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佇立
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ちょりつ
ふりがな文庫
“
佇立
(
ちょりつ
)” の例文
入って見るとさすがに気が
咎
(
とが
)
めた。それで入ったことは入ったが、私はしばらくはあの石の大きな水盤のところで
佇立
(
ちょりつ
)
したままでいた。
西班牙犬の家:(夢見心地になることの好きな人々の為めの短篇)
(新字新仮名)
/
佐藤春夫
(著)
と叫ぶ
甲
(
かん
)
高い声を聞いて、左膳は、何はともあれ脱出するのが目下の急務だから、
依然
(
いぜん
)
縁さきに
佇立
(
ちょりつ
)
する源十郎をしりめにかけて
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
初めて
其
(
そ
)
の
耦
(
ぐう
)
を
喪
(
うしの
)
うて
鰥居無聊
(
かんきょむりょう
)
、
復
(
また
)
出
(
い
)
でて遊ばず、
但
(
ただ
)
門に
倚
(
よ
)
つて
佇立
(
ちょりつ
)
するのみ。十五
夜
(
や
)
三
更
(
こう
)
尽きて
遊人
(
ゆうじん
)
漸
(
ようや
)
く
稀
(
まれ
)
なり。
丫鬟
(
あかん
)
を見る。
牡丹灯籠 牡丹灯記
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
「
忽
(
たちま
)
ち鳥の奇声を聞く。再び
闃
(
げき
)
として声無し。熱帯の白昼、却つて妖気あり。
佇立
(
ちょりつ
)
久しうして覚えず肌に粟を生ず。その故を知らず」
云々
(
うんぬん
)
。
環礁:――ミクロネシヤ巡島記抄――
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
必ずしも海の入日の前に散り乱るることを期せずとも、自然にそのような情景を催して、旅に
倦
(
う
)
みたる者をして
佇立
(
ちょりつ
)
せしめる。
雪国の春
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
▼ もっと見る
陛下のお椅子は、中央の
衝立
(
ついたて
)
を後ろにすえられ、左へ寄って、総理大臣が勲記と黒塗の箱とを各受章者へ手渡す一卓をおいて
佇立
(
ちょりつ
)
するわけ。
随筆 私本太平記
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
現在の
銭湯
(
せんとう
)
と同じ構造の浴室に
偏体疥癩
(
へんたいかいらい
)
の病人がうずくまり、十二ひとえに身を装うた皇后がその側に
佇立
(
ちょりつ
)
している図である。
古寺巡礼
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
教養の蓄積というさもしい性根を、一挙にして打ち砕くような
勁
(
つよ
)
さをもって
佇立
(
ちょりつ
)
していた。本来人間は
悉
(
ことごと
)
く仏性をもつはずだ。
大和古寺風物誌
(新字新仮名)
/
亀井勝一郎
(著)
紫の打紐のついた懐中時計を右の
掌
(
たなごころ
)
の上にのせながら、依然としてポンプの如く時間表の前に
佇立
(
ちょりつ
)
しているのである……
父
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
青年は、門の前で、ホンの一瞬の間、
佇立
(
ちょりつ
)
した。美奈子は、やっぱり通りがかりに、
一寸
(
ちょっと
)
邸内の容子を軽い好奇心から
覗
(
のぞ
)
くのではないかと思った。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
若僧はもの言いもてなお下手に歩み出づる時、あわただしげに
走
(
は
)
せ来たれる僧徒妙海と妙源とに行きあう。四者
佇立
(
ちょりつ
)
。
道成寺(一幕劇)
(新字新仮名)
/
郡虎彦
(著)
尾田はさっきから松林の中に
佇立
(
ちょりつ
)
してそれらの
灯
(
ひ
)
を眺めていた。悲しいのか不安なのか恐ろしいのか、彼自身でも識別できぬ異常な心の状態だった。
いのちの初夜
(新字新仮名)
/
北条民雄
(著)
するとその眼の底の網膜には、外界との境の壁や窓ガラスを除外して直接表庭の敷石の上に此方を向いて
佇立
(
ちょりつ
)
する大学生服の男の姿がはっきり映った。
春:――二つの連作――
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
ある者は言った、「
佇立
(
ちょりつ
)
してる縦隊である。」また多くの者は言った、「樹木である。」ただその雲はじっと動かないでいることだけは事実であった。
レ・ミゼラブル:05 第二部 コゼット
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
近づくに従って、一隊の警察官が停留場の前に
佇立
(
ちょりつ
)
しているのを認めた。丁度
誰何
(
すいか
)
した警官があったのを幸い、彼を案内に頼んで、その一行に近づいた。
蠅男
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
ややしばし、
佇立
(
ちょりつ
)
して心耳を澄ました米友が、釈然として次の如く、高らかにその歌詞と音調とを学びました。
大菩薩峠:40 山科の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
私は
茫然
(
ぼうぜん
)
として
佇立
(
ちょりつ
)
した。なぜ私の家だけが過去の
残骸
(
ざんがい
)
のごとくに存在しているのだろう。私は心のうちで、早くそれが
崩
(
くず
)
れてしまえば好いのにと思った。
硝子戸の中
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
彼は懐中電燈を消して、闇の中に
佇立
(
ちょりつ
)
した。それから、背を丸めて頸を前方へのばし、
呼吸
(
いき
)
を殺して聞き耳を
聳
(
た
)
てながら、じっと暖炉棚の方をのぞきこんだ。
空家
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
この物凄いほどの深夜の
寂寞
(
せきばく
)
を
瞶
(
みつ
)
めたまま、私はしばらく
佇立
(
ちょりつ
)
していたが、やがて溜息をして再び扉を閉めようとした途端、思わずギョッとして歩を止めた。
陰獣トリステサ
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
端然として
佇立
(
ちょりつ
)
したままスラスラと言葉を続けて行った。その青白い瞳で、静かに私を見下しながら……。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
はっと両腕で胸を抱き、
頸
(
くび
)
を内側に曲げたまま瞬間花田は
佇立
(
ちょりつ
)
したが、そのまま棒を倒すように前にのめり
磧
(
かわら
)
にたおれた。額が土にぶっつかる音が鈍く響いた。
日の果て
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
その暗き枝を透かして、向うに見える明るき山の色の
美
(
うるわ
)
しさは、この世のものではない。
暫
(
しばら
)
く
佇立
(
ちょりつ
)
したが、とても短い時間で写せそうもないので割愛して進んだ。
白峰の麓
(新字新仮名)
/
大下藤次郎
(著)
傍
(
そば
)
には、やはり三十を越えたばかりと見える洋装の男が、石像のごとく
佇立
(
ちょりつ
)
して、憐れむように
寝台
(
ベッド
)
の男を見つめている。彼もまた極めて立派な容貌の所有者である。
黄昏の告白
(新字新仮名)
/
浜尾四郎
(著)
煙草のけむりが
濛々
(
もうもう
)
と部屋に立ちこもり、誰か一こと言い出せば、どっと大勢のひとの笑いの浪が起って、和気あいあいの風景である。高須は、その入口に
佇立
(
ちょりつ
)
した。
火の鳥
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
阿賀妻は、そこに
佇立
(
ちょりつ
)
して、乗りこんで来る家中のものに一々
挨拶
(
あいさつ
)
をしていた。最初に邦夷が上って来た。何も云わず目礼して過ぎた。なかには気づかぬものもあった。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
さすがの親王もしばらくの間は茫然として
佇立
(
ちょりつ
)
しておられたが、忽ち悟るところあるが如く、手に持った剣を
抛
(
なげう
)
ち、法官に一礼の
後
(
の
)
ち、
踵
(
きびす
)
を
回
(
めぐ
)
らして自ら裁判所の拘留室へ赴かれた。
法窓夜話:02 法窓夜話
(新字新仮名)
/
穂積陳重
(著)
(特務曹長ピストルを擬したるまま
呆然
(
ぼうぜん
)
として
佇立
(
ちょりつ
)
す。大将ピストルを
奪
(
うば
)
う。)
饑餓陣営:一幕
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
丘の上にはいつの間にやら、清原ノ秀臣が
悄然
(
しょうぜん
)
として
佇立
(
ちょりつ
)
している………
なよたけ
(新字新仮名)
/
加藤道夫
(著)
程経
(
ほどへ
)
て僕らは起きた。それからなるべく寒くないように著込んで階段をのぼって行き、東方にむかう窓のところに
佇立
(
ちょりつ
)
して、いまだ黒く明け切らない、山脈の上の空がほんのりと黄色いのを見ていた。
リギ山上の一夜
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
黒上衣の、白
胴衣
(
チョッキ
)
の、
佇立
(
ちょりつ
)
した、密集した、幾段々になった
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
皓々
(
こうこう
)
とした発光体のような、純白な生物が
佇立
(
ちょりつ
)
していた。
娘煙術師
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
弦之丞も
黙然
(
もくねん
)
と、ふたりの見まもる山を見つめている。お綱は何かの感慨に
衝
(
う
)
たれて、白雲の流るる行く手に
佇立
(
ちょりつ
)
した。
鳴門秘帖:05 剣山の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そうして
愕然
(
がくぜん
)
として
佇立
(
ちょりつ
)
した。一列に並んでいる古い銅像と黒い柱との間に、西壁の阿弥陀が明るく浮き出して、手までもハッキリと見えている。
古寺巡礼
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
紅蓮
(
ぐれん
)
の炎のなかに
佇立
(
ちょりつ
)
する諸々の像が、まさに熱火に崩れ落ちんとして、最後の荘厳を現出したであろう日を思う。
大和古寺風物誌
(新字新仮名)
/
亀井勝一郎
(著)
それは一種陰惨な不動の群れであって、水の流れの中にある石のようにして行ききする人々の間に
佇立
(
ちょりつ
)
していた。
レ・ミゼラブル:07 第四部 叙情詩と叙事詩 プリューメ街の恋歌とサン・ドゥニ街の戦歌
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
貧乏徳利を片手にさげて半ば眼をつぶり、身体ここにあって心は遠く旅しているがごとく、ただボンヤリと
佇立
(
ちょりつ
)
しているように見えて……そうではない。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
妙信と妙海とは、最前より同じき姿を保ちて
佇立
(
ちょりつ
)
せる妙念の方を顧みつつも、妙源の後につづきて鐘楼を左折し去る。次第に赤き煙、濃くなりまさりて場に
漲
(
みなぎ
)
る。
道成寺(一幕劇)
(新字新仮名)
/
郡虎彦
(著)
ギラ・コシサンが初めて此の女をア・バイの裏の炊事場で見た時、彼は茫然として暫く
佇立
(
ちょりつ
)
した。その女の
黒檀彫
(
こくたんぼり
)
の古い神像のような美に打たれたばかりではない。
南島譚:02 夫婦
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
帆村は、彼が糸子の傍に
佇立
(
ちょりつ
)
していることさえ忘れて、彼のみが知る恐ろしさに
唯
(
ただ
)
、
呆然
(
ぼうぜん
)
としていた。
蠅男
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
こう決心してのそのそ御両君の
佇立
(
ちょりつ
)
しておらるる
傍
(
そば
)
近く歩み寄って見ると、自然両君の談話が耳に
入
(
い
)
る。これは吾輩の罪ではない。先方が話しているのがわるいのだ。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
シャアは黙って太子に従い、太子もまた黙然と
佇立
(
ちょりつ
)
して私たちの方に
訣別
(
けつべつ
)
の眼を向けていられる。
ナリン殿下への回想
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
五郎は肩を落し、三分間ほど曲り角に
佇立
(
ちょりつ
)
し、街の様子をにらんでいた。昔よく出歩いた街だが、その頃の雰囲気が残っているような、また見覚えのないような感じがする。
幻化
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
その提灯をじろじろと眺め、はっきり開拓使と読み取って、こちらの一団は黙々と
佇立
(
ちょりつ
)
していた。阿賀妻が動きださない限り、彼らはいつまでもそうしていたかも知れない。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
両親の居間の
襖
(
ふすま
)
をするするあけて、敷居のうえに
佇立
(
ちょりつ
)
すると、虫眼鏡で新聞の政治面を低く音読している父も、そのかたわらで
裁縫
(
さいほう
)
をしている母も、顔つきを変えて立ちあがる。
玩具
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
彼は戸の前にじっと
佇立
(
ちょりつ
)
していたが、ふと或る疑念におそわれて、そっと声をかけた。
犬舎
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
彼は、予想以上に立派な邸宅に
気圧
(
けお
)
されながら、暫らくはその門前に
佇立
(
ちょりつ
)
した。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
路
(
みち
)
のかたわらなる草花は
或
(
あるい
)
は赤く或は白い。
金剛石
(
こんごうせき
)
は
硬
(
かた
)
く
滑石
(
かっせき
)
は
軟
(
やわ
)
らかである。牧場は緑に海は青い。その牧場にはうるわしき牛
佇立
(
ちょりつ
)
し羊群
馳
(
か
)
ける。その海には青く
装
(
よそお
)
える鰯も泳ぎ
大
(
おおい
)
なる鯨も
浮
(
うか
)
ぶ。
ビジテリアン大祭
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
文麻呂 (
茫然
(
ぼうぜん
)
として、御所車の前に
佇立
(
ちょりつ
)
したまま、動かない)
なよたけ
(新字新仮名)
/
加藤道夫
(著)
孔明とともに、
深苑
(
しんえん
)
の一堂に入られたまま、時経っても、帝のおもどりがないので、門外に
佇立
(
ちょりつ
)
して、待ちくたびれていた侍従以下の供人たちは
三国志:10 出師の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
すると驚くべきことに、千手はそのまま翼と化すのだ。翼をひろげた観世音がまさに
飛行
(
ひぎょう
)
の姿で
佇立
(
ちょりつ
)
している。
大和古寺風物誌
(新字新仮名)
/
亀井勝一郎
(著)
“佇立”の意味
《名詞》
佇立(ちょりつ / ちょりゅう)
しばらくその場に立ち止まること。佇(たたず)むこと。
(出典:Wiktionary)
佇
漢検1級
部首:⼈
7画
立
常用漢字
小1
部首:⽴
5画
“佇立”で始まる語句
佇立所
佇立瞑目