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初秋
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はつあき
ふりがな文庫
“
初秋
(
はつあき
)” の例文
かねてから、範宴の宿望であった
大和
(
やまと
)
の法隆寺へ遊学する願いが、中堂の総務所に聴き届けられて、彼は、この
初秋
(
はつあき
)
を、旅に出た。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
折から
初秋
(
はつあき
)
の日は暮るるになんなんとして流しの上は天井まで一面の湯気が立て
籠
(
こ
)
める。かの化物の
犇
(
ひしめ
)
く
様
(
さま
)
がその間から
朦朧
(
もうろう
)
と見える。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
独
(
ひと
)
り、
高
(
たか
)
く
時計台
(
とけいだい
)
は
青
(
あお
)
く
空
(
そら
)
に
突
(
つ
)
っ
立
(
た
)
って、
初秋
(
はつあき
)
の
星
(
ほし
)
の
光
(
ひかり
)
が
冷
(
つめ
)
たくガラスにさえかえっていました。
青い時計台
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
なかばはらんだ帆が夕日を受けてゆるやかにゆるやかに
下
(
くだ
)
って行くと、ようようとした
大河
(
たいか
)
の
趣
(
おもむき
)
をなした川の上には
初秋
(
はつあき
)
でなければ見られぬような白い大きな雲が浮かんで
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
ナンシイ市を過ぎて
仏蘭西
(
フランス
)
の国境を離れた汽車の中で二人は
初秋
(
はつあき
)
の
夜寒
(
よさむ
)
を詫びた。自分は三等室の冷たい板の腰掛の上で
良人
(
をつと
)
の膝を枕に足を
屈
(
かゞ
)
めて
辛
(
から
)
うじて横に成つて居た。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
▼ もっと見る
初秋
(
はつあき
)
の夜気が、しみ/″\と身うちに
環
(
めぐ
)
つて、何となく心持ちが引緊り、さあ「これからだぞ——」といふやうな気がするにつけても、訳もなく、灯とそれから人の匂ひが懐しい。
散歩
(新字旧仮名)
/
水野仙子
(著)
災害の来た一日はちょうど
二百十日
(
にひゃくとおか
)
の前日で、東京では早朝からはげしい風雨を見ましたが、十時ごろになると空も
青々
(
あおあお
)
とはれて、平和な
初秋
(
はつあき
)
びよりになったとおもうと、
午
(
ひる
)
どきになって
大震火災記
(新字新仮名)
/
鈴木三重吉
(著)
家
七室
(
ななま
)
霧にみなかす
初秋
(
はつあき
)
を山の
素湯
(
さゆ
)
めで
来
(
こ
)
しやまろうど
舞姫
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
初秋
(
はつあき
)
や
朝睡
(
あさい
)
の君に
御湯
(
みゆ
)
まゐる花売るくるま
門
(
かど
)
に待たせて
恋衣
(新字旧仮名)
/
山川登美子
、
増田雅子
、
与謝野晶子
(著)
初秋
(
はつあき
)
のいと
爽
(
さわ
)
やかに晴れたる日なりき。
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
やっと
間
(
ま
)
に
合
(
あ
)
ひし
初秋
(
はつあき
)
の
旅出
(
たびで
)
の汽車の
一握の砂
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
子別
(
こわかれ
)
過
(
す
)
ぎし
初秋
(
はつあき
)
の
牧羊神
(旧字旧仮名)
/
上田敏
(著)
初秋
(
はつあき
)
の
日脚
(
ひあし
)
は、うそ寒く、遠い国の方へ
傾
(
かたむ
)
いて、
淋
(
さび
)
しい山里の空気が、心細い夕暮れを
促
(
うな
)
がすなかに、かあんかあんと鉄を打つ音がする。
二百十日
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
静が、気がついてみると、
初秋
(
はつあき
)
八月の風が
萩叢
(
はぎむら
)
にふいていた。
笠
(
かさ
)
と杖とが手にあった。老母と共に鎌倉を立つ日であった。
日本名婦伝:静御前
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
あゝ
初秋
(
はつあき
)
の一夜! なんといふ新しい生々とした気分が二人に満ちてゐることだらう! 口には出さないがお互に同じ心持ちを感じあつて、人通りの少ない暗い道は手を握り合つて歩いた。
散歩
(新字旧仮名)
/
水野仙子
(著)
初秋
(
はつあき
)
の風が心地よく醒めた私を吹いた。広い水の堀割が前にある。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
わが前の河のなかばを白くして帆をうつしたる
初秋
(
はつあき
)
の船
註釈与謝野寛全集
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
実に明治十七年の
初秋
(
はつあき
)
なりき。
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
初秋
(
はつあき
)
の風
一握の砂
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
少
(
すこ
)
し
傾
(
かた
)
むきかけた
初秋
(
はつあき
)
の
日
(
ひ
)
が、じり/\
二人
(
ふたり
)
を
照
(
て
)
り
付
(
つ
)
けたのを
記憶
(
きおく
)
してゐた。
御米
(
およね
)
は
傘
(
かさ
)
を
差
(
さ
)
した
儘
(
まゝ
)
、それ
程
(
ほど
)
涼
(
すゞ
)
しくもない
柳
(
やなぎ
)
の
下
(
した
)
に
寄
(
よ
)
つた。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
おりから
初秋
(
はつあき
)
とはいえ、山の寒さはまたかくべつ、それにいちめん
朦朧
(
もうろう
)
として、ふかい
霧
(
きり
)
が山をつつんでいるので、いつか火縄もしめって、消えてしまった。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
初秋
(
はつあき
)
の
夜
(
よ
)
の
蚊帳
(
かや
)
は
錫箔
(
すゞはく
)
の
如
(
ごと
)
く冷たきを……
晶子詩篇全集
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
初秋
(
はつあき
)
の朝
一握の砂
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
少し傾むきかけた
初秋
(
はつあき
)
の日が、じりじり二人を照り付けたのを記憶していた。御米は傘を差したまま、それほど涼しくもない柳の下に寄った。
門
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
初秋
(
はつあき
)
の
小
(
ち
)
さき
篳篥
(
ひちりき
)
を吹くすいつちよよ
晶子詩篇全集
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
まずへっついの影にある
鮑貝
(
あわびがい
)
の中を
覗
(
のぞ
)
いて見ると案に
違
(
たが
)
わず、
夕
(
ゆう
)
べ
舐
(
な
)
め尽したまま、
闃然
(
げきぜん
)
として、怪しき光が引窓を
洩
(
も
)
る
初秋
(
はつあき
)
の日影にかがやいている。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
初秋
(
はつあき
)
の
小
(
ちひさ
)
き
篳篥
(
ひちりき
)
を吹くすいつちよよ。
そぞろごと
(旧字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
翌朝
(
あくるあさ
)
書斎の縁に立って、
初秋
(
はつあき
)
の庭の
面
(
おもて
)
を見渡した時、私は偶然また彼の白い姿を
苔
(
こけ
)
の上に認めた。私は
昨夕
(
ゆうべ
)
の失望を
繰
(
く
)
り
返
(
かえ
)
すのが
厭
(
いや
)
さに、わざと彼の名を呼ばなかった。
硝子戸の中
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
初秋
(
はつあき
)
の夜の蚊帳は
水銀
(
みづがね
)
の如く
冷
(
つめた
)
きを。
そぞろごと
(旧字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
是公の家の屋根から
突出
(
つきだ
)
した細長い塔が、
瑠璃色
(
るりいろ
)
の大空の一部分を黒く染抜いて、大連の
初秋
(
はつあき
)
が、内地では見る事のできない深い色の奥に、数えるほどの星を
輝
(
きら
)
つかせていた。
満韓ところどころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
初秋
(
はつあき
)
の野を越えて
晶子詩篇全集
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
弘法様
(
こうぼうさま
)
で花火の
揚
(
あが
)
った
宵
(
よい
)
は、縁近く寝床を
摺
(
ず
)
らして、横になったまま、
初秋
(
はつあき
)
の
天
(
そら
)
を
夜半近
(
やはんぢか
)
くまで見守っていた。そうして忘るべからざる二十四日の来るのを無意識に待っていた。
思い出す事など
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
初秋
(
はつあき
)
の夷隅川
晶子詩篇全集拾遺
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
すると
初秋
(
はつあき
)
の風が
芭蕉
(
ばしょう
)
の葉を動かして、
素肌
(
すはだ
)
に
吹
(
ふ
)
きつけた帰りに、読みかけた手紙を庭の方へなびかしたから、しまいぎわには四尺あまりの半切れがさらりさらりと鳴って、手を放すと
坊っちゃん
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
その時めらめらと火に化して舞い上る
紙片
(
かみきれ
)
を、津田は恐ろしそうに、竹の棒で
抑
(
おさ
)
えつけていた。それは
初秋
(
はつあき
)
の冷たい風が
肌
(
はだえ
)
を吹き出した頃の出来事であった。そうしてある日曜の朝であった。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
すると女が振り返った。明るい表の空気の中には、
初秋
(
はつあき
)
の緑が浮いているばかりである。振り返った女の目に応じて、四角の中に、現われたものもなければ、これを待ち受けていたものもない。
三四郎
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
“初秋”の意味
《名詞》
初 秋(しょしゅう はつあき)
秋の初めの頃。立秋過ぎあたりから9月中旬あたりまでを指すことが多いが、晩夏の時期とも重複する事も多い。はつあき。
陰暦七月。
(出典:Wiktionary)
初
常用漢字
小4
部首:⼑
7画
秋
常用漢字
小2
部首:⽲
9画
“初”で始まる語句
初
初心
初々
初手
初夏
初春
初陣
初午
初旬
初更