さま)” の例文
男たちはおのづからすさめられて、女のこぞりて金剛石ダイアモンド心牽こころひかさるる気色けしきなるを、あるひねたく、或は浅ましく、多少の興をさまさざるはあらざりけり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
それが一合あれば砂糖を適宜に加えて火にかけて水に漬けたゼラチン四枚を入れてさまします。乾杏ほしあんずの煮たのを汁ともに固めても出来ます。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
と涙も忘れて、胸も、空洞うつろに、ぽかんとして、首を真直まっすぐえながら潟のふなわんさまして、はしをきちんと、膝に手を置いたさま可哀あわれである。
卵塔場の天女 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
レールは、あつくなったからだを、はやみずびてさましたいとおもいました。また、はなは、はやく、みずってにそうなかわきをば、いやしたいとおもいました。
負傷した線路と月 (新字新仮名) / 小川未明(著)
新「お園どんお薬が出来たからお飲みなさい、あんまさますときかないから、丁度飲加減を持って来たが、あとは二番を」
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
牛乳をさまして置きますと薄く上へ張って来るクリーム、それを集めてその中に黒砂糖を入れたものであります。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
舟は我熱をさますに宜しからんとおもへば乘りぬ。舟人はさを取りて岸邊を離れ、帆を揚げて風に任せたるに、さゝやかなる端艇はぶねこゝろよく、紅の波をしのぎ行く。
次に手ばしこく蒲團をたたんで押入へ押籠む……夜の温籠ぬくもりは、二十日鼠はつかねづみのやうに動くお房のまほりと、中窓から入ツて來る大氣とにさまされて、其處らが廓然からりとなる。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
其時そのときかれうつくしいやまいろきよみづいろが、最初さいしよほど鮮明せんめいかげ自分じぶんあたま宿やどさないのを物足ものたらずおもはじめた。かれあたゝかなわかいだいて、そのほてりをさまふかみどりへなくなつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「さ、ちっとさましてから食うと美味うまいよ。芳ばしくて。——自分で焼いて見なさい」
一太と母 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
おふくろ煮団子ガルーシュキを少しさまさうと思つて大鍋から鉢へ小分けにして移してをりましたのさ。仕事の後で、皆んなひどく腹がへつてたもんだから、団子のさめるのが待ちきれなかつたんでさあね。
ただいづれかと云ふと僕はこの春の伊太利イタリイの未来派の絵の方に余計に同感せられる。仏蘭西フランスの其れは画家の詩でも音楽でもなく、画家の印象をさまして装飾画化してく嫌ひのあるのを不満に思ふ。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
河岸山 どこかで余温ほとぼりさましてから来る心算つもりか知れぬな。
一本刀土俵入 二幕五場 (新字新仮名) / 長谷川伸(著)
わづかにかく言ひ放ちて貫一はおごそかに沈黙しつ。満枝もさすがにゑひさまして、彼の気色けしきうかがひたりしに、例の言寡ことばすくななる男の次いでは言はざれば
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
一夜さましておいて明日召上る前に温めて出しますと肉の味としるの味とよく調和してく美味しい処が食べられます。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
そんなに、だらしなく意気地なく、色恋も、なさけも首尾も忘れたような空洞うつろになったも、燃立つ心をさまし冷し、うちを大事と思うばかり。その家だって私のじゃない。……
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
その時彼は美くしい山の色と清い水の色が、最初ほど鮮明な影を自分の頭に宿さないのを物足らず思い始めた。彼は暖かな若い血をいだいて、そのほてりをさます深い緑に逢えなくなった。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
吉原へ繰込みましては川岸かし遊びにヤッと熱をさましておりました。
... 湯煮ゆだった時鮎を取揚げて魚も汁も双方をさましておいてその魚へ今の冷えた汁をかけて出します」玉江嬢「そうでございますか。鮎には色々のお料理がございますね」
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
我命にも換へて最愛いとをしみし人はあくたの如く我をにくめるよ。恨は彼の骨に徹し、いかりは彼の胸をつんざきて、ほとほと身も世も忘れたる貫一は、あはれ奸婦の肉をくらひて、この熱膓ねつちようさまさんとも思へり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
つぶやきながら、湯呑にさましたりし茶を見るより、無遠慮に手に取りて
化銀杏 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
玉子はアクを取るためですから冷たい処へ入れなければなりません。何でも玉子でアクを取る時には一旦いったんさまして玉子を入れてよく掻き廻してそれからまた火へかけなければなりません。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
つきしづくさますのであらう。
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
それを少し煮たらブリキ型へ入れてさまして固めるのがゼリーです。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)