けん)” の例文
A院長エーいんちょうは、居間いまで、これから一ぱいやろうとおもっていたのです。そこへはばかるようなちいさい跫音あしおとがして、ぎの女中じょちゅうけん看護婦かんごふはいってきて
三月の空の下 (新字新仮名) / 小川未明(著)
吾輩も種取りけん人間研究のため、主人にして忍びやかにえんへ廻った。人間を研究するには何か波瀾がある時をえらばないと一向いっこう結果が出て来ない。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
その地にあるけん六公園の写真はかれの好奇心をひくに十分であった。友の成功を祝した手紙を書く時、かれは机に打っ伏して自己の不運に泣かざるを得なかった。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
雑誌もすで売品ばいひんつた以上いじやうは、売捌うりさばき都合つがふなにやで店らしい者が無ければならぬ、そこ酷算段ひどさんだんをして一軒いつけんりて、二階にかい編輯室へんしうしつ、下を応接所おうせつしよけん売捌場うりさばきぢやうてゝ
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
六月のすえ、尊氏は八幡やわたから西九条の東寺とうじへ移り、そこを総本陣、けん、本院新院の御所とした。
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
なにしろ会場における不満連ふまんれんの総大将けん黒幕くろまくとしてはルーズヴェルト氏みずか采配さいはいを取っているという始末しまつであるから、我々の考えでは珍事ちんじなしには終らぬと気遣きづかったのも
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
だい二の容疑者ようぎしゃは、金属きんぞくメッキ工場こうじょう技師ぎしけん重役じゅうやくであり、中内忠なかうちただしという工学士こうがくしだつたが、この人物じんぶつは、刈谷老人かりやろうじん高利こうりかねりていて、かなりくるしめられていたはずである。
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
一体いったいお由は、今戸町いまどまちに店を持っている相当手広い牛肉店加藤吉蔵かとうきちぞうめかけけん女房なのであった。
白蛇の死 (新字新仮名) / 海野十三(著)
按察大納言資賢あぜちのだいなごんすけかた、子息右近衛少将うこんえのしょうしょうけん讃岐守源資時さぬきのかみみなもとのすけとき参議皇太后宮権大夫さんぎこうたいこうぐうのごんのだいふけん右兵衛督藤原光能うひょうえのかみふじわらみつよし大蔵卿右京大夫おおくらきょううきょうのだいふけん伊予守高階泰経いよのかみたかしなやすつね蔵人左少弁くらんどのさしょうべんけん中宮権大進藤原基親ちゅうぐうのごんのだいしんふじわらもとちからがそれで
全くわるくないね。間数まかずはと? ぼく書斎しよさいけん用の客に君の居間ゐま食堂しよくだうに四でふ半ぐらゐの子ども部屋べやが一つ、それでたく山だが、もう一つ分な部屋へやが二かいにでもあれば申分なしだね。
(旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
マーキュ ただ一ごんでござるか? なにかおへなさい。一ごんけんげきとしたら如何どうぢゃ?
入り口の障子しょうじをあけると、二つぼほどないたがある。そこが病畜診察所びょうちくしんさつじょけん薬局やっきょくらしい。さらに入院家畜にゅういんかちく病室びょうしつでもあろう、犬のはこねこの箱などが三つ四つ、すみにかさねあげてある。
老獣医 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
帳面方ちょうめんかたけん会計は、大川時次郎であるが、留守なので、松本が代行している。
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
その日は向島の知人のうちで忘年会けん合奏会がありまして、私もそれへヴァイオリンをたずさえて行きました。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
この大牢の牢屋預かりけん首斬り役には、蔡福さいふく蔡慶さいけいといって、鬼の兄弟がいた。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ここはどうやら食堂けん喫煙室らしく、それと思わせるような什器じゅうきや家具が並んでいた。なんにせよ、どうも豪勢なものである。——若い警官は、相変らず彼の後について、室内へ入ってきた。
蠅男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
へやの入口には二階がついていて、その二階の手摺てすりから、余の坐っている所が一目に見下みおろされるような構造なんだから、つまるところは、余の頭の上が、一階の天井けん二階の天井である。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
上席には、応援役、けん目付として藩から来ている五名の侍。
銀河まつり (新字新仮名) / 吉川英治(著)
空気ぬきけんあかりとりの天窓が、天井に空いていた。
地底戦車の怪人 (新字新仮名) / 海野十三(著)
帰朝後の余も依然として神経衰弱にしてけん狂人のよしなり。親戚のものすら、これを是認するに似たり。親戚のものすら、これを是認する以上は本人たる余の弁解を費やす余地なきを知る。
『文学論』序 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
嫡男ちゃくなんの菊池武重を、肥後の守護職、けん、左京大夫に。
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
近所の建具屋に談判して寝台けん机として製造せしめたる稀代きたいの品物である。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
安西鎮東将軍けん尚書駙馬都尉、夏侯楙かこうもあざな子休しきゅう
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それから二人でベンチへ隣り合せに腰を掛けていると、だんだん停車場ステーションへ人が寄ってくる。大抵は田舎者いなかものである。中には長蔵さんのような袢天はんてんけんどてらを着た上に、天秤棒てんびんぼうさえかついだのがある。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
馬廻うままわけん使役つかいやくの、富森助右衛門とみのもりすけえもんであった。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)