こく)” の例文
孝孺おおいに数字を批して、筆を地になげうって、又大哭たいこくし、かつののしり且こくして曰く、死せんにはすなわち死せんのみ、しょうは断じて草す可からずと。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
其父そのちちたたかひて(七三)くびすめぐらさずして、つひてきせり。呉公ごこういままた其子そのこふ。せふ(七四)其死所そのししよらず。ここもつこれこくするなり
東海に郭純かくじゅんという孝子があった。母をうしなって彼は大いにこくした。その哭するごとに、鳥の群れがたくさん集まって来るのである。
思い出したように肩をふるわせている若い女を見て、彼ははじめて、沈うつな——こくするような顔で別れた玉目三郎をおもいだしたのである。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
轔々りんりん蕭々しょうしょう行人こうじん弓箭きゅうせん各腰にあり。爺嬢やじょう妻子走って相送り、塵埃じんあい見えず咸陽橋かんようきょう。衣をき足をり道をさえぎこくす。哭声ただちに上って雲霄うんしょうおかす。
将来の日本:04 将来の日本 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
天にこくし、地に訴えたいのか。子の清盛も、聞き飽いているが、要約すれば、およそ次のようなことらしい。
戚の城に入るのでさえ、喪服をまとい父の死をこくしつつ、土地の民衆の機嫌をとりながらはいらなければならぬ始末であった。事の意外に腹を立てたが仕方が無い。
盈虚 (新字新仮名) / 中島敦(著)
多恨のダビデが歌ふて「ギルボアの山よ、願はくは汝の上に雨露あめつゆ降ることあらざれ、亦供物そなへもの田園はたもあらざれ、彼処かしこに勇士の干棄たてすてらるればなり」とこくせし山也。
星巌の忌日を或書には九月四日となしているが、鈴木松塘の『房山楼詩稿』に「横山舒公ノ信ニ接シ星巌先生九月二日ヲ以テ館舎ヲツト聞キ位ヲ設ケテコレヲこくス。」
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
あらあらしく頭を壁に押しつけてもがいた。ぶとんに顔をうずめてしばらく声をのんでこくした。
まぼろし (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
君自身これが染上そめあげをたすけ、君自身これを赤大根とののしる、無情なるも亦甚しいかな。君け、啾啾しうしう赤大根のこく、文壇の夜気を動かさんとするを。然れども古人言へることあり。
八宝飯 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
書くべき言葉を有つものでも無いと書いた。ただ、節子のためにこの無礼な手紙を残して行くと書いた。自分は遠い異郷に去って、激しい自分の運命をこくしたいと思うと書いた。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
白き人骨はいさごの表にあらはれて、これが爲めにこくするものは、只だ浪の音あるのみ。
すなわち虎を祖先と信じ虎をそこなうを忌み、虎肉を食うを禁じ、虎を愛養したり、虎の遺物を保存したり、虎の死をこくしたり礼を以て葬ったり、虎を敬せぬ者を罰したり、虎を記号徽章きしょうしたり
「無理です。それですから白楽天が歌いました、任土貢むしかくノ如クナランヤ、聞カズヤ人生ヲシテ別離セシム、老翁ハそんこくシ、母ハヲ哭ス……ある時、その道州へ陽城という代官が来ました」
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
なおしからざるを申せば、帝ふるき事を語りたまいて、なんじ亮にあらずというや、とおおす。亮胸ふさがりて答うるあたわず、こくして地に伏す。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
晏子あんし莊公さうこうし、これこくしてれいしかのちるにあたつて、所謂いはゆる(七二)さざるはゆうもの
それ村落の農夫の死するやなおこれがためにこくする者あり。しかして堂々たる大国の死するや天下の人みな冷眼に看過し知らざるがごときはなんぞや。
将来の日本:04 将来の日本 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
この凄じき厳冬の日、姪の墓前になんだをそそぎし我は、あくる今年の長閑のどかに静なる暮春のこのゆうべ、更にここに来りて父の墓にこくせんとは、人事畢竟ひっきょう夢の如し。
父の墓 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
森春濤の『詩鈔』に「松隠先生ヲこくス。」と題する七言律詩一首がある。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
武男は墓標の前に立ちわれを忘れてやや久しくこくしたり。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
わが児家に啼きこくして
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
四年応文おうぶん西平侯せいへいこうの家に至り、とどまること旬日、五月いおり白龍山はくりゅうざんに結びぬ。五年冬、建文帝、難に死せる諸人を祭り、みずから文をつくりてこれこくしたもう。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
めに(七二)これふ。そつははこれいてこくす。ひといはく、『そつにして將軍しやうぐんみづか其疽そのしよふ。なんこくするをす』と。ははいはく、『しかるにあらず。往年わうねん呉公ごこう其父そのちちふ。 ...
ゆえに貴族世界の第一義は他を損して己れを利するの一点にして、他を泣かしむるは己れ笑わんがためなり。他を顛ぜしむるは己れ舞わんがためなり。他をこくせしむるは己れ歌わんがためなり。
将来の日本:04 将来の日本 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
イヤ、それよりも同じ章の別の条に、「伯魚の母死す、期にして而してなおこくす」の文によれば、伯魚の母即ち孔子の妻も、吾が聖人孔夫子こうふうしに去られたことは分明である。
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
伯魚が出母の死に当り期にしてなおこくせるは、自然であるが、孔子が幵官氏を出し玉うたのは、因縁不和とよりそれがしには合点がならぬ。聖人の徳、家をととのうるに足らなかったとは誰も申し得ぬ。
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)