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執念
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しゅうね
ふりがな文庫
“
執念
(
しゅうね
)” の例文
やがて寺の門の空には、
這
(
は
)
い
塞
(
ふさが
)
った雲の間に、
疎
(
まばら
)
な星影がちらつき出した。けれども甚太夫は塀に身を寄せて、
執念
(
しゅうね
)
く兵衛を待ち続けた。
或敵打の話
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
雨月 さらでも
女子
(
おなご
)
は罪ふかいと聞いたるに、源氏を
呪詛
(
のろい
)
の
調伏
(
ちょうぶく
)
のと、
執念
(
しゅうね
)
く思いつめられたは、あまりと云えばおそろしい。
平家蟹
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
一体が何事にも
執念
(
しゅうね
)
く、些細な日常瑣事にすら余りクドクド言い過ぎる難があるが、不思議に失明については
思切
(
おもいきり
)
が
宜
(
よ
)
かった。
八犬伝談余
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
と
執念
(
しゅうね
)
く争いて中川を
凹
(
へこ
)
まさんとするは子爵家の姫君に対して
窃
(
ひそか
)
に野心ありと見えたり。他の人々もこの問答を面白く感じぬ。
食道楽:冬の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
有恁
(
かくて
)
予は憐むべき美少年の為に、
咒詛
(
のろい
)
の釘を
抜棄
(
ぬきす
)
てなんと試みしに、
執念
(
しゅうね
)
き鉄槌の一打は到底指の力の及ぶ所にあらざりき。
黒壁
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
▼ もっと見る
このわちきをももう
執念
(
しゅうね
)
くつけまわすようなことはせぬといいなましたので、つい清さんも気が迷うたのでござりましょう。
右門捕物帖:09 達磨を好く遊女
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
無雑作
(
むぞうさ
)
にか、そして子供達もまたうつかりそれを問ひただすでもなく……世にはそれ程でも無いことを
執念
(
しゅうね
)
く探り立てする人々があると同時に
秋の夜がたり
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
われら猿とは
古代
(
いにしえ
)
より、仲
悪
(
あ
)
しきものの
譬
(
たとえ
)
に呼ばれて、互ひに
牙
(
きば
)
を鳴らし合ふ身なれど、かくわれのみが彼の猿に、
執念
(
しゅうね
)
く狙はるる覚えはなし。
こがね丸
(新字旧仮名)
/
巌谷小波
(著)
「
人非人奴
(
にんぴにんめ
)
! 人非人奴! どれほどまで
執念
(
しゅうね
)
く
妾達
(
わたしたち
)
を、苦しめるのでございましょう。あゝ
口惜
(
くや
)
しい! 口惜しい!」
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
執念
(
しゅうね
)
く追い迫るスキャンダルの悪魔のささやきのようなささやき声の「ナッシンバッタテーラ」が繰り返される。
音楽的映画としての「ラヴ・ミ・トゥナイト」
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
このおおどかな
梵音
(
ぼんおん
)
が山中をゆさぶって、木の根に巣をくう虫けらまで仏願に
喰
(
く
)
い入るほども鳴りひびいたに、まだ
執念
(
しゅうね
)
く呪いをかけようというのだな。
道成寺(一幕劇)
(新字新仮名)
/
郡虎彦
(著)
葉子は涙を流さんばかりになって
執念
(
しゅうね
)
くソップを飲ませようとした結果、貞世はそこにあったソップ
皿
(
ざら
)
を
臥
(
ね
)
ていながらひっくり返してしまったのだった。
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
時々振り返って背後を見ると、ボッと黒い人影が、二間の彼方から足音を忍ばせ、どこまでも
執念
(
しゅうね
)
く追って来た。
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
僕をして
執念
(
しゅうね
)
く美くしい人に
附纏
(
つけまつ
)
わらせないものは、まさにこの酒に
棄
(
す
)
てられた淋しみの障害に過ぎない。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
かくまでも
昨日
(
きのう
)
の
奇
(
く
)
しき
懊悩
(
なやみ
)
が
自分
(
じぶん
)
から
離
(
はな
)
れぬとして
見
(
み
)
れば、
何
(
なに
)
か
訳
(
わけ
)
があるのである、さなくてこの
忌
(
いま
)
わしい
考
(
かんがえ
)
がこんなに
執念
(
しゅうね
)
く
自分
(
じぶん
)
に
着纒
(
つきまと
)
うている
訳
(
わけ
)
は
無
(
な
)
いと。
六号室
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
竜之助は左の手でそれを払い退けると、その男は
執念
(
しゅうね
)
く再び竜之助の膝にのたりつくのであります。
大菩薩峠:12 伯耆の安綱の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
すべての精と力と時間とを、お綱を手に入れることだけに
懸
(
かか
)
っている。無論、妻恋にあるお綱の家も、
執念
(
しゅうね
)
くうかがっていたのであるが、遂に今日までいい折がなかった。
鳴門秘帖:02 江戸の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
押返して訊いても
執念
(
しゅうね
)
く口を
噤
(
つぐ
)
んで、よそ目には意地悪く見えるような表情を口端に
漂
(
ただよ
)
わせた。
入江のほとり
(新字新仮名)
/
正宗白鳥
(著)
振り上げられた二の腕の鮮かな白さが、うめき声を上げながらも、なお
執念
(
しゅうね
)
く目に残った。
お小姓児太郎
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
いろいろ窮状を
談
(
はな
)
して
執念
(
しゅうね
)
く頼んでみたが、旅の者ではあり、なおさら身元の引受人がなくてはときっぱり断られて、手代や小僧がジロジロ
訝
(
いぶか
)
しそうに見送る冷たい衆目の中を
世間師
(新字新仮名)
/
小栗風葉
(著)
それからというもの私は、もしやしたら父と
悪疫
(
えやみ
)
との間に、何か不思議なつながりがあるのではないか——ないかないかと、それのみをただ
執念
(
しゅうね
)
く考えつめるようになりました。
紅毛傾城
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
その目はもの珍しげに、
執念
(
しゅうね
)
くわたしをじろじろ見廻している。冷たい無関心な、まるで縁もゆかりもないような気むずかしい目つきで、それを見ていると重苦しい気持ちになる。
地下生活者の手記
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
「梅子は自分を愛している、少くとも自分が梅子を
恋
(
こい
)
ていることを不快には思っていない」との一念が
執念
(
しゅうね
)
くも細川の心に
盤居
(
わだか
)
まっていて彼はどうしてもこれを否むことが出来ない
富岡先生
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
弾丸がシュッ、シュッ! と彼等が行くさきへ
執念
(
しゅうね
)
くつきまとって流れて来た。
橇
(新字新仮名)
/
黒島伝治
(著)
貧乏神
(
びんぼうがみ
)
に
執念
(
しゅうね
)
く
取憑
(
とりつ
)
かれたあげくが死神にまで憑かれたと自ら思ったほどに浮世の
苦酸
(
くさん
)
を
嘗
(
な
)
めた男であったから、そういう感じが起ると同時にドッコイと
踏止
(
ふみとど
)
まることを知っているので
鵞鳥
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
花は
尚
(
なお
)
も
執念
(
しゅうね
)
く奈落に落ちた日を見ようと、地を向いて突立っていた。
僧
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
余は
執念
(
しゅうね
)
く見つづけるであろう
死の淵より
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
執念
(
しゅうね
)
くも春寒き日の続きけり
六百五十句
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
が、心から捌けて
洒落
(
しゃらく
)
であったかというと実は余り洒落でなかった。
些細
(
ささい
)
な事を
執念
(
しゅうね
)
く気に掛けて
何時
(
いつ
)
までも根に葉に持つ神経質であった。
硯友社の勃興と道程:――尾崎紅葉――
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
彼はそう云う苦痛の中にも、
執念
(
しゅうね
)
く
敵打
(
かたきうち
)
の望を忘れなかった。喜三郎は彼の
呻吟
(
しんぎん
)
の中に、しばしば
八幡大菩薩
(
はちまんだいぼさつ
)
と云う言葉がかすかに洩れるのを聞いた。
或敵打の話
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
就中
(
なかんずく
)
重隆が
執念
(
しゅうね
)
き復讐の
企
(
くわだて
)
にて、意中の人の銃殺さるるを、目前我身に見せしめ、当時の無念禁ずるあたわず。
琵琶伝
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
(どうしてあの男はそれほどの
因縁
(
いんねん
)
もないのに
執念
(
しゅうね
)
く付きまつわるのだろうと葉子は
他人事
(
ひとごと
)
のように思った)
或る女:1(前編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
行く末の見込みある若者じゃと思うて、わしもこれまでいろいろに丹精してみたが、お身は
執念
(
しゅうね
)
く
怪異
(
あやかし
)
に
憑
(
つ
)
かれている。お身のおもてに現われた死相はどうでも離れぬ。
玉藻の前
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
寒さと闇と死と恐れとが、——それも誰にも知られずに、
執念
(
しゅうね
)
く巣喰っているばかりであった。
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
天満組
(
てんまぐみ
)
の一部の者や、また江戸方の
隠密
(
おんみつ
)
中に、
執念
(
しゅうね
)
く目をつけている
輩
(
やから
)
がありますとやら
鳴門秘帖:01 上方の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
どうかして、やってもらいたいと思いながら、
執念
(
しゅうね
)
く父と母とにせびり立てました。
勝負事
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
茶袋は
執念
(
しゅうね
)
く談じつける。店の者はそれを
謝絶
(
ことわ
)
るに
困
(
こう
)
じているらしくあります。
大菩薩峠:17 黒業白業の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
そして、雪の中を
執念
(
しゅうね
)
くかきさがしていた。
渦巻ける烏の群
(新字新仮名)
/
黒島伝治
(著)
お前達が少し
執念
(
しゅうね
)
く泣いたりいがんだりする声を聞くと、私は何か残虐な事をしないではいられなかった。
小さき者へ
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
頭領は
執念
(
しゅうね
)
く云うのであった。旅の侍と女とは二言三言
囁
(
ささや
)
いた後、渋々彼らへ近寄って来た。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
私はこれを聞いた時には、陽気なるべき
献酬
(
けんしゅう
)
の間でさえ、もの思わしげな三浦の姿が
執念
(
しゅうね
)
く眼の前へちらついて、義理にも賑やかな笑い声は立てられなくなってしまいました。
開化の良人
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
彼女
(
かれ
)
めが正体をあらわして飛び去るときに、憎いと思うものをとり殺していく。それはさもありげなことじゃが、なぜそれほどに衣笠どのに
執念
(
しゅうね
)
く禍いするか、それが判らぬ。
玉藻の前
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
つけた
土寇
(
どこう
)
の徒が、なお
尾
(
つ
)
け狙うているとみえる。弱味を見せると、
足下
(
あしもと
)
を見て、よけいに
執念
(
しゅうね
)
く寄って来るのは彼らの持前。——三十郎も与次郎も、ここよりは、辺りの土賊どもを——
新書太閤記:08 第八分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
割膝にわが小さき体
引挟
(
ひっぱさ
)
みて、渋面つくるが
可笑
(
おかし
)
とて、しばしば血を吸いて、小親来て、わびて、引放つまでは
執念
(
しゅうね
)
く放たざりし
寛闊
(
かんかつ
)
なる笑声の、はじめは恐しかりしが、
果
(
はて
)
は懐しくなりて
照葉狂言
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
が、大男は
執念
(
しゅうね
)
く彼を放さなかった。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
その新聞にこんな記事が現われるのは意外でもあり当然でもあった。田川夫人という女はどこまで
執念
(
しゅうね
)
く卑しい女なのだろう。田川夫人からの通信に違いないのだ。
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
「じゃ聞いてくれ。迷惑だろうが、聞いてくれ。」と、
執念
(
しゅうね
)
くさっきの話を続け出した。
路上
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
執念
(
しゅうね
)
く切りかかるお吉の鎌を左右に辛く外しながらほとんど心はここになかった。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
「はて、
執念
(
しゅうね
)
い和郎じゃ。そうよのう」
玉藻の前
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
その木部の目は
執念
(
しゅうね
)
くもつきまつわった。しかし葉子はそっちを見向こうともしなかった。そして二等の切符でもかまわないからなぜ一等に乗らなかったのだろう。
或る女:1(前編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
“執念”の意味
《名詞》
執 念(しゅうねん)
深く思い込み、片時も忘れない心。
(出典:Wiktionary)
執
常用漢字
中学
部首:⼟
11画
念
常用漢字
小4
部首:⼼
8画
“執念”で始まる語句
執念深