天晴あつぱれ)” の例文
君の御馬前に天晴あつぱれ勇士の名をあらはして討死うちじにすべき武士ものゝふが、何處に二つの命ありて、歌舞優樂の遊にすさめる所存の程こそ知られね。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
みぎ相濟あひすみ屑屋長八は娘お幸のもどりしを喜びやがむことりて小切店に商賣替しやうばいがへをなし家内益々繁昌はんじやうしけるとぞ又大橋文右衞門は心懸こゝろがけ天晴あつぱれなる者につき目を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
幼君えうくん其時そのとき「これにてよきか」とものたづねたまへり。「天晴あつぱれ此上このうへさふらふ」と只管ひたすらたゝへつ。幼君えうくんかさねて、「いかになんじこゝろかなへるか、」
十万石 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
げに天晴あつぱれなる廣言なるかな。逍遙子をばまことに何人もえ倒さゞるべし。後沒理想論をばまことに誰もえ破らざるべし。
柵草紙の山房論文 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
隆三は恩人に報ゆるにその短き生時せいじもつあきたらず思ひければ、とかくはその忘形見を天晴あつぱれ人と成して、彼の一日も忘れざりし志を継がんとせるなり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
ぬかれるね。いやはや、どうも、敵ながら天晴あつぱれな武芸者だ。あんたはたしかに忍びの術の心得があるね
佐太夫は天晴あつぱれ、粋の女王なり。然れども余は佐太夫を得て、明治文学の為に泣かざるを得ず。
此頃も奥様の御不在の節、私を御部屋へ御招おまねきになりまして、雪の紀念かたみの梅だから、何卒天晴あつぱれ婿むこを取らせたいと思ふんで、松島は少こし年を取過ぎてつは後妻と云ふのだから
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
その父は、半歳程経つて、近所に火事のあつた時、人先に水桶をつて会堂の屋根に上つて、足を辷らして落ちて死んだ。天晴あつぱれな殉教者だと口を極めて布教師は作松の徳を讃へた。
赤痢 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
ひとりとは面白し。汝も天晴あつぱれなる少年なり。我と共に法皇の護衞に入らずや。
天晴あつぱれ、汝チュウクロス、覇者テラモーンのいみじき子
イーリアス:03 イーリアス (旧字旧仮名) / ホーマー(著)
ても角ても叶はぬ命ならば、御所のいしずゑまくらにして、魚山ぎよさん夜嵐よあらしかばねを吹かせてこそ、りてもかんばしき天晴あつぱれ名門めいもん末路まつろなれ。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
とぢて控へたり此時名主なぬし甚左衞門進出て申す樣只今願のおもむ委細ゐさい承知しようち致したり扨々驚き入たる心底しんてい幼年には勝りし發明はつめい天晴あつぱれの心立なり斯迄思込おもひこみし事を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
舟の横浜を離るるまでは、天晴あつぱれ豪傑と思ひし身も、せきあへぬ涙に手巾しゆきんを濡らしつるを我れながら怪しと思ひしが、これぞなか/\に我本性なりける。
舞姫 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
ひとたび罪を犯しても、かうして悔悟して自殺を為たのは、実に見上げた精神だ。さうなけりや成らん、天晴あつぱれだぞ。それでこそ始て人間たるの面目めんもくが立つのだ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
しかるに御家來ごけらい天晴あつぱれ器量人きりやうじんさふらふとな、祝着しふぢやくまをす。さて其者そのもの取立とりたつるにきて、御懸念ごけねんのほども至極致しごくいたせり。
十万石 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
嗚呼過てり/\、弓矢ゆみやの家にまれし身の、天晴あつぱれ功名手柄して、勇士の譽を後世に殘すこそ此世に於ける本懷なれ。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
いとひなく是より兩人打連れ立ち松山さしてたどりけりに後藤秀盛の仁勇天晴あつぱれの武士と謂つべし扨又五左衞門は道すがら種々の物語りをなし半四郎の樣子を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
又お前にしても、学問を仕上げて、なう、天晴あつぱれの人物に成るのが第一の希望のぞみであらう。その志をげさへ為れば、宮と一所になる、ならんはどれ程の事でもないのだ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
文久二年に鹿太は十五歳で元服して、額髪ひたひがみり落した。骨組のたくましい、大柄な子が、大綰総おほたぶさに結つたので天晴あつぱれ大人おとなのやうに見えた。通称四郎左衛門、名告なのり正義まさよしとなつた。
津下四郎左衛門 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
旅順りよじゆん吉報きつぱうつたはるとともに幾干いくばく猛將まうしやう勇士ゆうしあるひ士卒しそつ——あるひきずつきほねかは散々ちり/″\に、かげとゞめぬさへあるなかをつと天晴あつぱれ功名こうみやうして、たゞわづかひだり微傷かすりきずけたばかりといたとき
雪の翼 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
刮目くわつもくして待つてると、みやこはななる者が出た、本も立派りつぱなれば、手揃てぞろひでもあつた、さうして巻頭くわんたう山田やまだの文章、にくむべきてきながらも天晴あつぱれ書きをつた、かれの文章はたしかに二三だん進んだと見た
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
太吉は天晴あつぱれ気を利かした積りで主人に言つた。
金貨 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)