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呆気
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あっけ
ふりがな文庫
“
呆気
(
あっけ
)” の例文
旧字:
呆氣
張子の見越しの入道を引っくり返すと、その中から飛出した平次、
呆気
(
あっけ
)
に取られた群衆の肩を踏んで、パッと青竹の手摺を飛越すと
銭形平次捕物控:005 幽霊にされた女
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
そして私へは構わずに
亭
(
ちん
)
を離れて歩き出した。私はしばらく
呆気
(
あっけ
)
にとられ老人の姿を見送っていたが気がついて
背後
(
うしろ
)
から声をかけた。
沙漠の古都
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
また、私は木蔭の路をウェッシントン夫人と話しながら歩いていたので、往来の人たちは
呆気
(
あっけ
)
に取られていたこともたびたびあった。
世界怪談名作集:12 幻の人力車
(新字新仮名)
/
ラデャード・キプリング
(著)
わたしも立ち上がって、毛糸の束と毬とを窓がまちに載せると、そこを出て客間へ入ったが、途端に
呆気
(
あっけ
)
にとられて棒立ちになった。
はつ恋
(新字新仮名)
/
イワン・ツルゲーネフ
(著)
米友がここでもまた、
呆気
(
あっけ
)
に取られてしまいました。自分になついて来たと思ったのは、飛んだお門違いの
己惚
(
うぬぼれ
)
——問題は熊の皮だ。
大菩薩峠:30 畜生谷の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
▼ もっと見る
クリストフは
呆気
(
あっけ
)
に取られて聞いていた。実際、感嘆すべき点が多かった。コリーヌ自身も、自分の言葉を聞きながら感嘆していた。
ジャン・クリストフ:06 第四巻 反抗
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
そうして、自分の駈けて来た方角を狐のように幾たびか見まわしているのを、橋番のおやじは
呆気
(
あっけ
)
に取られたようにながめていた。
放し鰻
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
二人はこの男の意外な行動にちょっと
呆気
(
あっけ
)
にとられましたが、そうなると、もう意地ずくです。全身がぴんと職業的に緊張してきます。
祭の夜
(新字新仮名)
/
平林初之輔
(著)
彼は世人に文学の神様などと称せられているのであるが、このピントの狂った心配に
呆気
(
あっけ
)
にとられたのは私一人ではなかったであろう。
咢堂小論
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
私は
呆気
(
あっけ
)
に取られた。きっと取り返されるのかも知れないと思った。それでも、仕方がないので、壁から
剥
(
は
)
がして来て彼に渡した。
再度生老人
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
保吉は
呆気
(
あっけ
)
にとられたなり、しばらくは「御用ですか?」とも何とも言わずに、この
処子
(
しょし
)
の
態
(
さま
)
を帯びた老教官の顔を見守っていた。
十円札
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
取残された兼太郎は
呆気
(
あっけ
)
に取られて、寒月の光に若い男女が
互
(
たがい
)
に手を取り肩を摺れ
合
(
あわ
)
して行くその
後姿
(
うしろすがた
)
と地に
曳
(
ひ
)
くその影とを見送った。
雪解
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
咄嗟
(
とっさ
)
の動作だったので、貞之助は
呆気
(
あっけ
)
に取られたが、次の瞬間に、今の紳士が奥畑であったと心付くと、彼も
直
(
す
)
ぐあとから廊下へ出た。
細雪:02 中巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
庸三は
呆気
(
あっけ
)
に取られて見ていたが、彼女はそれでも飽き足らず、上へあがってマッチを取ると、再び庭へおりて火をつけはじめた。
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
なるほど
先刻
(
さっき
)
と、彼のいうとおり少しも変っていない。死体がうごく——と、
呆気
(
あっけ
)
にとられた私にアル・ニン・ワは言い続ける。
人外魔境:08 遊魂境
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
自分たちのまわりの人間が、祖国にたいしてあまりにも無関心なようすをしているのに、
呆気
(
あっけ
)
にとられたことにもよるのである。
キャラコさん:04 女の手
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
呆気
(
あっけ
)
に取られて目も放さないで
目詰
(
みつ
)
めて居ると、雪にも
紛
(
まが
)
ふ
頸
(
うなじ
)
を
差
(
さし
)
つけ、くツきりした
髷
(
まげ
)
の根を見せると、
白粉
(
おしろい
)
の
薫
(
かおり
)
、
櫛
(
くし
)
の歯も
透通
(
すきとお
)
つて
処方秘箋
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
「なにを探しているんだ、赤星君」
呆気
(
あっけ
)
にとられていた尾形警部が声をかけましたが、探偵は口の中で返事をしたばかりであったのです。
赤耀館事件の真相
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
ロッティは
呆気
(
あっけ
)
にとられた形でした。室内があまりにみすぼらしく、世の中からあまりかけ離れた所のように思えたからでした。
小公女
(新字新仮名)
/
フランシス・ホジソン・エリザ・バーネット
(著)
小池助手は、名探偵とも云われる人の、余りの子供らしさに、
呆気
(
あっけ
)
にとられたが、ふと気がつくと、それには何か訳がありそうであった。
悪魔の紋章
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
「…………」
呆気
(
あっけ
)
に取られた私が、急いで扉を排した時に、
一瞥
(
ひとめ
)
でなぜ太子がああも急いでいられたかが飲み込めた気持がした。
ナリン殿下への回想
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
医師が出て行ったのにまったく
呆気
(
あっけ
)
に取られて、パイプを口から取り出したまま、それをまた口に
啣
(
くわ
)
えるのもすっかり忘れたほどだった。
宝島:02 宝島
(新字新仮名)
/
ロバート・ルイス・スティーブンソン
(著)
そういうと、
呆気
(
あっけ
)
にとられている甲子雄を
後目
(
しりめ
)
に、玄関へ出ていった兵馬、——何か安吉にいいつけてすぐに戻ってくると、座につくなり
初午試合討ち
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
短くして、
呆気
(
あっけ
)
ないのは、私も知っている、しかしシャスタ山は、我が富士山の如く、登る山であるが、同時に眺望する山だ。
火と氷のシャスタ山
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
若い美しい夫人の何処に、そうした大胆な、人を人とも思わないような強い所があるのかと、信一郎はたゞ
呆気
(
あっけ
)
に取られている
丈
(
だけ
)
であった。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
周平は暫し
呆気
(
あっけ
)
にとられた。が俄にぎくりとした。保子のことが頭の中に閃いた。それをじっと押えつけて、静かに云った。
反抗
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
私がこうして瀬川を
罵
(
ののし
)
っている間じゅう、宿の女中が
呆気
(
あっけ
)
にとられて聞いていた。私はしかしそれをも何とも思わなかった。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
僕は君、悲しいなんていうところを
通越
(
とおりこ
)
して、
呆気
(
あっけ
)
に取られて
了
(
しま
)
いました——まるで暴風にでも、自分の子供を
浚
(
さら
)
って持って行かれたような——
家:02 (下)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
ところがその年の暮には
呆気
(
あっけ
)
なく遼東半島を
清国
(
しんこく
)
に還付している。しかも今度はその、同じ旅順に半年の歳月と何十万の人命をかけているのです。
女の一生
(新字新仮名)
/
森本薫
(著)
廊下を通りかかった女中が
吃驚
(
びっくり
)
したらしく
襖
(
ふすま
)
を開けたが、
木乃伊
(
ミイラ
)
親爺の二の腕に付いてる濡れた歯型を見ると、
呆気
(
あっけ
)
に取られたまま突立っていた。
超人鬚野博士
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
金五郎が、
呆気
(
あっけ
)
に取られていると、あたりの繁みがざわついて、五六人の黒い人影があらわれた。金五郎を取り巻いた。
花と龍
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
少女はそこに一人きり取り残されて、しばらく
呆気
(
あっけ
)
にとられているように見えたが、やがて彼女も彼のあとを追った。
あいびき
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
銀二郎君は
呆気
(
あっけ
)
に取られた。ついて行ったが、師匠は茶の間へ入って、襖を手荒く締めた。その辺をウロ/\していたら、奥さんが慌てゝ出て来た。
心のアンテナ
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
山中君は怖いと云うよりもただ
呆気
(
あっけ
)
にとられてそれを見つめていた。と、二三分も経ったかと思う比、その足が
烟
(
けむり
)
のようにだんだんと消えてしまった。
天井からぶらさがる足
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
然し、初めて、一旦死んだ家兎を極めて簡単に甦らせ得た私たちは、あまりに
呆気
(
あっけ
)
ない思いをしながらも、嬉しさに研究室の中を飛び廻ったものです。
人工心臓
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
男は不審な顔付になって、月の光に相手の
面輪
(
おもわ
)
を
透
(
すか
)
し見ました。そして
呆気
(
あっけ
)
にとられて手の種ヶ島を取落しました。
艶容万年若衆
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
「葛岡さんもお達者でね」葛岡は、たゞ
呆気
(
あっけ
)
に取られています。わたくしは、渚の氷を踏み壊し、地団太踏んで
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
ところがこの立派な法王の宮殿を見て
恟然
(
びっくり
)
呆気
(
あっけ
)
に取られ、これは神の国の御殿ではないか知らんと
暫
(
しばら
)
くはぽかんとして
見惚
(
みと
)
れて居ったがふと気が付いて
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
と、思いながら、白ずくめの行人姿は、しばらく
呆気
(
あっけ
)
にとられていました。いうまでもなく、彼は
相良
(
さがら
)
金吾です。
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
余は
呆気
(
あっけ
)
にとられた。八年前
秋雨
(
あきさめ
)
の寂しい日に来て見た義仲寺は、古風な
巷
(
ちまた
)
に
嵌
(
はさ
)
まって、小さな趣ある
庵
(
いおり
)
だった。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
留守宅に社は解散したから明日から出社に及ばないという葉書が届いているんだから
呆気
(
あっけ
)
に取られてしまった。
三十年前の島田沼南
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
千恵は
呆気
(
あっけ
)
にとられました。といふより、何か
金槌
(
かなづち
)
のやうなもので脳天をガアンとやられたやうな気持でした。
死児変相
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
鐘塔には
呆気
(
あっけ
)
に取られた番人が威厳と
狼狽
(
ろうばい
)
とをごっちゃにした態度で、煙草を吹かしながら腰をかけていた。
鐘塔の悪魔
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
同志H21に
現
(
うつつ
)
をぬかしているはずの英少佐エリク・ヘンダスンだから、一同おやっと
呆気
(
あっけ
)
に取られている。
戦雲を駆る女怪
(新字新仮名)
/
牧逸馬
(著)
三女のフサエは魚問屋の息子に望まれて半ばさらわれるような形で、姉のカヤノよりも先に嫁入ったのであったが、一年もたたぬ間に
呆気
(
あっけ
)
なく死んでしまった。
暦
(新字新仮名)
/
壺井栄
(著)
支配人
(
バー・テン
)
はそう云って、意地悪そうに笑うと、
呆気
(
あっけ
)
にとられている警部達を残して、
階下
(
した
)
へ降りて行った。
銀座幽霊
(新字新仮名)
/
大阪圭吉
(著)
私は
呆気
(
あっけ
)
にとられた。ところへ、山岡が小走りに走ってきて、これも甚だ語気鋭く私の顔を仰ぎ見て
縁談
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
Tもさすがに
呆気
(
あっけ
)
に取られたさまで、ぼんやり見やっていたが、敗けん気を出して浪子夫人のあとから鎖につかまって乗りだしてみたが二足と先きへは進めなかった。
遊動円木
(新字新仮名)
/
葛西善蔵
(著)
ぼくには、大きな体の丹智さんが、
呆気
(
あっけ
)
にとられ、
坐
(
すわ
)
りもならず、立っているのが、その時には、ほんとうにお気の毒でした。いつもなら、
無邪気
(
むじゃき
)
に笑えたでしょう。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
呆気
(
あっけ
)
に取られたるお代嬢「嘘だんべい、何ぼ東京だって今の間にあんな物を盗んで行く訳がねい」下女「だっても油断はなんねいから早く往って家の中を見さっせい」
食道楽:秋の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
“呆気”の意味
《名詞》
(多く以下の形で)驚き、呆れること。また、そのようなさま。
(出典:Wiktionary)
呆
漢検準1級
部首:⼝
7画
気
常用漢字
小1
部首:⽓
6画
“呆”で始まる語句
呆
呆然
呆氣
呆痴者
呆返
呆然自失
呆痴
呆乎
呆々
呆作