深くかぶって、濡れた柳の葉にその細い肩のあたりを
弄
(
なぶ
)
らせながら立っていると、これも俄雨に追われたのであろう。
玉藻の前
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
いつまでもお
弄
(
なぶ
)
りなさいまし。父様はね、そんな風でね、私なんぞのこともね、蔭ではどんなに悪く言っていらっしゃるか知れはしないわ。
書記官
(新字新仮名)
/
川上眉山
(著)
▼ もっと見る
仰げばすでに、はっきり覚めて、朝化粧、振威の肩を朝風に
弄
(
なぶ
)
らせている大空の富士は真の青春を味うものの落着いた微笑を啓示している。
富士
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
芝居じみた
一刹那
(
いっせつな
)
が彼の予感を
微
(
かす
)
かに
揺
(
ゆす
)
ぶった時、彼の神経の
末梢
(
まっしょう
)
は、眼に見えない風に
弄
(
なぶ
)
られる細い小枝のように
顫動
(
せんどう
)
した。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
中には霊の飢餓を訴うるものがあっても、霊の空腹を
充
(
み
)
たすの
糧
(
かて
)
を与えられないで、かえって空腹を鉄槌の
弄
(
なぶ
)
り物にされた。
二葉亭余談
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
そして心の奥底では、一人の娘が自分のために苦しい思いをしたことも、人の
弄
(
なぶ
)
り者となってる少年には不快ではなかった。
ジャン・クリストフ:11 第九巻 燃ゆる荊
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
「ほツほ、何を長二、言ふだよ、
斯様
(
こんな
)
老人
(
としより
)
をお前、
弄
(
なぶ
)
るものぢや無いよ、其れよりも、まア、
何様
(
どんな
)
婦人
(
ひと
)
だか、
何故
(
なぜ
)
連れて来ては呉れないのだ」
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
「大勢で下郎を
弄
(
なぶ
)
り物になさるなどと、見苦しいではありませんか。冗談も程になさらぬと、父上のお耳に入れまするぞ」
半化け又平
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
立場の違う苦しみに、互に、
弄
(
なぶ
)
り殺しのような日をおくりながら、二人の相愛の気持ちは日々に深まっていったのだった。
遠藤(岩野)清子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
引き出して、天水桶の水をぶっかけて、
弄
(
なぶ
)
り
殺
(
ごろ
)
しにも仕兼ねまじきところを、屋根の上にながめていた宇治山田の米友が
大菩薩峠:17 黒業白業の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
自分の寺で盆栽を
弄
(
なぶ
)
つてゐたまゝの姿で、不圖思ひ付いて、十丁の路を隣りへでも行くやうにしてやつて來るのである。
ごりがん
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
ああ、何たる卑劣漢! 少佐が袋の鼠で、どんな事があっても逃げ出せないと知って、わざと
弄
(
なぶ
)
る為に、秘密書類のありかを毒々しく云うのです。
計略二重戦:少年密偵
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
娘も微笑んだが、男があえてKをあまりひどく
弄
(
なぶ
)
っているとでもいうように、男の腕を軽く指先でたたいた。
審判
(新字新仮名)
/
フランツ・カフカ
(著)
が、性来
愚鈍
(
ぐどん
)
な彼は、始終朋輩の
弄
(
なぶ
)
り物にされて、牛馬同様な
賤役
(
せんえき
)
に服さなければならなかった。
じゅりあの・吉助
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
勸
(
すゝ
)
むるが例なりと質朴にしてまた禮ありと
稱
(
たゝ
)
へ皆な快く汲む終りて梅花道人は足の
勞
(
つか
)
れ甚だしければ
按摩
(
あんま
)
を取らんとて
呼
(
よぶ
)
いろ/\
弄
(
なぶ
)
りて果は露伴子も揉ませながら
按摩
(
あんま
)
に年を
木曽道中記
(旧字旧仮名)
/
饗庭篁村
(著)
そうだ、道子は俺を
弄
(
なぶ
)
りものにしたのだ。夫が自分を愛していない、いじめて困る、とは何だ。俺に見せたあの痣! おお悪魔! 俺は其の時ほんとうに同情していたのだ。
彼が殺したか
(新字新仮名)
/
浜尾四郎
(著)
あの時分のことを思いますとほんとうに惨めなもので、私たち
母子
(
おやこ
)
は、涙の乾く
隙
(
ひま
)
とてもありませんでした。学校へ行くと皆が私を『
父
(
てて
)
なし児』だといって
弄
(
なぶ
)
りものにします。
無駄骨
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
つまり、晩春四月の大和路の濃い色彩に、狂乱し易い私の
頭脳
(
あたま
)
が
弄
(
なぶ
)
られていたのであった。
菜の花物語
(新字新仮名)
/
児玉花外
(著)
それはそのお婆さんがまたしても変な笑い顔をしながら近所のおかみさんたちとお
喋
(
しゃべ
)
りをしに出て行っては、
弄
(
なぶ
)
りものにされている——そんな場面をたびたび見たからだった。
のんきな患者
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
漆紋
(
うるしもん
)
の、野暮ったい
古帷子
(
ふるかたびら
)
の前を踏みひらいて毛脛を風に
弄
(
なぶ
)
らせ、れいの、眼の下一尺もあろうと思われる馬鹿長い顔をつんだして
空嘯
(
うそぶ
)
いているさまというものは、さながら
顎十郎捕物帳:14 蕃拉布
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
それともこの犬が偶然に手に入ったのを幸いに、知らん顔をして実験にかけて
弄
(
なぶ
)
り殺しに殺して、唖川小伯爵と山木テル子嬢の中を永久に
割
(
さ
)
こうという卑劣手段を講じているのか
超人鬚野博士
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
肩へ
捉
(
つか
)
まらせるやら、
萎
(
しな
)
びた乳房を
弄
(
なぶ
)
らせるやら、そんな風にして
付纏
(
つきまと
)
われるうちにも、何となくお種は女らしい満足を感じた。夫に捨てられた
悲哀
(
かなしみ
)
も、いくらか慰められて行った。
家:01 (上)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
「ご冗談でござりましょう。お見かけすればお小姓をお召し連れなさいまして、ご身分ありげなお殿様が、賽ころもねえものでごぜえますよ。いい加減なお
弄
(
なぶ
)
りはおよしなせえましな」
旗本退屈男:03 第三話 後の旗本退屈男
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
ミハイロの罪の無い笑声や、人の好ささうな
眼色
(
めつき
)
が皆の気に入つて、
弄
(
なぶ
)
らずに真面目に
事情
(
わけ
)
を聞出したから、仕事をさせて貰ひたいのだといふと、そんなら
己達
(
おれたち
)
の跡に
随
(
つ
)
いて来なと云ふ。
椋のミハイロ
(新字旧仮名)
/
ボレスワフ・プルス
(著)
若
(
も
)
し情談をいいかけられたら、こう、花を持たせられたら、こう、
弄
(
なぶ
)
られたら、こう
待遇
(
あしら
)
うものだ、など、いう事であるが、親の心子知らずで、こう
利益
(
ため
)
を思ッて、云い聞かせるものを
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
聡明な登山者よ、どうか俺たちなども、いたずらに
弄
(
なぶ
)
り物にしたり、金もうけの種にしたり、焚物に重宝がったりする段でなく、もっと高い精神的な面で、われわれへの理解と共感を深めて欲しい。
ある偃松の独白
(新字新仮名)
/
中村清太郎
(著)
「おほほほは、お客様、お
弄
(
なぶ
)
りなさいますな」
悪因縁の怨
(新字新仮名)
/
江見水蔭
(著)
なにもみんなで
弄
(
なぶ
)
らうたあ云やしない。
道遠からん 四幕:――または 海女の女王はかうして選ばれた――
(新字旧仮名)
/
岸田国士
(著)
そうでなく、犬の智能を人間の極く低い程度として見ると、こいつ意気地のない奴らしい、
弄
(
なぶ
)
ってやれと、面白がっているのかも知れぬ。
宮本武蔵:05 風の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
三十前後の顔はそれよりも
更
(
ふ
)
けたるが、鋭き眼の
中
(
うち
)
に言われぬ
愛敬
(
あいきょう
)
のあるを、客
擦
(
ず
)
れたる
婢
(
おんな
)
の一人は見つけ出して口々に友の
弄
(
なぶ
)
りものとなりぬ。
書記官
(新字新仮名)
/
川上眉山
(著)
「花ちやん、一つ松島君を操縦するの余力を以て」と河鰭の言ふを「そんな、お
弄
(
なぶ
)
りなさるなら、
否
(
い
)
や」とツンとスネる
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
「
癪
(
しゃく
)
に触って腹が立ってたまらぬ故、これからそちを駒井能登めに見立てて、この腹が納まるほど、
弄
(
なぶ
)
って弄って、弄りのめしてやるからそう思え」
大菩薩峠:13 如法闇夜の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
翁は身体を丘の芝に上から掴み押えられた窮屈な形を強いて保ちながら愕き以上のものに
弄
(
なぶ
)
られている。翁に僅に残っている頭の働きはこういうことを考えている。
富士
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
又そのようなことを言うてはお
弄
(
なぶ
)
りなさるか。その日の風にまかせて、きょうは東へ、あすは西へ、
大路
(
おおじ
)
の柳のように
靡
(
なび
)
いてゆく、そのやわらかい魂が心もとない。
玉藻の前
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
「あゝ
辛度
(
しんど
)
や。」と疲れた
状
(
さま
)
をして、薄くなつた髪を引ツ詰めに
結
(
ゆ
)
つた、小さな新蝶々の崩れを両手で直したお梶は、忙しさうに孫を抱き上げて、
萎
(
しな
)
びた乳房を
弄
(
なぶ
)
らしてゐた。
鱧の皮
(新字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
動くべきすべての姿勢を
調
(
ととの
)
えて、朝な夕なに、
弄
(
なぶ
)
らるる期を、待ち暮らし、待ち明かし、
幾代
(
いくよ
)
の
思
(
おもい
)
を
茎
(
くき
)
の先に
籠
(
こ
)
めながら、今に至るまでついに動き得ずに、また死に切れずに、生きているらしい。
草枕
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「ち、畜生ッ、うぬまでも来やがったかッ。後生だッ。後生だッ、もう勘弁してくれッ、この上斬るのは勘弁してくれッ。さっきヘゲタレと言ったのは、おれが悪かった。か、勘弁してくれッ。この上
弄
(
なぶ
)
り斬りするのは勘弁してくれッ」
旗本退屈男:04 第四話 京へ上った退屈男
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
棒の秘術は虎の
眸
(
め
)
のなかに奇異な幻覚を持たせたにちがいない。何十人もの人間の影がまわりにあって、じぶんを
弄
(
なぶ
)
るように見えたであろう。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
闇に身を任せ、われを忘れて見詰めていると闇に
艶
(
つやや
)
かなものがあって、その潤いと共に、心をしきりに
弄
(
なぶ
)
られるような気がする。お絹? はてな。これもまた何かの仕掛かな。
食魔
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
年のわかい彼はそれを口惜しがって、その意趣返しに一度相手を
弄
(
なぶ
)
ってやろうと思った。
半七捕物帳:18 槍突き
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
かわいそうに幸内は、主膳が酒乱の犠牲となって、
弄
(
なぶ
)
り
殺
(
ごろ
)
しにされなければ納まらないでしょう。弄り殺しにした上に、その屍骸を粉々にしなければ納まりそうにはありません。
大菩薩峠:13 如法闇夜の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
「私、いや、
貴女
(
あなた
)
はお
弄
(
なぶ
)
りなさるんだもの——」
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
『それが、拙者を
弄
(
なぶ
)
り物にした証拠だ。だが小夜どの、きのうは
他人
(
ひと
)
の身、今日はわが身。——天は公平だな、あははは』
夏虫行燈
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
しかし、どちらにしてもこうして置けば、この際、仲裁に出て、わが道庵先生の危急を救おうとするほどの勇者が現われるはずはないから、道庵はみすみす
弄
(
なぶ
)
り殺しになってしまう。
大菩薩峠:24 流転の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
肩にのり、膝にもたれ、子等は、自分たちの父を、意志のまま
弄
(
なぶ
)
ったり愛撫したり、容易に寝つこうともしなかった。
大岡越前
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
醜男
(
ぶおとこ
)
であったにも拘らず、美しいお女中を
口説
(
くど
)
いたところが、そのお女中には別に思う男があって
靡
(
なび
)
かない、それで殿様が残念がって、あの土蔵の中で
弄
(
なぶ
)
り
殺
(
ごろ
)
しにしてしまったという
大菩薩峠:17 黒業白業の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
「何としてそのようにお
弄
(
なぶ
)
り遊ばされる。新九郎近頃もって迷惑つかまつります。逃げたいなどという所存は」
剣難女難
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
弄
常用漢字
中学
部首:⼶
7画
“弄”を含む語句
嘲弄
玩弄
玩弄物
手弄
翻弄
玩弄品
翫弄
飜弄
戯弄
調弄
翫弄物
愚弄
弄花
弄斎節
弄殺
弄戯
弄物
弄品
如法玩弄
御弄
...